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舞を妄想して作ったバカみたいな小説

1名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/26 22:28 ID:Ru67U2SA
舞「きゃあぁぁ!」
女戦士マイは大魔王ぶるーすりーと死闘を繰り広げていた
りー「オラオラどうしたかかってこいよ!」
舞「くっ。右足さえ怪我しなければ・・・・」
マイの太ももからは少量の血が出ている。
舞「こうなったら一か八か・・・。えい!風車崩し!!」
舞の風車崩しは、りーの膝にヒットした。
しかし、りーは舞のふんどし(?)をつかんだ
舞「ああ!!・・・・いた・・・・」
りー「ククク・・・。たっぷりかわいがってあげよう」
その瞬間に舞のふんどし(?)の前のほうが破けた。
そして舞のかんざしも抜いた。かんざしを抜いたついでに髪を引っ張った
舞「きゃああ!はなして!!」
りー「お前は少し美しすぎた・・・自分でこんなに露出したのを後悔するがいい」
その言葉が終わったとたん舞を地面にたたきつけて、ふんどし(?)が破けて丸見えになった赤いパンツの上に足を乗っけた。
そして、全体重をパンツにかけて踏み潰した。
舞「きゃあぁぁぁ!!あ・・・ああん・・・や・・め・・て・・」
舞は瀕死の状態になった。
続く?

2名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/26 22:31 ID:???
sage

3名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/26 23:00 ID:Ru67U2SA
ほんとに舞を嬲りたくてこんなバカみたいな小説作ってしまいました。
すんません!!

4名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/26 23:04 ID:utWm.Mq.
(゚∀゚≡゚∀゚)

5名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/26 23:17 ID:???
続く!!!!!!!!
続く!!!!!!!!
続く!!!!!!!!

6名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/26 23:24 ID:???
あげちゃdame

7名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 02:09 ID:46u4s8oc
続こうよ

8名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 02:37 ID:DddT9BxU
なんかいやされた

9名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 08:05 ID:YQbrbZrY
第2話
舞「ああ・・・・ぅぅ・・・」
舞はもう声で出す気力さえ残っていなかった。
りー「さあ少し眠ってもらおう」
その言葉が終わったとたんに舞の腹部に膝蹴りをした。
そして・・・・
舞「う・・・・う・・・」
舞は目が覚めた。しかし舞が起きたときには手足が縛られてソファーの上に横たわってた。
そしてなぜか舞の靴(?)は脱がされ裸足になっていた。
わけのわからない舞は混乱してしまった。
その時、ドアから誰かはいってきた。
ぶるーすりーだ。
りー「どうだね?私の家は?」
舞「まさか私が気を失っている時にここまで運んだのね・・・」
舞の言葉が終わらないうちにりーはゆっくり舞いに近づいた。
そして一本のムチを用意した。
舞「なっ・・・なにするの!?」
舞の返事にいやらしくリーは答えた。
りー「あんたを襲いたい」
舞「えっ・・・」
りー「襲いたい3つの条件を言ってやろう。1つあんたは美しすぎた。2つお前のやられる姿に感動してしまった。3つ、あんたを襲いたい。この三つだ」
そしてムチを舞に向かってたたきつけ始めた。
ビシ!!バシ!!パン!!へやに大きな音が響き渡る。
舞「きゃ!!あ!!ああん!!」ムチの音とともに舞の声が部屋中に響く。
そして縛られていた縄を切って舞のパンツ(?)を脱ぎ始めた。
リー「ふふふ・・・いい・・・」
リー「しかし私は満足しない。満足するために私はあることをする。」
そのとき、リーはポケットからはさみを取り出して丸見えのアソコの毛を切り始めた。
チョき・・ちょき・・・ちょき・・・
そしてアソコの毛はきれいさっぱり切られてしまった。
リー「さあコレでやりやすくなったぞ・・・」
なんかエロ小説になってしまった。反省。
続く?

10名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 12:44 ID:hB7V03kc
レープも良いがもうちょっと舞をボコボコで作れば嬉しいです.

11名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 12:53 ID:y6VIzMWE
わかりました〜

12名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 15:22 ID:y6VIzMWE
第2話
りー「さあ、ゆっくりやろう。」
そう言うと、りーはゆっくり腰を下ろし上下運動をし始めた
舞「きゃあぁぁ!!痛い!!ああん!!あん!!あん!!」
ぐちゅっ、ぢゅぷっ、ぬちょっ。
部屋中に響き渡るいやらしい声といやらしい音。
リー「ふふふ・・・初めてのようだね・・・もっと楽しいことをしてあげるよ。」
だんだん上下運動が速くなってくる。
舞「あ・・!!いやっ・・!!いやぁ・・・!!」
リー「気持ちいいだろ?」
舞(どうしよう・・・気持ちよくなってくる・・・)
りー「もっと速くしてやる。痛くても我慢しろよ」
ぐちゅ!べちゃっ!ばちゅ!!
舞「うっ!!!ぁ!!!ぁぁ・・・!!」
そして20分くらい続いた。
リー「ふう。気持ちよかったぜ。しかしあと少し満足しない。」
リーは自分にかかった白い液体を拭きながらこう言った。
りー「お前をもっと襲いたい」
舞「ぇ・・・」
舞はリーにやられていたので衰弱していた。衰弱している為声もろくに出なかった。
リー「さあはじめよう。」
しかし、舞は自力では立てなかった。
リー「起こしてやる」
りーは舞の髪をつかんだ・・・。
舞「ぁぁ・・・ぅぅ・・・・」
リー「まずは挨拶代わりだ」
リーは舞の腹部を力いっぱい殴りつけた。
舞「ぁぁ!!がは・・・・」
舞の口から血が出てきた。舞の目からは涙がこぼれそうであった。
りー「うれし泣きか?もっといたぶってやる」
りーは舞をなげて宙に浮かべるとものすごい速さの連続キックをした。
バシ!ドガッ!ゴスッ!ビリッ!ドンッ!
舞「キャ・・!ぁ・・・!ゃ・・・!ぅ・・!はぁっ・・・」
打撃音とともに舞はとても小さい声で叫んでいた。
続く?

13名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 15:59 ID:y6VIzMWE
舞を嬲りまくってストレス解消!
コスプレでもいいから舞をなぐりて〜

14名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 19:09 ID:./L5NVcw
(゚∀゚≡゚∀゚)

15名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 19:43 ID:???
夏ですね
画像クレ〜じゃねぇよ

16名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 21:23 ID:dQLtj0rI
舞ちゃんにもっと善戦して欲しいナリ
舞ちゃんもかなり強いけど、もっと強いやつに結局やられちゃうのがベスト
SSスレに移った方がいいかもしれんわな

17名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/27 23:27 ID:???
続いてください.
SSスレもここも良いです.
期待X10000000


18名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/29 08:12 ID:YQbrbZrY
第3話
舞はやられていた。リーの蹴りやパンチに何も出来なかった。
りー「そろそろフィニッシュといくか」
舞(私・・もうだめかも・・・こうなったら一か八か・・・・)
リーは力をため始めた。
その隙に舞は反撃をした。
舞「龍炎舞!!」
リー「ぐあ!」
舞の龍炎舞はリーにまずまずのダメージを与えたに違いない。しかしもう遅かった。
リーは舞の髪をつかむと地面にたたきつけた。
りー「終わりだ」
たたきつけられた反動で浮き上がった舞を蹴り飛ばした。
舞「きゃぁぁ!!」
舞はものすごいスピードで飛ばされた。
しかし運のいいことに舞が飛ばされたのは窓のほうだったため、窓を破って外に投げ出された。
リー「しまった!」
リーの家(城)は山のてっぺんにあるため山のふもとには町があった。そこに舞の家もある。
リーの家(城)から投げ出された舞は半分転がっていた
舞「このまま町に戻って耐性を立て直さなくちゃ・・」
そう思っている間に町のはずれの方にたどり着いた。
舞はそこら辺にあったボロキレで露出したアソコを隠した。
そして自分の家に行く間にある男に会った。
?「舞じゃないか!!」
彼の名はじゃっきーちぇん。舞の知り合いだ。
舞「あら・・・じゃっきーちぇんじゃない・・・」
死にそうな声で返事をした。
ちぇん「大魔王に負けたのか?」
舞「そうよ・・・だから耐性を立て直すために戻ってきたの。」
舞はそういい残すと自分の家に入っていった。
舞は私服に着替えてそのまま眠ってしまった。
続く?


19名無しさん@お腹いっぱい。 :05/07/30 13:06 ID:y6VIzMWE
あんま意味の無い(?)キャラ紹介
不知火舞・・・・・・年齢、10代後半(?)〜20代前半(?)
大魔王の城がある山のふもとにある、ちょいとお町と言う小さな町で生まれた若き女戦士。
ぶるーすりー・・・・30代前半
大魔王。
じゃっきーちぇん・・・・・20代前半
舞の知り合い。
ビッグベア・・・・30代?
舞のライバル。変態。
こんなかんじ

20名無しさん@お腹いっぱい。 :05/08/10 15:33 ID:???
続きマダー?

21名無しさん@お腹いっぱい。 :05/08/14 18:05 ID:tS2tCxa6
モウシバラクオマチヲ

22名無しさん@お腹いっぱい。 :05/08/14 22:21 ID:???
-オワリ-

23名無しさん@お腹いっぱい。 :05/09/04 19:02 ID:79oq6QHU
続き書かないから勝手に書いちゃえ

舞は起きたらかなりエロい水着を着せられていた
小さな布で乳首だけを隠したビキニと鎖骨が見えるほどにエロい白いビキニパンツの格好をしていた。
続く

24名無しさん@お腹いっぱい。 :05/09/04 19:35 ID:???
dame



25>>1 :05/09/20 17:37 ID:2NTFJ0EI
何ヶ月ぶりにここにキタ。久々に続き書くか・・・
その服を脱いで、いつものやらしい服に着替え、修行を始めた。
舞は足技を集中的に練習し、舞の身体もだんだん色っぽく、エロスな服になってきた。
そして1ヵ月後・・・・
舞はいつものコスチュームに着替えてた。
しかし、なぜか、胸や尻が大きくなっていて、バスト87から、バスト95になっていることがわかった
舞「これじゃまたリーに襲われちゃうわ・・・・」
そうつぶやきながら舞はリーのいる城へ向かった。
続く

26>>1 :05/09/23 17:19 ID:2NTFJ0EI
続き
舞の目の前に突如ぶるーすりーが現れた。
舞「こんなトコで会うなんて・・・・・」
リー「ふふふふ・・・」
舞「修業の成果を見せてやるわ!!」
笑うリーに攻撃を仕掛ける舞。
舞「必殺!ムササビの舞!」
リー「ぐおわぁ・・・」
リーが倒れる。そして気絶してしまった
舞「おかしいわ・・・・こんな早くリーを倒すなんて・・・・」
ベア「ぐふふふ・・・相変わらず舞ちゃんはかわいいなぁ・・・」
舞の目の前に大男が現れる
舞「あなたはビックベア!どうしてここに!?」
ベア「おれはリーを倒して家来にした。今では俺が大魔王だ」
ベアは大きく太い腕で舞の身体全体を殴りつけた。
舞「あぁ!!」
地面に崩れ落ちる舞。
ベア「俺を倒したかったら俺の城にこいよ・・・・フハハハハハ!!」
ベアはそのまま城の方に行ってしまった。
続く

27名無しさん@お腹いっぱい。 :05/09/27 06:05 ID:???
dame

28名無しさん :06/02/05 17:55 ID:BWMFpN1E
かすみの小説?
かすみ「きゃぁぁ!!」
かすみはある男に投げ飛ばされ、壁にたたきつけられた。
かすみ「い・・・いや・・・・やぁぁ!!」
かすみの露出の多い服を破き、乳を吸い始めた。
かすみ「はぁぁぁ!!やぁぁぁん!!あ!」
そしてセックスをして子供を宿した。



29名無しさん@望月流 :06/02/08 01:05 ID:???
 公式ストーリー設定上、不知火流の宿敵とされている望月流の忍者達によって
舞がいたぶられる小説を書いてみた。少々長くなってしまうが、ご容赦を。
最初に、物語に登場するヘンテコ忍法を紹介。

忍法「分銅乳」・・・・敵のバストに比例した重力を負荷
忍法「分銅尻」・・・・敵のヒップに比例した重力を負荷
忍法「蜘蛛糸縛り」・・蜘蛛のような粘着紐で敵を拘束
忍法「焔返し」・・・・敵の火炎忍術を倍にして跳ね返す
口寄せ「装束喰蟲」・・敵の服をドロドロに溶かすスライムを召還
幻術「淫獄」・・・・・敵が受ける戦闘ダメージを性的快楽に変換


30名無しさん@望月流 :06/02/08 01:07 ID:???
不知火流忍術の若き党首、不知火舞は、宿敵望月双角の高弟達の罠にかかり、
窮地に陥っていた。敵は呪縛坊、炎魔坊、鬼蜘蛛丸の三人。数での不利があるとはいえ、
忍びとしてのスキルや格闘家としての戦闘力において、舞は決して彼らに遅れをとらない。
しかし、彼らが駆使する奇妙な術によって、舞は翻弄され続けていた。

「必殺忍蜂!!」炎魔坊の一瞬の隙をつき、彼の懐に飛込もうとする不知火舞。
しかし、ヒットの直前に大きくバランスを崩し、無様に尻餅をついてしまう。
「きゃあっ!」
抜群のバランス感覚を持つはずの舞が、このような無様な転倒をするのは、
今日何度目のことであろう。慌てて起き上がろうとするが、
炎魔坊によってしたたかに顎を蹴りあげられ、そのまま仰向けにダウンてしまう。

31名無し :06/02/08 01:09 ID:???
「危ないところであった。恩にきるぞ、呪縛坊。」
冷や汗を拭いながら礼を言う炎魔坊の視線の先には、呪縛坊がいた。
「忍法、分銅尻。怨敵、不知火舞よ、お主の尻には今、5倍の重力がかかっておる。」
よく見ると、舞の大きな尻には梵字のような呪印が施されており、その呪印が禍々しく輝いている。
「うぅ・・・く・・くそ・・・・」
 炎魔坊に顔を踏みつけられ、起き上がることの出来ない舞に対して、
呪縛坊は次の忍術のための印を結ぶ。
「くの一として生まれたことを後悔するがよい。忍法、分銅乳!!」
 仰向け状態の舞の豊かな胸元が妖しく光り、舞は自らの二つの乳房によって
体を押しつぶされるような圧迫感を味わう。
「ぐあぁああ!!胸が、・・・胸が・・重いっ・・・」
 苦悶の表情を浮かべながらもがき苦しむ舞。二つの大きな果実のような乳房が紅い忍び装束からこぼれる。
そこには、お尻と同様の呪印が施されており、呪縛坊の術に呼応して燃え上がるかのように光り輝いていた。

32名無しさん@望月流 :06/02/08 01:10 ID:???
「忍法分銅乳」と「忍法分銅尻」。この二つの忍術は、望月流棟梁である望月双角が、
不知火流くの一との戦いを想定して編み出し、弟子である呪縛坊に伝授した技であった。
肉弾戦のどさくさに紛れて敵くの一の胸と尻に呪印を刻み込む。あとは術を発動させれば、
敵の胸と尻に強力な重力を負荷させ、その機動力や体術を大幅に弱体化させることができる。
術の威力はターゲットのバストサイズとヒップサイズに比例する。
 平均的な体位のくの一にとっても充分に脅威となる術ではあるが、世界のトップモデルのような
抜群のプロポーションを誇る不知火舞に対しては、超必殺技といってもいいほどの威力を発揮していた。

33名無しさん@望月流 :06/02/08 01:12 ID:???
 太陽が西に沈む頃、不知火舞は望月双角の弟子達との死闘に敗北し、彼らの手に落ちた。
 起死回生のために放った大技、超必殺忍蜂は、魔炎坊の「忍法焔返し」によってはね返され、
その紅蓮の業火は技を放った舞自身の身体を焼き焦がした。極めて高い耐火性を誇る不知火流の
忍装束のお陰で消し炭になるのは免れたものの、全身からブスブスと黒い煙をあげながら弱々しく
呻く舞のダメージは深く、それ以上の抵抗は不可能であった。
「そろそろ詰みかのう?鬼蜘蛛丸、お主の出番じゃ。」
呪縛坊に促され、それまで闘いを静観していた三人目の刺客、鬼蜘蛛丸が動き出す。

34名無しさん@望月流 :06/02/08 01:13 ID:???
 蜘蛛の八本の脚を模した不気味な甲冑に身を包んだ鬼蜘蛛丸の両手から、白い粘着紐が放出され、
獲物である少女の身体に巻き付いていく。拘束から逃れようともがく舞であったが、もがけばもがく程、
蜘蛛の糸は二重三重に彼女の四肢を絡めとり、その細い身体をより強く締め上げる。
「ぐっ・・・ぐぅう・・・・ひぎぃいい・・・・」
 身体中の骨がミシミシと軋み、肺の空気を搾り出された舞の顔が真赤に紅潮したかと思うと、
手にした扇子がパタリと落ち、少女はそのまま意識を失った。

「ふぅ、乳臭い小娘だと侮っていたが、なかなかてこずらされたわい。
双角様から授かった秘術がなければ危うかった。
だが、これで双角様からの命は達せられそうじゃ。」
「鬼蜘蛛丸、お主はその娘を運べ。炎魔坊は、不知火流の者の追跡がないか
どうか気を配れ。これより双角様のお屋敷に帰還する。散!!!」
 意識のない舞を抱き上げた三つの影が、梟のように闇夜の中に飛び立つと、
あとにはビリビリに破れた舞の扇子のみが残された。


35名無しさん@望月流 :06/02/08 01:15 ID:???
 宿敵、不知火舞を討ち取った三人の忍は、その夜のうちに、彼らの棟梁である望月双角の屋敷に
意気揚々と凱旋帰還を果たした。双角は三人の弟子達の成長を褒め称え、彼らが生け捕りにした憎っきくの一を
拷問部屋に監禁するように命じた。
 
「うぅ・・・こ・・ここは?」 
 望月屋敷の地下深くにある拷問部屋で、舞は目を覚ました。体を動かそうとするが、
何かに固定されたように動かない。部屋を僅かに照らす蝋燭の明りを頼りに周囲を見渡し、
自分が置かれている状況を理解する。部屋には、先ほどの戦いで自分を拘束した鬼蜘蛛丸の粘着紐が
無数に張り巡らされており、巨大な蜘蛛の巣を形成していた。そこに舞は、大の字磔の格好で拘束されていたのだ。
その姿は、毒蜘蛛の巣に捕われた哀れな蝶を連想させる。

 その時、舞の正面にある部屋の扉が開き、双角が姿を現した。
「無様な姿だな・・・。我らが怨敵、不知火舞よ・・・・」
「も・・・望月・・双角!!」


36名無しさん@望月流 :06/02/08 01:16 ID:???
 宿敵、不知火舞を討ち取った三人の忍は、その夜のうちに、彼らの棟梁である望月双角の屋敷に
意気揚々と凱旋帰還を果たした。双角は三人の弟子達の成長を褒め称え、彼らが生け捕りにした憎っきくの一を
拷問部屋に監禁するように命じた。
 
「うぅ・・・こ・・ここは?」 
 望月屋敷の地下深くにある拷問部屋で、舞は目を覚ました。体を動かそうとするが、
何かに固定されたように動かない。部屋を僅かに照らす蝋燭の明りを頼りに周囲を見渡し、
自分が置かれている状況を理解する。部屋には、先ほどの戦いで自分を拘束した鬼蜘蛛丸の粘着紐が
無数に張り巡らされており、巨大な蜘蛛の巣を形成していた。そこに舞は、大の字磔の格好で拘束されていたのだ。
その姿は、毒蜘蛛の巣に捕われた哀れな蝶を連想させる。

 その時、舞の正面にある部屋の扉が開き、双角が姿を現した。
「無様な姿だな・・・。我らが怨敵、不知火舞よ・・・・」
「も・・・望月・・双角!!」


37名無しさん@望月流 :06/02/08 01:18 ID:???
 望月双角は、鋭い視線で舞を見つめている。戦闘態勢に入っている訳でもないのに、
恐るべき殺気が双角の全身から放たれ、捕われのくの一の肌に針のように突き刺さる。
「こんな所にあたしを閉じ込めて、何のつもり?殺るならひと思いにさっさと殺りなさい!!
あたしだって、不知火流忍術の党首!それ位の覚悟はできているわ!!」
 本当はとても怖い。双角の殺気を受けて脂汗を流しながらも、舞は精一杯の強がりを言ってみせる。
その挑発に、双角の眉がピクリと動く。
「覚悟だと?自惚れるな。ワシの弟子にも敵わぬような未熟者の小娘が党首を名乗るとは片腹痛し。
やはり、不知火流は半蔵が死んだ時点で既に滅んでおったようだわ。」
そして、右手で舞の顎をグイと引きつけて冷たく言い放つ。
「その身をもって教えてやろう。敵の手に落ちたくの一が、誇りある死を迎えられるわけがないと
いうことを。党首であるワシ自らが手を下すのがせめてもの情け。覚悟いたせ。」
 双角の処刑宣告に、舞の表情が凍りつく。不知火舞にとっての長い夜が今、はじまろうとしていた。



38名無しさん@望月流 :06/02/08 01:22 ID:???
 望月双角は懐から一本の巻物を取り出すと、スライム状の魔物を口寄せした。
「我が望月流が代々、不知火流から受けてきた溜飲を下げるとしよう。装束喰蟲よ、餌の時間だ。」
召還されたスライムは、部屋の壁から延びる蜘蛛の糸を伝って舞の体に迫っていく。

(忍たる者、どんな目にあっても敵の前で悲鳴をあげたりしてはならない。)
大好きだった舞の祖父、不知火半蔵の教えである。宿敵、望月の眼前ならば、
なおさらその教えを守るべきであろう。だが、今まさに自分を襲おうとしている運命を予感し、
舞の顔は恐怖にひきつる。


39名無しさん@望月流 :06/02/08 01:41 ID:???
 舞の腰の高さに達したスライムは、自分の標的を決定したらしく、四匹に分裂した。
その内二匹は舞の左右の太ももを経由して下降する。そして、彼女の脛を包む紅い巻脚絆の
僅かな隙間から中に潜り込み、足袋と脚絆を内側から溶かし始めた。
 見た目とは裏腹に高い耐久力と耐火性を誇る、不知火流の忍装束も、スライムが抽出する特殊な
酸の前には無力であった。舞の足元に、腐食した布の残骸がハラハラと散っていく。
その度に、装束に覆い隠されていた部分の白い肌が少しずつ露になり、舞の露出度を更に高めていく。

 残りの二体は舞の上半身を責める。蜘蛛糸で縛られた体を必死に捻って、スライムの浸入を防ごうとするが、
無駄なあがきであった。一匹は露出した脇を経由して右胸元に入り込んだ。そして最後の一匹は、
股間を覆い隠す前垂れを押しのけると、露になった真紅のTバックの表面に張り付いた。
「な・・・っ!?・・ひ・・・ひゃあああ!?」
予想もしていなかった恥ずかしい箇所を、気色の悪い生き物によって攻め立てられ、思わず悲鳴をあげてしまう。


40名無しさん@望月流 :06/02/08 01:45 ID:???
 このスライムは、双角の術によって品種改良され、敵の衣服のみを餌として消化する
変異種である。従って、舞の肉体にダメージを与えることは決してない。しかし、
足の裏や乳房、股間や尻といった敏感な部分に纏わりつき、蠢く液体生物は、
痒みとも快感ともとれる奇妙な触感を少女にもたらしていた。
未知の感覚に何とか抗おうとするが、舞の体はピクピクと痙攣し、その顔には時に恍惚の表情さえ浮かぶ。
そんな彼女を、蔑むような目で冷ややかに見つめる双角。

 捕らわれの身となったくの一の精神を、敗北感と屈辱感でジリジリと蝕もうとする呼び主の意図を察しているかのように、
スライムの食事は丸一晩、時間をかけてゆっくりと続行された。


41名無しさん@望月流 :06/02/08 12:11 ID:???
 長い夜が明け、望月双角は「装束喰蟲」の口寄せを解除し、再び巻物の中に収納する。
「全裸にはせぬ。汚された装束をその身に纏い続ける方が、より大きな屈辱であろう。」
 双角が言った通り、不知火舞は、紅い忍装束をまだ部分的に身に着けてはいた。だが、それは
スライムの食事の残りカスに過ぎず、闘いに敗れ敵に弄ばれたくの一を、より一層惨めに
引き立たせる淫猥な残骸になり果てていた。

 彼女の美脚を包んでいた巻脚絆と足袋はドロドロに溶かされ、跡形もなく消滅していた。
右肩から胸元にかけての布地もボロボロにはがれ落ち、片方の乳房が惜しげもなく晒し出されている。
股間を覆い隠していた前垂れは、引き千切られたかのようになくなっており、今や真紅のTバックに
包まれた股間が丸見えである。そのTバックにも虫食いのようにボコボコと穴が空いており、
顔を近づければ陰毛や秘部が見えてしまう。
 
 腰から垂れ下がっていた尻尾のような帯は、元の1/4程の長さになっていた。尾の先端に
付いていた黒い水晶球は、蜘蛛糸に拘束された舞の足元に転がっている。龍炎舞をはじめとする
火炎系忍術の発火点となるこの宝玉を、双角は手にした尺杖で叩き壊した。


42名無しさん@望月流 :06/02/08 12:21 ID:???
「ふんっ、結局あなたもただのエロジジィだったってことね。」
 悔しさと恥ずかしさを悟られないよう、なお双角を挑発する舞。双角の平手が飛び、
少女の頬を痛烈に叩く。
「あうっ!!」
 その拍子に舞のポニーテールを結い付けていたかんざしが弾け飛んだ。
「口の減らない小娘が!我が弟子たちよ、こやつを外に連れ出し、晒し者にせよ。」
 拘束を解かれた舞は、呪縛坊達によって拷問部屋の外に連れ出されていった。


 屋敷の外に連れ出された舞は、望月流の忍者達が暮らす集落の大広場で、晒し者に
された。広場中央に組み立てられた巨大な磔柱に縛りつけられる舞。
 一族の宿敵である不知火流の現党首が、まだ20歳も超えぬ美少女だということを
知らなかった者も多い。彼らの党首とその高弟達が生け捕りにしたという娘を一目見ようと、
大勢の中忍や下忍が広場に詰め掛ける。
 季節は春。桜の花弁が舞い散る中、磔にされたボロボロのくの一の姿は、
本人の意思とは無関係に、怪しいほどの色香を放っていた。


43名無しさん :06/02/08 15:46 ID:???
最高

44名無しさん :06/02/08 15:58 ID:???
>>1

45名無しさん@望月流 :06/02/08 17:35 ID:???
 舞は日中の間、晒し者にされていた。やがて日が沈むと、望月双角が大広場に
姿を現した。磔柱に縛り付けられた舞に近づくと、彼は舞の額に二本の指をつきたて、
術を発動する。
「幻術淫獄。これ以降、貴様に与えられるダメージは全て性的快楽に変換される。
つまり、身体を痛め付けられれば、痛めつけられるほど、貴様は敵の眼前で悶絶し、
よがり狂うことになるのだ。」

 双角は弟子に命じ、舞の身体を拘束から解き放つと、錫杖を構え戦闘態勢に入った。
「我らの因縁に決着をつけてやろう。不知火流の無力さをかみ締めながら、
恥辱の海に沈むがよい。」
 決闘場である大広場を、望月流の中忍・下忍たちが取り囲み、舞の逃走経路を断つ。
舞は覚悟を決めるしかなかった。
(ならばせめて、双角だけは刺し違えてでも倒してみせるわ。)
「不知火舞、参ります!!」
 舞にとって最期の戦いがはじまった。


46名無しさん@望月流 :06/02/08 17:40 ID:???
 双角の強さは圧倒的であった。彼が操る稲妻は、雨あられのように大広場に降り注ぎ、
それを辛うじてかわしていく舞は、防戦一方である。
 双角は以前呪縛坊に伝授した「忍法分銅乳」と「忍法分銅尻」を同時に発動させる。
動きの鈍くなった舞の頭上に、黒い雷が落ちる。
「あぁんっ!!」
 「幻術淫獄」の作用で、舞の体に電流のような快感が走る。体の芯が、
火照るように熱くなる。
(長期戦はマズイ!次の一撃で何とかしないと・・・!)
 腹を狙って突き出された錫杖の一撃を宙に跳んでかわし、
そのまま双角の背後に回りこんで背中にしがみつく。

「月下、乱れ牡丹!!」
 残る全ての闘気を一気に放出して零距離で大爆発を起こす、不知火舞、
最後の切り札である。だが、技が決まる刹那の瞬間、舞に捉えられた
双角の体が一本の丸太にすり替わる。
(しまった!!空蝉の術!?)
一度発動させてしまった大技を中断することはできない。大爆発によって、
舞が抱きかかえる丸太が粉々になる。形勢逆転を狙った最後の奇策の結果
はただそれだけであった。


47名無しさん@望月流 :06/02/08 17:44 ID:???
 本物の双角は、逆に舞の背後をとっている。召還術によって、望月流が信仰する
雷神の化身が出現する。体長5メートルをゆうに超えるであろう巨大な鬼の豪腕が、
雷を纏って振り下ろされる。力を使い果たした舞にそれを避けることはできない。

「きゃあああああああああああああああ!!!!!!!!」
 断末魔の悲鳴をあげて宙に吹き飛ばされた舞は、受身もとれずに背中から
地面に落下する。もはや立ち上がる力もない。その時、舞の体に劇的な変化が起こる。
本来であれば少女を即死させるのに充分なほどの壊滅的ダメージが、幻術「淫獄」の
作用によって至高の快楽に変換されてしまったのだ。

(なっ・・・なにこれ・・・き・・・・気持ちよ過ぎる・・・・・
気持ちよ過ぎるよおおおおおおおお!!)
 舞の体が大きく弓形にのけぞったかと思うと、股間から噴水のような
勢いで愛液が溢れ出した。
「いや・・いやぁあああああ!!」
両手で股間を塞ごうとするが、愛液の噴水は止まりそうもない。双角必殺の一撃による
即死を免れた代償として、舞の身体は明らかに壊れてしまっていた。


48名無しさん@望月流 :06/02/08 17:53 ID:???
 未だかつて味わったことのない快楽に、不知火舞は陥落寸前であった。
追撃のために双角が放った落雷が、ピンポイントで股間に直撃し、
舞の身体にとどめをさす。
「あーーーーーーーーーー!!」
性行為をしているわけでもないのに絶頂を迎えてしまい、舞は意識を失った。
 
 愛液の水溜りの上で大股を開き、無様に転がり痙攣し続ける、
不知火流忍術の若き党首、不知火舞。ぐったりと横たわる舞の体を蹴り飛ばすと、
望月双角は自らの勝利を宣言する。
「言ったはずだ。敵の手に落ちたくの一に、誇りある死などあり得ぬと。」

(完)
短期間での長文集中カキコ、失礼いたしました。


49名無しさん@お腹いっぱい。 :06/02/09 12:43 ID:/mDQDiCQ
すげー見事なやられっぷり。
望月忍者は舞の天敵ですね。
>>31>>41>>48でハァハァしました

50名無しさん :06/02/09 14:14 ID:???
スライムで全裸にしない所と晒し者にされるあたりが最高。
欲を言えばもうちょっと舞の活躍するシーンやボコられるシーンなんかも欲しかったかな。
良かったらまた何か書いて下さい。

51名無しさん :06/02/09 19:24 ID:BWMFpN1E
GJ!GJ!マジでGJ!

52名無しさん :06/02/10 11:00 ID:???
>>48
楽しく読ませてもらいました。小生意気な舞をおしおきしまくる
望月軍団に敬礼。
ボロボロの衣装のまま、広場で磔にされている舞の姿を想像して勃起。
舞にとってはアニメのローレンス戦以上の屈辱でしょうね。
画像で見てみたいな〜。

53名無しさん@望月流 :06/02/12 19:52 ID:???
感想どうもです。もし次を書くとしたら、カプエス2のラストバトルで、
ゴッドルガールにボコボコにされ、豪鬼のように力を奪われてしまう
舞のSSでも書いてみようかと思います

54名無しさん :06/02/12 20:01 ID:???
SSご馳走様でした。
次も楽しみに待ってます

55名無しさん :06/02/12 21:28 ID:???
おお、次の予定もあるのですね。
今回のSSとても良かっただけに楽しみにしております。

56名無しさん :06/02/13 18:17 ID:BWMFpN1E
あざ〜す!

57名無しさん :06/03/27 00:04 ID:???
>>29
亀過ぎだがまじGJ!!ぶっちゃけリョナ抜きで面白かった。
忍法分銅乳とか良く思いつくな…アイデアも文章力も凄いね。

58名無しさん :06/05/17 23:54 ID:D/iwDdNI
>>53
せっかくだから次書いて欲しい。
SS書くのも大変なんだろうけど、待ってます。

59名無しさん :06/05/18 00:22 ID:???
SSスレとかで別の話を書いてるんじゃないの?
文が前SSスレでDOAビーチバレー書いた人っぽいし。


60名無しさん :06/05/19 17:43 ID:???
ありがたいことにリクエストして下さる方がいるようなので、舞のSS
に再挑戦します。>>53で予告したVSルガールは、書いていてあまり
妄想が膨らまなかったので、闇に滅しました。
あと、他スレでDOAビーチバレー書いたのは他の方です。

今回はKOFの新作、MMIUネタで、不知火舞VSナガセです。




61リベンジマッチの挑戦料 1 :06/05/19 18:02 ID:???
「Winner is・・・・・・・ Nagase !!」
一瞬の静寂の後、耳に聞こえるのは会場を揺るがすほどの大歓声とブーイング。

気がついたら、試合会場の冷たい床にうつ伏せの形で沈んでいた。
どうやら今の今まで気を失っていたらしい。
目が覚めたものの、頭の中に靄がかかったように記憶が混濁している。
不知火舞は、自分がなぜこんな状態に陥っているのか、少しの間理解できなかった。

頭上から、そんな彼女を嘲るような声が投げかけられる。
「ほ〜ら言っただろ。お前の負け〜。」

両腕に力を入れてなんとか上体を起こし、声の主の方に目線をやる。
声の主は、黒と黄色を基調にした服に身を包んだ、ボーイッシュな出立ちの少女であった。
いたずら小僧のようなあどけない顔には黄色のサングラスをかけ、ショートカットにした金髪には黒のメッシュが入っている。
満足そうに自分を見下ろす少女の顔を見た瞬間、舞は状況を理解した。

世界最大規模の格闘大会、「キング・オブ・ファイターズ(KOF)」。
舞はこの大会参加者の常連であり、女性格闘家の中では最有力選手の一人として数えられる女忍者である。
彼女の準々決勝の対戦相手は、流星(ナガセ)と名乗る少女であった。

年齢は10代半ば、あるいはそれを少し過ぎた位であろうか。国籍はおそらく日本。
KOFに出場するのは今回が初めてで、過去にKOF以外の主要な格闘大会に出場した記録もない。
KOF常連の格闘家たちにとっても、観客にとっても、ナガセは全くの無名選手である。


62リベンジマッチの挑戦料 2 :06/05/19 18:16 ID:???
そんなノーマークの少女格闘家を相手に、舞はまさかの敗北を喫してしまったのだ。
それも試合開始後、わずか10秒での瞬殺KO。
これまでに彼女が何度か味わってきた敗北の中でも、ぶっちぎりの最短記録である。
テリー=ボガードや草薙京といった、彼女よりも格上とされている(舞自身は、必ずしもそれを認めていない)
超一級の男性格闘家を相手にしても、わずか10秒で勝利を与えてやることなどは、舞の過去の闘いの中で一度もなかったのだ。

「ちぇ〜、なんだよ。現代格闘界のトップを走る、美しき女忍者だなんて絶賛されてるから、
私のスペックを本気で確かめられる最初の相手だと期待していたのに。
ご挨拶代わりのスパイラルを一発喰らっただけで脳震盪起こしてそのまま戦闘不能だなんて。」

ナガセの言うとおりであった。試合開始直後、予想を遥かに超えるスピードを誇るナガセに一瞬で間合いを詰められてしまい、
そのまま首の付け根付近に掴みかかられ、舞は空高く連れ去られた。投げ技から脱出する暇もなく空中で体の上下を反転させられ、
きりもみ状態で脳天から垂直に地面に叩きつけられてしまい、舞は撃沈したのである。
試合開始後、わずか10秒間での出来事であった。

「期待はずれもいいとこだね〜。これだから嫌いなんだ。
年上だっていう理由だけで、やたらとイバリたがる馬鹿な大人は。
年齢や外見だけで、相手の強さを分かったつもりになってナメてかかって、
すぐに私の足元に無様に転がるだよな。」

油断していなかったといえば嘘になる。確かにこの勝負、なめてかかっていた。
いや、正確には警戒心や慎重さが欠けていた。

舞が初めてKOFに参戦したのは17歳の時であったが、
その時から今日まで、舞は対戦相手との身体面でのハンディに何度も直面してきた。
幼い頃から忍者として、常人からは想像もつかないような鍛錬を積んできたとはいえ、
屈強な男性格闘家と比べれば小柄で非力な女性であるという事実は打ち消せない。

豊満で魅惑的な肢体を、露出度の高い官能的な紅の忍装束に包んで男共を惑わし、変幻自在の忍術と、圧倒的なスピードで敵を翻弄する。
男をモノともしないような高飛車な言動も、相手の冷静さを失わせるための演技に過ぎない部分が多い。
世界有数の格闘家となった現在でも、対戦相手との身体面のハンディをいかにカバーするか、舞は常に考えをめぐらせなければならない。

そんな舞にとって、ナガセは、ハンディを感じることなく戦いに臨むことが出来る珍しい対戦相手だった。
自分と同程度の小柄な体格、過去の格闘大会での実績を特段持たない無名選手であるという事実。
年齢も、舞より5歳以上は年下であろう。それにも関わらず、対戦前の挨拶で、年上の自分に対して敬意のかけらも示そうとしない不遜な態度。
これらの要素が、ナガセの実力に対する舞の判断力を鈍くしていたのかもしれない。

(あらあら、新人さんにありがちなパターンね。若さと経験不足がもたらす勘違い。
自分より強い奴が存在することを想像すら出来ない自惚れやさん。あたしも、KOFに初参加した頃はこんな感じだったけ。
あの時はローレンスやクラウザーに次元の違いを見せつけられた上にホントに怖くて恥ずかしい目にあった。
まぁ、あの時の悔しさがあるからこそ、今のあたしがあるんだけどね。この新人さんにも、ちょっとお仕置きが必要みたいね。
軽く実力の違いを見せてヘコましてやるんだから。)

ハンディを意識することなく対戦できる格下の相手。皮肉なことに、普段多くの男性格闘家たちが舞に対して抱くのと同種の油断を、
この時の舞はしていたのである。


63名無しさん :06/05/19 18:29 ID:???
以上、とりあえず導入部を投下しました。できるだけ早く完成するよう
にしますが、更新はやや不定期になるかも。
前回のVS望月流のSSの舞は、未熟さをプッシュしたかったので18〜19歳くらいの設定
で書いていましたが、今回は女性格闘家として成熟しつつある23〜24歳という設定で
書いています。

64名無しさん :06/05/19 20:14 ID:???
>>63
人違いでしたか、ごめんなさい。
続き期待してます。

65名無しさん :06/05/19 21:17 ID:???
>>63
MI2のナガセストーリーですね。
今回は舞がかなりの実力者として書かれているのがいい感じ。
続き楽しみにしてます。

66リベンジマッチの挑戦料 3 :06/05/20 16:13 ID:???
「強豪選手、不知火舞の虚をついた、挑戦者ナガセの奇襲攻撃が奇跡的に成功した。」
格闘技の素人の目には、今回の試合結果はその程度にしか映らなかったであろう。
しかし、真相はそんな単純なものではない。

多少の油断があったとはいえ、不知火舞がたった一回の攻撃でKOされてしまうことは本来あり得ない。
そのことは、これまでに数多くの格闘家たちの必殺技をその身に受けてきた舞自身が一番よくわかっている。
試合開始と同時にナガセが舞に対して仕掛けた投げ技は、尋常な技ではなかったのだ。

ナガセの足元に崩れ落ちている舞の口から、驚嘆の声が発せられる。
「今の技は、まさか・・・・伊賀流?あなた、一体何者なの!!?」

伊賀流忍法。戦国時代から江戸時代にかけて、徳川家の覇道を陰から支えた伊賀忍者達が
戦闘の中で駆使していた忍術系統である。

伊賀流を究極の殺人術として完成させたのは、伊賀忍軍最強の棟梁である服部半蔵であり、
彼はこの忍術を駆使して徳川家に仇なす者達をことごとく闇に葬り去ったという。
鬼や魔人すらも封滅するその超人的な強さは、派閥や流派を問わず全ての忍者にとって憧憬の対象であった。

半蔵の活躍は、公儀隠密にして天下無双の剣豪でもあった柳生十兵衛の逸話と共に、現在にまで語り継がれている。
伊賀とは他流派である不知火流忍者の末裔である不知火舞も、師である祖父から服部半蔵の伝説を聞かされて育った。

だが、時代を超えて語り継がれる半蔵の逸話とは対照的に、
殺人術としての伊賀流忍法は明治以降の時代変遷と共に少しずつ失われ、
実戦レベルでこれを習得している継承者は現存しないはずである。
「忍法 爆炎龍」や「モズ落し」といった絶技の数々は、伝説の中で服部半蔵が駆使するだけの、幻の技だったのである。

そんな幻の技「モズ落し」に瓜二つの技を、今自分を見下ろしている少女は放ったのだ。舞が驚愕するのも当然であった。
「ねぇ、教えて。あなたは一体・・・・?」
相手が年下の少女であることも忘れ、懇願するような眼でナガセを見上げる。

舞が自分の技の凄さに気づいたことを知り、得意気な表情になるナガセ。
しかし、元来意地悪な性分の彼女は、舞の問いかけを一蹴する。

「お前、忍に素性を尋ねるなんて、ひじょーしき過ぎるし。
闇に生まれて闇に生きるのが忍の定めっていうか・・・。まっ、私には関係ないんだけどさ。」

チッチッと言わんばかりに右手の人差し指を突き立てるポーズをとると、ナガセは舞に背を向けて試合会場から立ち去ろうとする。


67リベンジマッチの挑戦料 4 :06/05/20 16:25 ID:???
「まっ・・・待ちなさいよ!!!私はまだ・・・・!!」
慌ててナガセを引き留めようとする舞。
(私はまだ戦える!!)今回こそはと、本気で優勝を狙って参加したKOF。
たかだが準々決勝で年下の新人選手に敗れ、その相手にあろうことか忍者の心得まで説教されてしまうとは。
昔よりは幾分大人になったとはいえ、依然勝気で負けず嫌いの彼女にとっては、この上ない屈辱である。

審判にKO判定を下されてしまった以上、試合結果を覆すことはできない。
だが、このまま敗者として大会会場を立ち去ったのでは、日本にいるアンディに会わせる顔がない。
自分の本領はまだまだこんなものではないのだ。

舞の呼びかけに、足を止めるナガセだが、まだ背中を向けたままである。
呆れたようなため息をつきながら、背中越しに言い放つ。

「あーらら。そんなOTLしたまま立ち上がれないような奴が無理しちゃって。
『私はまだ戦える』とでも言いたいわけー?
でも私、弱さが伝染しそうだからあんまよわっちー相手と戦いたくないんだよねー。」

このナガセの一言で、それまで何とか保たれていた舞の平常心は完全に吹き飛んでしまう。
「なっ!?何ですって!!このっ・・・言わせておけば・・・・!!」

もう許さない。生意気盛りの年頃のようだから少しは大目に見てきたつもりだが、どこまで相手をコケにすれば気が済むのか。
(何が何でもこっちを振り向かせてやるわ。少しのケガは覚悟しなさい。)
脳天から地面に叩きつけられた時のダメージで、まだ立ち上がることはできないが、この距離ならば花蝶扇の射程圏内である。
胸元から静かに扇子を取り出し、手裏剣のように投げつける。

「花蝶扇!!」
舞の手元から放たれた扇子は放物線を描き、ナガセの後頭部めがけて飛んでいく。
舞に背中を向けているナガセからは、扇子の軌道は完全な死角となっている。
たかが扇子と侮るなかれ、直撃すればタダでは済まない。しかし・・・・・。

「えっ!!?」
ナガセの後頭部を強打するはずの扇子は誰もいない宙を斬り、そのまま地面に落下した。
いつの間にかナガセの姿が消えている。そんなはずはない。舞の視線はずっと彼女の姿を捉えていたのだ。

その時、舞は自分の背中になにか重いものが載っていることに気がついた。否、それはものではなく人であった。
いつの間にか舞の背中にナガセが跨っていたのである。
瞬間移動をしたのか、それとも幻覚の類か。実態は掴めないが、攻撃を察知したナガセは、気づかれることなく舞の背中にまで移動していたのである。

「にゃははー。ニンニン!!な〜んてねっ。そんなに恥の上塗りがしたいようなら手伝ってやるよ。」
舞の背中に馬乗りに跨っていたナガセは、舞の尻の方向に向き直ると、真紅のTバックからはみ出す巨大な桃のような尻に、ビンタの嵐を叩き込んだ。
ドラマーがビートを刻むかのような連続攻撃である。

「きゃあああっ!!?」
舞の甲高い悲鳴は、痛みというよりも、予想外の攻撃方法に対する驚きと恥ずかしさに因るものであった。

「そらっ!!」
ビンタの嵐が終わり、ナガセは舞の背中から飛び降りながら、左右の拳を一つに組み合わせ、
バレーボールのレシーブの要領で舞の体を自分の後方に弾き飛ばした。

舞の体は試合用のリングの境界線を越え、場外に植えられた芝生に溝を掘りながら10mほど吹き飛んだ。
またも、うつ伏せ状態のまま地面に沈められてしまったのだ。
無数のビンタを受けた舞の尻は、真っ赤に腫れ上がっている。
負け惜しみ的な反撃をあっさりと破られた上に、世界中から集まった観客や報道陣の眼前で尻叩きをされてしまい、
リングアウトのおまけつき。ナガセの宣言通り、この上ない恥の上塗りである。

「ざまぁないね、不知火流。悔しかったらもうちょい腕磨けば〜?リベンジ上等、いつでも受けて立つってね。」
ナガセはリングの中央に一枚のカードを残すと、試合会場から去っていった。

リングの場外に取り残された不知火舞は、ナガセの最初の一撃による脳震盪が回復した後も、
あまりの屈辱と怒りに、しばらくの間立ち上がることすらできなかった。

68名無しさん :06/05/20 16:37 ID:???
とりあえず、ここまでが前半です。多少アレンジを加えつつ、MMIUのナガセストーリー
に忠実に書いてみました。
後半は、ゲーム内のこの後の展開は完全に無視した展開で書いていくつもりです。

69名無しさん :06/05/20 16:49 ID:s.8KpWY2
>>68
ないす!

70名無しさん :06/05/20 17:49 ID:ians9kas
>>68
グッジョッ!今後の展開に期待しておりまつ!
舞もよい歳頃ですね,よければ脂の乗った腹に重い一撃を喰らわせ胃液を垂れ流し悶絶…というシチュなどをお願いいたします

71削除 :削除
削除

72名無しさん :06/05/20 18:32 ID:???
>>68
後半も楽しみにしてます。

73リベンジマッチの挑戦料 5 :06/05/21 14:38 ID:???
KOFの準々決勝で不知火舞を倒した三日後、ナガセは東京・秋葉原のネットカフェにいた。
次の試合である準決勝が行われまで、一週間の休養期間があったからだ。
自前のモバイルPCに向かい合っているナガセの口から、驚嘆の溜息が漏れる。

「うわー、すっげー。昨日よりもさらにアクセス数が増えてるよ。」
ナガセの趣味はBLOGである。優勝候補の一人とされていた不知火舞を打ち破ったことで、
一躍世間の注目を集めた彼女のBLOGの訪問者数は、うなぎ上りに増加していた。

敗者である舞に対して罰ゲーム感覚で行った尻叩きの制裁の様子を、動画として今朝UPしたところ、
世界中からアクセスが殺到したのである。先程も、BLOGにUPされた動画を食い入るように見る青年を街中で見かけた。
どう見ても、格闘技経験者や格闘技ファンには見えない冴えない男であった。

「ほ〜んとウンザリするね。世の中には馬鹿な奴らが多くて。
あんなくだらない動画にハイエナみたいに群がるなんて絶対どうかしてるよ。
まっ、BLOGの人気が上がること自体は嬉しいことだけどさ。」

その時、PCの画面に電子メール着信を告げるメッセージが表示された。
「んっ?なんだなんだ?」
慣れた手つきでキーボードを叩き、電子メールの受信ボックスをチェックする。
新着メールの件名は「果たし状」となっており、差出人名には「不知火舞」と書かれていた。

メールの内容を一読したナガセはニヤリと笑い、すぐに返信メールを打ち始める。
「リベンジ上等。ギッタギタに返り討ちにしてやるよ。」


不知火舞がナガセとの再戦の舞台として指定してきたのは、「黄泉が原」と呼ばれる古戦場跡地であった。
電車やバスを乗り継いで行くには、あまりにも不便な場所である。
仕方なくナガセは彼女が所属する秘密組織「ベルフェゴール」の輸送班に協力を要請することにした。
組織に対する忠誠心を全く持たないナガセにとって、組織の手を借りるのはあまり乗り気のすることではないのである。


翌日。舞が指定してきた時刻ちょうどに、ナガセは「黄泉が原」の上空にいた。組織が用意したヘリの窓から、眼下に広がる風景を珍しそうに眺める。
「へ〜、なかなか気の利いたロケーションを選んできたじゃん。忍同士が『死合う』にはもってこいの場所かもねー。」

「黄泉が原」。遠い昔、この地で世の乱れを嘆き江戸幕府に対して反旗を翻した武人の軍勢と徳川軍が一大決戦を繰り広げたという伝承が存在するが、
真偽は定かでない。
日本中が開発され尽くしたかのように思える現代においても、この荒地付近に住む者は存在せず、
巨大な岩や樹木や雑草やらが秩序なく広大な土地を埋め尽くしている。

ヘリに搭載されたレーダーは、不知火舞がすでに決闘の場所に到着していることを告げていた。
ナガセは、操縦席に座る黒服の男に声をかける。
「ご苦労さん。ここからは自力で行けるよ。パパッと片付けて帰ってくるから、それまでお前はテキトーに時間潰しといて。」

黒服の男は、出動しようとするナガセに対し組織からの連絡事項を伝える。
「開発部からの連絡です。『草試合とはいえ、今回の勝負はあなたのスペックを試す絶好の機会。
一部始終をモニタリングさせてもらう。
また、対戦相手の戦闘能力がバトルディスクシステムの追加データに値するものであれば、
今後のサンプルとして対戦相手を捕縛せよ。なおその際、対戦相手の生死は問わない。』以上です。」

「たまに口を開いたと思ったら、しゃべるのは組織からの連絡事項だけかよ〜。無愛想な奴。
じゃっ、行ってくるね。」
そう言うとナガセはヘリの扉を開け、眼下に広がる「黄泉が原」に向かって飛び降りていった。


74リベンジマッチの挑戦料 6 :06/05/21 14:46 ID:???
ついさっきまで、遥か下の方に広がっていた大地がグングンと近づいてくる。パラシュートなどは必要ない。
組織の科学力によって超人レベルにまで改造強化された肉体を持つナガセは、クルクルと宙返りをしながら華麗に着地した。
下で待ち受けていた不知火舞との距離はジャスト5メートル。目標到達地点から寸分の狂いもない。
「お待たせ〜。不知火流。」

「あらあら。随分と派手なご登場ね。それにヘリの送迎つきだなんて贅沢ですこと。」
不知火舞の戦闘衣装は前回と同じく、着物と水着を融合させたような露出度全開の紅い忍装束である。

「ひょっとして、アイツらのことが気になる〜?」
アイツらとは、もちろんナガセが所属する組織の人間のことである。

「いいえ、別に。前回のあたしの質問は確かに忍として愚問だったわ。
あなたが何者であるかなんて関係ない。あたしはただ、あなたから受けた屈辱を晴らしたいだけ。
あなたの方こそ気にならなかった?どうしてあたしが、再戦の場所としてここを指定してきたかのか?」

「ぜ〜んぜん。ココが幼少の頃からお前の修行場で、
お前にとっては地の利を取りやすいホームグラウンドみたいなものだって言いたいんだろ?
まぁ私も実際にこの景色を見たら結構気に入ったけどね。忍同士の闘いに相応しい場所だと思うよ。」

KOFで対戦する相手のプロフィールについては、試合前に組織からデータディスクとして受け取っている。
ナガセの頭脳には、舞の生い立ちや、過去の格闘大会での対戦成績、格闘スタイルの概要、スリーサイズなど、
舞に関する様々な情報がインプットされているのだ。

対戦前に少しでもナガセの動揺を誘おうとした出鼻をくじかれ、舞の表情が僅かに曇る。
「あ・・・あら、知っていたの?なら尚更不安なんじゃなくて?この地形を利用した戦略をとることがあたしには可能だし、
それにこの土地にあたしは既に罠を仕掛けているかもしれないわよ。」

「ハッタリならもっと上手にやりなよ。お前に戦略やら罠やらを駆使できるような頭脳があるとは思えないし。
本来なら挑戦者のお前が私の方に出向いてくるのが礼儀ってもんだけど、
馬鹿な大人を教育するためにはこっちの方が有効だと思って、わざわざお前の指示通りに来てやったの。」

僅かに曇る程度だった舞の表情が、さらに険しいものになる。
「教育ですって?どういう意味かしら?」

「そう、教育。リベンジ上等ってことで私のアドレスを書いた名刺を残してやったけど、
まさかたったの三日で勝負を挑んでくるなんてね〜。自分のホームグラウンドでなおボロ負けすれば、
いくら頭が悪くたって理解できるだろ?もっともっと腕を磨かなきゃー私には勝てないってことが。」

「相変わらず礼儀を知らないガキね。今度はあなたが恥をかく番よ。私の本気を見せてあげる。
この前みたいにはいかせないんだから。」
胸元から扇子を取り出し、戦闘態勢に入る不知火舞。

ナガセもファイティングポーズを取って応戦する。
「そんな不可能なことを宣言しちゃったら、また後悔することになるよ。
お前はそのガキに返り討ちにされるんだから。」

不知火舞とナガセ、共に忍術を操る女性格闘家同士の闘いの火蓋が再び切って落とされた。


75名無しさん :06/05/21 14:51 ID:???
前置きが長くてスイマセン。口喧嘩の巧さで舞を上回るナガセというのが好きで、
つい文章が長くなってしまいます。個人的に、闘いに至るまでのプロセスを詳しく書いた
方が妄想が膨らむタイプなのでご容赦下さい。

次回からはようやくガチンコバトルです。

76名無しさん :06/05/21 17:12 ID:???
>>75
前置き、いい感じに盛り上がってますよ。
これからどうなってしまうのかドキドキします。
でもここまでやられちゃうと舞にもけっこう頑張って欲しいかも。

77名無しさん :06/05/22 23:33 ID:???
それにしても書きながら順次投稿できるってすごいなって思う。

出だし〜半分くらいまで書いて、オチまで決まってても
なんとなく気が乗らくて長期放置してるSSが山積みだぜ!

ちゃんと書き出し〜終わりまでペース保って書くコツとかあったら教えてくだせえ!

78リベンジマッチの挑戦料 7 :06/05/23 12:14 ID:???
先手を取ったのは今回もナガセであった。
「ピョコピョコファイヤー!!!」
ナガセが掌を当てた地面から紅蓮の炎が上がり、バウンドしながら舞の体に迫っていく。

子供じみた名前をつけているようだが、その技は紛れもなく伊賀流忍法「爆炎龍」。
技を放つのと同時に、ナガセは炎の龍を追いかけるように舞めがけてダッシュする。

舞が「花蝶扇」で炎を相殺するようであれば、技後の隙をついて攻撃を加える。
もしも守りを固めるようであれば、一気に懐まで飛び込んで「モズ落し」の餌食にする。
技を受ける側にとってはどちらを選んでも痛い二択である。

しかし、舞が実際に選んだ行動はそのどちらでもなかった。
「ハイィッ!!!」
眼前まで迫った炎の龍に対し、舞は左手に持った扇子を裂帛の気合と共に振り下ろす。
不知火流・小夜千鳥。
大きな弧を描くように振り下ろされた扇子の斬撃は、「爆炎龍」の炎をかき消すのと同時に、
炎のすぐ後ろを走ってきたナガセ本体をも、その射程圏内にとらえている。

「あれ、バレた?」
少し甘く見過ぎていたかもしれない。不知火舞は二択攻撃を見抜いていた。
ナガセは自らの足にブレーキをかけ、そのままバックステップで舞の攻撃圏内から脱出する。

「逃がさないっ!!」
小夜千鳥を避けられたとはいえ、攻守は逆転した。
舞は胸元からもう一本扇子を取り出し、後退するナガセに対して踏み込んでいく。

舞の反撃から逃れるために、ナガセは大地を蹴ってジャンプする。
だが、舞がこれから仕掛けようとしている大技にとってはかえって都合がいい。

「とぉおおおおっ!!!!」
両手の扇子を振り回し、竜巻のように回転しながら舞は跳躍する。
不知火流奥義・花嵐。
ナガセは空中で腕を交差させ、二本の扇子による乱打をガードする。

敵の大技に耐えたナガセに、再びチャンスが巡ってくる。
「シューティングカッター!!」
懐から取り出した手裏剣を、空中で向かい合う形となった不知火舞に対して投げつける。
飛来する手裏剣を、舞は右手の扇子で横に弾く。そこに生じる僅かな隙をついて、蹴りを放つナガセ。

「くぅっ!?」
残りの左腕だけでは、ナガセの蹴りを防ぎきれなかった。
左腕がビリビリと痺れ、ガードを崩された舞であったが、なんとか地上に着地することができた。
攻撃を放ったナガセも、蹴りの反動を利用して舞との距離を離しながら、地上に降り立った。

勝負開始前と同じくらいの距離を隔てて、舞とナガセは再び対峙する。
「少しは見直したよ、不知火流。なかなかいい動きしてるじゃん。」

「あなたもね。だけど、その余裕もすぐに消してあげる。不知火流忍術の真髄はここからなんだから。」
手にした扇子をナガセにピッと向ける。その動作に連れられて、美しく豊満な舞の乳房が装束越しにプルルンと揺れた。
初心な男が見れば目のやり場に困ってしまうような光景であるが、女であるナガセは意にも介さない。

「ところでさ〜。お前はこの勝負に何を賭けて臨んでいるの?」
「えっ?」
舞にはナガセの言っている意味がよく分からない。

「ほら、ギャンブルだとゲームに挑戦するためにはお金やチップを賭けなきゃいけないだろ?
それと同じ。得るものや失うものがないまま闘いを続けたってスリルに欠けるしさ〜。
もし、お前が私に勝ったらKOF準決勝の出場権を譲ってやるよ。」

「あらっ、随分と気前がいいのね。あなたにこの前の借りを返してやるつもりだったけど、
今すぐ出場権を譲ってくれるんなら、見逃してあげてもいいわよ。」

「人の話は最後までちゃんと聞けよ。譲ってやるのは私に勝てた場合だけ。
それに、挑戦者の立場のお前には、もっと大事なものを賭けてもらうよ。
う〜ん、そうだな・・・・・。
もしお前が今回も私に負けた場合、お前の命をもらうね。」

ナガセは右手の親指と人差し指でピストルの形を作り、舞の左胸を指差した。

それを聞いた舞は、少し怒ったような表情をしてナガセに応える。
「なかなか笑えない冗談を言う子ね、まったく。あんまり大人をからかうもんじゃないわよ。」

「あはっ、バレた〜?でもね、不知火流、リベンジマッチを申し出てきておいて今度も私に敵わなかったその時は、
尻叩きくらいじゃ済まされないってことだけは覚えておいた方がいいよ。」

そう言うと、ナガセは背中に装備した二本の棒に手をかける。
赤と黒、二本の棒に仕込まれた中身をスラリと抜き放ち、左右の手に構える。
鈍く、冷たい光を放つそれは忍者刀を思わせる銀色の短刀であった。


79リベンジマッチの挑戦料 8 :06/05/23 12:39 ID:???
「行くよ、不知火流!!」
言った瞬間、ナガセの姿が舞の目の前で忽然と消え去った。ナガセが刃物を持ち出してきたため、警戒心をより強めて舞は身構える。
戦闘再開である。

舞は四方を見渡すが、広大な荒地にナガセの姿は全く見当たらない。
どうやらKOF準々決勝の時と同じ様に、伊賀流忍法で姿を消しているようだ。
忍術を操る敵を相手に、視覚に頼りすぎるのは危険である。舞は目を閉じて心を静め、周囲の気配を察知しようとする。

ナガセが狙ってくるのは恐らく、万人にとって死角となり易い足元か頭上のはずだ。
警戒すべきポイントを絞ることで、さらに感覚を研ぎ澄ます。

(分かった!下だわ!)「はぁっ!」
大きく後方に跳躍した直後、今の今まで自分が立っていた足元の土が大きく盛り上がり、両手に短刀を持ったナガセが地表に飛び出してきた。
跳び上がるのが少しでも遅れていれば、間違いなく足首をやられていた。

空中に逃れた舞は、自分の背後に生えていた松の木の幹を両足で蹴り、回避動作を即座に攻撃に切り替える。
「ムササビの舞!!」
上空から斜め一直線に飛び、地上のナガセに襲い掛かる。

「うわぁっ!?」
空からの奇襲に、ナガセの口から悲鳴のような声が漏らされる。
だが、頭から体当たりを食らわせた舞は、不気味なほど手応えがないことに気がついた。
案の上、攻撃を喰らってのけぞっていたナガセの体が一本の丸太にすり替わる
(空蝉の術ね。なら本物は・・・・)

今度は目をつぶらずに、その場で印を結び気を練り上げる。その舞の頭上3メートル位の空中に、ナガセが姿を現した。
(今だわ!)「陽炎の舞!!」
術を発動した舞の体の周辺に、紅蓮の火柱が天を衝くように立ち上がる。
真上から斬りかかってくるナガセを迎撃するには、完璧なタイミングである。

「やばっ!?」
空中のナガセの表情から初めて余裕が消える。瞬時に攻撃を中断して二本の短刀を背中に収め、防御体勢を取った彼女の反応速度は流石といえよう。
体を炎に包まれながらもそのまま真下に飛び降り、足元から上ってくる火柱が消滅するまでひたすらガードを固める。
組織から支給された黄色の戦闘服には極めて高い耐熱性と耐火性が備わっているため、こうすれば致命傷を受けることはない。

火柱がようやく消滅し、ガードを解いた瞬間、目の前から舞の拳が伸びてきた。
炎の壁を一枚隔てたすぐ向こうに、舞は潜んでいたのだ。ナガセは完全に虚をつかれた。

「とぅっ!!ハイッ!!」
舞は今度こそナガセの隙をつくことに成功した。続けざまに放った右フックと左フックは、ナガセの頬に見事に命中した。
「タァッ!!」
そのまま後ろに宙返りし、両足でナガセの顎を蹴り上げる。「飛翔龍炎陣」。
腰から垂れ下がる尻尾の先端に炎が灯り、ナガセの体を縦に薙ぐ。

「あ痛っ!」
ナガセが背中から地面に倒れこむのと同時に、斜め前方に背面跳びをする。
「山桃桜!!」
舞はサイズ90の大きな尻を下につき出すような姿勢で、起き上がろうとするナガセにのしかかる。
要は空中からのヒップアタックである。

「げげっ!?」
舞の尻に顔面を強打され、そのまま下敷きにされてしまうナガセ。
舞はナガセの顔から腰を上げると、扇子で口元を隠しながら高飛車に言い放つ。
「あら、痛かったかしら?ごめんあそばせ、お嬢ちゃん。」



80リベンジマッチの挑戦料 9 :06/05/23 12:44 ID:???
情けない声を出しながら、ナガセが起き上がってくる。
「イテテテテ・・・・。なんなんだよ〜、無駄にデカイ乳やケツを振り回しやがって〜。普通あんな攻撃やるかぁ?」

「ホホホホホ。女の色香は男の忍者には決して真似できない、くのいちの強力な武器なのよ。
あなたもくのいちなら、もうちょっと色香を磨かないとね。」

舞の挑発に対し、ナガセはむっとした表情になる。
どうやら、女としての色気に欠けていることは、ナガセにとって多少なりのコンプレックスになっているようだ。
「遠慮しとく。お前みたいな淫乱女にはなりたくないし。私が子供だからって、馬鹿にすんなよ。」

再び背中から二本の短刀を抜刀し、ナガセが舞に斬りかかる。
右薙ぎ、左薙ぎ、回転斬り、回転斬り・・・・・。

ナガセの斬撃を巧みにかわしながら、舞は心の中で思っていた。
(なかなか可愛いところあるじゃない。)
ナガセはやはり、子供であった。身体能力の高さは尋常ではない。優秀な技も持っている。

失われたはずの伊賀流忍法といい、二本の小太刀の太刀捌きといい、実に見事なものだ。
いずれも、彼女くらいの年頃の少女格闘家がおおよそ習得できるようなものではない高度な技ばかりである。

だが、技の使い方が全て教科書的、機械的であり、相手の特性や状況に応じた使い方がまだできていない。
自らの技の使い方を見極め、応用発展させるのは実戦経験によってのみ培われる。ナガセにはそれが不足している。
それ故に、舞にとってつけ入る隙は十分に存在した。

逆にいえば、もしナガセがその身体能力や技をフル活用できる程に成長すれば、
今の舞が足元にも及ばないような恐るべき忍者が誕生するということになるのだが・・・。
また、経験の少ない子供だからこそ抱えるナガセの危険さに、まだ舞は気がついていなかった。


81名無しさん :06/05/23 12:54 ID:???
長文エラーがでてしまったので、8と9を分離させました。
今回の戦闘は長尺になりそうですが、もしよろしければ気長にお付き合い下さい。

>>77
私自身、アドバイスできるほどの者ではないですが、一度BBSに投下しはじめた
からには、たとえ駄作になりそうでも最後まで書き続けるよう、精一杯アホでちっぽけな
妄想を振り絞るように心がけてます。それでも、結構頓挫したりしますが。

82名無しさん :06/05/23 22:41 ID:???
>>81
GJ!
今の所舞優勢だけど、これからが楽しみですよ。

83リベンジマッチの挑戦料 10 :06/05/24 17:31 ID:???
横方向への斬撃を舞にかわされ続け、業を煮やしたナガセは逆手のまま突きを繰り出してきた。

「甘いわよっ!」
舞は突きが届かない距離を見極めながら、前方に踏み込むように右キックを放つ。
相手が武器を持っている以上、素手ではリーチに劣ってしまう。
だが、足を使えば短刀のリーチに打ち勝つことができる。

舞の右足がナガセの肩を打ち、ナガセの突進を食い止める。
続けて左キックを叩き込んでナガセの体勢を崩し、側転しながら一気に彼女の懐に飛び込む。
「必殺忍蜂!!」

舞の全体重を乗せた肘打ちを受け、小柄なナガセの体はゴロゴロと転がりながら吹き飛んだ。
もはやこの勝負の主導権は、完全に舞が握っているように思えた。
(このまま一気に追い詰める!!)

今の一撃で距離が離れてしまったナガセに向かって舞は駆け出した。
舞の前方で、立ち上がったナガセが今までにない真剣な表情をして二刀を構えている。
左右それぞれ逆手に短刀を持ち、刀の柄と柄を合わせて腕を前に真っ直ぐに伸ばしている。

(見たことのない構えね。でも関係ない。)
ナガセの刀が届かない間合いから攻撃をしかければ、なんの問題もないはずである。
舞はクルリと回転しながら、彼女の十八番の技を発動した。

「龍炎舞!!!」
腰から垂れ下がる、尻尾のような帯の先端に取り付けた漆塗りの水晶が光輝き、紅蓮の炎が灯る。
不知火流正系統者のみが扱うことのできる秘術「不知火の焔」。
それを応用した火炎系忍術の中でも、舞がもっとも得意とするのがこの「龍炎舞」である。
炎を纏った腰帯は、さながら獰猛な龍が顎で獲物に噛み付くように、ナガセの体を焼き焦がす・・・・・・・・・はずであった。

しかし、「龍炎舞」の炎はナガセの鼻先をかすめただけで空振りしてしまう。
ナガセは、初見の技であるはずの「龍炎舞」の射程距離をミリ単位で瞬時に見切り、最小限の動作でこれを回避したのだ。
後退しながらもナガセは懐から一本のクナイを取り出し、まだ龍炎舞の動作中の舞に投げつける。
どんな一流の格闘家であっても、技の動作中や直後は無防備である。銀色のクナイは、舞の白い太ももに突き刺さった。

「くぅぅっ!?」
思わぬ反撃を受けた舞は、追撃を恐れてナガセとの間合いを離す。
左の太ももに刺さったクナイを抜き取り、地面に投げ捨てる。

超小型の刃物であるクナイによるものであるため、傷口は浅いし、大した出血もない。
だが、刺された左足になにか違和感がある。少しずつ、力が抜けていくかのような微かな脱力感が。
(まさか今のクナイに・・・)

「気がついた?そう、そのクナイには毒が塗ってあるの。でも心配しないでいいよ。死に至るような毒じゃないから。
ウチの開発部が発明した特殊な毒で、体力消耗を早めるだけ。卑怯とは言わせないよ。
忍同士の闘いで、相手の暗具や外法に気をつけないといけないのは常識なんだから。」

「そうね、卑怯だなんて言うつもりはないわ。それに、全身の力を奪われる前に決着を着ければなんの問題もないですしね。
龍炎舞は巧く避けたみたいだけど、あたしの奥の手も同じ様に避けられるかしら?」

体に毒を注入されてしまった以上、戦闘が長引けば不利である。回避不能の大技で、一気に勝負を決めなければなるまい。
舞は目を閉じて、気を溜めはじめた。


84リベンジマッチの挑戦料 11 :06/05/24 17:41 ID:???
同時刻、ナガセの所属組織「ベルフェゴール」の巨大研究施設にて。

「黄泉が原」から遥か遠く離れた土地に存在する研究施設の一室に、
不知火舞とナガセの闘いをモニター越しに熱心に観察する一人の男の姿があった。

「タイプNの奴め、ようやくスーパーカウンターモードを使う気になったか・・・。」
彼は、ナガセに改造強化手術を施した科学者の一人である。当然、彼はナガセの全てを知っている。

ナガセの真価は、その類稀なる「見切り」能力にある。
超人的な動体視力と「バトルディスクシステム」を併用することによって敵の攻撃を見切り、
弱点を発見し、必殺の一撃を叩き込む。これが彼女の必勝戦略だ。

ナガセには実戦経験が不足しているため、その身体能力や技をしばしば持て余してしまうという欠点がある。
その欠点を克服するために、組織の開発部はナガセの戦闘スタイルとして「スーパーカウンターモード」
(ナガセ自身は「お仕置きモード」と命名していた)をプログラムしておいたのだ。

自ら積極的に仕掛けていくのをやめて待ちに徹し、見切りと反撃の二動作のみに集中することで、
相手の特性や状況を踏まえた最適の行動が取れるようになる。
その「スーパーカウンターモード」が発動した以上、この勝負でナガセが敗北することはまずあるまい。

だが、相手の攻撃を待つスタイルは暗殺には向かない。
組織の上層部が要求している超一流の暗殺者を作るためには、
優れた判断力を持つ熟練の格闘家の戦闘スタイルをナガセに移植する必要があるだろう。

KOF準々決勝では大いに失望させられたが、あの不知火舞とかいう女、なかなかいい素材になるかもしれない・・・。
そんなことを考えながら、彼は不知火舞とナガセの闘いを見つめていた。

85リベンジマッチの挑戦料 12 :06/05/24 17:52 ID:???
「ハァァァァァァ・・・・・!!」
舞は闘気を最大レベルまで高め、全身に「不知火の焔」を纏う。
「超必殺忍蜂!!!!!」
不知火流忍術、最大奥義のひとつである。全身を炎の弾丸と化した舞は、光のような速さでナガセに突進する。

「必殺忍蜂」と同じモーションで繰り出される技だが、威力とスピードは比べ物にならない。
回避は不可能。たとえ防御したとしても、無傷では済まされない。
KOFクラスの格闘大会においても数える程しか使ったことがない、超大技である。

対するナガセは先程と同様、両腕を突き出しながら二本の短刀を構え、不動の姿勢をとって舞を待ち受けている。
先程この構えをとった時から、ナガセの戦闘スタイルが変化していることに舞はすでに気づいていた。
恐らく、あの構えには何か秘密があるのだろう。

それでも慎重策を取らずに舞が敢えて攻撃をしかけたのは、自身の最大奥義に絶対の自信を持っていたからである。
それは決して過信ではなく、長年の修行と実戦経験の中で舞が培ってきた確かな自信であり、熟練の格闘家としての誇りであった。

だが残酷にも、その自信と誇りは目の前の小悪魔のような少女によって、粉々に打ち砕かれることになる。
常人の域を遥かに超えるナガセの動体視力は、超高速で突進してくる舞の動きですらコマ送りで捉えていたし、
また、サングラス型のディスプレイは、科学的に徹底分析した「超必殺忍蜂」の弱点を鮮明に表示していた。

「回避、防御は極めて困難。ただし、ターゲットの体を覆う炎の4割は、威嚇を目的とした幻影。
炎の鎧が手薄な箇所を叩けば、十分に迎撃可能。」
技を放っている舞自身でさえ知らない、「超必殺忍蜂」の弱点であった。

炎を纏って突進してくる舞を十分に誘い込み、突き出された肘が自分に接触する直前、
ナガセは渾身の力を込めて右脚を天高く振り上げる。
鋭い蹴りは、炎が最も手薄となっている舞の胸元に深々と突き刺さった。

「ぐあっ!!?」
突如襲い掛かってきた激痛によって舞の集中力が乱され、体を覆っていた紅蓮の炎が消滅してしまう。

蹴りによって、舞の豊かな乳房がゴム鞠のようにグニャリと変形する。
ナガセの動体視力は、行き場がなくなる程に圧迫された舞の乳房がおかしな形になっている光景を映し出していたが、
彼女はなんのためらいもなくそのまま無慈悲に脚を振り抜いた。

「きゃああああっ!!!」

サッカーボールのように蹴り上げられ、舞の体が高々と空中に浮かび上がる。
地上にいたはずのナガセが瞬間移動で上空に現れ、舞の体を抱きしめる。
ナガセに捕らえられた舞は、そのまま「モズ落し」の餌食にされてしまった。

「クルクルクルクル〜。」
キリモミ回転させられながら垂直に落下し、頭から地面に叩きつけられる。

「あぁぁっ!!」
叩きつけられる瞬間、かろうじて受身のようなものを取ったお陰で、そのまま気絶といいう事態はなんとか避けることができた。
それでも激しい眩暈がし、頭がクラクラする。ナガセに蹴られた乳房もヒリヒリと痛む。
先程クナイで刺された左足からは少しずつ力が失われていく。


86リベンジマッチの挑戦料 13 :06/05/24 18:03 ID:???
(なっ・・なんて奴なの。あたしの「超必殺忍蜂」に完璧なタイミングでカウンターを合わせてくるなんて。)
絶対の自信を持っていた奥義を打ち破られたことで、舞の心は焦りはじめていた。
ナガセは既にカウンターの構えをとっている。ナガセの攻撃方法がカウンターである以上、こちらから仕掛けない限り反撃を受ける心配はない。
だが、毒によって徐々に体力を蝕まれている今の状況では、様子見に徹する訳にはいかない。

(なんとかして、あの構えを攻略しないと・・・。)
正面から接近戦を挑むのはリスクが高過ぎる。舞は胸元から次々に扇子を取り出し、それらを一斉に投げつけた。

「ひとつ、ふたつ、みっつ!!!」
火炎系忍術の応用で、飛んでいく扇子に炎を灯し、殺傷力を増大させる。
不知火流奥義「水鳥の舞」。炎を纏った三つの扇子は、それぞれが異なる軌道を描いてナガセに襲い掛かる。

「ハァッ!!」
大鷲が羽ばたくかのように、ナガセは左右の短刀を一閃させた。ナガセの足元に、真二つにされた扇子が三対、力なく落下する。
それだけではない。ナガセの斬撃の余波は、10メートル離れた位置から扇子を放った舞にまで届いていた。
紅い忍装束の胸元の布がハラリと斜め一文字に裂け、隠されていた二つの乳輪が露わになる。布の下の両乳房には、斜め一文字の赤い線がうっすらと引かれる。

(くっ、これでも駄目なの?しかも、あたしが使う技の特質を見極めた上で最適の対応を取ってくる。だけどそれなら・・・・。)

舞はナガセに向かって駆け出した。体内に打ち込まれた毒は、時間の経過と共に舞の体力を奪い続けているが、その脚力はまだそれ程衰えていない。
そのまま攻撃を加えずにナガセの頭上を跳び越える。彼女の背後に生えていた大樹の枝に掴まると、「ムササビの舞」の構えに移る。

この勝負の中で、「ムササビの舞」は既に一回使っている。ナガセの頭には当然、この技が記憶されているだろう。
それを逆に利用してやるのだ。カウンター攻撃は、タイミングを誤れば絶大な隙を生み出してしまう諸刃の剣である。
ならば、フェイントによってタイミングを崩してやればいい。

舞は斜め下ではなく、水平方向に跳んだ。
ナガセの頭上真上に達すると、腕を頭の後ろに組み、足をたたんで両膝を真下に向け、その体勢で落下しはじめる。
下から吹き上げる風圧で、忍装束の前掛けが真上にまくれ上がり、股間を包む真紅のショーツや、その上に位置するヘソまでもが丸見えの状態になる。
端から見ればなんともハレンチな格好であるが、これもれっきとした不知火流の技であり、その名も「浮羽」という。

舞の戦略は決して間違っていなかったが、不幸なことに彼女はナガセの戦闘能力がテクノロジーによるバックアップを受けていることを知らなかった。
ナガセが装備するプロテクターに内臓されたコンピュータに、フェイントなどは通用しない。


87リベンジマッチの挑戦料 14 :06/05/24 18:16 ID:???
「甘いね、不知火流。」
空から降りてくる舞を、ナガセは悠々と待ち受けていた。
その右拳に力を溜めて超人的な筋力をフル稼働させ、一撃必殺の正拳突きをいつでも放てる状態で。

「しまっ・・・・・!!?」
まんまと罠の中に舞い降りてしまった不知火舞が、その台詞を言い終わる暇もなかった。

ズドンッ!!!
むき出し状態だった無防備の腹に、ナガセの右拳が低く、重い音をたててめり込んだ。

「がはっ・・・・・・!!!!」
大砲の砲弾をぶち込まれたような衝撃を腹に受け、舞の体がくの字に折れ曲がる。
飛び出さんばかりに大きく見開かれた両目からは涙が溢れ出る。

「ぶぁ・・・あ・・・・あ・・・・」
苦しい。息が出来ない。両手で腹を押さえ込んだまま、ガクンと膝から崩れ落ちる。視界が霞む。

「う・・あ・・・・!?・・うぐっ!?・・・ぐぇぇぇ」
胃の中身が逆流し、口から吐瀉物がこぼれ出る。食道と気管に吐瀉物が詰り、たまらずむせ返る。

「げほげほっ・・・ぐっ・・・あ・・あ・・・」
ますます視界が霞む。まずい、意識が薄れてきた・・・。
なんとか耐えようとするが、グラリと体が傾き、
地面にこぼれた吐瀉物にキスするような形で前のめりに倒れ込んでしまう。

「ゲームオーバーだね、不知火流。」
ナガセの声が聞こえる。直後、後頭部を思いきり踏みつけられる。

「ぶっ!・・・」
薄れかけていた意識が痛みによって一瞬回復するが、今の一撃のせいで唇が切れてしまい、口の中に血が滲む。

さらにたちの悪いことに、強打した鼻からドクドクと鼻血が溢れる。
マズイ、全く息ができない。再び意識に霞がかかってくる。

なんとか起き上がろうと全身に力を込めようとするが、指先や体がピクピクと動くだけで、
うまく言うことを聞いてくれない。

(このあたしが、こんな子供なんかに・・・・・・)
そのまま、舞の意識は深い闇の中に沈んでいった。

88名無しさん :06/05/24 19:17 ID:???
アニメやゲームなら30秒くらいで終わりそうな戦闘描写が、
とんでもない長文になってしまいました。ひとえに私の技術不足のせいです。

前作「望月忍法帖」(いまさらですが、タイトルをつけました)では、
・まともに戦えばそこそこ強い小娘ヒロイン(舞)が、手練の老人忍者達が操る
 「対ヒロイン用の必殺技」の前に完全敗北を喫す。

・敵の魔の手に落ちたヒロインは拷問でボロボロにされ、ヒーロー(アンディ)の救援もないまま
 処刑されてしまう。

というコンセプトで、場面転換の早さを心がけて書きました。

それに対し、今回の「リベンジマッチの挑戦料」では、
・長年の修行の末、誰にも負けない強さを身につけたヒロイン(舞)が、
 科学の力でそれを上回る力を一瞬にして身につけた子供の前に屈してしまう。

というコンセプトの下、詳細な格闘描写に挑戦するという課題を自分に課しつつ
書いてみました。当初は、死闘の末、舞が壮絶な討ち死にを遂げる展開を考えて
いましたが、やはり新キャラごときに舞が葬られるのは後味が悪かろうと思ったので、ここでいったん
完結とさせて頂きます。

長文による連続カキコになってしまったこと、何卒ご容赦下さい。

89名無しさん :06/05/24 23:50 ID:???
>>88
完結乙です。
心理描写や状況の作り方が実に巧妙で良かったです。
一つ残念なのは舞が「リベンジマッチの挑戦料」を払ってない点ですかねー。もっとボロ雑巾のようにやられちゃってもよかったかなーと。
とはいえ前回ともどもお話がしっかりあって堪能させてもらいました。

90名無しさん :06/05/25 19:09 ID:???
>>89
感想ありがとうございます。そうなんですよね。
仰るとおり、まだ舞は「リベンジマッチの挑戦料」を払っていないんです。
この物語には、>>87の続きが存在します。ただ、ここに到達するまでに
予想以上の長文を要してしまったため、これ以上投下してもいいものかどうか迷っております。

個人的には、まだ舞をいたぶり足りないと思っているので続きを書きたいのですが、
読んでいる方々も疲れるでしょうし、すこし反応を待ちたいと思います。

91名無しさん :06/05/25 23:33 ID:???
>>90
スレ違いという訳でもないので、長文は問題ないと思いますよ。
むしろSS投下してくれるのはありがたい事ですので、続きがあるというのでしたら是非読みたいです。

9277 :06/05/25 23:48 ID:???
続きも頑張って下さい
それにしてもこれだけの分量かけるのはすごいですね





93リベンジマッチの挑戦料 15 :06/05/26 15:05 ID:???
それでも、意識を失った舞がわずか十数秒程で目を覚ますことができたのは、彼女が長年の修行より身につけた体力と精神力、
そしてなにより、今回のKOFに賭ける想いの強さのお陰であった。

テリーの背中を追いかけるあまり、激しいスランプに陥っているアンディの目を覚まさせてやりたい。
テリーのことしか眼中にない彼の心に、もっと自分の存在を焼き付けてやりたい。
そのためには、今回のKOFでなんとしても優勝しなければならない。
準々決勝での僅かな油断が原因で閉ざされてしまったその道を取り戻すために、このナガセとの勝負で負ける訳にはいかないのだ。

鉄拳をぶち込まれた腹をおさえながら、舞はヨロリと立ち上がった。
「ハァ、ハァ、ハァ、・・・・・・・待ちなさい!」

背を向けて立ち去りかけていたナガセが驚いて振り向いてくる。
「げげっ!?あれを喰らって、まだ立ち上がってくる訳?お前、マジでしつこ過ぎ。」

「ハァ、ハァ、・・・・お生憎様。昔から格闘界で、あたしのしつこさは有名なの。屈強な男たちにどれだけ打ちのめされても、
何度でも立ち上がる。あたしはそうやって強くなってきたの。あれ位のパンチであたしを倒したなんて思わないでね。
まだ勝負はついていないわ。」

腹の痛みをこらえながら、舞は必死にファイティングポーズをとってみせる。

「あ〜うざいうざい。私、しつこい大人ってだいっきらいなんだよね〜。
もう立っているのがやっとの状態のくせに強がっちゃってさ。大人しく寝てろよ!!」

ムキになったナガセは、フラフラの舞にとどめを刺すべく、カウンターの構えを解いて自ら攻撃をしかけてくる。

94リベンジマッチの挑戦料 16 :06/05/26 15:10 ID:???
「えっ!?」
舞の目には、残像を残しながら迫ってくるナガセの姿が二人に分裂にしたように見えた。
事実、ナガセは伊賀流忍法を利用して二人に分身していた。
舞を挟み撃ちにする形で正面と背後から同時に乱舞攻撃をしかける。

ドドンッ!
「うぐっ!!?」
正面から放たれる掌底を腹に喰らわされ、背後の分身が放つ掌底が腰を打ってくる。
痛めている腹を両側から圧迫されてしまい、再び胃液が逆流しそうになる。

ズドドドドドドドドドドドド!!!
「あぁっ!?・・・かはっ!?・・・・・がはっ!?・・・・・がぁっ!・・・・・うげっ!?」
正面から交互に繰り出される左右の拳を次々に腹に打ち込まれ、背後からそれと全く同じ攻撃で腰を乱打される。
胃液とよだれを吐き散らしながら、舞は悶絶する。

拳の嵐に引き続いて、蹴りの嵐が今度は乳房と背中に叩き込まれる。
「きゃんっ!!あうっ!!あうっ!!あうっ!!きゃん!!ぐうっ!!きゃあっ!!ぐうっ!!」
短い悲鳴が何度も何度も、舞の口から漏れてくる。

バキッ!!
両側から繰り出されたサマーソルトによって顎と後頭部を同時に蹴り上げられ、舞の体が宙に浮く。
舞を挟み撃ちにしていた二人のナガセは、乱舞攻撃の仕上げとして、同時に怪鳥蹴りを放った。

「きゃああああああああああああああああああ!!!!!」

命中すれば人の体を遥か彼方まで吹き飛ばす威力の怪鳥蹴りが、二発同時に、左右対称の軌道で放たれたのだ。
二人のナガセがすれ違う交差点に位置していた舞が受けたダメージは計り知れない。

舞の体はグルグルと回転ながら真上に吹き飛び、受身もとれずにドサリと地面に落下する。
着地したナガセは分身状態のまま、間髪入れずに追撃の「爆炎龍」を放つ。
二匹の炎の龍は、仰向けに倒れている舞の体を容赦なく飲み込んだ。

体を炎に包まれ、火達磨になってもがき苦しむ舞の両手が、何かを掴もうとするかのように苦しげに宙を泳ぐが、
すぐに力を失いパタリと地面に落ちる。

95リベンジマッチの挑戦料 17 :06/05/26 15:16 ID:???
「はぁ、はぁ、・・・・・いくらなんでもこれで今度こそ終わりだろ。」
分身の術を解除したナガセの息が上がっている。「ミラージュアッサルト」。
分身しながら、怒涛のラッシュを仕掛けるこの大技は、ナガセにとっても体力消耗の激しい技である。
万が一、お仕置きモードによるカウンターで敵を仕留め切れなかった場合のとっておきである。

結果的に快勝できたとはいえ、持ち技のほとんどを使うハメになった。
ぱぱっと片付けられると思っていた不知火舞との再戦で、ここまで手を焼かされたことは、ナガセにとっては大きな誤算であった。
あまり認めたくはなかったが、本気を出した不知火舞は確かに強かった。組織からの命令通り、彼女の身柄を拘束する必要があるだろう。

開発部のマッドサイエンティストどもが不知火舞をどうするつもりなのか大体想像はつくが、同情するつもりはない。
彼女は自分に二度も敗れたのだ。リベンジマッチの挑戦料として、彼女には組織の生贄になってもらうとしよう。
そう思って舞に視線を向けたナガセは、信じられない光景を見た。
なんと、不知火舞が立ち上がっていたのだ。

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・・ぜぇ・・・・・。」
舞の呼吸は完全に乱れており、体はフラフラの状態である。
高い耐火性を誇る忍装束も、ところどころ焼け焦げてプスプスと黒い煙を立ち上げている。
時間的に、体内に注入された毒の効果ももう十分に表れているはずだ。

どう考えても、不知火舞の体力は限界に達していた。それでも舞は、立ち上がったのだ。
組織での模擬戦闘やKOFの緒戦などで、対戦相手をことごとく瞬殺してきたナガセの目には、
限界を超えても何度も立ち上がる舞の姿は幽霊のように不気味な存在として映った。

96リベンジマッチの挑戦料 18 :06/05/26 15:20 ID:???
追い詰められているのは自分のはずなのに、なぜか、舞の顔にはナガセのことを哀れむような表情が浮かんでいる。

「なんなんだよ・・・・・?なんなんだよ、なんなんだよ、なんなんだよぉっ!!!その目は!!!?」
ナガセの頭は混乱し、もはや逆上していた。

「あなた、可哀そうな子ね。闘いの経験が少ないせいで、まだ負けたことがないんでしょう?
一流の格闘家は何人も手玉にとってきているんだろうけど、自分よりも強い超一流の格闘家と闘ったことがまだない。
自分は誰よりも強いと思いながら、その一方で自分よりも強い相手が存在することに心のどこかで気がついている。
いつか自分が負けるんじゃないかとビクビクしている。あなたの攻撃からは、負けることに対する恐怖しか伝わってこないわ。
昔のあたしもそうだった。だからこそ分かるの。あなたは今日、ここであたしに負けるべきなのよ。
一度でも敗北を味わえば、負けることの恐怖は消え、代わりに勝利に対する執念が新しく生まれる。
あなたも、もっと前向きに闘いを楽しめるようになるから。」

「偉そうに説教すんじゃねー!!お前は私に負けるんだ。私みたいなガキを相手に負けるんだ!!とっととくたばれよ!!」

どこかとぼけた感じのする不遜な少女の口調はすっかり消えていた。ムカついた。本当にムカついた。
大人はみんなムカつくけど、目の前のこの女は別格だ。この女は私が一番気にしていることを口にした。
馬鹿な大人のくせに、人の心を見透かしたような顔をして、私のことを可哀そうだと言いやがった。
絶対にぶっ飛ばしてやる。ぶっ潰してやる。二度と立ち上がれなくさせてやる。


97リベンジマッチの挑戦料 19 :06/05/26 15:26 ID:???
ナガセは二本の短刀を抜刀して、舞に襲い掛かった。限界寸前の舞に、ナガセの素早い斬撃をかわしきれる筈はなかった。
斬った。斬りまくった。
舞の左上腕が切り裂かれ、傷口から血が滲み出した。右手首を覆っていた布製の手甲は真っ二つにされ、地面に落ちた。
左の肩口を狙った斬撃は、忍装束の薄布を切り裂きながら、その下の肉をも抉り、次の斬撃は舞の右頬を掠めて赤い線を引いた。

だが、致命傷を与えることができない。腹を刺そうとした突きは、舞が腰を捻ってきたために、脇下の肌を浅く切り裂くだけに終わった。
首筋を狙った回転斬りは、舞が下にしゃがんだために頭を掠め、彼女のポニーテルを結う白いリボンを斬り落とすだけに終わった。
舞のポニーテルがパサリとほどけ、美しい漆黒の長髪が下ろされた状態になる。

(決定打だけは喰らわないようにって訳かよ。チョコマカ動きやがって・・・・・)
ナガセの瞳が残酷な光を放つ。大きく踏み込みながら繰り出した左右同時の斬撃が、舞の両太ももを深く切り裂いた。
傷口から、赤い鮮血が霧のように吹き上がり、バランスを崩した舞の動きが硬直する。

「くたばれー!!」
ナガセは、二本の短刀を交差させ、舞の脳天めがけて振り下ろす。

実は、舞はこの瞬間を待ち続けていた。残り僅かの体力で形勢逆転を勝ち取れる手段はただ一つ。
カウンターである。胸元には、最後の一本の扇子を隠し持っている。
対戦相手が鈍器や刃物を持ち出してきた時のために用意しておいた、特注の鉄扇である。
他の扇子よりも一回り大きい鉄扇を胸元から居合いのように抜き出して、気合と共に振り上げる。

「はあっ!!!」
ガギィッ!!

舞の鉄扇は、火花を散らしながら、ナガセの二刀を真上に弾き飛ばした。
空中に弾き飛ばされた刀を掴み取ろうと、ナガセは必死に手を伸ばす。
そこに生じる決定的な隙を、舞は見逃さない。


98リベンジマッチの挑戦料 20 :06/05/26 15:39 ID:???
「もらったぁ!!!!」
舞は、残る全ての闘気を放出しながら跳躍し、放物線を描くように両足からナガセに突っ込む。
不知火流最終奥義「花吹雪」。
恋人、アンディ=ボガードの奥義である「超裂破弾」に酷似した技だが、それに加えて舞は全身に紅蓮の炎を纏っている。
これはいわば「超必殺忍蜂」と「超裂破弾」の融合技。

KOFで優勝するために舞が編み出し、つい最近ようやく習得したばかりの最後の切り札であった。
力加減を誤れば、対戦相手の命すら奪いかねないあまりの威力のため、できれば使いたくはなかった。

しかし、やむをえまい。このナガセという少女は精神的にあまりにも不安定過ぎる。
今この場で敗北の前向きな意味を教えてやらなければ、格闘家としてロクな成長をしないだろう。
その超人的な身体能力を、悪事に利用されるのオチである。

慌ててガードを固めようとしたナガセの腕をあっさりと弾き、舞はつき進む。
舞の両足からの超突進に巻き込まれ、ナガセの体がズルズルと後退していく。
「うっ・・・・うわっ・・・・・・・あっ・・・・・・・ああっ」
ナガセに確実にダメージを与えている。

「あ・・・・やだ・・・・負けたくない・・・・・負けたく・・・・・・」
あと少し、あと少しだ。あと少しで舞の勝利は決定する。

「熱い・・・・痛い・・・・うわあああああああああああ!!!」
悲鳴をあげるナガセの顔が苦痛によって激しく歪んでいる。

「あーーーーーーーーーー!!!」
(マズイ、力を入れ過ぎたかしら!!?このままだとこの子を殺してしまう。)

今必要なのはこの少女の暴走を止めることであり、この少女に大怪我を負わせたり、
ましてや命を奪ったりすることではない。
炎を纏って突進していた舞は、思わず力を緩めてしまった。


不知火舞が、最終奥義の威力をわずかに緩めた時、ナガセの体は条件反射的に動いていた。
馬鹿な大人になんか負けたくない。彼女の頭にはそれだけがあった。
未だに敗北を知らない子供だからこそ抱える、敗北に対する圧倒的な恐怖。
その恐怖に対する過剰なまでの防衛本能が、ナガセの体を突き動かしたのだ。
「このやろおおおおおおおおおお!!!」

無我夢中で拳を叩きつけた地面から、今まで見たこともないような激しい業火が立ち昇り、
超巨大な火柱となって舞の体を飲み込んだ。「陽炎の舞」や「龍炎舞」はもちろん、
「超必殺忍蜂」や「花吹雪」すらも遥かに上回る、激しい炎であった。

「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
勝利を目前にしていた女忍者の絶叫が、「黄泉が原」に響き渡る。



99名無しさん :06/05/26 15:53 ID:???
>>91-92
レスありがとうございます。途中までですが、続きを投下しました。
次回の投稿分で本当の完結を迎えられそうです。

ナガセに関しては、ゲーム通りのキャラのままだと
リョナ小説に不可欠な怖さや緊張感に欠けてしまうので、
・キレルとアブない子供
・善悪感情というものを持たない
・追い詰められると、どう化けるか分からない
というアレンジを加えてみました。

100リベンジマッチの挑戦料 21 :06/05/27 14:09 ID:???
巨大な火柱の中で、舞は激しい爆発にさらされていた。
最初の爆発によって、手にしていた鉄扇は粉微塵になった。
二度目の爆発によって、火炎系忍術の生命線とでもいうべき尻尾の先端の水晶球が、粉々に砕け散った。
そして、舞の足元から新しい火柱が立ち昇り、彼女に襲い掛かる。

巨大な龍の形をしたその火柱は、まるで意思を持っているかのようにスルスルと舞の体に巻きつくと、彼女の忍装束を一瞬で燃やし尽くした。
極めて高い耐火性を誇るはずの不知火流の忍装束が、油に浸した紙のように燃えてしまったのだ。
足元から火山噴火のように炎が噴き上がり、舞の体はそれに巻き込まれて空高く吹き飛ばされた。


ドサッ!!
地獄の業火のような火柱がようやく消滅し、舞の体は空から地面に落下する。
「ぐっ・・・・・ううう・・・・・・・・」
重度の火傷状態の全身はビリビリと麻痺し、どうあがいても立ち上がれそうもない。
身動きのとれない舞に、ナガセが近づいてくる。

ナガセは一種のトランス状態にあった。舞の最終奥義で極限まで追い詰められた彼女の精神と肉体は、自身の敗北の可能性を根絶するためだけに働いていた。
(まだだ。まだ気を緩めてはいけない。)自分の必殺技を何度食らっても、この女は立ち上がってきた。油断をしてはならない。
この女は何をしてくるか分からない。

(絶対に負けたくない。)そのためには、この女の反撃の芽を全て摘み取っておかなければならない。
この女の戦闘能力が、完全なゼロになるまで、徹底的に破壊しなければならない。二度と闘えないように。二度と立ち上がれないように。
そうしなければ、自分はこの女に負けてしまう。怖い。それだけは怖い。

(破壊する。)ナガセの両手からは、紫色の妖気のようなものが、禍々しく立ち昇っている。
「お願い。・・・・・・・・もうやめて。」
仰向けに倒れている舞が、懇願するような表情で呼びかけてくるが、ナガセはそれを無視する。
騙し討ちを受けたらたまったものじゃない。左右の手でそれぞれ手刀を作り、舞の両膝に振り下ろす。

グシャッ!!膝の皿が割れる確かな手応え。
「うがあああああああああああああ!!!!」
舞は獣のような絶叫をあげている。
(破壊する。)
悶絶している舞を無理やり立ち上がらせ、羽交い絞めにする。

「ぐぅ、ひっく、・・・・お願いだからやめてええええええ。」
あまりに痛みに、舞は涙を流しながら必死にイヤイヤをしてみせるが、ナガセは聞く耳を持たない。
妖気を帯びた指先を両肩に突き刺され、今度は鎖骨を破壊されてしまう。
「ぎゃああああああああああああああ!!!!!」

舞を羽交い絞めにしたまま、ナガセは大地を蹴って空高くジャンプする。半端な高さではない。
「モズ落し」を使う時よりも、ずっと高くまで跳んでいく。
ジャンプの頂点に達する直前に、舞の胸を背後から鷲?みにし、指先に渾身の力を込めて圧迫する。
(破壊する。)
グシャグシャボギィ!!
舞のアバラ骨が音をたてて砕け散る。
「!!!!!!!!!!!??」
もはや声にならない悲鳴があがり、舞の体がビクンビクンと痙攣する。

ナガセは舞を捕らえたままそのまま上下反転し、超高速で地上目掛けて急降下していく。
遥か下の地表はゴツゴツとした岩場になっている。
このまま下降を続ければ、舞の頭蓋骨を粉々にする、超特大の「モズ落し」が決まることになる。

「ゴボッ!!」
折れた肋骨が肺に刺さったのだろうか、舞の口から鮮血が止め処もなく溢れ出る。

地表の岩場までの距離がみるみる縮まっていく。50メートル、40メートル、30メートル・・・・・・。
自分の末路を悟ったらしく、不知火舞の口から弱弱しい呟きが漏らされる。
「あん・・・でぃ・・・・」

20メートル、10メートル・・・・・
「さようなら、不知火流。」

ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!

「黄泉が原」に、巨大隕石が落下したかのような凄まじい音が響き渡った。


101リベンジマッチの挑戦料 22 :06/05/27 14:15 ID:???
同時刻、「ベルフェゴール」の巨大研究施設の一室にて。

「素晴らしい!」
研究者の男は、目の前のモニターを見ながら思わず叫んでいた。
わずか一回の戦闘の中で、ナガセの能力が爆発的に進化するのを見届けたからだ。

日本各地に点在する古文書や文献を基に、服部半蔵の身体能力や技を再現し、N型強化人間を作り出したものの、
組織の科学力をもってしても解析、再現できない技がいくつか存在した。

地獄の業火を召喚して敵の装備を粉砕するという、伊賀流秘奥義「天魔覆滅」。
そして、紫色の妖気を纏った体術によって敵の体を完膚なきまでに完全破壊し、
絶対の死を与えるという禁断の絶命奥義「モズ砕き」。
その二つの奥義を、極限状態の中、ナガセは自力で習得したのだ。

そして男が何よりも喜んでいたのは、既に瀕死の状態だった不知火舞に、
ためらいもなく「モズ砕き」を喰らわせたナガセの無慈悲さであった。
N型強化人間の被験体として、ナガセのような年端もいかない少女を選んだのはやはり正解であった、と彼は思う。

彼女には、善悪感情というものが存在しない。戦いにはゲーム感覚で臨んでくれればいい。
自分がなぜ戦うのかなど、考える必要は全くない。暗殺者に余計な感情は不要。
大人だとなかなかそうはいかない。中途半端な倫理観や自身の美学などが、しばしば任務の妨げとなる。

ナガセは必ずや、立派な暗殺者として組織のために働いてくれることだろう。
犠牲者第一号となってしまった不知火舞には、心から追悼の意を表しつつ、今後は我々の研究材料になってもらうことにしよう。
彼女が操っていた炎の技や、経験に裏づけされた優れた判断能力は、ナガセのさらなる改造強化に大いに役立ってくれることだろう。
あの女の遺体はなんとしてでも回収させなければなるまい。

研究者の男は、部屋に置いてある無線機に手を伸ばした。
彼が目を離したモニターは、天を焦がすかのような巨大な火柱が、再び「黄泉が原」の台地に上る光景を映し出していた。




102リベンジマッチの挑戦料 23 :06/05/27 14:30 ID:???
「あ〜もしもし。うん、終わったよ。思ったよりてこずらされちゃった。
結構待たせちゃって悪かったけど、今から迎えにきてくれる?」

携帯してきたトランシーバーを使ってナガセが連絡を取っている相手は、ヘリを操縦していた黒服の男である。
「つい先程、組織の開発部から連絡が入りました。
『あなたの対戦相手、不知火舞の身柄を必ず拘束せよ。死体でも全く問題なし。』とのことです。」

「そのことなんだけどさ〜。私、ついかっとなってやり過ぎちゃったみたいでさ〜。
あの女の体を跡形もなく焼き尽くしちゃったんだよね。そう、骨一つ、髪の毛一本残さずに。
そっちからも見えるでしょ?ここから上っているでっかい火柱が。だから悪いんだけどさ〜、開発部にはそう伝えておいてくれる?」

「・・・・・了解しました。ではこれからお迎えに向かいます。通信終了。」

トランシーバーを収納し、ナガセはひとりつぶやく。
「あ〜やれやれ。ホント、開発部の連中は気が早いよね。新しい実験材料を一刻も早く手にしたくてうずうずしてるんだろうね。」
ナガセのすぐそばの地面からは、巨大な火柱が未だに消滅することなく、天に向かってのびている。


「よかったのかね?あんな嘘をついて。」
ナガセの耳に、低い、男の声が呼びかける。それはナガセをKOFに導いた男の声だった。彼女の周囲には誰もいない。
「黄泉が原」の荒地がひたすら広がっているのみである。

「なんだ、あんたも見てたんだ。今の闘いを。あの女の死体を跡形もなく焼き払ったっていうのは確かに嘘だよ。」

「いや、私が言っているのは、君があの女に止めを刺すことすらしなかったということだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「膝は確かに潰した。鎖骨も砕いた。アバラもバラバラにしてやった。
だが君は、彼女の頭蓋骨を粉々にする寸前でブレーキをかけた。
もっとも、ブレーキをかけるのと同時に君がおこしたあの巨大な火柱のおかげで、
開発部の連中の眼には、君が彼女を葬り去ったようにしか映らなかっただろうがね。」

ヒューと口笛を吹きながら、ナガセは答える。
「あんた、流石だね。あの刹那の瞬間をちゃんと見極めるなんて。」

一向に姿を現そうとしないこの男の正体には、大体見当がついている。
おそらくは、「ベルフェゴール」の上位組織、「アデス」の大幹部の一人といったところだろう。

「なぜ止めを刺さなかったのかね?忍同士の闘いに情けは無用のはず。それが忍の定め。いつも君が口にしていることではないか。」
「別に。あの馬鹿女、私のことを殺すチャンスを先につかんでおきながら、手を抜きやがった。むかついたから、手を抜き返してやっただけ。
それに情けをかけたつもりもないし。」

情けをかけていないというのは本当だった。今、不知火舞は、目の前の炎の結界の中に閉じ込めてある。
内側の空間の酸素はやがて燃え尽きて、舞を窒息死に追いやるだろう。あの体では、結界から自力で脱出するのは絶対に不可能。
いわばこの結界は、不知火舞にとっては牢獄であり、タイムリミットつきの断頭台でもある。

それだけではない。仮に誰かが舞を結界から救出したとしても、砕けたアバラが肺に刺さっている状態では、彼女の命もそう長くはもたないだろう。
万一、一命をとりとめたとしても、全身を火傷し、関節をことごとく潰されてしまっているのだ。
格闘家としての再起不能は免れられまい。

だがそれでも、格闘家・不知火舞の復活の望みはゼロではない。彼女が再起することができたその時は・・・・・・・、とナガセは考える。

「まぁいいだろう。私は真に強靭な肉体を持つ者にしか興味はない。
敗者である不知火舞の処遇は君が好きにすればいい。
どうやら君の迎えのヘリも来たようだ。私もこれにて失礼することにしよう。
最後にひとつ、頼みがある。KOFの出場選手の中に、私たちの仕事を邪魔しようとしている女がいる。
名をルイーゼ=マイリンクという。おそらく、KOF決勝戦の君の相手は彼女だろう。
君に彼女の抹殺をお願いしたい。それではさらばだ。今後の君の活躍に期待しているよ。」

男の気配が消え、それと入れ替わりにヘリの音が近づいてきた。


103リベンジマッチの挑戦料 24 :06/05/27 14:41 ID:???
5分後。ナガセは迎えのヘリに乗り込み、「黄泉が原」を去ろうとしていた。
ヘリの窓から遥か下に広がる荒地には、不知火舞を閉じ込めた炎の結界が見える。

舞が格闘家として再起できる可能性は限りなくゼロに近い。
それでももし、彼女が復活することができたその時は・・・・・・、と再びナガセは考える。
その時は、もう一度くらい、不知火舞のリベンジマッチを引き受けてやってもいいかもしれない。

もちろん、今度こそ容赦は全くしない。反撃の余地すら与えずに彼女を圧倒し、遠慮なく命をもらうことにしよう。
本来、本気になった忍同士の闘いが二度、三度あるはずはないのだ。
両者が本気で闘えば、どちらか一方は必ず死ぬ。それが忍同士の「死合」だ。
リベンジマッチの挑戦料は、命で払ってもらう。当然のことだ。

(ん、待てよ?)
その時ナガセはひとつのことに気がついた。その疑問を確かめるべく、操縦席の黒服に話しかける。

「ねぇ、ひとつ聞いていい?さっき私は、あの女の死体は焼失したって言ったじゃん。
でも私の言うことを鵜呑みにしていいわけ?開発部の連中は、不知火舞の死体の回収に必ず立ち会えって、お前に命令してきたんじゃないの?
あいつら、私のことをあんま信用してないだろうしさ。」

黒服が舞の生存に気がつけば、ナガセは組織の命令どおり、彼女を今すぐ捕らえに戻らねばならない。
開発部の人体実験の末、舞は人間としての尊厳すら踏みにじられて無惨な最期を遂げることになるだろう。
そうなると、舞のリベンジマッチは永遠に実現しないことになり、
ナガセの今後のお楽しみがひとつ減ることになってしまうと心配していたのだが。

ナガセの問いかけに対し、黒服の男は答える。
「私の今回の任務は、あなたの移動を補佐することと、組織との連絡の橋渡しをすることだけです。
それ以外の命令を受けるつもりはありません。不知火舞と実際に闘ったあなたがそう言うのであれば、
間違いなく彼女の体は跡形もなく燃え尽きたのでしょう。」

それを聞き、ナガセの顔が明るくなる。
「お前、無愛想だけど、なかなか気が利くじゃん?」


〜完〜


104名無しさん :06/05/27 14:50 ID:???
ようやく完成を迎えることができました。
不知火舞は、純粋なゲームキャラとしても、リョナの対象としても、
私の一番のお気に入りの一人です。

それだけに、リョナSSを書く時には、きちんとしたストーリーを用意しつつ、
極上の処刑コースで昇天させてあげなければならないと思うのですが、なかなか
うまくいきません。もっと精進して、リョナれる文章を書けるようにならないとな〜
と思います。

105名無しさん :06/05/27 19:23 ID:???
乙華麗様
改めてすごいボリュームだと思ったので
数えてみたら改行抜きで約2万六千字!!!!
短期間でこれだけ書けるのはマジすごい!

>リョナSSを書く時には、きちんとしたストーリーを用意しつつ、
>極上の処刑コースで昇天させてあげなければならないと思うのですが、なかなか
>うまくいきません

すごい頑張って書いたやつが評判イマイチで
2〜3時間で冗談半分に書いたやつの方が評判良かったりしますよねw

106名無しさん :06/05/27 20:42 ID:???
本当に素晴らしいものをありがとうございました。
不知火舞のキャラクターがもの凄くツボです、というか私の望む不知火舞そのものでした。
ただKOFに参加してるわけじゃない芯の強さは、KOFのオフィシャルの方でも見習って欲しいくらいです。

ストーリーや展開が良くて普通に読み物としても面白かったです。
絶望的な状況ではありますが、舞が生きている可能性を残すあたりは殺しちゃうよりも全然くるものがありました。

完成お疲れ様でした。
また何かよい妄想がうかんだら、是非読ませて下さい。

107名無しさん :06/05/27 21:18 ID:gRxWYalk
お疲れ様でした!
このボリュームは本当に素晴らしいですね!
今までどちらにいらしたの!?て感じですw
浮羽をカウンタされ,舞が悶絶するシチュなんか特に最高でした!今後も世に名作を送り続けて下さい

108名無しさん :06/05/28 07:19 ID:???
次はリョナSSスレでナガセがやられるSSを見たいw

109104 :06/05/28 18:19 ID:???
>>105-107
感想ありがとうございます。私の稚拙な文章が、少しでも皆様の
妄想の足しになれば幸いです。書いた私自身、呆れる程の長尺ストーリー
になってしまいましたが、気に入っていただけたようで何よりです。

>>108
申し訳ない。個人的に、ナガセに対してあまり愛着をもっていないため、
彼女を主役(やられ役)にしたSSは、私には書けそうもありません。

110名無しさん :06/06/11 18:18 ID:???
次はリアンVS舞なんかはどうですか。
パワーのリアンとスピードの舞という感じで。
ナガセ戦から回復しつつも満身創痍な舞も見てみたい。
以上勝手な要望でした。

111名無しさん :06/06/11 22:47 ID:???
>>110
素敵なアイディアですね。MIキャラデザインのFALCOON氏のブログによれば
当初、リアンは舞のライバルキャラとしてデザインされる予定だったとか。

キャラクタープロフィールの特技が「暗殺(人体の急所を熟知している)」
になっているあたり、妄想力を刺激されますな。

「リベンジマッチの挑戦料」の続編として、リアンVS舞を書きたいと思います。
リアンのキャラ把握や、ストーリー設定に少し時間がかかりそうなので、しばし
の間お待ち下さい。

112名無しさん :06/06/12 12:36 ID:???
言ってみるもんです、楽しみにして待ってます。

113名無しさん :06/06/12 19:33 ID:HPz5gj5s
うお!次回作キタ!
リアンの投げ技(首折と聞いた)が見れたら嬉しいです。
楽しみにしてます。

114殺しの女神のアルバイト 1 :06/06/13 18:13 ID:???
不知火舞が、ナガセとの草試合に敗れてから一ヵ月後。
裏組織「アデス」の最高幹部会「コカペルの子供たち」の議事堂、待合室に二つの人影があった。

プラネタリウムのような天井を持つこの部屋は昼でも薄暗く、二人の姿をはっきりと見定めることはできない。
ただそのシルエットから、一人は細身の長身であり、
もう一人はごく平均的な体形をしているということが分かるのみである。

平均的な体形をしている方の人影が口を開く。
「お遊びが過ぎたようだな、ジヴァートマ。『闇の爪』の異名を持つお前程の男が今回のような失態を犯すとは。」

ジヴァートマと呼ばれた長身のシルエットが応える。
「返す言葉もない。ルイーゼ=マイリンク殺害の失敗、タイプDの組織からの離脱、タイプNの負傷、
そして『闇の牙・ユーダイム』の片翼であるアルバ=メイラ捕獲の失敗。全てはこの私の責任。
いかなる処罰も甘んじて受けよう。我が友ジャランジよ、幹部会の決定を聞かせてくれ。」

「フッ・・・。その責任感は立派だが、安心するがいい。幹部会は今回のお前の失敗を不問にするという決定を下した。」

「なにっ?」

会議の意外な決定を聞いて驚くジヴァートマに対し、ジャランジは説明する。
「意外だったか?お前はデュークとは違う。奴は所詮、この星の人間。
我々の科学力によって力を授けられた存在に過ぎず、我々の真の同胞ではなかった。

だがジヴァートマよ、お前は『ゾア』であり、我々の真の同胞だ。
ましてや、ラキア・・・いや、今はルイーゼ=マイリンクと名乗っているあの女が現れた以上、
『アデス』の貴重な戦力であるお前を処罰する理由がどこにある?
まぁもっとも、私の強い推薦がなければ、なんらかの処罰は下っていたかもしれないが・・・。」

「なる程。どうやら君に大きな借りが出来てしまったようだ。君のことだ、
当然なんらかの見返りを私に求めているのではないかね?」

「察しがいいな。お前の組織、隠密無音暗殺団『クシエル』の力を使って、不知火舞を捕獲してもらいたいのだ。
死体であっても構わない。ただし、肉体の損傷は最小限にして欲しい。」

「不知火舞?タイプNが草試合で殺し損ねたあの小娘のことかね?」

「そうだ。私の部下の研究員が、ナガセの嘘を見破れなかったせいで、まんまと取り逃してしまった極上の獲物だ。
あの時の闘いで、不知火舞は再起不能の重傷を負っているはずだが、彼女の周辺には凄腕の格闘家が大勢いると聞く。
伝説の狼やその弟の目を免れて、彼女を捕獲できる程の隠密行動に長けた部下は、私の組織にはいない。

ナガセが健在なら奴に任せるのだが、奴はルイーゼとの闘いでバトルディスクシステムを損傷していてね。
しばらくの間は使い物になりそうもない。」

「フム・・・。そこで『クシエル』の力が必要という訳か。恩人である君の頼みを失敗する訳にはいかんな。
私の部下よりも、この任務に適任の暗殺者がいる。今回は彼女に働いてもらうことにしよう。」

「ほぅ、それは誰だ?」

「あの裏切り者、タイプDにまとわりついているメス野良猫、リアン=ネヴィルだよ。」


115殺しの女神のアルバイト 2 :06/06/13 18:23 ID:???
ジヴァートマとジャランジの密会から三ヶ月が経過。
某国の密林地帯の中、風のように疾走する美女の姿があった。

ややクセのあるウェーブのかかったブロンドの髪、抜群のプロポーション、
その体を完全に覆い隠す漆黒のボディースーツ。リアン=ネヴィルである。

暗視スコープは装着した彼女は、闇夜に紛れて誰にも気づかれることなく、
密林奥地に存在する「アデス」の化学薬品倉庫に潜入することに成功した。

あらかじめデュークから手渡されていた見取り図を頼りに、目指すコンテナを発見し、開放する。
だが、彼女が探している物はそこになく、コンテナの中身は空っぽであった。

(そんな馬鹿な。見取り図によれば、このコンテナで間違いないはずなのに。)

他のコンテナを探そうと手を伸ばしかけていたリアンだったが、恐ろしい殺気に気がついて慌てて背後を振り返る。
そこには、身長2メートルを優に超える細身の男が、白いコートを着て立っていた。

「あなたは、ジヴァートマ!一体いつの間に?」

「さっきからずっと居たよ。『クシエル』を束ねる私の隠密能力を甘く見てもらっては困るな、
リアン=ネヴィル。君と会うのは四ヶ月ぶりだろうか?あの時は、君とタイプDの二人に随分と世話になった。」

四ヶ月前、リアンはデュークと共に、ジヴァートマの暗殺を謀った。KOFの決勝戦終了後、優勝者であるルイーゼ=マイリンクを死闘の末なんとか退けることに成功したジヴァートマが、
体力を大幅に消耗していた瞬間を狙って奇襲を仕掛けたのである。

体力を消耗していたとはいえ、ジヴァートマの戦闘能力は想像を絶するものであり、暗殺は失敗。
勝負は双方の痛み分けに終わった。大地を砕くデュークの豪腕がジヴァートマに大ダメージを与えたものの、
その直後、リアンの心臓を狙ったジヴァートマの「闇の爪」から身を挺して彼女を庇ったデュークが重傷を負った。
リアンが、負傷したデュークに気を取られている間に、ジヴァートマはまんまと逃走したのである。


デュークと二人がかりで仕留め切れなかったその男が今、万全の状態で目の前にいる。
刺し違える覚悟で戦闘体勢に入ろうとするリアンに対して、ジヴァートマは余裕の表情で言う。

「無駄なことは止めたまえ。パートナーであるタイプDを連れず、一人でここにやって来たということは、
君が探しているのはこれではないのかね?」

ジヴァートマから小さな紙袋を差し出され、リアンは中身をチェックする。
中には、彼女が探していた白い錠剤を封入した小瓶が入っていた。

「どうやら当たりのようだな。改造強化人間であるタイプDは、定期的にその錠剤を飲まなければ拒絶反応が出て活動不能になってしまう。
『アデス』を抜けた今、君達がそれを入手するためには、この倉庫から盗む以外にない。君がそろそろここに来るであろうことは分かっていたのだ。」

「全てお見通しだったって訳ね。それに気づいていながら、私にこれをくれるなんてどういう風の吹き回しかしら?」

「バイト料の前払い分だよ。その小瓶には二週間分の錠剤しか入っていない。それ以上が欲しければ、
これから提示する任務を引き受けてもらいたい。」

ジヴァートマの誘いかけに、リアンは少しの間躊躇した。「アデス」は彼女の両親を殺害した黒幕であり、滅ぼすべき仇である。
ようやく組織から自由になった今、このような形で再び「アデス」のために働くのは本意ではない。

しかし、「アデス」を滅ぼすためには組織に関する情報をもっと収集しなければならないし、
現時点で唯一の情報源であるデュークを失う訳にはいかない。
そしてなにより、今の自分の実力では、ジヴァートマを殺害してこの場を切り抜けることはできない。

ならば答えはひとつである。従順な飼い猫のふりをして、チャンスが来るのを待つのみである。
前回のKOFが始まるまでの長い月日のように。
いつの日かデュークの寝首をかくことを夢見ながら彼の元で暗殺術を学び、忠実な部下を演じ、愛人を演じ、
彼のために数えきれないほどの人間を暗殺していた、あの頃のように。

リアンは冷酷な笑みを浮かべながらジヴァートマに返答する。
「悪くない提案ね。そのアルバイト、引き受けるわ。それで、誰を殺せばいいのかしら?」

〜完〜
不知火舞SS「桜花散る」に続く

116名無しさん :06/06/13 18:30 ID:???
舞のSSの続編を書き始めるにあたって、舞とリアンが戦う理由を作りたかったので、
KOF MI2の後日談的短編を書いてみました。



117名無しさん :06/06/14 02:56 ID:???
キテルー!

118桜花散る 1 :06/06/15 10:59 ID:???
「はいっ、それまでー!!これで今期の不知火流忍術教室の全稽古を終了します。
受講生の方々は気をつけて山を降りて下さい。以上、解散!!」

夕暮れ時の道場に、威勢のいい女性たちの声が響く。
ここは日本中部地方の山岳地帯に存在する、不知火流忍術道場である。

四ヶ月前、不知火流正系統者にして忍術師範でもある不知火舞は、草試合で敗北し意識不明の重傷を負ってしまった。
その後、救出された舞は奇跡的に息を吹き返し、一命をとりとめたものの、格闘家としての再起は依然絶望的であり、
現在は不知火屋敷の自室にて静養中である。

師範である舞の代行として今は、二人の師範代と三人の師範代補佐が道場を切り盛りしている。
彼女達はそれぞれ、椿、牡丹、白百合、夕顔、朝顔の名を与えられた不知火流のくのいちだ。

年齢は舞より2〜3歳下で、舞にとっては妹弟子であり、華道や茶道を共にたしなむ仲間であり、幼少時からの親友でもある。
彼女たちの祖父は全員、不知火流五大老に名を連ねていた程の凄腕の忍者であり、今は亡き、舞の祖父、不知火半蔵の高弟達であった。
現在では隠居生活をしている五大老の名にあやかろうとしているのか、彼女達は最近では「不知火流五人衆」などと名乗りはじめている。

「あー、終わった、終わった。明日からはやっと長期休暇か〜。自分で教える立場になってみて、改めて舞師範の凄さが実感できるわー。」
「ホント、あの人は天才よね。私達とは次元が違うってカンジ。他人に忍術を教えるのが、こんなに大変なことだとは思わなかった。」

受講生達を帰し、五人衆が道場の後片付けをしていると、噂話の主役である不知火舞が道場に入ってきた。
同じ女性である牡丹や朝顔の目から見てもうっとりしてしまうような美しい黒髪を、下ろした状態にし、今の舞は浴衣姿である。

「あっ、師範、お疲れ様です。お体は大丈夫なんですか?」
最近は自室に篭りがちだった舞が、道場に顔を出すのは珍しい。舞の体を気遣う夕顔に対し、舞は優しく微笑みかける。

「あら、あたしの心配をするなんて十年早いんじゃなくて、夕顔師範代補佐?大丈夫よ、今日はすこぶる調子がいいの。
この四ヶ月間、あたしの代わりに道場を運営してくれてありがとう。あなた達も早く実家に帰りなさい。」

「いいんですか?でもまだ道場の掃除が残っているし、アンディ師範のお弁当も作らないといけないし・・・。」

そう尋ねたのは炊事係も務めている白百合である。
草試合で負傷して以来、舞はアンディとほとんど口を聞かず、顔を合わせようともしていなかった。
体術師範であるアンディが、舞のことをこれまでにない程心配しているのにも関わらず、
舞の方が一方的にアンディを避けているように見えた。
二人の恋仲を心から応援している白百合にとって、そのことは大きな悩みのタネであったのだ。

「全部あたしがやっておくわ。もちろん、アンディのお弁当もね。」
舞はそう言いながら、白百合にウィンクする。

「じゃあ、お言葉に甘えて失礼します。舞師範、また一ヵ月後にお会いしましょう。
それまで体をしっかりと休めて、一日でも早く道場に復帰できるようにして下さいね。」

五人衆のリーダー格である椿がペコリと一礼すると、残りの四人もそれに倣って舞に挨拶をし、道場から立ち去って行った。

「五大老のおじいちゃん達によろしくね。年寄り孝行は、できる間にやっておかないとダメよ。」


119桜花散る 2 :06/06/15 11:11 ID:???
五人衆を屋敷の門まで見送った後、舞は台所に立って弁当を作り始めた。
アンディのためにお弁当を作るのは、実に四ヶ月ぶりのことである。

調理を終えて縁側に出ると、中庭で木刀の素振りをしている小さな少年に呼びかける。
「北斗丸〜っ!」

青い道着と、マントのような赤いスカーフをつけた北斗丸が縁側に駆け寄ってくる。
「あれ、姉ちゃん?部屋から出てくるなんて珍しいね。オイラになにか用?」

舞との間に血縁関係がある訳ではない。ただ、園児の頃から不知火屋敷に住み込みで修行を続けている、
門下生最年少のこの少年は、アンディのことを「お師匠」と呼び、舞のことを「不知火の姉ちゃん」と呼ぶ。

舞は、出来上がったばかりの弁当の包みを北斗丸に手渡すと、彼におつかいを言いつける。

「北斗丸、今晩アンディはいつもの修行場で徹夜で修行をするみたいだから、このお弁当
を届けてあげて。ついでにアンディに稽古をつけてもらって来なさい。
明日の朝まで、ここには帰ってこないこと。」

「え〜〜〜〜〜っ!!?おいら、徹夜は苦手だよ〜〜〜〜。」

「つべこべ言うんじゃないのっ!!これは忍術師範であるあたしの命令よっ!
とっとと出ていかないと、花蝶扇をお見舞いするわよ!!!」

鬼のような形相で浴衣の胸元に手を伸ばした舞を見て、北斗丸は大慌てで屋敷を飛び出していった。
「ひぇ〜、それだけは勘弁。行ってきまーす。」

託された弁当包みを木刀に結びつけ、飛脚のように駆け出した北斗丸は、内心喜んでいた。
大怪我をして以来、すっかりおしとやかな女になってしまっていた不知火の姉ちゃんが、
久しぶりにお転婆な顔を見せてくれて良かったと・・・。


北斗丸が出かけたことによって、不知火屋敷に居るのは舞一人となった。
「これで良しと・・・。さて・・・」
独り言をつぶやいた後何を思ったのか、舞は自分の部屋に入っていった。

化粧台の前に座ると、下ろしていた髪をポニーテールにして、祖母の形見である簪(かんざし)で結い止める。
次に、和室の中に置かれた大きな葛籠(つづらこ)を開け、中から戦闘用の忍装束を取り出す。

彼女のトレードマークとも言える紅い忍装束は、ナガセとの闘いで燃え尽きてしまったが、色違いの忍装束を彼女は何着も持っている。
舞はその中から、純白の忍装束を選び、浴衣からそれに着替え始めた。

尻尾状の帯の先端に取り付けておいた漆塗りの宝玉は、やはりナガセとの闘いで砕け散ってしまったため、
やむを得ず、帯の先端を片結びにして玉状にし、応急処置を図る。
威力の減退は避けられないが、これで「龍炎舞」をはじめとする火炎系忍術も扱えるはずである。

純白の忍装束を身に纏った舞は、すっと立ち上がる。
不知火流の忍者が白装束を身に着けて闘いに望む時、そこには特別な意味が存在する。
その意味は・・・・・・。



120桜花散る 3 :06/06/15 11:13 ID:???
部屋と廊下を区切る襖(ふすま)に向かって、舞は声をかけた。
「出てきなさい。そこにいるのは分かっているんだから。」

襖がゆっくりと開き、ブロンドの髪の外国人女性が姿を現す。
身長は舞よりも10センチ程高く、抜群のプロポーションも舞と同等かそれ以上。

舞が身に纏っている露出度が高い純白の忍装束とは対照的な、
全身の肌をくまなく覆い隠す拘束具のような漆黒のボディースーツには、ところどころに黄色のアクセントが入っている。
リアン=ネヴィルである。

「お互いに顔は知っていたけど、こうして口を聞くのは初めてね、不知火舞。」

リアンと舞はどちらもKOFの出場選手であったため、お互いの名前や顔は知っていたが、直接闘ったことは一度もなく、
話をしたこともなかった。ただ、舞がナガセに敗れた先日のKOFにおいて、レオナやユリ=サカザキといった強豪選手を打ち破っていることから考えて、
リアンがかなりの実力者であることは容易に想像できた。

「えぇ、そうね。リアン=ネヴィル。あなたが二、三日前からこの屋敷を見張っていることには気づいていたわ。
上手く殺気を消したつもりだったのかもしれないけど、あたしの目を誤魔化すことはできない。」

リアンは無表情に手を叩きながら言う。
「流石は不知火舞、と言ってあげたいところだけど、残念ながらはずれよ。
あなたにだけは分かる程度の微量の殺気をわざと放ち続けていたの。
私の殺気を察知したあなたが、あの坊やをこの屋敷から追い払ってくれることを期待して。」

「あの坊や?北斗丸のことを言っているの?」

「えぇ、ああいう小さな子供だけは苦手でね。小さな子供の前でだけは、絶対に仕事をしないのが私のポリシーなの。」

「『メフィストフェレス』のボス、デューク子飼いの殺し屋のあなたが、あたしに何の用かしら?どうやら道場への入門希望って訳じゃなさそうだけど。」

KOF終了後、サウスタウンの若きリーダーであるアルバ=メイラは、信頼できる格闘家たちに「アデス」の危険性を説いて回っていた。
日本にいる舞やアンディの元にも、テリー=ボガードからの手紙によって、「アデス」の関係組織や関係者についての情報が届けられていた。

もっとも、それらの情報は必ずしも正確なものではなく、デュークやリアンが今では「アデス」を脱退し、
組織から追われる立場になっていることまでは、発信者であるアルバ自身も含め、まだ誰も知らなかった。

舞の問いかけに対し、リアンは応える。

「正確に言えば、私はもう『アデス』の人間ではないの。でも、あなたには関係のないこと。
単刀直入に言うわ。殺し屋の仕事はただひとつ。私怨はないけど、あなたには死んでもらうわ。
白装束に着替えて私を待ち受けていたあなたの潔さに敬意を払って、好きな場所で殺してあげる。
格闘家らしく、一対一の正々堂々とした勝負の中で静かに眠りなさい。」

「暗殺じゃなく、正面からの勝負を挑んでくるなんて、随分と正直な殺し屋さんなのね。
いいわ、あたしの道場に案内してあげる。ついてらっしゃい。」


121桜花散る 4 :06/06/15 11:26 ID:???
太陽はとうに西に沈み、屋敷の外は夜の闇に包まれている。
不知火屋敷の敷地内にある道場に電灯は存在せず、その室内は何十本もの燭台によってボンヤリと照らし出されている。

厳かで幻想的な空気の漂うこの道場の床の上で、不知火舞は、リアンに組み敷かれていた。
俗に言うマウントポジションの体勢である。この光景を見れば、この勝負を優位に進めているのがどちらかは明らかであろう。


あの後、舞はリアンを道場に案内して対峙したものの、すぐに板張りの床の上に倒されることになった。
ナガセとの闘いで舞の体が受けた壊滅的なダメージは未だに回復しきっておらず、
得意のスピード攻撃はあまりにも精細を欠いていた。

なんとかリアンの隙を見つけようと動き回るが、傷の癒えない身体は舞の思うようには動かず、
どの攻撃もリアンにまともにヒットしない。

逆に、リアンの攻撃は、その全てが舞の体にヒットした。
万全の状態ならば十分に回避できたはずの攻撃を次々に浴び、いつの間にか舞は防戦一方になってしまっていた。

舞の負傷箇所をジヴァートマからあらかじめ教わっていたリアンは、ためらいもなくそこを重点攻撃した。

(不知火舞の最大の武器は、圧倒的なスピードを利用した撹乱戦法。足を破壊しスピードを封じてやりさえすれば、
彼女はもはや羽をもがれた蝶も同然。)

紫の残光を伴って繰り出されたリアンの強烈な回し蹴りによって、両膝を再び破壊されてしまい、
舞は甲高い悲鳴をあげて崩れ落ちた。そのままのしかかってきたリアンによって体を押さえ込まれてしまい、
今に至っているのである。



「フフフ。再起不能の重傷と聞いてはいたけど、ここまで脆いとはねぇ。
私は裏の世界でずっと生きてきたけど、表世界の最強の女性格闘家と呼ばれていたあなたの評判はよく耳にしていたわ。
手合わせであれ、殺し合いであれ、いつかは闘ってみたいと思っていたのに残念ね。
できれば、万全の状態のあなたと闘いたかったわ。」

「くっ・・・早く殺しなさい。」
歯軋りして悔しがる舞を楽しそうに見下ろしながら、リアンは言う。

「では遠慮なく・・・・」

リアンが、舞の首に手を伸ばそうとしたその時、道場の扉が勢いよく開け放たれ、五人のくのいち達が飛び込んできた。

「そこまでです、狼藉者!」
「舞師範に手出しはさせません!」

椿、牡丹、白百合、夕顔、朝顔。道場の師範代と師範代補佐を務める、不知火流の五人衆。
二時間程前に舞から下山を命じられ、帰途についていた彼女達であったが、山の麓まで下ったところで、
リーダー格の椿は突然他の四人を呼び止めた。

自分達に帰宅を促していた時の舞は明るくふるまっていたものの、どこか寂しげに見えたと椿は四人に説明した。
このまま帰宅してしまえば、自分達は舞師範にもう二度と会えないような胸騒ぎがする。

心配し過ぎだと、他の四人は最初は椿の話を真に受けようとしなかった。
だが、必死に食い下がる椿の説得に最後は折れ、一度戻って何事もなければそれでよしということで、
急ぎ引き返してきたのである。


122桜花散る 5 :06/06/15 11:34 ID:???
常識的に考えれば舞は彼女達に感謝しなければならないのだろうが、
今回の助太刀は舞にとっては迷惑以外のなにものでもなかった。

リアン=ネヴィルと五人衆では戦闘能力の次元が違い過ぎる。
リアンのような危険人物とのいざこざに、彼女達を巻き込みたくなかったから、
元気なふりまでして屋敷から追い払ったというのに、彼女達は戻ってきてしまったのだ。

「バカっ!!どうして戻ってきたのよ!?早く逃げなさい!!早く!!早く!!!」

リアンに押さえ込まれながらも必死に叫ぶ舞であったが、リアンの左手によって口を塞がれ、右手で首を絞められてしまう。
呼吸を封じられ苦悶の表情を浮かべながら、それでも舞は視線で五人衆に訴えかける。「早く逃げろ。」と。


舞の必死の制止を受けて、入口付近に立ち尽くしていた五人のくのいち達であったが、
舞を助けようとする彼女達の気持ちもまた本物であった。
首を絞められ苦しんでいる舞の姿に耐えかねて、とうとうリアンに攻撃を仕掛ける。

「舞師範を放せぇぇえええ!!」
五人衆はリアンを取り囲むと、前後左右上空の五方向から同時に襲いかかった。

それを見たリアンは、殺し屋特有の狂気の笑みを浮かべたかと思うと、舞の体を放して、円を描くように駆け抜ける。


五人衆の目には、黒と黄色の鮮やかな稲妻が走ったようにしか見えなかったが、舞の目には彼女達を迎撃しようとするリアンの動きがはっきりと見えていた。

「やめてぇぇぇぇぇえええ―――――!!!!」
「ぎゃっ!!」「ぐぇっ!?」「がっ!?」「うぅっ!?」「かはっ!?」

舞の悲痛な叫びと、五つの断末魔が道場に響き渡るのはほとんど同時であった。
次の瞬間、舞の周囲に五人のくのいちの体が転がっていた。

この時点で、五人のうち、四人はすでに事切れている。

朝顔と夕顔の首は、あり得ない方向に捻じ曲がっていた。
白百合の頭は力任せに叩き潰されて柘榴のようになっており、
牡丹のこめかみには銃弾を打ち込まれたかのような穴がぽっかりと空いていた。

「あっ・・・・あぁ・・・・・」
あまりにも悲惨な四人の死に様に、舞は思わず顔を覆ってしまう。


ただ一人、左胸に掌底を喰らって舞のすぐ近くに吹き飛ばされた椿だけは、辛うじてまだ息をしていた。

「うぅ・・・・げほっ・・・・・」
掌底によって内臓をやられてしまったらしく、椿の口からは止め処もなく鮮血が溢れ出ている。

「あらあら、心臓を破裂させてあげたつもりが、中途半端に避けられてしまっていたようね。」
リアンは腕のプロテクターに取り付けられたエメラルドの液晶を操作する。

「しっかり、しっかりして、椿。」
リアンに両膝を潰され、立ち上がることのできない舞は、芋虫のように床を這いながら椿に近づくと、
涙を浮かべながら呼びかけた。

すでに虫の息なのにも関わらず、椿はにっこりと舞に微笑みかける。
「舞師範、そんな顔・・・しないで・・下さい。私達、昔からの・・友達・・・じゃないですか。
友達を助けるのは、当たり前の・・・・ことです・・・」

舞の涙は止まらない。
「馬鹿っ!あなたたち・・・本当に馬鹿よ!」

「馬鹿で・・結構です。舞師範は本当はとっても強いんだから、あんな女に・・・負けな・・・・・」

椿の台詞はそこまでだった。リアンが液晶を操作して呼び寄せた超小型衛星が、
道場の高い天井付近から、緑色のレーザービームを放ったのである。
天井から突如降り注いだレーザーに全身を包まれた椿の身体は、舞の眼前で跡形もなく消滅してしまった。

「イ・・・イヤァァァァァァァァァァァ!!!」

六年前、ヴォルフガング=クラウザーの一派との死闘が勃発した時、舞の祖父である不知火半蔵は、
この道場でクラウザーの腹心に暗殺され、駆けつけた舞の眼前で息を引き取った。
同じ道場で今、不知火舞は五人の友人を失ってしまった。


123名無しさん :06/06/15 11:40 ID:???
椿、牡丹、白百合、夕顔、朝顔の五人は、今回のSSのために私が勝手に
作り出したオリキャラです。名前はサム零の徳川様の取り巻きたちから拝借しました。

今回のSSで、舞には殺意を持ってリアンに立ち向かってもらいたいと考えたので、
彼女たちにはゴミにように無残に散って頂きました。

124名無しさん :06/06/15 18:53 ID:???
イイヨーイイヨー

125名無しさん :06/06/15 21:37 ID:???
新作きましたねー。
舞は仲間が殺されるまでは死を覚悟していたんですね。
ここから前回のラストの様な何度も立ち上がってくる舞が見られるのでしょうか、とても楽しみです。

126桜花散る 6 :06/06/16 00:41 ID:???
舞は泣き叫んだ。
今リアンに攻撃されたら、ひとたまりもないであろう無防備な状態であることは分かっていたが、
それでも泣き続けた。

当のリアンも、彼女独自のポリシーに従って、舞にしばらく手を出そうとはしなかった。


やがて舞の涙は涸れ果て、深い哀しみは激しい怒りへと変わっていった。
友人である五人の若きくのいち達の命を奪ったリアンが憎かった。
そしてそれ以上に、彼女たちをこの一件に巻き込んでしまった自分自身が憎かった。


つい先程まで舞は、自分はリアンに殺されても構わないと、心のどこかで思っていた。
それは舞が、周囲の人間が想像していた以上に、自身の身体の状態に絶望していたからである。

ナガセとの闘いで、格闘家生命を脅かす程の重傷を負ってから四ヶ月間、
舞は考えられ得る全ての治療方法を身体に施し、リハビリを続けてきた。

その結果、日常生活には支障がない程に回復することはできた。
だがそれと同時に舞は、人間の体の回復力にも限度があり、格闘家として再起できるようになる日は、
果てしなく遠いということも実感してしまっていた。

折れたアバラによって内臓を痛めた時の後遺症なのか、少しでも激しい運動をすると、
舞の体調は著しく悪化してしまい、自室で人知れず吐血することがしばしばあった。

ナガセの火炎によって焼かれた全身の火傷の回復も芳しくなく、美しかった珠の肌は痛々しい程に変貌してしまっていた。
負傷する以前は、ノースリーブのシャツやミニスカなど、戦闘時以外でも露出度の高い服を愛用していた舞であったが、
最近では火傷跡を隠すために浴衣や着物を着るようにしていた。

落胆する舞をなんとか励まそうと、アンディはこれまで以上に舞に対して優しく接してきたし、
ユリ=サカザキやキングといった格闘仲間たちも、はるばる日本まで見舞いに訪れた。
舞は、それらの好意を全てはねのけ、彼らには決して会おうとしなかった。

舞にとってアンディやユリ、キングは恋人や友人である以前に、同じ格闘家として、
良きライバルでなければならなかった。リベンジを挑んだ草試合でボロボロに返り討ちにされ、
格闘家生命まで絶たれてしまった無様な姿を、彼らにだけは見せたくなかった。
そのため、恋人であるはずのアンディとの仲はこの四ヶ月間、完全に冷え切っていた。

惨めだった。ひたすら惨めだった。
あの時ナガセに頭蓋骨を粉砕されて死んでいれば、どれだけ楽だったろうと考えることさえあった。

だから今日、リアン=ネヴィルが自分を暗殺するために現れた時、舞は自分の命をどこかであきらめている節があった。
この不知火道場で、闇の組織からの刺客に討たれ、人知れず命を落とす。
かつて祖父が辿ったのと同じ末路を自分も歩むことになるのだと、自嘲的な予感に支配されていた。


127桜花散る 7 :06/06/16 00:49 ID:???
だが、それらの感情は今や、涙と共に舞の心から流れ落ちていた。

自分の命を助けるために、五人の少女が命を落としてしまったのだ。
自分一人、人知れず果てるという甘えた考えは最早許されない。

心にあるのは激しい怒りと、生への執着のみ。
死んでいった五人衆の想いを無駄にしないために、仇であるリアンを討ち、舞は生き残らなければならない。

「生者は常に、死者の想いを背負って生き続けなければならない。
それは武士の道であれ、忍の道であれ、なんら変わることはない。」
幼少期に祖父から何度も聞かされた教えが、今の舞の中には確かに息づいていた。


「泣きべそをかく時間はもう終わったかしら?そろそろ大本命のあなたにも死んでもらうわよ。」

サービスタイムの終わりを告げるリアン=ネヴィルを、舞はキッとした表情で睨み付ける。

心地よい殺気を浴び、不敵に微笑むリアン。
「なかなか素敵な眼ができるじゃない。ニンジャは東洋のアサシンだと聞いたことがあるけど、
どうやら本当のようね。でも、今さらやる気を見せたところで、あなたには万に一つの勝機もないわよ。」

リアンの言っていることは間違っていない。
舞の体がボロボロであることは変わらず、砕かれた両膝が回復した訳でもない。
今の状態のまま闘えば、舞には万に一つの勝機もないだろう。

しかし、舞には最後の手段が残されていた。


128桜花散る 8 :06/06/16 01:02 ID:???
「勝機なら・・・・あるわ。」

舞は右手で空を切り、五芒星を描く。不知火流忍術の数々の技の中で、これは決して使ってはいけないといわれている一種の外法。
右手の中指と人差し指の指先にオーラを纏わせ、自身の体に存在する点穴を下から順番に突き、刺激していく。

無数に存在する点穴の中から、舞が選んだのはわずかに九箇所。
不知火流忍術・禁じ手「九尾の狐」。
不知火流の当主にのみ、口伝によって代々伝授されてきた秘孔術である。

選び抜かれた点穴を刺激することによって、自身の体内における闘気の奔流を爆発的に加速させ、
肉体機能を超活性させる奇跡の業。
これを使えば、たとえ満身創痍の身体であっても、万全状態の時と同等か、それ以上の戦闘能力を発揮することができる。

ただし、禁じ手に分類される「九尾の狐」にはそれ相応のリスクも当然存在する。
この技は決して、人間の肉体を無敵状態にするものではないのだ。

術の持続時間はわずかに10分強。それが過ぎれば、超活性の反動が起こり、
全身の筋肉や骨に凄まじい疲労が訪れるのだ。

既にボロボロの肉体である舞がこの術を使ってしまった以上、たとえリアンを倒せたとしても、
格闘家にとってあまりにも辛い未来は免れられない。
運が良くて、完全なる再起不能、運が悪ければ廃人にすらなりかねない。

それを知っていながら、舞はこの術を使った。自分はどんな手を使ってでも、この闘いに勝利し、生き残らなければならない。
たとえ廃人になろうと、どんなに無様な未来が待ち受けていようと、自分を助けようとしてくれた五人の少女たちの命を背負って生き続けなければならない。

肉体機能を強制的に活性化させた舞は、両の足で力強く立ち上がった。

(そんな馬鹿な!?膝を砕かれているのに立ち上がってくるなんて・・・)
これには流石のリアンも驚きを隠せない。

舞は、純白の忍装束の胸元から一本の鉄扇を取り出し、リアンに向けてゆっくりと構える。

不知火流の忍者が白装束を身に纏って闘う時、そこには二通りの解釈が存在する。
一つは、武士が切腹をする時と同様、自らの死を覚悟したことの表明。
もう一つは、自らの血を流さず、相手の返り血も浴びることなく相手に死を与え、
装束を汚すことなく生還するという、圧倒的なる勝利の予告。

つい先程まで、舞にとって白装束は前者の意味を持っていたが、今は後者の意味に変わろうとしていた。
これは死ぬためではなく、生きるための闘いなのだ。
(この十分間に、あたしの全てを賭ける。)

「五人衆の仇は討たせてもらうわ。不知火流正統、不知火舞、参ります。」


129名無しさん :06/06/16 01:14 ID:???
以上、例によって、例のごとくの前置きでした。

不知火流「九尾の狐」はゲーム内に登場する技とは全く異なる技にアレンジしました。
バトル漫画の定番である、副作用ありまくりのドーピンク技だと思ってくれれば結構です。

次回からはいよいよ舞とリアンの真剣勝負ですが、MI2のゲームでリアンが扱う技が予想以上に
地味であったため、このSSでは他のキャラの技をいくつか流用するつもりです。


130桜花散る 9 :06/06/16 18:45 ID:???
「ハァッ!!」
舞が振り下ろした鉄扇の一撃が、リアンの腕のプロテクターに取り付けられたエメラルドの液晶を破壊する。

「チッ!」
舌打ちしながらリアンは回し蹴りを繰り出すが、その射程距離内に舞の姿は既にない。

不知火舞が、禁じ手である「九尾の狐」を発動してから五分が経過していた。
術の効果によって肉体機能を活性化させた舞は、怪我をする以前の圧倒的な機動力を完全に取り戻していた。

パワーで舞を圧倒しようとするリアンに対し、舞が選んだ戦法はヒット&アウェイである。
リアンの攻撃範囲の外を変則的に動き回り、わずかな隙を見つけては攻撃を加え、
反撃を受ける前に再び距離をとる。

蝶のように舞い、蜂のように刺す不知火舞の猛攻は、
リアン=ネヴィルの体力を少しずつ、だが確実に削り取っていた。

舞の純白の忍装束にはまだ、汚れ一つ付いていない。
それとは対照的に、リアンの漆黒のボディースーツには至るところに綻びが生じており、
微小な面積ではあるが、スーツの下の白い肌を露出させはじめていた。

「九尾の狐」の持続時間はまだ、半分も残っている。
「超必殺忍蜂」などの大技に頼らずとも、舞がこのペースでヒット&アウェイを続ければ、
リアンは力尽き倒れるであろう。

現に時間の経過と共に、リアンの呼吸は確実に乱れてきている。
呼吸の乱れは更なる隙を生み出し、攻め手である舞のチャンスは更に広がるはずだ。


しかし、空中から「ムササビの舞」を繰り出した不知火舞に、
思いもよらない反撃が襲い掛かかる。

(えっ!?倒れない!!?)

「ムササビの舞」の直撃を喰らって仰け反りながらも、リアンは両脚をふんばって立ち続けていたのである。
リアンは、自分の胸元に頭から突っ込んできた舞の首根っこを、左手で押さえつける。

女性としては長身を誇るリアン=ネヴィルの身長は、舞よりも約10センチ高い174センチ。
舞の首根っこをつかんだまま、彼女の小柄な体を真上に持ち上げる。

なんという腕力であろう!リアンは左腕一本で舞の体を宙吊りにしてしまったのだ。

「はっ・・放せっ!!放しなさいよっ!!」
地面に届かない脚をバタつかせ、必死に抵抗しようとする不知火舞の腹部に、
リアンは右手を押し当てる。押し当てた手の平は、手刀を形作っている。

そのことに気づいた舞の表情に、焦燥の色が浮かぶ。
(まずい!これはハイデルンさんの・・・・)

「ストームブリンガー!!!」
シュウウウウ・・・・・・・!!!

「うっ・・うわあぁぁぁぁ!!?」

悲鳴をあげる舞の全身から力が抜けていく。
腹に押し当てられた手刀を通して、リアンに闘気を吸収されてしまっているからである。


131桜花散る 10 :06/06/16 18:50 ID:???
してやったりの表情をしながら、リアンは舞の首根っこから手を放した。
解放された舞は、すぐにリアンとの距離をとろうとするが、その場でカクンと片膝をついてしまう。

「九尾の狐」の持続時間はまだまだ残されているが、体内を流れる闘気の総量が減少してしまったため、
超活性の効果も薄れてしまったのである。

「体に力が入らないようね。ボロボロの体でいきなり元気に動き出したものだから最初は驚かされたけど、
やはり気功や秘孔の類を使っていたのね。」

幼い頃からデュークに暗殺術を教え込まれていたリアンは、人体の急所を学ぶ一環として、
気功や秘孔についての知識も修得していたのである。

「手品のタネさえ分かってしまえば、対処方法はいくらでもある。あなたの猛反撃もここまでのようね。」

「くっ!?甘くみないでっ!!」
舞は、左手に持った鉄扇でリアンの右肩を打ち据えようと振りかざす。

パシッ!

振り下ろした鉄扇は、リアンの右手に受け止められてしまった。

「さっきまでは、一瞬の閃光のようにしか見えなかったあなたの攻撃がよく見える。
そんなんじゃハエが止まるわよ。」

舞は鉄扇の柄に右手を添え、片手持ちから両手持ちに切り替えることで、
なんとか振り抜こうとするが、リアンの右手はびくともしない。

「フフフ・・・。両手持ちでもその程度の力しか出せないの?本当に非力な子なのね。呆れちゃうわ。」

リアンは、扇子をつかんでいる右手に力を込め、拳を握り締める。

グググ・・・バキッ!!

「そっ・・・そんな・・・!?」

刃物や鈍器とも互角に渡り合える強度を持つ鉄扇の骨格部が、
リアンの恐るべき握力によって握りつぶされてしまった。


132桜花散る 11 :06/06/16 18:55 ID:???
「今度はあなたのそのカワイイ顔を握りつぶしちゃおうかしら?」

勝ち誇った表情をするリアンであったが、舞はまだあきらめない。

へし折られてしまった鉄扇の残骸を投げ捨てると、胸元から新しい扇子を取り出して投げつける。
狙う箇所は、リアンの顔面。

「花蝶扇!!」

至近距離から舞が飛び道具を使うとは思っていなかったらしく、
リアンは一瞬躊躇した後、眼前にまで迫った扇子を右手で横に弾き飛ばす。

花蝶扇が防がれることは舞の計算の範囲内。
飛来する扇によって一瞬視界を遮られている間の死角をつき、舞はリアンの足元にスライディングを食らわせる。

左足からのスライディングを受けてバランスを崩したリアンに対し、斜め上に蹴り上げるような右足を突き出すと、
リアンの体が僅かに宙に浮いた。

(今だわ!!)
「ハィイ!!!」
胸元から取り出した三本目の扇子を、舞は裂帛の気合と共に振り下ろす。
大きな弧を描く「小夜千鳥」の一撃は、防御体勢を取れないリアンの体を縦に薙ぐ。

舞の連続攻撃はまだ終わらない。腰から垂れ下がる尻尾状の帯に紅蓮の炎を灯し、
その場でクルリと回転しながら、彼女の十八番の技を繰り出す。

「龍炎舞!!!」
「ぐあっ!?」

リアンの体が炎に包まれているのを確認すると、舞はその場でさらに二回転する。
「龍尾天舞!!」

だが、舞の連撃をいつまでも喰らい続けてくれる程、リアン=ネヴィルは甘い女ではない。
「龍炎舞」の炎に身を焼かれながらも、リアンは体勢を立て直し、「龍尾天舞」の二撃目を受け止めた。
先端に炎を纏っている尻尾のような帯を、両手でがっちりと捕らえたのである。

掌を包む黒いグローブが、炎によってブスブスと焼け焦げたが、つかんだ尻尾をリアンは決して放さなかった。

「あんまり、調子にのるんじゃ・・・・・」
捕らえた尻尾を両手でグイと手繰り寄せ、舞の体を背中側から引き寄せる。
「・・・・ないわよ!!!」
「きゃあっ!?」

軸足払いを食らい、舞はうつぶせ状態で床の上に倒されてしまう。
リアンは舞の大きな尻を右足で踏み潰し、舞の体を床に押さえつける。

そして、舞の尻尾のような帯を両手で力任せに引っ張り続け、そのまま強引にむしり取ってしまった。


133桜花散る 12 :06/06/16 19:02 ID:???
「こうすれば、さっきの目障りな炎はもう操れないでしょう?」
「くっ・・・くそっ・・・・。」

リアンは、舞の装束から引きちぎった尻尾を後方に投げ捨てると、
奇声を発しながら手刀を振り下ろした。

「キェ――――――――ッ!!!!!」

空手の基本技となんら変わらないシンプルな攻撃だが、リアンの暗殺術の中に組み込まれたこの一撃は、
恐るべき威力をもっている。

床に倒れていた舞はゴロゴロと横に転がることで、なんとかこの一撃を回避した。
ふと自分が倒れていた場所に目をやると、リアンが手刀を叩きつけた床に、
真剣で斬りつけたかのような大きな亀裂が入っているではないか。

(なんて威力なの!?あんなのを喰らったらひとたまりもないわ。)

守勢に回ったら殺られてしまう。
舞は後転倒立の要領で反動をつけて下半身を浮かび上がらせると、
床に手刀を叩きつけた直後の、前かがみ状態になっているリアンの首を、両脚で挟み込んだ。

「風車崩し!!!」
自分の脚で相手の首を挟みこみ、そのまま相手を投げ飛ばす、フランケンシュタイナーのような投げ技である。

しかし、この局面でも予想外の事態が舞に襲い掛かる。
リアンの首を両脚で挟みこんだものの、リアンの体が持ち上がらないのである。

先程、「ムササビの舞」に耐え抜いた時と同じ様に両の足で床を踏みしめて、
リアンは舞の投げ技を力でやり過ごそうとしていたのだ。

「あがくんじゃないわよ!」
文字通り目と鼻の先に見える舞の股間を、リアンは右拳で殴りつけた。

「うぎゃぁっ!!」
男女を問わず、股間は鍛えようのない人体の急所である。
純白のショーツに包まれた股間に強烈なパンチを受けてしまい、リアンの首を固定していた舞の両脚の力が緩んでしまう。

力の緩みを感じ取ったリアンは、左右の手でそれぞれ、地下足袋に包まれた舞の足首をつかむと、
自分の首から力任せに引き剥がした。攻守は完全に逆転してしまった。

「そろそろ決めさせてもらうわよ。」

舞の両足首を捕らえたリアンは、そのままグルグルと回り始め、
ハンマー投げをしようとするかのように、舞の体を振り回す。

プロレス技のジャイアントスィングなら、その場で相手を振り回すだけであるが、
殺し屋であるリアン=ネヴィルは、舞の頭を何度も床にぶつけながら振り回し続けた。

後頭部を何度も床に打ちつけられてしまい、その度に舞の意識は遠のきそうになる。


やがて、十分に遠心力がついたと判断したリアンは、舞の足首から手を離す。
舞の体は水平方向に飛んでいき、道場の壁に頭から激突した。
ドォォォン!!!

舞は、壁によりかかったまま、その場で尻餅をつくような格好でズルリと崩れ落ちてしまう。
なんとか立ち上がろうとするが、ジャイアントスィングによってグルグルと振り回され続けていた彼女の体からは平衡感覚が失われており、
その頭は何度も床に叩きつけられた時の衝撃によって脳震盪を起こしていた。

禁じ手「九尾の狐」を発動してから、既に八分近くが経過してしまっている。
制限時間である十分強まで、残された時間はあとわずか。
不知火舞は、絶体絶命の窮地に陥ってしまった。

134名無しさん :06/06/16 19:12 ID:???
今日の投稿はここまで。
予告どおり、他キャラの必殺技を使ってリアン姉さんが暴れております。



135名無しさん :06/06/16 20:21 ID:???
リョナ始まったー。
ドーピング技は予想外の展開でおいしいですね。

136桜花散る 13 :06/06/17 14:10 ID:???
脳震盪を起こし、壁によりかかって座り込んだまま身動きのとれない不知火舞。
そんな彼女に止めを刺すべく、美貌の暗殺者、リアン=ネヴィルがゆっくりとした足取りで近づいてくる。

(まだよ、・・・・まだあたしは死ぬわけにはいかない・・・・・)
心の中でその言葉を何度もくり返し、必死に立ち上がろうとするとする舞であったが、
その身体は思うように動いてくれず、指先がピクピクと動くだけである。

リアンは舞の顎を右手でクイと引き寄せると、甘い声で彼女に囁きかける。
「怖がらなくてもいいのよ。痛いのはほんの一瞬だから・・・。」

もはやチェックメイトの状況にありながら、それでも舞の瞳からはまだ闘争心は失われていない。
不知火流五人衆の仇である目の前の暗殺者を睨み付け、殺気を送りつける。

そんなあきらめの悪い獲物の態度は、狩人であるリアンの加虐心をくすぐってしまう。
「生意気な目ね。でも嫌いじゃないわ。あなた、なかなか私に似ているところがあるもの。」

舞の顔を見つめていたリアンの視線は下へと移り、胸元へと注がれる。

「美人なところも私とそっくり。あなたのようないい女を、私は自分以外に知らない。」

グローブを装着したまま、舞の胸元に両手をあてると、たわわに実った果実のような乳房を装束越しに揉みはじめた。

「いい揉み心地だわ。こんなおいしそうな体を独り占めできるなんて、あなたの恋人は大層な果報者でしょうねぇ・・・。」

「ぐぅぅ・・・くっ・・・・」
露骨な嫌悪の表情を浮かべ、顔をしかめる舞であったが、まだ脳震盪が回復しない彼女にはロクな抵抗がとれない。

舞の体を弄びつつも、リアン=ネヴィルは決して気を緩めているわけではない。
リアンの全身は常に舞の反撃を警戒しており、決定的な隙は絶対にみせつけない。
もし彼女が少しでもおかしな真似をしてきた場合には、すぐにでも首筋をかっきるつもりである。

多くの者の恨みを買い、自分自身常に命を狙われている超一流の暗殺者は、遊ぶ時も寝る時も、
心のどこかで敵の襲撃に備えていなければならないからである。


リアンは舞の胸元から手を放すと、今度は彼女の黒髪を手に取り、つぶさに調べ始めた。

「アジア人特有の漆黒の髪・・・。素敵ね・・・・・、こればかりは流石の私も真似できない。
でもあなたの髪、心なしか艶が失われているわね。あなた最近、男と寝てないでしょう?
彼氏と喧嘩でもしたのかしら?」

「そっ・・・そんなことあるわけな・・・!!」
図星をつかれ顔を赤らめてしまった舞を見て、リアンは大笑いする。

「キャハハハハッ・・・・・!あなた、最高だわ。ホントかわいいわねぇ。
殺しちゃうのがもったいないくらい。大方、全身の火傷痕が気になって、男に抱かれる自信をなくしたってとこかしら?
でも、嘘をつくのは良くないわよ。今、私が確かめてあげる。」

そう言うと美貌の暗殺者は、舞の忍装束の前垂れ部分を捲り上げて、横に押しのけた。
前垂れの下から、純白のショーツに包まれた舞の股間が露わになってしまう。

少しの間、股間を凝視していたかと思うと、リアンはおもむろに自分の両手のグローブを外し始めた。

「なっ・・・!!?一体なにを・・・!!?」
「決まっているじゃない?身体検査よ。あなたのアソコの具合をチェックしてみれば、
あなたが最近、男と寝てないってことがすぐに証明できる。」

「やっ・・・やめなさいっ!!・・・・やめなさいよ!!」
顔を真っ赤にして必死に制止しようとするが、暗殺者は許してくれなかった。
「ダーメ。」

グローブを外したリアンの両手が舞の腰付近に伸ばされ、その中指が、
Tバック型の白ショーツの両端に引っ掛けられる。

舞の反応を楽しむために、リアンはわざとゆっくり、ショーツを引き寄せていく。

「イヤ・・・・・イヤァァァァァッ!!」



137名無しさん :06/06/17 14:20 ID:???
私のキャラ解釈の中では、不知火舞は痴女のような格好をしているものの、その実体
はあくまでも超純情なる初心な乙女。

アンディに対する舞の一途さや、アンディのストイックな性格(修行バカ)を考えた時、
パンツを脱がされそうになっただけで、泣き叫んでしまう不知火舞というのもありなんじゃないかなーと思ったので、
上のような展開を書いてみました。

138桜花散る 14 :06/06/17 19:01 ID:???
討ち果たさなければならない憎き仇によって、思ってもいなかった辱めを受ける。
舞にとって、これ以上の屈辱はなかった。道場の床に転がっている四つの亡骸が目に入る。

牡丹、白百合、夕顔、朝顔。自分を助けようとして、その可憐な命を無残に散らせてしまった少女たち。
椿にいたっては、その亡骸すらも消されてしまった。

彼女たちの仇をとらなければいけないというのに、自分はこんなところで一体なにをやっているのか?
このままショーツを脱がされてしまい、敵にいいように弄ばれた末に止めを刺されてしまったのでは、
悔しくて悔しくて、死ぬに死にきれない。
そもそも自分は、生き残るためにこの死闘に臨んだのではなかったのか。


リアンの人差し指によって手繰り寄せられていく純白のショーツは、舞の膝にまで達していた。
舞は腹が立った。

(お願い動いて、あたしの体・・・・椿、みんな、力を貸して・・・・・・!!!)

脳震盪はまだ回復しきっていなかったが、舞は気合で無理やり立ち上がろうとする。
床に密着していた尻が浮かびあがり、そのまま腰を上げていく。

しかし、舞の反撃を警戒し続けていたリアンの対応は迅速であった。
立ち上がりかけていた舞のおでこを、人差し指と中指でトンと叩く。

「えっ!?」

操り手を失ったマリオネットのようにクニャリと崩れ落ち、舞はペタンと尻餅をついてしまう。

「筋弛緩のツボを突いてあげたわ。私も一時期、気功や秘孔に凝っていたことがあってね。
かなり久しぶりだったから成功するか不安だったけど、どうやらビンゴのようね。」

何が起きたのか分からない様子の舞に対して、リアンは説明を続ける。

「無駄無駄。しばらくの間は指一本、動かせやしないわ。でも正直驚いた。
こんな短時間でもう立ち上がってこようとするなんて。なかなか見上げた根性だわ。
ご褒美よ。身体検査は中止。今すぐ、止めを刺してあげる。」

予想以上に早い獲物の回復に警戒感を強めた凄腕の暗殺者は、遊びを中断し、
不知火舞の処刑執行を決意したのである。

脱がせかけていた純白のショーツを元の状態に戻してやると、リアンは両手の掌を組み合わせて、
頭上高くに振りかぶる。

「なかなか楽しかったわよ、不知火舞。いい夢を見なさい・・・・・・。」


139桜花散る 15 :06/06/17 19:10 ID:???
風を切って勢いよく振り下ろされたその両手には、さながら巨大なハンマーや斧のような打撃力がある。
叩きつけられた拳によって舞の頭が粉々になり、鮮血と脳症が空中にブチまけられる。


そんな光景をイメージしていたリアン=ネヴィルの眼前で、信じられないことが起こった。

指一本動かせないはずの女忍者の身体が煙のように忽然と消え去り、暗殺者の両手は、
誰もいない空間を通過して、木張りの床を叩き割った。

(バカな!?あの子は一体どこに!!?)

蝋燭によって照らし出されている足元の床の上、リアンの体と垂直の方向に、一つの影法師が通過していく。

(斜め上空?いや、背後に移動している?)

そう思った直後、決め技直後の硬直から抜け出せないリアンの背中に激痛が走る。
「花蝶扇!!!」
「ぐあぁっ!!」

突如襲い掛かってきた痛みに仰け反りながらも、攻撃の主を追うためにリアンは慌てて振り返る。
振り返った瞬間、彼女のみぞおちに突き刺さる舞の肘。

「ぐっ・・・・がはぁっ!!?」

まるで魔法を見せつけられているかのような瞬間芸。
体をくの字に折り曲げながらも、その場でなんとか踏ん張ろうと、リアンは両脚に力を込める。
だが、踏みとどまれない。

あの非力な女忍者のどこにこんな力が隠されているのかという猛烈な勢いで突進され、
リアンの体はスケートリンクの上を滑走するかのようにズルズルと後退していく。


ドンッ!
そのまま、道場と中庭とを区切る戸板に背中から叩きつけられる。

舞の腰に、先程むしり取ってやった尻尾のような帯が結び付けられていることに気づく。
背後から扇子を喰らってのけぞっていたわずか一〜二秒の間に、
床の上に投げ捨てられていた帯を回収していたのだろう。
まさに神速と言うべきくのいちのスピードに驚愕する。

リアンのみぞおちに肘を突き刺した密着状態のまま、白装束姿の不知火舞が語りかけてくる。

「手品のタネを教えてあげる。敵の秘孔術に対する耐性を身につけておくことは、不知火流くのいちの修行の一環。
あなたに筋弛緩のツボを突かれて動けなくなったフリをアタシはしていただけ。
敵を欺く、くのいちの迫真の演技、ご堪能頂けて?」

「ぐっ・・・おのれぇぇぇぇぇぇっ!!」
反撃しようとするリアンであったが、その全身を激しい炎によって包まれてしまう。

「この間のような手加減をしてあげることは、今のあたしにはできない・・・・・・」

四ヶ月前のナガセとの闘いにおける最終局面のことを舞は言っているのだが、
紅蓮の業火に身を焼かれているリアンにそんなことは知る由もない。

ただ、今の不知火舞が自分に対して向けている眼差しがどこまでも冷たいものであり、
黙々と暗殺の仕事をこなしている時の自分の表情によく似ているということだけはよく分かった。

「お覚悟っ!!不知火流究極奥義・・・・・・・・」

凛とした台詞と同時に、リアンの体を焼く炎は勢いを増し、
腹に突きたてられた肘には更なる力が上乗せされ、より深く彼女のみぞおちにめり込んでいく。

「超 必 殺 忍 蜂 !!!!!!!」

リアンの背後の戸板に大きな亀裂が入り、バキバキと音をたてて壊れていく。

「まだ終われないのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

背後の戸板が木っ端微塵にブチ破れ、絶叫を上げるリアン=ネヴィルの体は、
道場外の中庭にまでふっ飛んで行った。



140桜花散る 16 :06/06/17 19:14 ID:???
「ぐっ・・・・。」
リアンを道場の外に吹き飛ばした後、不知火舞は道場の床にガックリと肩膝をついた。

超活性状態にある肉体機能を最大限まで引き出してしまった彼女は、肩で息をしながら苦しげな表情を浮かべる。
全身には大量の汗をかいている。それは必ずしも、激しい運動によって生じたものばかりではなかった。

水分を吸った白い忍装束の薄布は、ピッチリと舞の肌に張り付いており、胸元の布地越しには桃色の乳首が透けて見える。

「ヘヘッ・・・・。さすがにちょっと、無理し過ぎちゃったかな。でもまだやることが残っている。」

舞はヨロリと立ち上がると、中庭に向かって歩き出した。

たった今自分が放った超必殺忍蜂は、間違いなくこれまでの格闘家人生の中での至高の一撃。
その直撃を喰らったリアン=ネヴィルが五体満足な筈はない。
彼女が受けたであろうダメージの大きさは、技を放った舞をして想像を絶するものがある。

この勝負が格闘大会での手合わせならば、審判は間違いなくリアンのKO負けを判定するであろう。

だが、今回は事情が違う。リアンの目的が舞の暗殺である以上、
ここで彼女を取り逃がせば機会を改めてまた命を狙ってくる可能性が極めて高い。

加えて、舞は自分の友人たちの命を奪ったあの女を許すわけにはいかない。

リアン=ネヴィルに止めを刺さなければならない。

舞の肉体を活性化させている秘術の持続時間は、おそらくあと30秒位しか残されていない。
その時間が過ぎれば、術の副作用によって舞の肉体機能は崩壊し、彼女の格闘家人生に絶対的な終焉が訪れる。

もう引き返すことはできない。格闘家としての不知火舞の余命はあと30秒。
それまでに、リアン=ネヴィルに止めを刺さなければならない。

純然たる決意を胸に、舞は道場の外にある、中庭へと足を踏み出した。


141名無しさん :06/06/17 19:15 ID:???
次回の投稿分で、完結を迎える予定です。

142桜花散る 17 :06/06/18 13:09 ID:???
フラフラとした足取りで、舞は中庭を歩いていく。
禁じ手「九尾の狐」の持続時間はまだわずかに残されているはずだが、術の副作用はすでに表れ始めていた。

(時間がない・・・・。急がないと。)

道場から20メートルほど歩いたところで、地面の上に大の字で横たわるリアン=ネヴィルの姿を発見する。

「超必殺忍蜂」の業火によって焼かれた暗殺者のボディースーツは、いたるところが焼け焦げており、あちこちが破損している。
特に、舞が肘を撃ち込んだ腹部の箇所は損傷が激しく、ヘソ付近の肌が完全に露出している。

口をアングリと開けたまま、白目を剥いているリアン=ネヴィルの体はピクリとも動かない。

(どうやら止めを刺す必要はなさそうね・・・。)

念のため、舞はリアンの左胸に耳をあてて、心音を確認する。

(止まっている・・・・。)

(勝ったんだ・・・・あたし、勝ったんだ。)

絶体絶命の窮地から、起死回生の一撃を成功させ、不知火舞は死闘を制したのである。

(椿、牡丹、白百合、夕顔、朝顔、仇は討ったわよ・・・・。)


舞はふと、中庭の中央に生えている桜の老木に目をやる。
不知火流忍者の先祖が苗を植え、江戸時代にはすでに存在していたといわれる見事な桜の木である。

最近はまだ寒い日が続いていたが、よく観ると、桜の木の枝にはツボミがつき始めている。

(部屋に閉じこもってばかりいたから気づかなかったな。もう春はすぐそこまで来ているのね。)

あと二週間もすれば、この桜は美しい花を咲かせるだろう。
そして、一年後も二年後も、春になれば見事な花を見せてくれることだろう。

舞の肉体の超活性は、間もなく持続時間を使い果たす。
それと同時に、不知火舞はその格闘家生命を完全に絶たれることになる。

だが、今の舞の心には、先日までのような絶望感は微塵もない。
命があるだけでも感謝しなければならないのだ。

六年前、クラウザー達との闘いの中で命を落とした、舞の師にして祖父である、不知火半蔵。
そしてつい先程、舞を助けるために命を落とした不知火流五人衆の少女たち。

彼らの命によって守られて、自分は今生き永らえているのである。
自分は彼らの分まで、ひたむきに生きていかなければならない。
それが、生きている者の務めだ。

もう一度、桜のつぼみに目をやる。

(アンディが帰ってきたら、仲直りしないと・・・。北斗丸も連れて、
三人でお花見に行きたいな・・・・。今年も来年も、再来年も・・・。)

万が一、「九尾の狐」の副作用で廃人になってしまっても、アンディは自分の傍にいつまでもいてくれるだろうかと、ふと心配になる。


強化術の持続時間はあと10秒。
最後にひとつ、やっておきたいことがあった。
五人もの仲間が命を落とし、やむを得ずとはいえ、対戦相手の命も奪ってしまった。
それにも関わらず、こんなことをするのは不謹慎なことかもしれない。

だけど、どうか許して欲しい。
自分の格闘家人生最後の大勝利の余韻を、もう少しだけ味わいたいのだ。

不知火舞は、広げた扇子を片手に大見得を切った。

「いよっ、にっぽんいち〜!!」

桜の木を背景に、勝利のポーズを決める大和撫子。


そんな彼女の背後で、黒い影が音もなく立ち上がった。


143桜花散る 18 :06/06/18 13:20 ID:???
「気 を 抜 い ち ゃ ダ メ よ。」

死神の声にハッとなるが、後ろを振り向く暇すら与えてもらえなかった。
舞の細い首に、真っ黒な右腕がスルリと巻きつく。

「なっ・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!??」

あまりに驚愕すべき事態の前に、舞は満足に声を発することも出来ない。

「キャハハハハハッ!!捕まえたわ、もう絶対に放さない。」

背後からの狂女の声に、身の危険を感じ、巻きつけられた腕を打ち払おうと、
慌てて扇子を振り上げるが、その手首は背後から伸びてきた左手によって押さえつけられてしまう。

漆黒のグローブに包まれたその手は、万力のように舞の手首を限界まで締め上げていく。

ブチャッ!!

筋肉と骨と血管がまとめて引き千切れる音が響き、舞の左手首はグチャグチャに握りつぶされてしまった。

「うぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

機能を失ってしまった掌がダラリと垂れ下がり、指の間から扇子がこぼれ落ちる。

舞の背後を取っている死の女神、リアン=ネヴィルは、間隔を置かずに次の行動に移っている。
「超必殺忍蜂」の直撃によるダメージで、彼女の体もまた限界寸前ではあった。

だが、何度も死線を潜り抜けてきたその体は、このような死ぬか生きるかの場面で度々奇跡を起こしてきた。
右腕に力を入れ、舞の小柄な体を持ち上げる。

首に巻きつけられた右腕一本によって宙吊り状態にされてしまった舞の腹に、
リアンの左手刀が押し当てられる。

「フ ァ イ ナ ル ブ リ ン ガ ー!!!!」

ズギュォォォォォォォォォォォォォ!

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

ストームブリンガーを遥かに上回る吸引力によって、舞は、体内に残された闘気を一滴残らず吸い上げられてしまう。
襲い掛かる激しい倦怠感。
力を失っていく女忍者とは対照的に、限界寸前だった暗殺者はその剛力を取り戻していく。

「ごちそうさま。これであなたはただのデクの棒。心おきなく止めが刺せる。」

もっとも、「九尾の狐」のタイムリミットをすでにオーバーしてしまった舞の体組織は急速に崩壊をはじめており、
たとえ闘気が残されていたとしても、その肉体は全く使い物にならない状態に陥っていた。

格闘家としての不知火舞はすでに死んでしまっていたのだ。



144桜花散る 19 :06/06/18 13:22 ID:???
舞の首に巻きついているリアンの右腕に、左腕が垂直に添えられる。
首を完全にロックされてしまい、そのまま圧倒的なパワーによって締め上げられる。

抵抗したくても、舞の体は指一本動かない。
自分の命の灯火が消えていく過程を、ただただ呆けたように見つめることしかできない。

「最後に手品のタネを教えてあげる。あなたの隙をつくために、私はずっと死んだフリをしていたの。
クノイチさえも欺く私の演技力は、オスカー並みでしょう?
なんたって、本当に心臓を止めておいたんだから。」

首を圧迫され続け、意識が朦朧としている舞は理解した。
リアン=ネヴィルが、自らに秘孔術を施して、一時期的に心臓を停止させていたのだということを。

「これはとても危険な賭けだった。
停止した心臓を何秒後に蘇生するのかというタイミングを誤ったら、冗談じゃなく本当に死んでしまうのだから。
でも私は賭けに勝った。あなたの負けよ、不知火舞。・・・・・・・あらっ、聞いてる?」

リアンの腕の中で、舞はすでに失神していた。
瀕死の魚のように口をパクパクと動かしながら泡を吹き、彼女の目玉は裏返り、白目を剥いてしまっている。

「もし、あらかじめストームブリンガーであなたの闘気を減らしておかなかったらと考えるとゾッとするわ。
あなたの大技で、多分私は即死していたでしょうから。でも、勝負は時の運。
あなたはよく闘った。ゆっくりとお休みなさい。」

気絶している舞の唇におやすみのキスをした後、改めて首をロックする。
両腕に力を込めて、そのまま捻るように回転させる。

「ムンッ!!」
ゴキッ!

首をへし折られた舞の体はしばらくビクビクと痙攣を続けていたが、
その動きもやがてなくなり、冷たくなっていく。

美貌の暗殺者は、最早ピクリとも動かなくなってしまった獲物の前垂れ布を摘み上げてみた。
舞の股間を包む純白のショーツからは、黄色い液体がチョロチョロと染み出している。
それは、舞の魂がすでにその身体から抜け出してしまったことを証明していた。


不知火舞、享年24歳。
春の到来を目前にして、可憐な桜はその命の花を散らせてしまった。


145名無しさん :06/06/18 13:36 ID:???
それから三日後。
アデスの巨大プラントに、ジヴァートマとジャランジの姿があった。

「礼を言うぞ、ジヴァートマ。お前のお陰で、不知火舞を無事手に入れることができた。
遺体の状態劣化を防ぐために、冷凍処理して輸送してくれた心遣いも実に嬉しい。」

「礼には及ばんよ。今回の任務では、リアン=ネヴィルが実に素晴らしい働きをしてくれた。
私はただ、遺体の回収と輸送に立ち会っただけのこと。」

彼らの正面には、小さな氷山のような氷の塊がある。
高さはおよそ五メートル。
綺麗な直方体の形をした巨大な氷の塊の中心部に、不知火舞はいた。

より正確に言えば、純白の忍装束に身を包んだままその身を清められ、
銀色の十字架に磔にされてしまった舞の亡骸がそこにはあった。

十字架磔の姿で氷漬けにされた炎使いの女忍者。
その光景は美しくも背徳的であり、邪悪な悪魔の手に落ち封印されてしまった天使のようである。

「美しい・・・。何度観ても、決して飽きない素晴らしい芸術品だ。ジヴァートマよ、
こんな気の利いた小道具をなぜ短期間で用意できたのだ?」

「その氷の棺と十字架は、元々はあのルイーゼ=マイリンクを封印するために私が用意しておいたものだ。
今回の君の依頼のお陰でこれが無駄にならずに済んだことは、私にとっても嬉しい。」

当初の使用目的とは異なってしまったが、これも悪くないとジヴァートマは思っていた。
ルイーゼ=マイリンクと不知火舞。
全く雰囲気の異なる女性であるように思えるが、彼女達はどちらも蝶を連想させるという点で共通している。

ルイーゼ=マイリンクが、星空を渡り歩く幻想的な胡蝶だとすれば、
不知火舞は、和の美を持った華麗な蝶。美しい蝶の標本はいくつあってもいい。
もしルイーゼが今度自分の前に現れたら、是非とも氷漬けにして、舞の隣に並べてやりたいものだ。



146桜花散る 21 :06/06/18 13:37 ID:???
「ところでジャランジよ、君はこの不知火舞の戦闘データを基に、
今度はどんな改造強化人間を作り出すつもりなのかね?
データを手に入れたところで、その移植先である被験体がいなければ意味がないような気がするが。」

「ジヴァートマよ、お前は何か勘違いをしているようだな。確かに私の部下の研究員の中には、
彼女の戦闘データでナガセのスペックを強化したいと考えている者もいる。
だが、私が不知火舞を捕獲したかったのは、もっと個人的な理由によるのだよ。」

「個人的な理由?まさか君は・・・・・」

「そう。不知火舞の肉体を、私の新しいボディとする。これ程素晴らしい肉体には滅多にお目にかかれないからな。
少し早いが、『着替え』をすることにしたよ。」

ジヴァートマやジャランジを含め、「アデス」最高幹部のほとんどは、「ゾア」という地球外生命体である。
彼らは人間の体に憑依することで、その肉体を自分のものにすることができるだ。

時には胎児に憑依し、時には命を落とした戦士の遺体に憑依し、
その肉体を次々に乗り換えながら、彼らは悠久の時を生き続ける。

二メートルを超える長身痩せ型の今のジヴァートマの体も、
かつて彼に敗れ命を落としていった、とある格闘家の肉体である。

ジャランジは今、自分の新しい憑依先として、不知火舞の亡骸を選ぶと宣言したのだ。

ジヴァートマはジャランジに言う。

「素晴らしい肉体か・・・・・。確かにこの小娘は、女性格闘家にしては、
素晴らしい戦闘能力を持っていたな。
だが、不知火舞よりももっと適格な肉体が他にもあるのではないかね?

この星の生物における雄・雌の概念など、我々『ゾア』にとっては大して意味のないこと。
四ヶ月前のKOFに参加していた、伝説の狼や無敵の龍、草薙流古武術継承者など
の方が我々に相応しいようにも思えるが。」

「自分の新しいボディを選ぶ際、機能美ばかりを優先してしまうのはお前の悪い癖だ、ジヴァートマ。
時には形式美を優先することも大事だぞ。それに、非力な女の肉体だろうと、
使い方次第では十分モノになるということを、我々の敵であるルイーゼが証明してくれた。
先のKOFにおけるお前との闘いの中で。」

「フッ・・・。それを言われると辛いな。君はよっぽど不知火舞が気に入ったと見える。
うら若き乙女の肉体への『着替え』に立ち会うのは紳士の行いに反する。
私はそろそろ失礼するとしよう。」

ジャランジに背を向け、部屋を出て行こうとしたジヴァートマは、
「ククククク・・・・」という笑い声を耳にした。

振り返ると、氷漬けにされた不知火舞の体をマジマジと見つめながら、
小刻みに肩を震わせているジャランジの姿が目に入る。

「どうかしたのかね?」

「いやっ、なんでもない。不知火舞の姿をした自分が自慰行為にふけっている光景を想像していたら、
つい笑みがこぼれてしまってな。
女の肉体を奪って憑依し、自分の裸体を見ながら自慰行為にふける・・・・・。最高の暇つぶしだ。」

「・・・・・・・・また会おう。さらばだ。」

ジヴァートマは部屋の外へと去って行った。




「死んだはずの女性格闘家・不知火舞が実は生きていて、
『アデス』の最高幹部として暗躍しているらしい・・・・・・・。」

そんな黒い噂が、サウスタウンの格闘家たちの間に流れはじめたのは、それから数ヵ月後
のことであった。

〜完〜

147名無しさん :06/06/18 13:47 ID:???
三作目にしてついにやってしまいました、舞さんご臨終です。
しかもラストがファンタジーに猟奇です。気分を悪くされた方がいたらすみません。

背後からの花蝶扇→超必殺忍蜂
の連携で勝利を収めたかにみえた舞が、背後から首を絞められて殺られてしまうという展開は、
餓狼の劇場版アニメで舞に倒された、女戦士パーニーの怨念というつもりで書いてみました。

救いようのないバッドエンドになってしまいましたが、これにて終了。


148名無しさん :06/06/18 16:13 ID:???
作者さん乙です。
とても楽しく?読ませていただきました。
また、そのうち次回作が読めることwktkしながら待ってます。

149名無しさん :06/06/18 21:51 ID:???
完結お疲れでした。今回も楽しませていただきました。
しかし舞がリョナられるのが当然なのですが、
ストーリーがしっかりしてるのでむしろ舞に勝って欲しいと思ったりも・・・。

次があるとしたら今度は男キャラ相手がいいなー。

150名無しさん :06/06/19 15:19 ID:???
>>147
GJ!!!
勝利を目前にしながらの急降下っぷりがたまりません。
ラストも個人的にはツボです。(特に氷漬けの標本にされてしまうところ)
これからも我らのヒロイン不知火舞を、ボロボロに退治してやってくださいw

151147 :06/06/19 22:06 ID:???
>>148-150
ありがとうございます。自分自身のお楽しみを第一目的に、勝手きままに書いているSSではありますが、
他の方に読んで頂いたり、感想を書き込んで頂いたりできるのはスゴク嬉しいし、励みになります。

最近は、ジャンルとしての格ゲー人気が下火なうえに、新キャラの台頭やら、ゲームファンの世代交代
やらのせいで、不知火舞の人気や知名度自体が落ちてきているような気がします。
そんな中で、舞のSSを投下した時に、そのネタに付き合って下さる方々がいらっしゃるのは、非常にありがたいことです。


>しかし舞がリョナられるのが当然なのですが、
>ストーリーがしっかりしてるのでむしろ舞に勝って欲しいと思ったりも・・・。

いや〜、ご期待に応えられず、申し訳ないです。私のリョナ嗜好において、
「強くて健気なヒロインが、骨の髄まで敗北してしまうこと」
に重きが置かれているため、望月戦、ナガセ戦、に続き、今回も舞を敗者にしてしまいました。

>次があるとしたら今度は男キャラ相手がいいなー。

実は、次に挑戦してみたいシチュはすでにひとつあって、そう遠くないうちに
書いてみたいと思っています。
元ネタ的には「餓狼伝説 Wild Ambition」(初代餓狼の3Dリメイク)。自信過剰で未熟者な、
小娘時代の不知火舞が、男の格闘世界の痛烈な洗礼を受けるという内容になると思います。

すでにマンネリ化が表れはじめている、ど素人の稚拙な文章ではありますが、
その時は、またお付き合い頂ければ幸いです。

以上、長カキコ、失礼しました。


152名無しさん :06/06/20 20:31 ID:???
次回作の構想もあるみたいでとても楽しみです。
私も不知火舞がいまだに好きですし、リョナキャラとしても一番好きなので応援してます。

153名無しさん :06/07/02 14:58 ID:???
次は山崎やライデン相手だとうれしいな

154餓狼伝説前夜 1 :06/07/03 01:23 ID:???
世界最大規模にして最高レベルの格闘大会、「キング・オブ・ファイターズ(KOF)」。
現在でこそ世界各地を闘いの舞台とし、名うての大企業がスポンサーとなって大々的に開催される表社会の格闘大会であるが、
元々はとある街を舞台に、この地の大物ギャングによって開催される裏社会の大会であった。

1979年、北アメリカの東南部に位置する一大貿易都市であるサウスタウンにおいて、
第一回キング・オブ・ファイターズを開催した一人の男がいる。
その名はギース=ハワード。
当時26歳という若さでありながら、既にギャング組織における大幹部の座を手に入れていた彼は、
この賭け大会によって莫大な利益を生み出し、それから間もなく組織を乗っ取ることに成功した。

組織の頂点に立った彼は、自らの名前を付した財閥「ハワードコネクション」を設立。
もはや、暴力と恐怖のみで街を支配できる時代は終わったと考え、電力、鉄鋼、石油化学、金融など表世界のビジネスに進出。
それらをことごとく成功させ、稀代の敏腕事業家として、合衆国全土にその名を轟かせた。
それと同時に、「ハワードコネクション」は、
本拠地であるサウスタウンを中心に賭博や麻薬取引、売春統括、武器密輸、盗品故買などの闇ビジネスを大々的に展開。
表・裏双方のビジネスによってギースは巨万の富を築き上げていくことになる。

さらに、事業で得た金を利用した贈賄を繰り返すことで、政治家や警察、司法関係者などの権力や発言を無力化。
サウスタウンの絶対の支配者を目指すギース=ハワードを止めようとする邪魔者たちは次々に排除されていった。

1981年、かつてギースが師事していた八極聖拳総帥・タン=フールー老師の一番弟子にして、
長年の宿敵であったジェフ=ボガードが、ギース自身の手によって殺害された時、彼の野望を止められる者は、この街から一人もいなくなった。

ジェフの死後、ギースは格闘大会「キング・オブ・ファイターズ」を毎年開催するようになる。
表社会と裏社会、双方のビジネスによって十分過ぎる程の利益を得られるのにも関わらず、
賭け大会であるKOFを彼が開き続けるのにはもちろん理由があった。
それは、ギースがこの世で最も憎み、最も恐れるシュトロハイム家に対抗し得る戦力を整えるために他ならない。

ヨーロッパ全土の裏社会を支配する、ドイツの闇の貴族、シュトロハイム家。
歴代最強とも呼ばれるこの一族の現当主は、ギース=ハワードにとって腹違いの弟であり、名をヴォルフガング=クラウザーという。
裏世界の頂点の座をかけてクラウザー一派と闘う時に備え、ギースは凄腕の格闘家を必要としていた。

有能な手駒をスカウトするために、彼は毎年KOFを開催したのである。
果たして彼の狙いは成功し、80年代の10年間が終わる頃には、腕に覚えのある格闘家たちが多数、ギースの軍門に下っていた。
彼らは格闘家というよりは殺し屋といった方がふさわしい残虐なファイター達であった。

その中でも、「歩く凶器」の異名を持つ棒使いビリー=カーン、極悪非道の巨漢プロレスラーライデン、
堕落したかつてのムエタイ王ホア=ジャイ、の三人は強さにおいても凶暴性においても抜きん出た存在であった。
彼らを部下に加えたことによって、「ハワード=コネクション」の戦力は、クラウザーのシュトロハイム家との全面対決にも耐え得るレベルに近づいていた。

この頃になると、北アメリカの経済社会において、「ハワードコネクション」のビジネスが生み出す巨大な付加価値は、
これを消滅させるにはあまりに惜しいと思える程に成長してしまっていた。
もはや合衆国大統領であろうと、ギース=ハワードにうかつに手を出すことはできない。

サウスタウンに住む人々は、貧民層であれ富裕層であれ、チンピラであれ学者であれ、
ギース=ハワードを絶対的な支配者として受け入れつつあった。

第一回キング・オブ・ファイターズが開催された1979年から、わずか10年間。
たったそれだけの期間で、一都市の一人のギャングに過ぎなかった男は、
事実上アメリカ大統領とも対等に駆け引きが出来るほどの、悪のカリスマにまで登りつめていたのである。


155餓狼伝説前夜 2 :06/07/03 01:29 ID:???
ところかわってここは日本。
1990年7月のある日のことである。カラリと晴れた真夏の昼下がり。

今年の元旦に17歳の誕生日を迎えた不知火舞は、九州熊本県の山田道場で、柔道家山田十平衛と闘っていた。
この決闘を見守る人間は、彼らの身内のみ。
審判役を務める舞の祖父、不知火半蔵。そして山田十平衛の二人の孫娘、華歩と詩歩。
今、広い道場の中には五人の人間しかいない。

「舞ちゃんがんばれー!」「おじいちゃんなんて、ぶっ飛ばしちゃえ〜!」
二人の若い娘たちは、祖父である十平衛ではなく、同性であり年齢も近い舞に対して黄色い声援を送っている。

道場の外ではアブラゼミがミンミンと鳴いている。
腕も脚も完全に露出させ、極薄の布を引っ掛けただけのような大胆なデザインの忍装束に身を包む不知火舞は、
涼しげな顔でステップを踏んでいる。
まだ大して汗をかいていない美少女とは対照的に、柔道着の上に赤いちゃんちゃんこを羽織った老人、山田十平衛は、
滝のように大量の汗をかいている。

それは、真夏の九州地方の炎天下で、彼が目の前の少女よりも厚着をして闘っているせいだけではなかった。
舞の圧倒的なスピードによって翻弄され、未だに彼女に大したダメージを与えることができていない十平衛。
技のキレや破壊力は68歳になった今でも健在だが、スタミナ面では生命力に溢れる若者に敵うはずがない。

少女の撹乱戦法によって、少しずつダメージを蓄積されてしまい、すでに老人は肩で息をしている。
反対に、優勢に立っている舞は上機嫌であり、手にした扇子をヒラヒラさせながら、十平衛を挑発する。

「ホラホラ、どうしたの〜?山田のお・じ・い・ちゃん。ひょっとして、もうバテちゃった?これで扇いで差し上げましょうか?」

「ハァ…ハァ……。大きくなったのは背丈と胸だけじゃと思っておったが、忍者としてもエラク腕を上げたもんじゃなぁ、舞ちゃん。
それに心なしか性格まで変わってしまったような気が…。
中学生の頃まではもっとこう、おしとやかなレディだったと思うんじゃが……。」

「まぁっ!!失礼しちゃうわね!!あたしは今だって、清楚でおしとやかなレディですよーだ。
無駄口ばっかり叩いてないで、大人しくあたしに倒されなさい!!」

威勢良く啖呵を切る勝気な少女を見つめながら、十平衛はため息交じりに言う。

「とんだじゃじゃ馬娘になってしまったもんじゃ。
だがこの山田十平衛、たとえ老いても十六〜七の小娘に遅れを取るほど、衰えてはおらんぞ!
舞ちゃんの技は全て見切らせてもらったわい」

下駄を脱ぎ捨てて素足で畳を踏みしめ、静かに構え直す老柔道家。
道場内の空気がピリピリと張りつめる。

(十平衛の奴、本気を出すつもりだな……)
審判役の不知火半蔵は、長年技を磨きあってきた戦友が、久しぶりに鬼の本性を表そうとしていることに気がついた。


156餓狼伝説前夜 3 :06/07/03 01:35 ID:???
「ホッホッホッ。あたしのスピードに、ちっともついてこれないくせに強がっちゃって…。
負け惜しみなんて、見苦しいだけよ。これでも喰らえっ!!」

十平衛に向かって側転しながら、舞はその勢いで強烈な肘打ちを繰り出した。

「必殺忍蜂!!」
「ほいさっ!」

柔道着の上に赤いチャンチャンコを羽織った老人は、突進してくる舞をあっさりといなすと、
バランスを崩して足をもつれさせている少女にスライディングを喰らわせる。

「うっ!?」

顔からベシャリと畳の上に倒れこんでしまった舞の体を、十平衛はひょいと担ぎあげ、俵投げにしてしまう。

「あぁぁっ!!?」

フワリと放り投げられた舞は、大きな浮世絵を貼り付けたついたてに激突する。

ガシャーン!!

ついたてもろとも、畳の上に転がる美少女くのいち。

「ヒョッ、ヒョッ。こりゃまた素晴らしい美人画じゃな」
「くうっ!!」

大きな浮世絵を背に、仰向けに倒れていた舞は慌てて起き上がる。
そのタイミングにピタリと合わせて飛んでくる巨大なせんべい。

「きゃっ!?」

舞の顔面に直撃し、せんべい手裏剣が砕ける。
ダメージは微々たるものだが、不意をつかれ驚いた拍子に、尻餅をついてしまう。

「カーカッカッ!!柔よく剛を制すじゃ。まぁもっとも、舞ちゃんの場合、
体も技の威力も軽すぎて、とても剛と呼べたもんじゃないがのう」

(流石だな、十平衛。あっという間に、闘いのペースを掌握してしまった。この勝負、舞の負けだな……)
半蔵の予想通り、冷静さを失ってしまった舞は、大振りな攻撃に出てしまう。

「このぉっ!!」
大胆なデザインの桜色の忍装束に身を包む美少女は、高笑いする十平衛に対してお返しとばかりに鉄扇を投げつける。
「花蝶扇!!」

「甘いわぁぁっ!」
身長164cmの舞よりもさらに小柄な156cmの十平衛は、飛来する扇子の下を地を這うような低姿勢のダッシュで潜り抜けると、
そのまま舞の懐まで一気に間合いを詰め、彼女の装束の襟元につかみかかった。

「しまった!」
「フン!なかなか見事な手首のスナップじゃが、技を放った後が隙だらけじゃぞい。
この通り避けられてしまえば、手痛い反撃を喰らうことになるから注意せんとな〜」

そう言うやいなや、小柄な老人は舞を捕えたまま、高く高く跳び上がった。
その高さ、約10m。
投げ技から脱出しようと焦る少女であったが、
竜巻のようにグルグルと回転しながら空中に連れ去られていくため三半規管が麻痺してしまい、
襟元をつかむ十平衛の両手から逃れることができない。

「ワシの勝ちじゃあぁぁぁぁ!!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!?」

道場の天井を三角跳びの要領で足底で蹴り、垂直方向に急降下する十平衛はその勢いのまま、
舞を脳天から床の畳に叩きつけた。

ドゴォォォォォォン!!!

爆弾が弾けたかのような衝撃を頭に受けて、錐揉み状態でクルクルと吹き飛び、
受身も取れずにドサリと畳に落下した若いくのいちとは対照的に、熟年の柔道家は華麗に着地する。

「あぁっ!?舞ちゃん、しっかりして!」「おじいちゃんったらヒドイ!今、間違いなく本気だったよ!」
畳の上に転がったまま動かない舞を介抱しようと、十平衛の孫娘たちが駆け寄ろうとするが、審判役の不知火半蔵が彼女たちを制止する。


157餓狼伝説前夜 4 :06/07/03 01:40 ID:???
「ゼェ…ゼェ…。年は取りたくないもんじゃの〜。
若いモンを仕留めるには、一撃必殺の大技で一気に勝負をつけなきゃならん。
それにしても、このワシに“ダイナマイトいずな落とし”まで使わせるとは、舞ちゃんは末恐ろしい女の子じゃわい」

うつ伏せに倒れている舞のお尻を、十平衛が足でグリグリと踏みつけるが、少女は失神したまま動かない。
それを確認した十平衛は、厳しい表情で不知火半蔵に話しかける。
「さてと……半蔵よ、本当によいのじゃな?」

問いかけられた老忍者は、同じく真剣な表情でそれに答える。
「あぁ、構わない。あらかじめ打ち合わせた通りにやってくれ」

「承知した。あまり気は進まんが、友であるお主と舞ちゃんのために、ワシは心を鬼にしよう」

山田十平衛は、気絶している舞の体を裏返し、仰向けにすると、彼女のお腹に馬乗りに跨った。
そして、軽い平手打ちを何回か頬に喰らわせ、少女の目を覚まさせた。

「うぅ………。ハッ!?私、一体…?」
「お目覚めかのう、舞ちゃん?」

「いっ…痛い。頭がガンガンする…。私、負けたの?」
「い〜や、まだまだじゃよ。舞ちゃんが“本当の意味で負ける”のはこれからなんじゃから……。
試合の終わりと闘いの終わりは必ずしも一致しないんじゃ」

「えっ、どういうこと?勝負はもうついたのに、どうして山田のおじいちゃんはそんな怖い顔してるのよ。
お願い、この人を止めてよ、おじいちゃん!!」

舞は自分の祖父である半蔵に助けを求めたが、半蔵は厳しい表情をしたまま相手にしてくれない。
それどころか、冷たい言葉で孫娘を突き放す。

「舞よ、この道場に来る前にワシはお前に言っておいたはずだ。
今回は単なる手合わせではなく、命を賭けた格闘家同士の殺し合いを想定した上での闘いであると。
その厳しさや怖さを、最後の最後まで十平衛に教えてもらいなさい」

「半蔵さん、一体なにを考えてるんですか!?舞ちゃんは女の子なんですよ!!」
「そうですよ、半蔵さん!!おじいちゃんも馬鹿なマネはやめて!相手は舞ちゃんなのよ!!」

「口出しは無用!!!君たちもワシも、これ以上ここに居てはいけない。さぁ、来るんだ!」
そう言うと、不知火半蔵は、十平衛の二人の孫を無理やり連れて道場の外へ出て行ってしまった。
広い道場には、舞と十平衛の二人だけが取り残された。

「これで分かったかの?そういう訳じゃ、舞ちゃん。いや、不知火舞よ。
貴様にはこれから、闘いに敗れたくのいちの末路というものをたっぷりと味あわせてやるぞい」

畳の上で舞を組み敷く十平衛の眼がギラリと光る。
そこには、彼女が昔からよく知っている好好爺の顔はなかった。
かつて太平洋戦争末期に、完全武装のアメリカ軍一個中隊を素手で全滅させたという伝説を持つ、
「鬼の山田」の顔がそこにはあった。

小柄なはずの老人の体が、巨大な鬼神に変化したかという錯覚を起こす程に、
凄まじい殺気を全身に浴びせられ、舞の頬をヒンヤリとした脂汗が伝わる。

(こっ…殺される。私、殺される?)

「そっ、そんな……。冗談でしょう、十平衛先生?お願いだから嘘だって言ってよ」
「往生際が悪いぞ、この小娘がぁぁぁ!!!助かりたければ、死にもの狂いで抵抗してみせるんじゃあぁ!!!」

「あっ………あっ……あぁ…!?」
「どうした、抵抗せんのか?しないのなら遠慮なくいかせてもらうぞい!!」

「きゃっ!やめ…あぁっ!?あぁん!!」

「くのいち殺しのワシの奥義、とくと味わえぇぇぇぇぇ!!!!」



「キャァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!?」

山田道場の床や壁に、少女の断末魔が虚しく木霊した。


158餓狼伝説前夜 5 :06/07/03 01:54 ID:???
それから一週間後。
中部地方の山岳地帯に存在する不知火屋敷の道場で、不知火半蔵は、
弟子である金髪の白人青年と、座禅を組み瞑想にふけっていた。

白人青年の名はアンディ=ボガード。
瞑想を中断した半蔵は、青年に話しかける。

「昨日、サウスタウンのタン老師から手紙が届いた。
今年もまた、キング・オブ・ファイターズが始まったそうだ。
そして、ハワードコネクション広報部の告知によれば、KOFは来年度の大会を最後に一度打ち切りになるらしい」

「ハワード」という言葉にピクリと反応し、アンディ=ボガードが目を開く。

「そうですか…。ならば急がなければなりません。お師匠様、私はあと一年でアメリカに帰国します。
それまでどうか、厳しくご指南下さい」

「………。帰ってどうする?養父の仇を討つのか?
タン老師からお前を預かり、この数年不知火流の技を授けてきたが、
あの御仁はできればお前に復讐など忘れて欲しいとも言っていたぞ。
憎しみはさらなる憎しみを、復讐は新しい復讐を招くだけ。
ワシもできればお前にはこの地に残ってもらい、いずれ不知火流の継承者になってもらいたいと思っておる」

「申し訳ありません、お師匠様。私はどうしても、あの男を許すことができないのです。
それに異邦人である私ごときが不知火流を継ぐなど、もっての外。
私がここに来るずっと以前から忍術の修行をしていたお孫さんが、立派に流派を継いでくれるでしょう。
彼女はメキメキと腕を上げています。
先月、私もついに手合わせで一本取られてしまいましたよ」

話題をそらそうとするアンディに対して、半蔵が切り返す。

「お前が一本取られたのは、舞が身に纏っていた忍装束に気を取られたのが原因であろう?
江戸時代に不知火流くのいちが用いていたという、あやかしの装束。
あんな過去の遺物をいつの間に倉から引っ張り出していたのやら……」

アンディは微かに顔を赤めながら、それを認める。
「しょ…正直驚かされましたよ。派手好きとはいえ、普段はとても清楚でおしとやかな彼女が、
あんな格好をして出てきた上に、物凄い言葉遣いでしゃべり出したのですから…。まるで別人のようでした」

「フッ、確かにな。女は化粧や服装を変えるだけで、性格まで化けてしまうというが、あの子もそうなのかもしれん。
それに、ああでもして開き直らなければ、恥ずかし過ぎて闘えなかったのだろう」

その時、ふと気づいたようにアンディが半蔵に尋ねた。
「そういえば最近、彼女の姿を見かけませんね。どこかに出かけているのですか?」

「あの子なら、夏休みの旅行と称して家出してしまったよ。
どうやら、一週間前に十平衛と手合わせさせたことを相当根に持っているらしい。
パスポートがなくなっているから、おそらく海外まで行ってしまったのだろうな」

そう答える彼の表情は苦々しい。
かわいい孫娘に怒られたことが、なかなかショックだったようだ。

「十平衛というと、柔道家の山田十平衛先生のことですね?
半年前、お師匠様に連れられて、私もあのご老人に手合わせして頂き、コテンパンに負かされてしまいました。
“鬼の山田”と恐れられた鬼神の如き強さ…あの時は大変勉強になりました」

山田十平衛は、不知火半蔵の幼少時からの喧嘩友達であり、打撃技を取り入れた彼の攻撃的な柔道を相手にするのは、
異種格闘技戦に備える上で大変参考になるとアンディは思っていた。
そんなありがたい手合わせで、舞が機嫌を損ねたというのは一体どういうことなのか。



159餓狼伝説前夜 6 :06/07/03 01:55 ID:???
イマイチ事情が飲み込めないアンディの心を察したのか、老師匠は詳細を話しはじめた。

「舞には本当に気の毒なことをしたとは思う。だが、あの子は最近調子に乗りすぎていた。
なかなか勝てなかったお前との手合わせで一本取ったことで、妙に自信をつけてしまったらしい。
自分の実力が男共にも決して劣らないことを証明するために、格闘大会に出たいとまで言い出していた。
ワシは、それだけはやめて欲しかった」

「なぜですか?」

「舞は、格闘の世界の厳しさを知らない。
強者だけが生き残り、弱者は全てを失って食い物にされてしまうあの世界の恐ろしさが分かっていない。
あの子は強い。並みの男性格闘家などは簡単に手玉に取ってしまうだろう。
だが、それよりも上の超一流の世界では、女であるという事実はそれだけで埋めがたいハンデになってしまうのだ。」

「超一流の世界?」

「圧倒的なスピードによる撹乱戦法も、くのいち特有の色仕掛けも全く通用しないような獣達の前では、
舞も世間一般のか弱い乙女となんら変わらない存在になってしまうということだ。」

「それを身をもって彼女に分からせるために、山田先生との手合わせを?」

「うむ。ワシと同様、老化による衰えはあるものの、あいつは紛れもなく超一流の格闘家。
修羅の世界の人間だ。舞の戦法を見事に攻略し、格の違いというものを見せ付けてくれた」

「なるほど」
アンディにも大方の事情は飲み込めてきた。
しかし、舞が家出をしてしまうほど機嫌を損ねたという理由がまだよく分からない。
半蔵は説明を続ける。

「そして…。これが一番重要だったのだが、
ワシはあの子に格闘世界の真剣勝負で敗北するのがどんなことかということを、擬似的にでも知って欲しかった。
その辛さを乗り越えて欲しいとも思っていたが、本音としては、
舞が大きなショックを受けて格闘家になることを断念してくれればいいと思っていた。
ワシは十平衛の女好きの性格を知っていながら、あらかじめあいつに頼んでおいたのだ…………」

ゴクリと生唾を飲み込んで、アンディは師匠に尋ねる。
「一体…なにを頼まれたのですか?」

「舞の“女としての弱点”を徹底的に攻撃して、あの子をボロボロに打ち負かして欲しいと」


160餓狼伝説前夜 7 :06/07/03 02:00 ID:???
話は再び一週間前の山田道場に戻る。

「ダイナマイトいずな落とし」でKOされた舞を待ち受けていたのは、
十平衛によるどこまでも執拗で陰湿な性感帯責めであった。
一応、試合続行の形はとっていたものの、それはもはや闘いなどではなく、一方的な陵辱であった。
若い女の子が大好きな山田老人は、寝技や絞め技をアレンジした、セクハラまがいの、
いやセクハラそのものと言った方がふさわしい、イヤラシイ技を次々と舞に喰らわせていったのだ。

「まずは、腕ひしぎ十字固じゃ〜!!」
サイドから両脚を伸ばして舞の上腕部を挟み込み、肘関節を極める。
十平衛は、自分の顔に向かって真っ直ぐに伸びている彼女の右腕から皮製の手甲を剥ぎ取ってしまう。
脱がせた手甲をゴミのように投げ捨てると、完全な素手状態となった少女の手の平を口でくわえ込み、モグモグと味見してみる。

「う〜ん。汗をかいているせいか、舞ちゃんのおててはなかなか酸っぱい味がするの〜。」

嫌がる舞であったが、絞め技は見事に極まっており、上半身を十平衛の両脚によって押さえ込まれているため脱出は不可能であった。
結局、右拳を老人のヨダレによってベトベトにされてしまう。


「三角絞」を途中まで極められ、四つんばいにされてしまう不知火舞。
美少女が突き出している尻の穴の匂いを十平衛はTバック越しにフンフンと嗅いだ後、
そのまま彼女の体を仰向けに裏返して「横三角絞」に持ち込む。

小柄な老人の両脚によって左腕と頭を挟み込まれてしまい、またも舞は身動きがとれない。
十平衛は、忍装束の露出した脇部分から手を突っ込み、彼女の右乳房を揉みしだく。

「ぐうぅ…やめっ……うぅ………あっ…あん…」

その力加減が実に絶妙で、嫌悪に顔をしかめながらも、少女は思わず甘い声を出してしまう。


さらに十平衛は、畳の上に転がる舞の頭の側から、彼女の両肩をすくうようにして下から両手を差し入れて、
そのまま、腰元を巻く白い帯をつかもうとする。
今度は「上四方固」を極めようというのである。

必死に体を捻って抵抗する舞であったが、その程度で達人の柔道技から逃げられるはずはない。
練達の柔道家、山田十平衛は左手で少女の腰帯をつかみながら、右腕を彼女の肩の上からまわして上腕部を抱え込み、
忍装束の後ろ襟をつかんで押さえつけることで、舞の抵抗を封殺してしまう。
変形技、「崩上四方固」の完成である。

舞にとっては運の悪いことに、勝利の…いや、エロの女神はどこまでも十平衛に微笑んでいるらしい。
中途半端に抵抗したせいで、胸元の薄布がはだけてしまい、隠されていた彼女の左乳房がはみだしてしまっていたのだ。
そしてその黄金の果実は、頭の側から斜めに舞を押さえ込んでいる十平衛の眼前で、プルルンと実っているのである。

こんなおいしい状況を逃すことなどあり得ない。
十平衛は、露出した舞の左乳房にしゃぶりつくと、母乳を飲む赤ん坊のように彼女の乳首をチューチューチューチューと吸い上げた。

「あっ…あっ……あぁぁ…」

背筋がゾクゾクとし、脳裏にビリビリと電流が走るような感覚を舞は味わう。


161餓狼伝説前夜 8 :06/07/03 02:06 ID:???
山田十平衛が、「対舞ちゃん用セクハラ殺法」と命名していたこれらのイヤラシイ技は、
一見なんの緊張感もないように思えながら、その実、舞本人にとってはどんなシリアスな技よりも恐ろしいものであった。

彼女はまだ汚れを知らない17歳の少女であり、清らかな処女であった。
生まれてこのかた、彼氏を作ったこともなく、男性経験は全くのゼロ。
そんな彼女が、百戦錬磨の女性経験を持つ山田老人の、卓越した性感帯責めに耐え切れるはずがなかったのである。

舞がその身に纏っていた、桜色の忍装束も災いした。
アンディのような初心な男に対しては十分な幻惑効果を発揮する不知火流伝統のあやかしの装束ではあったが、
元来スケベ根性丸出しの十平衛に対してはむしろ逆効果であった。

「うっひょっひょ〜。こんなセクシーな格好をしている舞ちゃんを好きなだけかわいがってやれるとは、たまらんのぅ。
極薄な上に露出度満点。服を脱がせてやる手間も省けるわい」

そのスケベ心を燃え上がらせ、エンジン全開の山田十平衛のテクニックは全盛期以上に冴え渡った。
彼が次々に繰り出すセクハラ殺法は、どんな真面目な打撃技よりも効果的に、不知火舞の体力と気力を奪い取っていった。
闘いの中で性感帯責めをされてしまうことなど初めての経験であった舞は、十平衛の猛攻の前に、青息吐息の状態である。
ピンク色の乳首は装束の上からでも分かるくらいにビンビンに勃って固くなっており、彼女の股間はヌラヌラと湿り気を帯び始めていた。

「ふっふっふっ、コツがつかめてきたぞ。
どこをどう責めれば舞ちゃんは一番感じてくれるのか、そして、どれくらいの速さや力加減でかわいがってあげれば、
舞ちゃんのカラダは一番喜んでくれるのかということがよ〜く分かってきたわい」

十平衛は、舞の身体を弄びながら、喘ぎ声や身体の反応を観察することで、少女の弱点をより的確に、正確に把握しつつあった。

「どうした〜、舞ちゃん?もう降参かのう?目がトロ〜ンとしてきてるぞい」

「うぅ…そんなこと…そんなことないもん…。誰が降参なんか……」

気力も体力も根こそぎ削り取られ、虫の息の舞であったが、彼女はまだ自分の負けを認めたくなかった。
涙で目を潤ませ、顔をヒクヒクさせながらも精一杯強がってみせる。

十平衛は、やれやれといった表情で舞に語りかける。
「困った子じゃの〜。ワシだって本当はこんなことやりたくないんじゃが……」
全く説得力のない台詞である。

しかし、彼の次の言葉は十分に理解できるものであった。
「舞ちゃんよ、少しは半蔵の気持ちも分かってあげなさい。
あいつは可愛い孫娘であるお前さんを危険な目に会わせたくないんじゃよ。
格闘家になることなど諦めて、女の子として人並みの幸せをつかんで欲しいと思っているんじゃよ」

「……………」
「たった一言でいい。
今この場で、『私は格闘家になることを諦めて、普通の女の子として生きていきます。』と言いなさい。
そうすれば、いくらスケベなこのワシでも、これ以上舞ちゃんに恥ずかしい思いをさせるようなことはせん。
さぁ、今すぐ言うんじゃ」

ベチャッ!

十平衛は右手で頬をぬぐう。舞が唾をはきかけてきたのである。

「仕方がないの〜。なら、もう二度と闘う気がおきなくなるよう、とことん辱めて、おしおきせにゃらん。
ワシは舞ちゃんの“女の弱点”をもう完璧に把握しておる。
これからかますのは舞ちゃんにとっては、一種の超必殺技になるじゃろう」

再びエロジジィの顔に戻った老柔道家は、少女の身体を視線で舐め回しながら、目標をロックオンする。

「名付けて“昇天奥義・舞殺し”じゃぁぁぁぁ!!!」

一匹の獰猛な肉食獣は、瀕死の獲物を貪り食うべく襲い掛かった。


162餓狼伝説前夜 9 :06/07/03 02:10 ID:???
それからさらに時間をかけること一時間。
半蔵の依頼通り、舞は“女としての弱点”を徹底的に責め抜かれ、ボロボロにされてしまった。

彼女は十平衛に、乳房を揉まれ、乳首を吸われ、尻を触られ、股間をまさぐられた。
足の裏をくすぐられ、脇の匂いをかがれ、お腹をベロベロとなめられ、頬ずりされ、耳たぶをかじられ、
舞は女としてのプライドをズタズタにされてしまった。

恥ずかしくて恥ずかしくて、悔しくて悔しくて、目には涙が溢れ出た。
嫌で嫌でたまらず、死にもの狂いで抵抗したかったけれども、
寝技や絞め技によって身動きを封じられている上、身体に力が入らない。

なぜならば、十平衛の愛撫はとても気持ちがよく、嫌がる舞の意思とは裏腹に、
彼女の身体はさらなる快感を求めるようになってしまっていたからである。

決められたコースを何往復もするかのように、少女は体中の性感帯を何度も何度も責められた。
じっくり、たっぷり、ネチネチといたぶられた。
乳頭をこねくり回され、首筋にキスされ、ショーツの上から股間をしごかれ、クリトリスをつねられた。

時間の経過と共に、十平衛の愛撫攻撃はより一層、激しく、優しく、気持ちのいいものへと変わっていく。
決して途切れることのない波状攻撃。
次々に打ち寄せる快楽の荒波。
ドロドロに溶かされていく乙女の心。


口からよだれを垂れ流し、股間から溢れ出る愛液によって薄桃色のショーツをグチョグチョに汚し、
ついに舞は昇天してしまった。

「不知火流くのいち、不知火舞、敗れたりじゃな……」

山田道場の畳の上に大の字で転がり、アヘ顔のまま失神している少女を残して、十平衛は道場の外へ出て行った。


163餓狼伝説前夜 10 :06/07/03 02:18 ID:???
外には、彼の親友にして舞の祖父である不知火半蔵が一人で立っていた。

「一人でずっと待っておったんか、半蔵」

「あぁ。お前の二人の孫が、舞を助けるといって暴れまわったので、軽く当身を食らわせて静かになってもらった。
今は、お前の家の居間で眠っている。
華歩さんと詩歩さんに、手荒な真似をしてしまってすまない」

頭を下げてくる半蔵をカラカラと笑いとばし、十平衛はいう。

「そんなこと、イチイチ気になどせんわい。
こっちこそ、本当にすまなかったのう。いくらお前自身の頼みとはいえ、嫁入り前の舞ちゃんを傷物にしてしもうて。
こんなことを言ってもなんのフォローにもならんかもしれんが、
あの子の処女を散らせたり、ふぁーすとちっすを奪ったりするようなことだけはしとらんぞ」

「分かっている。世話をかけたな十平衛。
できるだけ早く、舞の身体に闘うことへの恐怖を叩き込んで、格闘家としての芽を摘んでおく必要があった……。
そのためには、死の一歩手前まで痛めつけてやるか、女として徹底的に辱めてやるか、しなければならなかった。
荒治療だったが、舞にはいいお灸になったはずだ」

口ではそんなことを言っているが、半蔵の表情は非常に暗い。
おそらく、かわいい孫娘にしてしまった仕打ちを悔やんでいるのだろう。

「半蔵よ、お主、何をそんなに焦っておるんじゃ?
ワシらのような修羅の世界に、孫娘が足を踏み入れるのを恐れる気持ちはよう分かる。
じゃが、舞ちゃんの決意は本物だぞ。
女だてらに、いずれはお前から不知火流を引き継ぎたいと思って死ぬほど努力してきたんじゃろう。
スピードだけなら、お主の全盛期をも既に上回っている。
あの年齢で『不知火の焔』を扱えるのも大したもんじゃ。
お世辞抜きに言って、一流の男性格闘家とも十分に渡り合えるレベルじゃぞ」

「だからこそ心配なのだ。この世界を勝ち抜いて行けば、遠からず舞は、悪魔の元へと辿り着き、命を落とすことになる。
結局のところ、中途半端な強さは己の身を守ってなどくれない。
格闘の世界にさえ足を踏み入れなければ、決して遭遇しないような残酷な運命を呼び込んでしまうだけなのだ。
若い頃のワシやジェフがそうであったように…」

その言葉に十平衛はハッとなる。親友が心の中で描いているであろう最悪の事態が何なのかに、思いあたったからである。

「シュトロハイム家の悪魔か…?」
「………………」

半蔵はそれには答えない。
そしてその態度が、十平衛の予想が正解であることを告げていた。



164餓狼伝説前夜 11 :06/07/03 02:19 ID:???
ヴォルフガング=クラウザー=シュトロハイム。
修羅の世界に生きる者全てを戦慄させるその名前。
クラウザー、ジェフ=ボガード、不知火半蔵。
この三人の因縁は、舞にもアンディにも語ったことがない、半蔵の知られざる過去。
ジェフ亡き今、当事者である半蔵とクラウザー以外でこれを知っているのは、山田十平衛とタン=フールーの二人のみ。

「武者修行時代のお主とジェフが、その強さを見込まれて、シュトロハイム城におびき寄せられたようにということか・・・。
格闘の世界で名声をあげれば、それだけあの男に魅入られる可能性は高くなる。
舞ちゃんのような女子供とて、例外ではない。心配し過ぎと言ってやれんのが恐ろしいのぉ」

誰にも打ち明けてはいなかったが、「鬼の山田」の異名をもち、
世界中にその名を知られる柔道家である十平衛の元にも、
シュトロハイム家の関係者と思しき者から手紙が届いていた。

「そう遠くない将来、全世界を舞台にした大規模な格闘大会を開く予定なので、その時は是非参加してもらいたい」
そんな内容の予告文が、つい先日送られてきたのである。

それ故に、半蔵が恐れる最悪のシナリオ、格闘家不知火舞が辿る悲惨な末路を、杞憂だと断定することはできなかった。

黙り込んでしまった十平衛に一礼すると、不知火半蔵はいそいそと帰りの支度をはじめてしまう。

「おっ・・・おい、半蔵!道場でノビている舞ちゃんは置いて行ってしまうのか?」

「ここで手を差し伸べてしまっては何の意味もない。最後までトコトン突き放す。
舞がこのまま朽ち果てて、格闘家への道を断念してくれるなら、それはそれで願ったり叶ったり。
だがもし、これでもあの子が立ち上がれるようであれば、その時はワシも諦めるつもりだ」

舞の成長を幼少の頃から温かく見守ってきた半蔵は、他の誰よりも、闘いに対する舞のひたむきな気持ちを理解している。
十平衛はそのことに気づき、やはり半蔵は、舞のことがかわいくて仕方がないのだなと思った。
孫娘の気持ちを汲み取ってやりたいという気持ちと、彼女を危険にさしたくないという気持ち。
それ故に今回彼は苦渋の決断をして自分に依頼し、舞を徹底的に追い詰めさせたのだと。

「あいわかった。舞ちゃんのことは放っておこう。お前は先に不知火屋敷に帰るがいい」

最後にもう一度十平衛に礼をのべ、半蔵は山田道場を後にした。

「やれやれ、あいつもなかなか苦労人じゃな……。
さて舞ちゃんよ、お前さんはこの先どうするつもりなのかのう?」

親友が去った後、そんなことを独りごちながら、山田十平衛は道場に背を向けて、自宅の中へと入っていった。


165餓狼伝説前夜 12 :06/07/03 02:44 ID:???
「あ〜、ムカツク。ムカツク、ムカツク、ほん・・・っとムカツク!!」

SONYのウォークマンを片手に大音量でヘヴィメタルの曲を聴きながら、
不知火舞はフカフカのベッドの上で独り悪態をついている。

ここはアメリカ、ニューヨークの高級ホテルの一室である。
窓の外では、世界最大の都市に立ち並ぶ摩天楼の無数の灯が、星のようにキラキラと光り輝いている。
ベッドの前のテレビでは、ブロンドの髪の白人女性アナウンサーが今日のニュースを読み上げている。
大音量のイヤホンを耳に当てているので、アナウンサーの声は聞き取れない。
季節は夏。ベッドに寝転がっている舞はノースリーブの空色のシャツに、白の短パンという格好である。

高校三年生の夏休みという、大学受験前の一番重要な時期であるにも関わらず、
今の彼女がこうして海外旅行などど洒落込んでいられるのは、
今すぐ入学試験を受けても余裕で合格できるくらい、舞が優等生であるからに他ならない。

「頭を使わない忍術などただの曲芸に過ぎない。忍者の修行だけでなく、勉学でも一人前になりなさい。」
そんな祖父の言いつけをしっかりと守り、彼女は小さな頃から忍術以外の分野でも決して努力を怠らなかった。

この年齢にして既に、英検1級を取得していることをはじめ、秘書検定や簿記検定などでも優秀な結果を出しており、書道、そろばん、弓道の有段者でもある。
華道や茶道、着物の着付けや琴の演奏など、日本の伝統的な文化にも造詣が深い。
学校での成績はもちろん優秀で、英語、数学、古典、日本史、音楽、体育において彼女の右に出る者など存在しない。
おまけに、毎年五月に行われる文化祭のミスコンにおいて三年連続でグランプリを受賞した美貌の持ち主でもある。
月並みな言葉ではあるが、現在17歳の不知火舞は、文武両道、才色兼備としか言いようのない無敵の少女なのだ。

唯一の欠点といえば、同年代の男の子という人種に対して異常なまでのライバル意識とコンプレックスを抱えていることが災いし、
未だに彼氏と呼べるような男友達が存在しないことくらい。
実際には、彼女に交際を申し込んでくる男の子というのは後を絶たないのだが、
そんな時に限って舞は極端に男勝りで素っ気ない態度を取ってしまい、彼らを追い払ってしまうのだった。

本人は自覚していないが、この欠点は、格闘家を目指す彼女が、「男なんかには絶対に負けたくない」と、
常日頃から思っていることと、幼少時からおじいちゃん一筋で育ってしまい、ややジジコン的な風潮を抱えることに起因している。

それ以外の点では、順風満帆な青春を謳歌しているはずの舞なのだが、今ホテルのベッドに寝そべっている彼女の表情は全く冴えない。
彼女はいたってご機嫌斜めであり、気分は最悪の状態にあった。

原因はやはり、二週間前の山田道場での一件にある。
不知火半蔵の淡い期待に反し、格闘家になるという夢は今でも全く諦めていない。
とはいえ、それまで何の汚れも知らなかった無垢な少女にとって、あの時の出来事が大変なショックであったのは間違いなかった。

執拗を極める十平衛の性感帯責めの前に完全敗北を喫してしまったあの後、丸一日の間、不知火舞は道場の畳に倒れたまま、呆然自失の状態にあった。
一日遅れで、中部地方の不知火屋敷に帰宅したものの、半蔵と顔を合わせる気になれなかった。
このままだと、大好きなはずの祖父のことが嫌いになってしまいそうだったので、舞はそのまま家を飛び出した。
そして、パスポートと、観光ビザと、大きな旅行かばんと、アルバイトで貯めた全財産を持って、アメリカまでやって来た。

得意の英語力を試すために行ってみたいと、以前から憧れていたニューヨークの街を気ままにブラブラと観光してみた。
でもやはり、気分は晴れなかった。


166餓狼伝説前夜 13 :06/07/03 02:48 ID:???
「あ〜イライラする。十平衛ジジィも、おじいちゃんも、ほんっ・・・とムカツク。
でも一番ムカツクのは、なんたって“アイツ”よ!」

ホテルのベッドの上で独りごちる舞の怒りの矛先は、
山田道場での一件にはなんの関係もない、アンディ=ボガードに、いつの間にか向けられていた。



数年前、どこぞの太極拳の老師の紹介だとかで、彼女の祖父に弟子入りしてきた、金髪青眼のアメリカ青年。
不知火半蔵の厳しい指導の下、アンディは、舞が苦手とする体術系統の技、「残影拳」などをみるみる修得していった。
たとえ彼にそんなつもりはなかったとしても、舞はアンディに、格闘技の世界における男性と女性の埋めがたい差というものを見せ付けられたような気がした。
体格面、体力面、筋力面で、女性はどうあがこうと、男性には勝てないという現実を。

(あんな奴に、絶対に負けるもんか!)

一人黙々と修行に打ち込むアンディ=ボガードを、舞は心の中で勝手にライバルに認定した。
同年代の男の子に対する彼女のライバル意識やコンプレックスは、この時の想いに由来する。
幼少の頃から不知火流の厳しい修行を積んできた舞の目から見ても、アンディの日々の特訓量は異常であった。

(なんであんなに必死な形相をして、強くなろうとするんだろう?)
半蔵はその理由を知っているようであったが、舞が何度問い詰めても教えてはくれなかった。
もちろん、アンディ本人にも尋ねてみたが、結果は同じであった。
彼女のことなど相手にせず、ただひたすら、己のトレーニングに没頭し続けているのである。

(顔はハンサムだけど、無愛想でネクラな奴!きっと私が女だからって、馬鹿にしてるんだわ)
ますます彼への対抗意識を強める舞。
彼女も、アンディに負けないくらいハードな特訓を自分に課すようになった。

(パワーで勝てないなら、スピードで勝ってやる!あいつが体術を極めるのなら、私は忍術を極めてやる!)

アンディに自分の強さを認めさせてやるというのが、いつの間にか舞の目標になっていた。

それまでは恥ずかしくて着る気になれなかった、不知火流くのいちの伝統の忍装束を纏うようになったのも、
どんな手段を使ってでも、手合わせで彼から一本奪ってみたかったからである。


167餓狼伝説前夜 14 :06/07/03 02:55 ID:???
ホテルのベッドの上で、この数年のことを思い返しながら、舞は思った。

(格闘大会に出たいって、おじいちゃんにせがむようになったのも、考えてみれば“アイツ”を見返してやりたかったからだな……)

何年もの間目の敵にしてきた、ムカツク青年の存在が、自分の心の中で非常に大きなウェイトを占めていることに気づく。

「“アイツ”、今頃なにやってるんだろう…?」
ポツリと呟く舞。

不知火屋敷近くの竹やぶの中で、真夜中になっても厳しいトレーニングを続ける彼の姿が目に浮かぶ。
何かに必死に追いつこうとするように、真剣な目で一心不乱に反復練習をする彼の顔が目に浮かぶ。

(“アイツ”の瞳の先にあるのがなんなのか、いつか見てみたいな……)

胸の中がカァッと熱くなり、舞の鼓動は速くなっていく。
心臓がトクントクンと大きく脈打つ。
そこまで来てハッとなり、湧きかけていた感情を慌てて否定しにかかる。

「ヤダ、私ったら!こんな夜遅くまでお気に入りの曲なんて聴いてたから興奮してきちゃった。シャワーでも浴びて、もう寝ないと……。」

大音量のヘヴィメタを流し続けていたウォークマンの電源を落とし、耳からイヤホンを取り外す。
それまで全く聞こえなかった、英語ニュースのアナウンスが耳に入ってくるようになる。

「―――――――、全米が注目する敏腕事業家、ギース=ハワード氏の主宰で、
今年も異種格闘技大会“キング・オブ・ファイターズ”が開幕しました。
大会会場であるサウスタウンに現地カメラマンがいます」

(んっ?異種格闘技大会ですって!?)

ベッドからはね降りて、テレビの前にかじり付く。
画面が、ニュース番組のスタジオから現地カメラの映像に切り替わる。
“パオパオカフェ”と書かれた看板を映した後、カメラはビヤホールと思われる室内に移動していく。

(すっ…凄い!!)

舞は思わず息を呑んだ。

満員の客が野次や声援を飛ばす中、そこでは二人の男性格闘家が激しい攻防戦を繰り広げていた。
一人は、酒場のバーテンダーのような格好をした中年の男。
店の天井に備え付けられた手すりにぶら下がりながら、カポエラと思しき変則的な蹴りを繰り出している。
対する男は、ヒッピーな服装をしたモヒカン頭の黒人青年。
彼の格闘スタイルは、ダンスのような動きを取り入れたマーシャルアーツといったところであろうか。

(いいな〜、私もこういう大会で自分の実力を試してみたいな〜。でももう開幕してるってことは、エントリー受付は終了しちゃったのかな?)

気がつけば、テレビの画面は再び、ニュース番組のスタジオに戻っており、アナウンサーは次のニュースを読み始めている。

(えーい、ままよ!ダメならダメで、間近で観戦すればいいんだし、とりあえず行ってみよう!)



翌朝、舞は滞在していたホテルをチェックアウトすると、ニューヨーク国際空港へと向かった。
目指すは格闘大会“キング・オブ・ファイターズ”の開催地であるサウスタウン。

黒の革ジャンに白のインナー、青のジーンズという格好で大きなバックをぶら下げる彼女は、期待に胸を膨らませていた。

(あれくらいの大会で結果を残せたら、おじいちゃんも“アイツ”も、きっと私の強さを認めてくれるよね……)

1990年7月、不知火流くのいち不知火舞、アメリカ東海岸の貿易都市、サウスタウンへ。
この暗黒街の支配者であるギース=ハワードが、宿命の狼、テリー=ボガードに敗れ、
裏社会の歴史が大きく動き出す1991年の、ちょうど一年前の出来事であった。


168名無しさん :06/07/03 03:03 ID:???
というわけで、第一部の投稿完了。
餓狼2において、19才という設定で初登場した不知火舞。
もし彼女が、餓狼1におけるボガード兄弟&ジョーに先駆けてサウスタウンに
乗り込んでいたら……、というIfを基にした物語が、今回のSSです。

169名無しさん :06/07/03 20:34 ID:SBC8ucKw
お疲れ様です!
ここ十日ほど無気力な毎日を送っていましたが,更新を目にして熱が入りました!今後ともこのような素晴らしい作品を世に送り続けて下さいませ☆

170名無しさん :06/07/03 21:19 ID:???
素晴らしい、GJ!
舞一人でサウスタウンに乗り込んでいくなんて、今後が楽しみでしかたないです。

171狼からの洗礼 1 :06/07/08 00:38 ID:???
1990年7月。
今年のKOFの開会式を行った次の日の早朝、
ギース=ハワードは、毎日の日課としている自主トレーニングに励んでいた。

場所は、彼の居城である超高層ビル「ギースタワー」の最上階。
ここはサウスタウンの全景を360度のパノラマで見渡すことができる、
彼だけの展望室であると同時に、トレーニングルームでもある。
天井の高さは20メートル近くあり、ビルの一フロア分の面積を丸ごと展望兼トレーニングのホールに充てているのだ。

赤い袴に白い胴着という、日本の武芸者のような稽古着姿のギースは、誰もいない空間で独り拳をふるっている。

(この街でKOFを開催するようになってから、はや10年。
流石にこれといった目新しい顔ぶれは少なくなってきたな‥‥‥。)

昨晩、秘書のリッパーが提出してきた大会参加者のリストから、
特に興味をそそられそうな名前を見つけることができず、ギースは残念に思っていた。
ホア=ジャイやライデンが初めてKOFに参戦した時は、
ギース自らが大会会場に赴いて彼らを叩きつぶし、配下としてスカウトしたのだが、
ここ数年ではそのようなことをやる必要もなくなっていた。

ビュンッ!
前方に突き出した左拳が風を切る。
彼はサウスポー(左利き)である。

(あの“無敵の龍”がもう一度この大会に参戦してくれれば、実に面白いのだが‥‥‥)

“無敵の龍”というのは、第一回KOFの優勝者、リョウ=サカザキのことである。
大会コミッショナーによるレセプションという名目で、ギースは彼と闘った。
リョウをギリギリのところまで追いつめながら、結局ギースは彼を倒すことができなかった。

“極限流空手”―――。
かつて八極正拳総帥、タン=フールーの下で“気”を利用した闘い方を学んだギースであったが、
そんな彼の目から見ても、リョウが操る極限流の“気”の力は謎に満ちた剛拳だったのだ。

(この世には、八極正拳や極限流すらも凌駕する、まだ見ぬ殺人術がきっとあるに違いない)
極限流のルーツである神秘の島国日本に渡り、そこで周防辰巳という男から大南流合気柔術を教わった。
手合わせの末に周防を殺害し、その全ての技を修得したと実感した時、ギースは最強の格闘家になっていた。
その成果は、アメリカ帰国後の1981年に、ジェフ=ボガードの殺害という形で表れている。

(しかしジェフを殺して以来、俺の血の渇きを癒してくれるような好敵手は現れなくなった)

ブオンッ!!!
誰もいない空間を、ギースの回し蹴りが横薙ぎにする。

かつてサウスタウンに道場を構えていた、極限流一門のその後の消息は、ギースも知らない。
リョウはギースよりも4歳年下だから、もし健在なら、
格闘家として完全に成熟し、一番脂ののった時期を迎えているはずだ。
しかし第一回大会以降、彼は一度もKOFに顔を出していない。

(俺にとって強敵と呼べる男は、もはやヴォルフガング一人しか残されていないのだろうか?)

それは自分が真の帝王になる日が目前まで迫っているなによりの証であったが、
やはりそれでは物足りないと、ギースは思っていた。

(飢えた狼は、強敵の生血をすする為に、己の牙を磨き続かなければならん‥‥‥)

懐から一本の巻物を取り出し、広げてみる。

「“八極正拳奥義書”‥‥いや、正確には“秦の秘伝書”。
紀元前の中国で書かれ、三本揃えれば世界を制する覇者になれるという伝説の巻物の第一巻か‥‥‥‥」



172狼からの洗礼 2 :06/07/08 00:39 ID:???
かつてジェフ=ボガードが、師であるタン=フールーから伝授されるはずであった奥義書。
この世に存在する全ての拳技の最高奥義が記されているとされるこの巻物は、今、ギース=ハワードの手にある。

ギースは秘伝書に記されている技の一つに目を通してみる。
(“帝王神速拳”――――――、敵の懐に神速で踏み込みながら、闘気を集中させた肘鉄を喰らわせる移動打撃技)

「フン‥‥‥くだらん!所詮はカビの生えた旧時代の遺物。
肘の一点に集中させるなど、闘気の総量で劣る弱者が選択する小細工に過ぎん!」

タンの弟子であった時期、ギースはジェフ、チン=シンザンと並び、“闘神三兄弟”と称されるほどの高弟であった。
その三人の中でも、体内を流れる闘気の総量という点において、ギースは群を抜いていた。
そんな彼の場合、“気”を用いた闘いにおいて、小細工などは一切不要。

(溢れんばかりの闘気を惜しみなく放出し、目の前の敵を粉砕する。この俺にはそういった技の方がふさわしい)

「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…………!」
ドス黒いオーラが、ギースの全身から陽炎のように立ち上がる。

力強く前に踏み込みながら、左の肘を突き出す。
「破!」

続けて右手の掌底を正面に突き出す。
「砕!!」

最後に左手の掌底。
「滅!!!」

その掌の先には何もないものの、ギースが撃ち込んだ“気”は、波動となって展望室の空気をビリビリと震わせた。

「ふぅ‥‥‥‥‥‥」
荒ぶる全身の“気”を鎮め、ギースは呼吸を整える。
彼の身体を覆っていた、暗黒の陽炎が消滅する。

「これでいい……。この方が明らかに強力だ。名づけて“邪影拳”。
…だが新技を完成させたところで、これを喰らわせてやる敵がいなければ意味がないな……。」

ふと展望室の窓に目をやると、真夏の太陽はもう随分と高い位置まで昇っている。
そろそろ一つ下の階のプライベートオフィスに戻らなければならない時間である。

(敵がいないというのは実に退屈だ…。来年をもってKOFの幕を閉じた後は、ヴォルフガングと雌雄を決することにしよう……)

全米屈指の大財閥“ハワードコネクション”の総帥は、午前中の社長業務に取りかかる前に汗を洗い流そうと、
シャワー室へと向かっていった。



大会二日目のその日、異種格闘大会“キング・オブ・ファイターズ”は、なんの滞りもなく進行した。


173狼からの洗礼 3 :06/07/08 00:55 ID:???
大会三日目の深夜のことである。
ギース=ハワードの専属秘書を務める黒服サングラス姿の二人の男たちは、
今日の大会進捗状況を報告するために社長室へと向かっていた。
二人の内、スキンヘッドの方の名をリッパー、オールバックの黒髪に黒い帽子を被っている方の名をホッパーという。

背筋をピンと伸ばし、脇目も振らずにビルの廊下を直進していく彼らの表情からは、その心中を窺い知ることはできない。
いくつものエレベーターやエスカレーターを乗り継いで、超高層ビルの最上階を目指す。

シュトロハイム家の密偵や、合衆国大統領直属のSクラスエージェントなどの侵入に備え、
「ギースタワー」には常時、完璧なセキュリティ体制が敷かれている。
建物は迷路のような複雑な構造をしているし、各フロアに配置されたSPの数も一人や二人ではない。
その中でも極めつけなのが、社長室へと通じるパーソナルエレベーターホールを守る、ギース配下最強の男の存在である。

一般社員が通ることを許されている最後のエスカレーターを昇り、リッパーとホッパーはエレベーターホールに到着した。
このホールは2〜3階分のフロアをぶち抜いて作った吹き抜け構造になっており、
大理石のタイルが張り巡らされたピカピカの床からは、天井に向かって大きな柱が何本も、左右対称の形で二列に立ち並んでいる。
柱の行列の最果てに位置する社長室直通の高速エレベーターの前に、地獄の門番は立っていた。

ギース直属の殺し屋にして、「歩く凶器」の異名を持つ棒使い、ビリー=カーン。
彼は24歳という若さでありながら、主であるギースから全幅の信頼を置かれており、彼の右腕とまで呼ばれている。

「よう、お疲れさん」
見事な金髪を短く刈り込んだ、猛禽類のような鋭い目をした若者が挨拶してくる。
リッパー、ホッパーと同様、彼の服装はダークグレーのイタリアンスーツ。
その右手には、2メートル弱の長さを持つ、朱塗りの棒が握られている。

「そっちこそ、夜遅くまでご苦労だな。今からKOFの進捗状況をギース様に報告に行く」

そう言って、スキンヘッドのリッパーは、胸ポケットからカードキーを取り出した。
ギース直属の部下数名しか持つことを許されていない秘密のカードキーである。

「オッケー、通っていいぜ。ところで今日のKOFはどうだったよ?」

「大会自体は問題なく進行している。
そろそろお前やライデンに一暴れしてもらう頃合かもしれないな。
ただ…、街で妙なウワサを聞いた。
参加選手に無理やり手合わせを申し込んでいる奴が出没しているらしい」

「大会とは別に、勝手にストリートファイトをやってるだけだろ?別に珍しいことじゃねーよ」

「それとは少し違う。人目を避けて、闇討ちのようなことをやっている。
昨晩はリチャード=マイヤ、今日の午後はダック=キングがそいつにやられた」



174狼からの洗礼 4 :06/07/08 00:57 ID:???
「あん?どういうことだ?」

尋ねるビリーに対して今度は、帽子を被ったホッパーが答える。

「今日の早朝、“パオパオカフェ”の店員が開店準備をしようと店のシャッターを開けたところ、
店長のリチャードが鼻血を出して倒れているのを発見した。命に別状はなし。
意識を取り戻したあいつは店員にこう語った。『サンバカーニバルのような格好をした少女にやられた』と」

「なんだそりゃ?ダックの場合は?」

「奴の場合はこうだ。今日の夕方、人通りの少ない“ハワードアリーナ”の前で、
黒焦げにされたダック=キングが、通りすがりの民間人によって発見された。
愛玩のヒヨコは無傷。奴は民間人にこう語ってから気絶した。
『ダンスの練習をしていたら、手品みたいに炎を出すジャパニーズゲイシャガールにやられちまったぜ、BABY』」

「はぁ?ますます意味が分からねえ。
するってぇと、なんだ……、サンバカーニバルのような格好をして炎を出す、
芸者女が暴れ回っているってことか?ありえねーよ!」

彼らの主であるギース=ハワードは、一時期日本に武者修行に出ていた時の影響か、日本文化に興味を持っており、
鎧や刀剣、着物や仏像、絵画などをコレクションしている。
凝りやすく、飽きっぽいことで知られるギースであったが、こと日本コレクションに関しては飽きることなく現在まで続けている。

そのため、彼の側近であるビリーたちも、日本についてはある程度の知識は持っている。
しかし、そんな彼らであっても、サンバカーニバルのような格好をした芸者などは想像がつかない。

混乱しているビリーに対して、リッパーが言う。

「詳細については目下調査中だ。
ただ、これが大会参加者の仕業でないのは間違いない。
今年はもちろん、KOFに参加する命知らずな女など、もう10年近く存在しないのだからな」

一人もいないと表現しなかったのは、
11年前の第一回KOFにおいて、女性参加者が二人いたという話を、ギースから聞かされたことがあるからだ。

「いずれにせよ、詳細が分かるまではギース様のお耳に入れるつもりはない。あの方は大変お忙しいからな」

ホッパーがそう言った時、彼の背後つまり、このエレベーターホールの入口方向を見つめていたビリーの目が突如、猛獣のようにギラリと光った。

「おい、リッパー、ホッパー。てめぇら、跡をつけられていやがったな………」
「バカな!?そんなことはありえん!」

慌てて後ろを振り向く二人の黒服秘書。
ビリーのような戦士の力は持たないものの、彼らとてギース=ハワードの専属秘書を務め、
諜報活動や暗殺にも携わるプロ中のプロである。誰かに尾行されるようなヘマは決して犯さない。

「誰もいないぞ!ビリー!」
広いエレベーターホールに人影は全く見当たらない。
しかし、臨戦態勢の表情のビリーは愛用の紅の棒を握り締めて二、三歩進み、リッパーとホッパーの前に立った。

「そこの二本目の柱に隠れてるヤツ、出てきな!!かくれんぼはもう終わりだぜ!」

ビリーは、左前方7メートル位の場所に位置する大きな柱の陰に向かって呼びかける。
リッパーとホッパーの不注意を咎めた彼自身、こんな近くに接近されてしまうまで、
侵入者の存在に気がつかなかったのだ。
つまり、柱の陰に隠れている者は、尋常でない隠密能力の持ち主だということになる。


175狼からの洗礼 5 :06/07/08 01:06 ID:???
「……………………」
しばしの静寂の後、侵入者は観念したらしく、柱の陰からひょっこりと顔を出してきた。
それは、まだあどけなささえ残る顔立ちの美少女であった。背丈は165センチくらい。

(綺麗な子だな………)
侵入者の出現という緊急事態であるにも関わらず、三人の男の心に最初に浮かんだのは、そんな間の抜けた感想であった。

全体的にほっそりとしているけれども、ぎすぎすした印象はなく、清潔な女らしさが漂っている。
足も腕もスラリと長い。
艶のある漆黒の髪は、白い和製のリボンによってポニーテールに束ねられており、
きめの細かい絹のような色白の肌に、真っ黒な、瞳の大きな目がひときわ印象的だ。
眉毛のスッとした線といい、形の良い薄ピンクの唇といい、文句なしの美少女である。


(日本人の少女!?ホッパー、まさかこいつが……?)
(分からん、リッパー。雰囲気や服装が、噂と違い過ぎる!)
ビリーの背後で、二人の黒服男が顔を見合わせて囁き合っている。

彼らの前に姿を現した少女の服装は、噂とは全く異なるものだったのだ。
(日本の女学生のスクールユニフォーム……)
彼女が着ているのは紺色のセーラー服であった。
逆三角形の形をした大きな襟に沿うように、その胸元にはリボンのような赤いスカーフが結び付けられている。
丈の長いスカートは膝まで達し、その下は白のハイソックス。
靴は黒の革靴を履いている。

(年の頃はリリィと同じくらいか…)
そう思ったのはビリー。
彼には、リリィという名の8歳年下の妹がいる。
幼い頃に両親を亡くした彼にとって、リリィは宝物のように大切な唯一の家族である。


「すっ…すいません!コソコソと様子を窺うようなことをしてしまって…。
おとりこみ中のようだったから、話しかけづらくて……。
あのー、ハワード社長のオフィスに行くには、こっちでいいんでしょうか?」

柱の陰から出てきた日本人の少女は、少しおどおどした様子をみせながらも、流暢な英語でビリー達に話しかけてきた。

「お嬢ちゃんよ、ここから先、一般人は立入禁止だぜ。怪我したくなかったらさっさと帰りな!!」

「私、この街に研修旅行にやって来た日本の高校生です。
社会科のレポートを書くために、ギース=ハワードさんにお会いしたいんですが、無理でしょうか?」

ビリーの制止も聞かず、少女はコツンコツンと足音をたてながら、ゆったりとした足取りで近づいてくる。

(コイツ、やっぱり怪し過ぎるぜ!捕まえて正体を吐かせてやる!!)


176狼からの洗礼 6 :06/07/08 01:12 ID:???
少女との距離が2メートルまで縮まった瞬間、ビリーは手にした真紅の棒を、
彼女の制服の胸ぐら目がけて突き出した。

シュルッ!
棒の先端をクルクルと動かして胸元の赤いスカーフに絡みつかせ、そのままセーラー服の布地を絞り上げていく。
制服の上着部分の布がずり上がり、へそ付近の素肌が露わになる。

「うっ!?」
「よっしゃ、捕まえたぜ!さぁ、尋問タイムといこうか?おらよっと!!」

美少女の胸倉を絞めつけてある棒の先端を、天井に向かってゆっくりと持ち上げていき、少女の小柄な体を空中に釣り上げる。

「きゃあ!!?」
2メートル近い長さを誇る赤い棒によって宙吊りにされてしまい、少女は悲鳴をあげる。

「へへっ!どうだい、いい眺めだろ。早いとこテメェの正体を吐いた方が身のためだぜ!お嬢ちゃんは一体誰なんだ?
そもそも、ここに来るまでの道のりには腕利きのSPたちが何十人もいたはずだぜ。奴らには会わなかったのか?」

「やっ…やめてください!私は、本当にただの高校生です。い‥いきなり何するんですか!!?」
少女はあくまでもシラを切っている。

「つまんねぇ芝居してんじゃねぇぞ!オラッ!オラッ!オラッ!」
ビリーは棒の先端を捻ってさらに強く少女の胸倉を絞めつけながら、ユサユサと前後に大きく揺さぶってみる。

「ぐぅぅ!!…きゃっ!…あぁ!…は‥放して…」
苦悶の表情を浮かべながら、宙吊りの少女は足をバタつかせている。
長い丈のスカートが大きく翻り、中に隠されていた下着がチラチラと垣間見える。

「ヒュー、純白のパンティとは清純派だな!でもいい加減白状しないと死んじまうぜ、お嬢ちゃんよ」
(おかしいな。手応えがなさ過ぎる…。ひょっとしてコイツ、本当にただのスクールガールなのか?)

「ぐぅ……ぐるじ‥し‥死んじゃ……………」
そこまで言いかけると、少女は目をパッチリと開き、赤い舌をチロリと出しながらいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「な〜んてね、えへへ‥」

「なにぃ?」

ビリーの棒で宙吊りにされた状態のまま、彼女は自分の胸元に右手を突っ込んだ。
「おいっ、こらっ!なんの真似だ?一体なにやってやがる?」

ビシッ!
「ぐあぁっ!?」
突如ビリーが悲鳴をあげる。
少女の右手から放たれた“なにか”が、棒を握る彼の手首を痛烈に打ちつけたのである。
腕の力が緩んだのを見計らって、棒の縛めから脱出した少女は華麗に宙返りをしながら着地する。

「どうしたビリー!!?」
懐から拳銃を取り出して構えようとしたリッパーとホッパーであったが、
高速で飛来してきた物体によって、手にしていた拳銃を弾き飛ばされてしまう。
「ぬぉ!?」「ぐっ!?」

打ち据えられた右手を押さえて片膝をつきながら、彼らは足元に落ちている物体が何なのかに気がついた。
(これは……日本の“うちわ”…いや、“扇子”というやつか?)

「ホホホホホ…。男三人がかりで、か弱い女の子に暴力をふるうなんて、感心しないわね」

つい先程までの大人しそうな雰囲気はどこへやら、ビリーの棒から脱出した日本人の少女は不敵な表情を浮かべている。

「ぐっ…このアマぁ‥てめぇ一体なにモンだ!!?」

「あ〜あ、この格好なら怪しまれないと思ったんだけど、どうやら失敗のようね。いいわ、あたしの正体を教えてあげる」
そういうと少女は、両手の人差し指を立てながら拳と拳を重ね合わせ、静かに目をつぶった。

「ハァッ!!!」
ボウッ!!
制服姿の少女の足元から紅蓮の炎が立ち昇り、彼女の全身を覆い隠す。

(どんな手品だ!?なにもないところから炎が出やがったぞ)

炎の柱が消滅し、その中から姿を現した少女は劇的な“変身”を遂げていた。


177狼からの洗礼 7 :06/07/08 01:19 ID:???
それはまさに、“変身”と呼ぶしかない劇的な変貌であった。
紺色のセーラー服は跡形もなく消え去っており、
代わりに今の彼女はどこまでも扇情的かつ挑発的な戦闘衣装を身に纏っている。

一応和風のデザインをしているため、着物や浴衣の類に分類できないこともないが、
これ程までに露出度の高い着物など、彼らは見たことがない。
セーラー服を着ている時は大して感じられなかったが、こうして改めて見ると、
少女がどれだけ魅惑的なボディラインをしているかということがよく分かる。

大きな果実のようなボリュームを持ちながら、実に均整のとれた形をしている美しい乳房。
キュッと引き締まった細い腰。
プリプリとした肉付きのよい桃尻。
トップモデルも顔負けの抜群のプロポーションは、彼女が身に着けている戦闘衣装によって、極限まで際立てられている。

桜色の極薄の布で作られたその衣装はノースリーブであり、皮製の手甲を手首に装着していることを除けば、彼女の両腕は完全に露出している。
大きくV字型に開かれた襟元からは、首から胸の谷間、そしてみぞおちに至るまでの白い素肌が顔を覗かせている。
脇から腰に至るまでのサイドの肌も完全に露出しているため、前からも横からも、豊満な乳房が半分近くはみ出してしまっている。

腹部に巻かれた黄色の腰帯は、背後で蝶結びにされ、巨大なリボンを形作っている。
腰帯の下は膝上までしか達しない前垂れになっており、彼女の動きに合わせてヒラヒラと揺れている。
その奥に時折垣間見えるのは、薄桃色のショーツに包まれた乙女の聖域。
秘部をピッチリと覆うそのショーツは、ハイレグ以上の急角度を持つTバックである。

前垂れの横からはむき出しの太ももがスラリと伸び、脛には真紅の布が包帯のようにグルグルと巻かれて脚絆になっており、
踝から爪先までは黒足袋に包まれている。

これらの特徴に加え、この衣装には風変わりなオプションパーツが二つ付いている。
一つは、黄色い腰帯のリボン型の結び目近くから、尻尾のように生えている二本の長い帯。
尻尾は鮮やかな赤色で、二本の先端は片結びによって一つに束ねられ、玉状になっている。
もう一つのオプションは、彼女の肩から脇にかけて結ばれている白い“たすき”である。
極太の綱によって輪を形作っているこの“たすき”は、横綱の相撲力士が締める注連縄(しめなわ)によく似ている。


“変身”を遂げた美少女を、リッパーとホッパーは思わず指差し、呟いていた。
「サンバカーニバルのような格好をした……」「ジャパニーズゲイシャガール…」

最早疑う余地はない。
今目の前にいる少女こそが、街で噂になっている奇妙な挑戦者なのだ。

「ついでに炎のマジックも使えるようだな…」
と、二人の台詞をビリーが補足する。

桜色の戦闘衣装に身を包んだ美少女は、胸元から一本の鉄扇を抜き出し、三人の男たちに向けてビッと向ける。
その拍子に、ブラもつけていない生乳房が薄布越しにプルルンと揺れる。

「不知火流くのいち、不知火舞、ここに参上!」


178狼からの洗礼 8 :06/07/08 01:24 ID:???
「“くのいち”?なるほど、女の“ニンジャ”ってことか。
あんまりヘンテコな格好をしてるもんだから分からなかったぜ。
…で、ニンジャがギース様に一体なんの用だ?」

尋ねられた女忍者は、なんとも挑戦的な目をしながらそれに答える。

「そうね‥‥事業家ではなく格闘家としてのギース=ハワード氏への手合わせ希望ってトコかしら?
この街の男達は一人の例外もなく語っていたわ‥最強の男はギースだって。
その力、是非とも拝見したいと思ってここまで足を運んだの」

(バカかコイツは?)
と、ビリーは思った。

「ヘッ!世間知らずっていうのはホント怖ぇモンだな。
生憎ギース様は、テメェみたいな小娘に構って下さるほどお暇な方じゃねぇんだよ!」

チッと舌打ちしながら不知火舞は言う。
「あ〜ら残念。案内してくれる気はないみたいね。
なら、力づくで行かせてもらおうかしら?
下の階でおねんねしている人たちみたいになりたくなかったら、素直に案内した方が身のためよ?」

ファイティングポーズをとって構える美少女。

スキンヘッドのリッパーは、近くの壁に備え付けてある内線電話に慌てて手を伸ばす。
(こんな華奢な少女が下の階を警備しているSPたちを全滅させただと!?ハッタリに決まっている!!)

「どうだ?リッパー」
不安気な表情を浮かべて話しかけてくるホッパーに対して、首を振る。

「だめだ、誰も出ない。コイツ、ただの女じゃないぞ!警報を鳴らして増援を呼ぼう」
別のダイヤルを回そうとするが、ビリー=カーンの怒号がそれを止める。

「バカかてめぇは!!軍隊が攻めてきたわけじゃねぇんだぞ。なんのために俺が毎晩このホールに立ってると思ってやがる!」

ビリーはスーツの右ポケットから赤と白の縦縞模様のバンダナを取り出すと、それを頭に巻きつける。
さらに、左ポケットから取り出した黒いグローブを右手に装着する。
彼が完全な戦闘態勢に入った証拠である。

「リッパー、ホッパー、テメェらは早いトコ今日のKOFの進捗状況をギース様に報告に行きな。
この身の程知らずの小娘は、オレが始末しておく」

手にした朱塗りの棒を、侵入者不知火舞に対して構える。

不測の事態に一瞬冷静さを失っていたリッパーとホッパーであったが、
これまでギースのために何百人もの邪魔者をその棒で排除してきた彼の力強い言葉を受けて、落ち着きを取り戻す。

「分かった!任せたぞ、ビリー。この娘のことはなんと報告しておけばいい?」

「ギース様にはこうお伝えしろ。
『日本のニンジャガールが社長室の見学を希望してきたので、丁重にお断りして追い払った』、と」

「了解した」
二人の秘書は専用カードキーを装置に差し込むと、起動した直通エレベーターの扉へと消えていった。

「待ちなさいっ!」
二人を追いかけようとする舞の行く手を、バンダナ頭の男が遮る。

「おっと、お嬢ちゃん。ここから先は立入禁止と言ったはずだぜ」

「くっ!いいわ。まずはアンタからやっつけてやる」
少女はビリーのことをキッと睨みつける。

「ビリー=カーンだ。よろしくな、ニンジャガール」

「あたしは不知火舞よ。ビリー、これからアンタに、一生ものの辛酸を舐めさせてあげるわ」

「口の利き方に気をつけな。いくぜ!!」


179狼からの洗礼 9 :06/07/08 01:31 ID:???
先に仕掛けたのは、リーチ面で圧倒的に優位に立つビリーであった。
2メートル弱の長さを誇る愛用の棒で、超高速の突きを連続で繰り出す。

ビュッ!ビュッ!ビュッ!

不知火舞の両肩と喉を狙った、前進しながらの三段突きである。
鋭い風切り音をたてて突き出される朱色の棒を、舞は後退しながら巧みにかわしていく。

(少しはできるみてぇだな……なら、これでどうだ!)

両手持ちだった棒を、右手一本持ちに切り替え、体を横方向に90度旋回させながら腕を伸ばすことで、
さらにリーチの長い突きを撃ち込む。
「ハィイィィア!!」
(バックステップじゃ回避は間に合わないぜ?)
ビリーの右片手突きは、少女の鳩尾に深々と突き刺さるはずであった。

しかし、舞は垂直に跳躍してこれを回避すると、突き出されてきた棒の先端に飛び乗った。
抜群のバランス感覚を持つ彼女は、平均台に乗るかのように楽々と、ビリーの棒の上に立ってみせたのである。

「ちっ、このヤロウ!」
舞を棒から強引に振り落とそうとするビリー。
舞は彼の背後にジャンプで回りこみながら、すれ違い様に鉄扇で撃ちかかる。

「タァッ!」
鉄扇の一撃が、ビリーの右肩に命中する。

「ぐぁっ!?」
肩を強打され、彼がひるんでいるわずかな隙に、少女は懐まで一気に間合いを詰める。
攻撃が大振りになりやすい長いリーチの武器は、密着状態の戦闘に持ち込まれた場合、力を十分に発揮できなくなる。
そのことを知っている美少女くのいちは、特技のスピードを活かしたラッシュを、目の前の棒使いに対して加えていく。

ギィンッ!ギィンッ!ギィンッ!ガギィッ!―――――――――――――

息つく暇もなく次々に打ち込まれてくる鉄扇の斬撃を、横に構えた棒で防御するビリー。
得意の中距離戦に持ち込もうと動き回るが、不知火舞が彼の動きにピッタリとついてきてしまうため、
間合いを離すことができない。

(なんつーデタラメなスピードをしてやがるんだ、コイツは…!)

ギースの配下として参戦した過去のKOFで出会ってきたどんな格闘家よりも、彼女の動きは素早かった。

(おまけになんなんだ?恥のかけらもねぇ、コイツのふしだらな格好は……気が散ってしょうがねぇ)

ビリーは今更ながらに、不知火舞が身に纏う忍装束の恐ろしさを味わいつつあった。
彼女が動き回れば、大きく開かれた胸元から時折ピンクの乳輪がチラつき、
彼女がハイキックを高々と振り上げれば、大きく捲くれあがった前垂れ布の下から、桃色のショーツに包まれた秘部が顔を覗かせる。

それらの光景に一瞬でも目を奪われれば、疾風のような速さを誇る少女の攻撃をモロに喰らってしまうことになる。

「アラアラ?闘いの最中なのに顔が赤くなってきてるわよ、お兄さん。何かイイモノでも見えたのかしら?」
ビリーに対して色仕掛けが有効だと判断した舞は、さらなる動揺を誘うために挑発をしかけてみる。
本当は彼女もかなり恥ずかしいのだが、それを敵に悟られてはマズイので、開き直った態度に出たのである。

「黙りやがれぇ、この淫乱女が!ちったぁ、リリィを見習えぇぇぇ!」
ギースの右腕として数え切れない程の敵をこれまでに殺し、冷酷非道の殺し屋として恐れられているビリーであったが、彼にも弱点があった。
それは妹リリィの存在である。

妹の前では彼も一人の優しい兄に過ぎず、それがビリーの人間性を保っている。
素朴な愛らしさを持つ妹とは、似ても似つかなぬ過激な衣装を纏っているものの、
彼の敵である不知火舞は10代後半の少女である。
リリィと歳の近い舞に対して、ビリーは知らず知らずのうちに妹の姿を重ね合わせ、
手加減してしまっていたのだ。

それが、普段は手段を選ばずに敵を抹殺する彼の戦闘能力を鈍らせていた。
ビリー=カーンは、若い娘を手に掛けることができない。
彼が正気を保っている限りは………………。


180狼からの洗礼 10 :06/07/08 01:38 ID:???
そんな事情は露知らず、調子に乗った美少女くのいちは、更なる攻勢に打って出る。
上段横薙ぎのビリーの反撃をしゃがんで回避すると、後転倒立の要領で下半身を浮かび上がらせ、スラリと伸びる両脚で彼の首を挟みこむ。

「うっ!!?」
「風車崩し!!」

鼻先に、ハイレグショーツに包まれた舞の股間を押し付けられたのも束の間、
ビリーは弧を描くように投げ飛ばされ、頭から床に叩きつけられてしまう。
「ぐぇっ!!」

床に倒れ伏しているビリーの背中に、少女の嘲笑が投げかけられる。
「あ〜ら、ごめんあそばせ!痛かったかしら?」

「ぐっ…、調子に乗ってるんじゃねぇぞ、このアマぁ!」
頭の痛みを堪えながら、ビリーは舞の足を払おうと、下段横薙ぎに棒を振るう。

「ハァッ!」
地を這うように振るわれたビリーの棒を、空中に跳ぶことで回避する不知火舞。

「馬鹿が!ひっかかったな!」
対空技“雀落し”――――。空中に逃れた女忍者を撃ち落とすべく、ビリーは斜め45度の角度で朱塗りの棍を突き上げる。
彼女の背後は壁である。
空中で身体を捻って回避するのは不可能。

(もらったぜ!)
ビリーはそう思った。
だが空中の不知火舞は、足袋に包まれた足の裏で壁を蹴り、ジャンプの軌道を変えてさらに高い位置まで逃げていく。

「んだとぉ!?」
空中に突き出した棒は少女の身体を捉えることができず、“雀落し”は空振りに終わる。

「紅蓮の炎で、焦がしてあげる」
三角跳びによってビリーの背後をとった舞は、精神を集中させ、尻尾状の帯の先端に炎を灯す。
不知火流忍術奥義継承の第一段階ともいえる、秘術“不知火の焔”。
長年の修行の末、彼女はその焔を利用した火炎系忍術の基本技を、つい最近修得したばかりだ。

(私の力、見せてあげるわ!)
その場でクルリと旋回し、紅蓮の炎を纏った尻尾をビリーの身体に叩きつけ、胴薙ぎにする。
「龍 炎 舞 !!!」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁ!!!?」

上半身を炎に包まれ、火達磨になってよろめいているビリーに対し、舞は追撃の技を放つ。
「とどめよ!!必 殺 忍 蜂 !!!!」

正式名称は“忍蜂”なのだが、側転しながら低空に跳び、全体重を載せた肘打ちを喰らわせるこの突進技は、
現時点で彼女が修得している中では最強の技なのである。
そのため、彼女はこの技を“必殺忍蜂”と命名していた。

「ガハァッ!!?」
舞の肘を鳩尾に突き刺され、ビリーの体は5メートルほど吹き飛んで冷たい床に転がった。


「いよっ!に っ ぽ ん い ち 〜〜!!」
扇子を広げ、満面の笑みで大見得を切る不知火舞。
床に倒れたまま動かなくなったビリーの身体からは、黒い煙がプスプスと立ち昇っている。

「さてと、あのエレベーターを動かすためのカードキーを拝借しないとね……」
床に倒れているビリーに近づこうとした舞であったが、突如背筋に寒気が走り、本能的に後ろに跳び下がる。


181狼からの洗礼 11 :06/07/08 01:43 ID:???
(なっ…!?なんなの、この殺気は!!?)
そこにいるだけで魂を食われてしまうような気味の悪い感覚。
そんなおぞましい殺気は、倒れているバンダナ頭の男の全身から発せられている。

「…………………」
幽鬼のようにユラリと立ち上がったビリー=カーンは、少女の姿を見つけると、
ドスの利いた低い声で呟いた。
「コロス……」

「殺してやるぞぉぉぉぉぉぉ、このメスガキィャァァァァァァ!!!!!!」
怪鳥のように甲高い声をエレベーターホールに響かせて、奇声を発するビリー。

彼は完全にキレてしまっていた。
こうなってしまうと、相手が女子供であろうともはや関係ない。
目の前の敵が息絶えるまでひたすら暴虐の限りを尽くす。
ギース配下最強にして、「歩く凶器」の異名を持つ殺し屋であるビリー=カーン。
一人の格闘家として闘っても十分に強い彼であるが、その真の強さは、理性を捨て本能のままに暴れ狂う時に発揮される。

「くっ!?いきなりなんなのよ!?しつこい男は女の子に嫌われるわよ!!」
ビリーの突然の変化に動揺を隠せない舞。

炎に焼かれボロボロになったイタリアンスーツの上着を破り捨てると、ビリーは獣のように駆け出した。
その恐るべきスピードは、舞に勝るとも劣らない。
(はっ‥速い!?)
身の危険を感じながらも、少女は敢えて向かってくるビリーの懐に飛び込もうとする。
長尺武器の威力を封じるためには、捨て身の覚悟で密着状態まで間合いを詰めなければならないからである。

「シャラァァァァァァァァァァッ!!!」

ビシビシバシィ!!

「あうっ!!?」
ビリーの棒がムチのようにしなり、近づこうとしてきた舞の身体を乱打する。
(だっ…だめだわ!こんなんじゃ、とても近寄れない)

真紅の棒の切っ先が、流星群のように残像をひきながら閃く。
三段突きなどという生温いものではない。
肘、肩、喉、顎、こめかみ、鳩尾、膝、…………全ての急所を撃ち抜くかのような乱れ打ちである。
襲い掛かる突きの嵐を必死に見極めようとする少女であったが、熾烈を極めるビリーの猛攻の前に防戦一方になってしまう。

「くっ……うぅっ……くっ…きゃっ!?……あぁっ!?…うわっ!…」
ノンストップで次々に打ち込まれてくる切っ先を、次第にかわしきれなくなっていく舞。

(このままじゃマズイ…!なんとかコイツの攻撃をとめないと…)

バック転を繰り返すことで、ビリーの射程圏内から脱出する。
舞を再び射程圏内に捉えようと、ビリーが前に踏み込んでくる。
その追撃を牽制するべく、少女は手にした鉄扇を手裏剣のように投げつける。

「花蝶扇!!」
「うざってぇぇ!!」

防御技“旋風棍”―――。
ビリーは2メートル弱の長さを誇る棒の中央を両手で握って正面に構え、
猛スピードでプロペラのように回転させる。

「そっくりそのまま、お返しするぜ!!」
旋風のシールドによって、“花蝶扇”を舞めがけて跳ね返す。

ビシッ!
「きゃあ!!?」
自ら放った鉄扇によって胸を強打され、舞は後ろにのけぞってしまう。

「喰らいやがれっ!!」
猛スピードで回転を続ける真紅の棒を、少女に向かって投げつけるビリー。

バギィッ!!!
「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
飛来する巨大なプロペラを腹に受け、跳ね飛ばされた美少女くのいちは、背中から壁に激突する。


182狼からの洗礼 12 :06/07/08 01:48 ID:???
ブーメランのように手元に戻ってきた赤い棒をキャッチすると、
ビリーは懐から取り出した野球ボールくらいの大きさの物体を、床の上に転がした。

コロコロコロ……

壁によりかかって崩れ落ちていた舞は、自分の足元に転がってきたその物体を見て青ざめた。
(手榴弾!!!?)

「吹っ飛びな!!」
親指を下に突き立てるポーズをビリーがとったのと同時に、手榴弾が弾けた。
ズドォォォォォォン!!!

弾ける寸前、壁を背に垂直に跳び上がり、舞はこの爆発から逃れている。
壁を蹴って三角跳びをして、そのまま反撃動作に移行する。

「ムササビの……って、消えた?」
地上にいるはずのビリー=カーンの姿がなぜか見当たらない。

焦る彼女の頭上から、男の奇声が降り注ぐ。
「ハイヤァァァァァ!!!」
(そっ…そんな!?私の三角跳びよりも更に高いところまで跳んでいるなんて……!!)

強襲飛翔棍――。
ビリーは、愛用の武器を利用した棒高跳びによって、女忍者から制空権を奪い取ったのである。
「KILL YOU !!!」
完全に不意をつかれてしまった舞は、垂直に振り下ろされたビリーの棒によって、背中を強打されてしまう。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

背骨が折れてしまうのではないかという強烈な打撃を背中に受け、少女は空中から墜落する。

ドシャッ!!
エレベーターホールの床に勢いよく叩きつけられる。

「ぐっ………痛っ……あ……」
苦痛に顔を歪ませがら、立ち上がろうとする舞。
そんな彼女の喉元に、朱塗りの棒の切っ先が、ピタリと押し当てられる。

「うっ!?」
その場でペタンと尻餅をつき、恐る恐る見上げてみると、棒を構えたビリー=カーンが仁王立ちしている。
少女を見下ろす彼の青い瞳には、狂気の光が宿っている。

「そのまま後ろに下がりな。ゆっくりとだ……」

(おかしな真似をしたら即、喉を貫き通す!)
そんな暗黙の脅迫をこめて、ビリーは舞に命令する。
仕方なく彼女は、床の冷たいタイルに尻をつけたまま、ズリズリと後退していく。
程なく、彼女の背中はホールの柱に接触する。

「チェックメイトだ、ニンジャガール。もう絶対に逃がさねぇ」
舞の喉元に真紅の棒を突きつけたまま、ビリーは低い声で語る。

「オレは殺しをする時、相手のムカツキ加減に応じてこの棒をくれてやる箇所を変えることにしている。
むかつかねぇ奴なら、眉間を一撃で貫いて即死させてやる。
むかつく奴なら、喉をブチ抜いて、苦しみながら死んでもらう……」

(つまり私は、“むかつく奴”って訳ね…。流石にちょっとヤバイかも……)


183狼からの洗礼 13 :06/07/08 01:54 ID:???
しかし、ビリーの口から次に出た言葉は、舞の予想を上回る残酷な死刑宣告だった。

「ただし……、テメェみたいにクソ生意気なメスガキは、
喉をブチ抜いてやるぐらいじゃオレの腹の虫が収まりそうもねぇ。
だから、テメェのもっと大事なところにコイツをくれてやるよ」

喉元に突きつけられていた棒の切っ先は、舞の身体を縦になぞるように、ゆっくりと下降していく。
そして、忍装束の前垂れ布によって覆われている彼女の股間に焦点を定めた。

(ヤ……ヤバイわ。そんなところに、棒を差し込まれたら……)

「『お嫁にいけない体になっちゃう』、なんて甘いこと思ってるんじゃねぇだろうな?アァッ!?
その程度で済ませてたまるかよ!
テメェの×××にコイツをグリグリ突っ込んで、そのまま上の口まで貫通させて、バーベキューの肉みたいに串刺しにしてやるぜ!!!」

「ヒ…ヒィッ!!?」
思わず悲鳴をあげてしまい、少女の顔が恐怖にひきつる。

「おぉ、いいぜいいぜ、今の顔は!!そのまんまの顔でいろよ。ヒャハハハハ……!」

残忍な笑みを浮かべながら、ビリーは左足の爪先で舞の前垂れ布を横に押しのける。
ピンクのショーツに包まれた彼女の股間が露わになる。
秘部の縦ジワがクッキリと浮かび上がるほどにフィットしたそのショーツの隙間から、
真紅の棒の切っ先がスルスルと内部に滑り込む。

棒を握る掌の感触で、ビリーは、少女の聖域への入口に切っ先が到達したことを確認した。

「覚悟を決めな、ニンジャガール」
「いっ…いや……………」

顔に大量の冷や汗を浮かべ、不知火舞はゴクリと喉を鳴らす。

ビリーが棒を握る両手に力を込める。
恐怖に耐え切れなくなった少女は思わず目をつぶる。
そして――――――。


「そこまでだ、ビリー」
少女の体内に押し込まれようとしていた真紅の棒を、黒服の男の手がガッチリとつかんでいた。

「……なんの真似だ、リッパー」
ビリーは、いつの間にか戻ってきていたスキンヘッドの男を睨みつける。

「そこまでだと言っているんだ。この娘からすぐに離れろ」

「オレに命令すんじゃねぇぇぇぇ!!てめぇのハゲ頭から先にブチ抜くぞ、コラァァァ!」
狩りの邪魔をされたビリーは、その怒りの矛先をリッパーに対して向ける。

怒りに我を忘れ、本能のままに暴れている時のビリー=カーンは狂犬同然。
彼の邪魔をすれば、たとえ仲間であろうと命の保証はない。
そんなことはリッパーも十分に分かっている。
正気を失ったこの男を制御できる人間はこの世に一人しかいない―――。

リッパーと共にエレベーターホールに戻ってきた、帽子頭のホッパーが語りかける。
「ギース様のご命令だ」
その一言で、リッパーにつかみ掛かろうとしてた狂犬の動きが止まる。

「ギース様が?」

「そうだ。ついさっき、ギース様にこの少女のことを報告したところ、大変興味を示され、是非会ってみたいと仰せになった」

ホッパーの言葉に、押し黙るビリー。
「………………………。」

「だから、お前がこの娘にこれ以上手を出すことは許されない」
リッパーはそう言いながら、彼の腕から朱色の棍を取り上げる。
ビリーが正気を取り戻したことを確認したからだ。

「ちっ…、ギース様のご命令とあれば仕方ねぇ。おい、お嬢ちゃん。
そういうわけで、この勝負の続きはまた別の機会にやってやるぜ。
もっとも、てめぇが生きて社長室から出られたらの話だけどな……。
ほらっ、さっさと立ちな!」

彼らのやり取りを呆気に取られて眺めていた不知火舞の両腕をつかんで、
無理やり立ち上がらせると、ビリーはポケットから銀の手錠を取り出して、彼女の両腕にかけようとする。

ホッパーがそれを制す。
「そんなものは不要だ。ギース様は、その少女を捕虜として連行しろと仰ったのではない。客人として丁重にご案内しろと仰ったのだ」

(客人ねぇ……。こういう時のギース様は、何を考えていらっしゃるのかよく分からないぜ……)
ビリーは、頭に巻いていた赤と白の縦縞バンダナを取り外すと、大事そうにポケットにしまいこんだ。


184名無しさん :06/07/08 01:56 ID:???
以上、途中までですが第2部を投下しました。

185名無しさん :06/07/08 02:13 ID:q.56lEhw
GJ!
待ってました!続きが激しく気になります。頑張って下さい!

186名無しさん :06/07/08 18:16 ID:???
いい所で終わったので続きが気になります。
ギース様怖ろしいまでに強そうなので徹底的にリョナられそう。
楽しみにしてます。

187名無しさん :06/07/09 01:00 ID:???
き、気になる…続きが読みたひ!

188名無しさん :06/07/10 02:58 ID:???
舞を殺さず嬲ってくださいw
前作で不覚にもホロリと。゚ノД`゚)゚。

189名無しさん :06/07/11 17:07 ID:UwharRf2
続きが気になります!臍の形が変わるくらい腹を鷲掴むようなストマッククロー。。。などを夢見ていますw 頑張ってください

190狼からの洗礼 14 :06/07/11 20:35 ID:???
三人の男たちに連れられて、17歳の少女は高速エレベーターに乗り込んだ。
内部はガラス張りになっていて、深夜のサウスタウンの街並みがよく見える。
リッパーと呼ばれていたスキンヘッドの男がカードキーを差し込むと、エレベーターが上昇をはじめた。
ガラス越しに見える街の建物が、みるみる小さくなっていく。

リッパーとホッパーは、舞に背を向けたまま無言で立っている。
(レディをエスコートしなきゃいけないってのに、全く無愛想な連中だこと。………ん?)
注意深く観察してみると、二人の頬は微かに赤い。
彼らのようにポーカーフェイスな男たちにとっても、過激な忍装束に身を包んだ美少女の肢体は、
目のやり場に困るシロモノであるらしい。
(あらあら、結構かわいいところあるじゃない)

「サウスタウン市長ですら滅多にお目にかかれねぇギース様への面会。
日本の女子高生ごときには、貴重過ぎる体験だぜ?」

“龍炎舞”で上着を焼かれてしまったため、白のYシャツ姿をしているビリー=カーンが話しかけてくる。

「それは光栄ですこと。この街で一番強いと評判の殿方への謁見……。腕が鳴るってもんだわ!」

「ケッ!口の減らねー小娘だぜ。まっ、せいぜいあの方の機嫌を損なわないよう気をつけるこった……」

そんなことを話している間に、エレベーターは目的地に到着した。
ここは、“ハワードコネクション”社長室のさらに一つ上の階。
即ち、超高層ビル「ギースタワー」の最上階である。


エレベーターから降りた少女は、思わず目を丸くした。
(なんなのよ?この趣味の悪いホールは……)
そこは不思議な空間だった。

先ほどまで彼女がいたエレベーターホールよりもさらに広い大ホールは、
ビル1フロア分の面積を丸ごと使った展望室になっている。
天井の高さは20メートルくらいありそうだ。
四方の壁は全面ガラス張りになっていて、サウスタウンの夜景が360度の大パノラマで一望できる。
そこまではいい。
それだけなら、なんとも素敵な展望室であると褒めることができる。

問題はこの空間の内装である。
床は全面、剣道場のような檜床。
ホールの中央は高御座(たかみくら)のような和風の祭壇になっていて、
小さな屋形の中には戦国武将の甲冑が安置されている。
屋形の頂には、“大悪党”と書かれた掛け軸
屋形の両脇には、なんとも厳めしい二体の金剛力士像。
二体の像の傍にはそれぞれ、“天下無双”、“覇我亜怒”と書かれた幟(のぼり)が立てられている。

(“はわあど”?日本のヤンキーみたいな当て字だわね…)

天井からは浅草雷門のような巨大な赤提灯が、二個ぶら下がっている。
片方には大きな黒文字で“悪”と書かれており、もう片方には“怒”と書かれている。

(なんてことなの……。完全に日本文化が誤解されているわ)

広いホールをさらに見渡してみれば、
明治神宮のものよりもさらに巨大な朱色の大鳥居が床から天井に向かって伸びていたり、
風神雷神図屏風のレプリカが展示されていたりと、とにかくメチャクチャである。


191狼からの洗礼 15 :06/07/11 20:41 ID:???
「私の日本コレクションは気に入ってもらえたかな?」
背後からの突然の声にぎょっとなり、後ろを振り向くと、三人の側近を従えた長身の男が立っていた。
どうやら彼は、一つ下の階のオフィスから階段を使って上ってきたらしい。

身長はビリー=カーンよりも高く、185pくらい。
髪はブロンドのオールバック。
年齢は30代後半といったところだろうか。
ビリー=カーンの猛禽類を思わせるそれとは、似ているようで異なる鋭い瞳。
動物に喩えるなら――――――
(狼……?)
ビリー達のものよりも更に一桁以上、値の張りそうな高級スーツに身を包んでいる。

「あなたが……?」

「はじめまして、ミス・くのいち。私がギース=ハワードだ」
決して居丈高ではないが、低く響くようで、不思議な威圧感のある声だった。

裏社会のことなど何も知らない17歳の女子高生である舞は、
ギースについてもサウスタウンについても、ほとんど前知識を持たないまま、
ここまでやって来てしまった。
しかしそれでも、実際にその姿を目の当たりにし、
少女はこの男の“凄さ”というものを今、肌で感じ取っていた。

一言でいうと、独特のオーラのようなものを全身から放っている。
それは、単なる格闘家としてのオーラではない。
殺気という点では、先ほどビリーが垣間見せてきた狂気の方が恐ろしかった。
だが、ビリーの狂気とは別の意味で、この男は恐ろしい。

ただそこにいるだけで、周囲の全ての人間を跪かせてしまうような雰囲気がある。
前向きに表現するなら、カリスマ性。
そのことは、彼がこれ程の超高層ビルを構える大財閥の総帥として君臨していることからも分かるし、
今、彼の後ろで横一列に並んで姿勢を正している、三人の男たちの態度からも窺える。

そして、彼の狼のような瞳が向けてくる眼差しは、氷のように冷たく静かな一方で、
その氷の中に灼熱の炎を封じ込めているかのような激情をも、同時に感じさせる。

(間違いなく強敵だわ……。相手にとって不足なしね。この男に勝てたら、私の実力もホンモノ…。
おじいちゃんも“アイツ”も、私のことをきっと認めてくれる……)

彼女の脳裏には、日本にいる不知火半蔵とアンディ=ボガードの顔が浮かんでいた。


「部下から話は聞いている。この私と闘いたいそうだな。
私も近頃は社長業務に忙殺されてばかりで体がなまっていてね……。
挑戦者の出現は実に嬉しい。ただ、正直、君を見ていると不安になってくるな。
その華奢な身体で私の技にどれだけ耐えることができるかどうか……」

そう言いながらギースは、魅惑の忍装束に包まれた美少女の細い体のラインを、視線でなぞってくる。

「あら、お気遣い感謝しますわ。
でもそんなことを言ってると、後で後悔することになるからお気をつけなさいな。
貴方はこれから、その非力で華奢な女の子に負けるんですから……」

「ふんっ、威勢のいいお嬢さんだ。11年前のタクマの娘を思い出すな……。いいだろう、遊んでやる」

戦闘態勢に入ろうとする主に対して、ホッパーが慌てて尋ねる。
「ギース様、少々お待ちを……。ただ今胴着と袴を持って参ります」

「必要ない。今晩のデスクワークがまだ残っている。
このまま闘った方が、すぐに業務に戻れるから手間が省ける」

そう言うと、ギースはスーツ姿のまま、不知火舞に対して身構える。
舞もまた、胸元から鉄扇を抜き出してファイティングポーズをとる。


192狼からの洗礼 16 :06/07/11 20:45 ID:???
互いに一足跳びで攻撃を仕掛けることができる間合いを挟んでの対峙。
「………………。」「………………。」

5秒ほどの睨み合いの後、美少女くのいちが地面を蹴って宙に跳ぶ。
(先手必勝!)
「花蝶扇!!」

頭上から高速で飛来する扇を、ギースは右手で造作なくはたき落とす。
「でやあっ!!」
舞は空中から右キックを繰り出す。
たとえガードされても、すぐに左キックに移行できる回し蹴りである。
黒足袋に包まれた彼女の右足が、地上で構えているギースの左手に吸い込まれ、――――――

「きゃあっ!?」
次の瞬間、舞は背中から地面に叩きつけられていた。

(なっ……今のはいったい………!?)
それを考える暇もなく、倒れている彼女を踏み潰そうと、ギースの足が振り下ろされる。

「ハッ!?」
舞は横に転がることでそれを回避し、男に足払いを食らわせようと、
起き上がりざまに右脚を伸ばす。

ガッ!

伸ばした脚が、ギースの左腕によってガードされる。
彼は下にしゃがみ込みながら、左腕を床に突き立てるように伸ばしていたのだ。
攻撃を防がれ、隙だらけの少女の顎を、男の右アッパーが打ち上げる。

「きゃんっ!!」
小柄な体が宙に浮き、ドシャリと地面に倒れこむ。


「どうした?貴様の技をもっと見せてみろ」
挑発をしかけてくるギースの言葉遣いが変わっている。
おそらくこれこそが、事業家ではなく、格闘家としてのこの男の素顔なのだろう。

「言われなくても見せてあげるわ!不知火流の妙技、とくと味わいなさい!」
前方に素早く踏み込みながら側転し、舞は肘を突き出した姿勢で突進する。
「必殺忍蜂!!」
速さと重さを兼ね備えた、現時点での最強の打撃技。
突き出した少女の肘が、ギースの左腕に接触し、―――――――

「ぐあぁっ!?」
またしても舞は、背中から床に叩きつけられてしまう。
今度はなにをされたのか、はっきりと分かった。
ギースは舞の攻撃を、ギリギリまで引きつけた上で左腕でガードし、
右腕で彼女の装束の襟元をつかんで投げ飛ばしたのだ。


口で言えば簡単だが、これを実際にやるのは非常に難しい。
相手の攻撃を命中直前まで引きつけるためには、極限レベルの見切りが必要だからである。
優れた動体視力と集中力に加えて、投げに入る前の体さばき、相手をとらえて投げを決める時の腰のキレ、
どれが欠けてもこの技は成功しない。

“当て身投げ”―――。
敵のあらゆる攻撃を無効化すると同時に、反撃を仕掛けることができる、攻防一体の技。
これこそが、1979年の第1回KOFの直後、ギース=ハワードが日本で修得した古流武術の極意。
大南流合気柔術の使い手、周防辰巳から、その命とともに奪い取った技である。

“必殺忍蜂”をあっさりと封殺してしまったギースは、床に倒れている舞に対して語りかける。

「実に単純至極な技だな。その程度、目をつぶっていても受けきれるわ。
敵にその姿を悟られことなく、暗殺を成功させる“ニンジャ”の技とはとても思えぬ!」

背中の痛みに顔を歪めながらも、少女はゆっくりと体を起こして反論する。

「くっ……!目をつぶっていてもだなんて、随分と舐められたものね。
ならお望み通り見せてやるわ。不知火流くのいちの真髄を!!」


193狼からの洗礼 17 :06/07/11 20:53 ID:???
そう言うと、舞はギースの間合いの外側を縦横無尽に駆け回った。
円を描くように移動したかと思えば、男の頭上を跳び越えて対角線上に移動し、
横飛びをすると見せかけて、地を這うように縦に移動する――――――――――――。
決して相手に動きを先読みさせない。

サウスタウンの街で、リチャード=マイヤの空中殺法を封じ込め、ダック=キングの自由奔放な移動技を打ち破り、
つい先程ビリー=カーンを翻弄した、神速かつ変幻自在の機動力。
不知火舞の最大の武器は、その圧倒的な機動力を利用した撹乱戦法である。

「我が拳は疾風!誰にも止めさせやしないわ!」

この闘いを離れて見守っている三人の側近、リッパー、ホッパー、ビリーの目から見ても、
彼らの主の周囲を、桃色の稲妻が走っているようにしか映らない。
それ位、彼女のスピードは速かった。
それを至近距離で相手にしているギース本人にとっては、なおさらその動きを目で追うことは不可能であろう。

にも関わらず、ギース=ハワードは全く動じた様子を見せない。
自分の周囲を走り回る、ピンクの影に対して呼びかける。

「なるほど、確かに素早いな。速過ぎるといってもいい。
可視不可能な機動力だよ。
だが、それだけだ。貴様、なんとも哀れな娘だな………」

「?」

「貴様はその機動力で、これまでに、何人かの猛者どもを手玉にとってきたのだろう。
その度に思ったはずだ。『私は強い。男どもにだって決して負けない』、と」

「……そうよ、当たっているわ。そして今、あなたのことも手玉にとっている。覚悟しなさい」
速度を全く落とさないまま、不知火舞が答えてくる。

「だが、それと同時に貴様はこうも思っていたはずだ。
『この機動力が通用しない男が現れた時が、私の最期だ』、と」

「だっ……だまれっ!!」
稲妻のように駆け回る少女の声に、明らかな動揺の色が浮かぶ。

「足りないパワーをスピードで補った程度で、男と対等になったつもりか?
一流の男性格闘家を何人か手玉に取った程度で、誇り高い狼の仲間になったつもりか?
貴様はとっくに理解しているはずだ。
自分は一流にはなれても、超一流には絶対になれないということを!」

「だまれっていってんのよ!!!」

激昂した少女は、ギースの背後から攻撃を仕掛ける。

「無駄だ!」

彼の後頭部を狙って鉄扇を振り下ろした舞の右腕に、ギースの左腕が絡みつく。
そのまま舞の体は空中に弧を描き、檜の床に叩きつけられる。
今度は背中からではない。頭からである。

「ぐあぁっ!!?」

脳天から強烈に叩きつけられ、目に火花が飛ぶ。

「たとえ貴様の動きの全てを目で追うことはできなくても、
攻撃を仕掛けてくるタイミングだけは絶対に見逃さん!
そしてそれさえ見極めてしまえば、撹乱戦法などは簡単に攻略できる。
貴様の機動力など、俺の“当て身投げ”の前ではなんの意味もなさないのだ!」



194狼からの洗礼 18 :06/07/11 20:58 ID:???
「くそっ…、まだよ!」
頭の痛みを堪えながら、なんとか立ち上がった少女の顔面に、ギースの左拳が叩き込まれる。
女の顔を殴ることに、なんの躊躇もない渾身の正拳突き。

「ぶぴゃっ!!??」
間抜けな悲鳴をあげ、顔を両手で抑えたまま、舞はその場にうずくまってしまう。
へし折られた鼻から、大量の血がドクドクと溢れ出る。
(いっ…痛い……!!女の子の顔をためらいもなく殴るなんて………)

「顔を殴られるのは初めてか?つくづく甘い!
結局貴様は、女であることに甘えているのだ……。
はしたない装束に身を包んで闘いに望むのはなんのためだ?
男の集中力を乱し、隙を生じさせるため?
違うな!男に手を抜いてもらうためだ!
自分が女であることを強調し、男に手加減して欲しいから、
貴様はそのような装束を纏って闘っているのだ!!!」

「違う!!あんたなんかに……男のあんたなんかに…あたしの気持ちが分かってたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

これまでの自分の想いや努力の全てを否定してくるようなギースの言葉に、少女は完全に我を失ってしまっていた。

(許さない!絶対に許さない……!!)

顔から鼻血をダラダラと流しながら、ギースの両肩に必死につかみ掛かる。
“不知火剛臨”―――。
鉄棒の大車輪のように反動をつけて、自分よりも体重の重い敵を投げ飛ばす技。

だがギースは、つかみ掛かってきた少女の装束の後ろ襟をつかみ上げると、
逆に、彼女の軽い体を遠くまで投げ飛ばしてしまう。

「あぁあっ!!?」
“真空投げ”―――。
これまで密着状態で闘っていた二人の間合いが大きく離れる。

「烈風拳!!」
ギースが大きく片腕を振り上げると、彼の闘気が青白い塊となって、床の上を駆け抜けた。
“気”の力を利用した飛び道具。

日本の不知火屋敷でアンディ=ボガードに因縁をふっかけ、何度か手合わせをした時、
彼が“飛翔拳”という技名で同じ様に“気”の塊を飛ばしてくるのを、舞は見たことがある。

しかし、今、彼女めがけて地面を疾走するギースの“気”は“飛翔拳”の何倍も大きな塊であり、
そしてなによりも…………
(弾速が格段に速い!!)

迎撃しようと身構えた時には、青白い闘気の荒波は、舞の目の前まで迫っていた。

「花蝶扇!!…………きゃっ!!?」

投げつけた鉄扇が、“烈風拳”に飲み込まれ、木っ端微塵に弾け飛ぶ。
(そ…相殺し切れない!!?)

“花蝶扇”を粉砕した闘気の余波が突風を巻き起こし、
少女が身に纏う忍装束の前垂れ布が大きく吹き上げられる。
薄桃色のショーツに包まれた股間が丸見えの状態になるが、そんなパンチラ光景には目もくれず、
ギース=ハワードは再び左腕を大きく振りかぶる。

またも出現した青白い闘気の波が、不知火舞めがけて床の上を走る。

「龍 炎 舞 !!!」

迫る“烈風拳”の闘気の波を、舞は尻尾に灯した“不知火の焔”によって相殺する。
しかし、安心したのも束の間、炎をぶつけて打ち消した気弾のすぐ後ろから、
さらに大きな“気”の塊が滑り込んでくる。
(そんなっ…!二発連続発射ですって!!?)

「ダブル烈風拳!!!」
少女の腰まで達するような大きな荒波が、“龍炎舞”直後の無防備な身体に直撃する。



195狼からの洗礼 19 :06/07/11 21:02 ID:???
「きゃあああああ!!!!」

灼熱のようなギースの“気”に全身を包まれ、悲鳴をあげる少女。
動きが硬直した彼女に対して、ギース=ハワードは一気に間合いを詰める。
そして、ドス黒いオーラを体中から放出しながら、痛烈な突進技を繰り出す。

「新しく完成させた俺の技、貴様の身体で試させてもらうぞ!!」

(これは……、“アイツ”の得意技、“斬影拳”!?)

慌ててガードを固めようとした舞の腕に、焼きゴテのように熱いギースの左肘が突き刺さり、
あっさりとガードを崩壊させる。

「うぁっ!?」
間髪入れずに突き出した右手の掌底が、彼女の腹部を強打する。
「がはぁっ!!!」
アンディの“斬影拳”よりも遥かに重く、強烈な一撃を腹に受け、少女の身体が“く”の字に折れ曲がる。
「邪 影 拳 !!!」
最後に繰り出された左手の掌底は、舞の鳩尾に深く深く、めり込んだ。

「ごぶっ…!!」
少女の両目が飛び出さんばかりに大きく見開かれ、愛らしいピンクの唇の隙間から、
胃液混じりのよだれが流れだす。

「うぶっ…ぐあっ……!」
腹を両手で押さえ込んだまま、舞はその場で両膝をガクリと床に落とし、前のめりに倒れこんでしまう。

「立てっ!!」
「いっ…痛い!」
ポニーテールに束ねた黒髪をギースの片手に引っ張り上げられ、無理やり立ち上がらされる。
もう片方の手によってガッチリと股間を押さえ込まれ、そのまま身体を持ち上げられる。

「どりゃっ!!」
ギースを挟んで反対側の床の上に背中から叩きつけられ、
それと同時に彼の“気”が作り出した落雷を、全身に浴びせられてしまう。

背中から床に叩きつけられる衝撃と、体中に流される“気”の電流。
二重の苦痛によって、舞の顔が大きく歪む。

仰向けに倒れていたところを、ギースの右足によって、腹を思い切り踏み潰される。
ズンッ!!
「ごぶぇっ……!!!」

“邪影拳”を喰らった直後の腹を圧迫され、胃の中身が逆流してしまう。
大量の胃液を天井に向かって噴き出し、少女の頭がガックリと横に垂れる。

気絶してしまった少女を嫌悪の表情で見下ろしながら、ギース=ハワードは吐き捨てるように言い放つ。

「ふんっ!脆すぎる。サンドバッグの代わりにもならんわ。
手合わせは終わりだ。とっととこの街から立ち去るがいい。
このサウスタウンは狼たちの街。
そして、女はどうあがこうとも狼にはなれぬ……」


196狼からの洗礼 20 :06/07/11 21:06 ID:???
女は狼にはなれない。
それはギースにとって、とうの昔に出た結論であった。

思い出すのは11年前の第1回KOFに参加していた一人の少女。
“無敵の龍”と呼ばれる兄を持ち、“不敗の格闘家、Mr. カラテ”と呼ばれる父を持つ女。
リョウ=サカザキの妹にして、タクマ=サカザキの娘である、極限流一門の紅一点、ユリ=サカザキ。
ギースが26歳、リョウが22歳であったあの当時、彼女は18歳。

兄や父のお荷物になりたくないという理由で、彼女もまた“極限流空手”の技を修得し、KOFに参戦した。
凡人から見れば十分に天才と呼べる位の実力は持っていたが、女性である以上、闘気の総量や筋力という点で、
ユリは兄や父には遠く及ばなかった。

その欠点を、彼女は“気”のコントロールの巧さによってカバーすることで、男たちに追い着こうとしていた。
しかし、そのような涙ぐましい努力も、ギース=ハワードに言わせれば滑稽なものでしかなかった。

“極限流空手”は、文字通り、極限まで鍛え抜かれた筋力と、極限まで研ぎ澄まされた“気”の力を併用するからこそ、
古今無双の剛拳として、兵器のような殺傷力を生身の肉体から生み出すことができるのだ。
その片翼である「極限まで鍛え抜かれた筋力」を放棄し、「“気”のコントロール」に特化した時点で、
彼女の格闘スタイルは真に“極限流”と呼べるものではなかった。

そのようなまがいものの拳では、一流の格闘家と渡りあうことはできても、超一流の男性格闘家には通用するはずがない。
事実、ユリ=サカザキは第1回KOFにおいて、ベスト8までは楽々と駒を進めることができたものの、続く準々決勝で、
それまでの快進撃が嘘であるかのような惨敗を喫し、大会から去っていった。

女は狼にはなれない。
格闘技の世界において、一流の男たちと五分の闘いをすることはできても、超一流の男たちには全く歯が立たない。
それが11年前、ギース=ハワードが出した結論である。

今現在、自分の足元に無様に転がっている女忍者とて同じこと。

「スピードだけを磨き続けるという選択肢を選んだ時点で、
貴様はすでに、哀れな負け犬なのだ。
女だからとバカにする男には絶対に負けないと口では言いつつ、常に男に怯え続けている。
自分を圧倒する男のパワーによって、完膚なきまでに叩きのめされてしまう日が必ずやってくることを、
心のどこかでずっと理解していたはずだ」

ギースの言葉に、倒れていた少女の体がピクリと反応する。

「これ以上は言わん。
狼の世界で生きていく資格は女の貴様にはない。
早々に日本に帰って、生温い日常を過ごすがいい……」

背を向けてその場を立ち去ろうとするギース。
しかし、すぐに立ち止まる。

「待ちなさいよ…ぐっ……まだ勝負はついてないわ……。
それに、誰が…負け犬ですって?」

足下からの弱弱しい声に振り向いてみれば、不知火舞が床の上に伏したまま、
必死にギースの足首にしがみついている。


197狼からの洗礼 21 :06/07/11 21:10 ID:???
(執念だけはなかなかのものだな……。だが、もう飽きた)

舞の小柄な体を楽々とつかみ上げ、真上に高々と放り投げる。
限界寸前まで体力を消耗し、空中で受身をとることなど到底できない少女の体は、
20メートル近くある天井スレスレの高さまで飛んでいく。

「ぬぅぅぅぅぅぅ…………!」
ギースは、横に真っ直ぐに伸ばした両腕で大きな円を描くように、肩を回し、体内の“気”を練り上げる。
彼の両掌に凄まじい量の闘気が圧縮収束され、サッカーボールよりも大きな光の球体を形作る。

腕を前方に突き出し、その光の球体を、頭上から力なく落下してきた女忍者の無防備な体に押し当て、破裂させる。

「羅  生  門  !!!!」

ボギボギィッ!!
「!!!??」
骨の砕ける不気味な音。

ギース渾身の発勁をその身に受け、不知火舞の体は、木の葉のように吹き飛ばされた。

10メートルほど離れた床の上に落下し、舞は胸を押さえ込んでゴロゴロと転がりながら悶絶する。

「がぁぁぁっ………ぐああああっ……ごっ……あっ……げほっ……」

「多少の手加減はしてやったが、アバラの数本は確実にイッたはずだ。
もうあきらめろ、貴様の負けだ。
そのまま大人しく寝ていれば、見逃してやる。
身の程をわきまえぬ愚かな小娘など、殺す価値もない」


床の上で苦痛にのたうち回りながら舞は、思っていた。
(つ……強過ぎる。私のスピードも、色仕掛けも、全くこの男には通用しない。
私だってあんなにたくさん修行したのにどうして………。
勝てない……この男には…絶対に勝てない……)

「ぐああっ……あぁっ……」
(いっ……痛いよ……。それに、体に力が入らない。……自分の体じゃないみたい……力がどんどん抜けていく
……痛い…もうイヤダ……日本に帰りたい……だけど…だけど…)


198狼からの洗礼 22 :06/07/11 21:15 ID:???
けれどもなぜか、彼女は自分の負けを認めたくなかった。
舞の戦術は全て、ギース=ハワードの圧倒的な力によって打ち破られてしまった。
彼女の攻撃は、ギースにかすり傷ひとつ負わせることができなかった。

この勝負、どう考えても舞に勝ち目はない。
早々に降参して、この場から逃げ出したい気持ちは十分にあった。
それでもなぜか、舞は降参したくなかった。

屈強な男たちとも対等に渡りあえるよう身につけてきた、
彼女の機動力も色仕掛けも、ギースによって完全に否定されてしまった。

「女は狼にはなれない」

これまでの彼女の努力を全て打ち消すかのような、ギース=ハワードの重い言葉。

「女は男には絶対に勝てない」

ギースの言葉が、山田十平衛の言葉に、そして祖父半蔵の言葉に重なる。

(イヤだよ……私だって強くなりたい……男の人にだって負けたくない……)
もしこのまま負けを認めてしまえば、自分は二度と、格闘家として立ち上がれないような気がする。
それは、彼女が長年目の敵にしてきた、あの青年と完全に道を分かつことを意味する。

たった今も、日本で厳しい修行を積んでいるであろうアンディ=ボガードの顔が脳裏に思い浮かぶ。
決してよじ登れない高い壁に、何度も何度もしがみつこうとするかのような真剣な眼差し。
あれは紛れもなく、狼の眼である。

(“アイツ”の瞳の先にあるのが一体なんなのかを知りたい……)
なぜ、自分がアンディのことをこんなにも強く意識しているのかは分からない。
けれども、舞は、彼のことを振り向かせたかった。
一人の格闘家として、自分の存在を彼に認めさせたかった。
なぜ彼があんなに必死になって、強くなろうとするのかを知りたかった。

狼の瞳の先にあるのがなんなのかを知るためには、自分もまた狼にならなければならない。

(私だって……私だって…狼になりたい…)

今ここで逃げ帰れば、自分はギースの言葉を認めたことになってしまう。
女である自分は、男には絶対に勝てないということを認めたことになってしまう。
それだけは嫌だった。


199狼からの洗礼 23 :06/07/11 21:20 ID:???
「ぐっ……まだよ…まだ降参するわけにはいかないわ!」
限界寸前の体でヨロリと立ち上がり、舞は必死に声を絞り出す。

「ごふっ!……ぐっ…あっ…」
途端に激しく咳き込んでしまう。
口元を押さえていた手の平を見てみると、赤い血の滲んだ胃液がこびりついている。
(マズイ!本当にアバラをやられている。もうあんまり長くは持ちこたえられない……)

それでもなんとか持ち直し、10メートル前方に立っているギース=ハワードを睨みつける。
たとえ勝つことはできなくても、負けたくはない。
ギースになんとか一矢を報いたい。

なおも勝負を続けようとする女忍者の姿を、半ばあきれた表情で見つめながら、ギースは冷たく言い放つ。

「認めてやるぞ、その根性だけは……。だが、それだけではこの世界を勝ち抜くことはできん!」

「烈風拳!!」
ギースが放った“気”の塊が、舞に襲い掛かる。

「うっ!!」
ガードを固め、それに耐える舞。

「ダブル烈風拳!!!」
「うわぁっ!!?」

次々に打ち寄せる闘気の嵐は、少女に対してガードを固め続ける以外の選択肢を与えてくれない。

(はっ……反撃を……このまま体力を完全に削り取られてしまう前に…なんとか一矢を……)
“花蝶扇”では力負けしてしまうし、動作が大振りの“龍炎舞”では後が続かない。
この距離から“必殺忍蜂”を繰り出しても、ギースの気弾に狙い撃ちにされてしまう。

(なにかもっと強力な技を……“龍炎舞”の炎よりも熱く……“忍蜂”よりも速くて強いような技を…………!)
だが、そんな都合のいい技は、現時点で彼女が修得している技の中には存在しない。

(嫌だ!負けたくない!私はもっと強くなりたい!これからも格闘家であり続けたい!)



………………、一体なにをどうやったらそうなったのかは分からない。
こうしようと、意識しての行動ではなかった。
ギースが連続して打ち込んでくる気弾によって体力をドンドン削りとられ、彼女は立ったまま、半ば気絶していた。

ただ、気がつくと、舞の全身はいつの間にか、“不知火の焔”によって覆われていた。
長年の修行の末、ようやく“龍炎舞”をしたばかりの彼女は、本来ここまで大きな炎を操る力をまだ持たない。
それは、奇跡のような現象であった。
(いける……これならいけるわ!……これなら……勝てる!!!)

「でぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
獣のように叫びながら床を蹴り、そのまま“忍蜂”の姿勢で一直線に低空を飛んでいく。
舞が通過した後の檜床には、真っ黒に焼け焦げた跡がラインとなって残されていく。

「ダブル烈風拳!!!………なにっ!!?」
突進してくる彼女を迎撃するべく放たれた二重の闘気の波を、あっさりとかき消しながら、不知火舞は突き進む。

“龍炎舞”よりも熱く燃え、“必殺忍蜂”よりも強く素早く、敵を穿つ。
それはまさに、炎の弾丸であった。


200狼からの洗礼 24 :06/07/11 21:24 ID:???
ギースの表情から、初めて余裕が消える。

光のような速さで突進してくる不知火舞の姿が、
11年前のKOFで闘ったリョウ=サカザキの姿に重なって映る。
敗北寸前まで追い詰められた“無敵の龍”が、突如繰り出してきた奇跡の絶技“極限流奥義・龍虎乱舞”。
その時の光景を、今のギースは思い出していた。


(無心の境地から繰り出す、起死回生の最大奥義…………“超必殺技”というやつか……)

「面白い!!それだけの力を隠し持った相手ならば、手加減は無用!!」
ギースは笑った。
それは余裕の笑みではなく、強敵を目にした時にだけ彼が見せる歓喜の笑み。

(これならば、殺す価値がある!!)

「トォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」
触れる者全てを焼き尽くすような紅蓮の業火に全身を包みながら、不知火舞が右肘を突き出してくる。
モーションは同じでも、“必殺忍蜂”よりも断然速い。

だが、ギースはその動きを見切った。
腹を狙って突き出されてきた少女の肘に左腕を絡みつかせ、残った右手で彼女の股間を押さえ込む。
ギースのスーツに炎が燃え移るが、そんなことは気にもとめない。

「これぞ、“当て身投げ”の真骨頂!!“超必殺技”打ち破れり!!」

“当て身投げ”は本来、古流柔術においても極秘とされてきた、活殺自在の奥義。
その気になって用いれば、相手の命を造作なく奪う殺人術として機能する。
相手が仕掛けてくる攻撃が強力であればあるほど、それを返す“当て身投げ”も威力を増すことになる。

光のような速さで突進してきた、不知火舞の運動エネルギーは、そのままギースの反撃の投げのエネルギーへと吸収変換される。
すなわち、これによって脳天を床に叩きつけられた者は―――――――――、



(頭蓋を砕かれ、脳症を撒き散らして即死する!!)
ギースは捕らえた少女の体を、反対方向の床に脳天から叩きつけた。


201狼からの洗礼 25 :06/07/11 21:29 ID:???
グシャッ!!

美少女くのいちの額がパックリと割れ、赤い血が檜床の上に広がる。
みるみると大きさを増していく鮮血の水溜り。


しかしそれは、ギースが想像していた光景とは少し異なるものであった。

「むっ!?」
床に俯けに倒れている不知火舞の指先がピクリと動く。

(生きている!?一撃必殺の“当て身投げ”を喰らったのに、この小娘はまだ生きている!)

予想外の事態に驚愕し、倒れている少女の体を仰向けに裏返してみる。

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ……ハァ………」
額からドクドクと流血し、呼吸は荒くなっているものの、彼女はうっすらと目を開け、
気絶することなく意識を保ち続けていた。

(この闘いの中で、何度も“当て身投げ”を喰らったことで、対処法としての受身をとれるようになっていたのか……!?
周防辰巳にも、ジェフにも出来なかった芸当だ……)

「フ‥フハハハハ……!!面白い!起死回生の大技を繰り出して、俺に冷や汗をかかせただけでなく、
“当て身投げ”を喰らってなおも生き延びるとは、ますますもって面白い!!!
前言は撤回しよう。貴様なら、あるいは狼の世界に入ってこれるやもしれん………」

「ハァ…ハァ…ハァ………!?」

“当て身投げ”を喰らってなお生きているとはいえ、壊滅的なダメージを受けてしまったことは間違いない。
今の舞には、これ以上ギースに反撃する力も残されていなければ、立ち上がる力さえも残されていない。

仰向けに倒れたまま、立ち上がることができない舞に、ギースが語りかけてくる。

「今日この場で、一生忘れることができない完全敗北というものを教えてやろう。
もし貴様が真に狼であるならば、生き延び、這い上がってくるがいい。
そして己の牙を研ぎ続け、俺を殺しに来い!!」

そう言うと、ギースは両手を頭上に掲げ、“気”を溜め始めた。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉ……………!」

空気がビリビリと振動し、床から湯気が上がり始める。
彼の足元に転がっている舞の体の周辺に、“気”の力場が発生する。

「あっ…あぁ………?」 
舞は本能で感じ取っていった。
ギース=ハワードが、彼の最大奥義を繰り出そうとしていることに。

(こ…怖い…。殺される……今度こそ本当に殺される………)
床に倒れたまま、ガタガタと震え出してしまう。
それ程までに、彼が頭上で練り上げている“気”の量と密度は圧倒的なものであった。

いまさら命乞いなどという無様な行動に出るつもりはないが、それでも本能が伝えてくる。
ギース=ハワードの奥義に耐え切れなかった場合に訪れるであろう、自分の絶対の死を―――。


202狼からの洗礼 26 :06/07/11 21:37 ID:???
「狼ならば、耐えぬいてみせよ!この技に」

頭上に掲げていた両手を振り下ろし、ギースは、全身から集めた膨大な量の“気”を、
不知火舞の周辺に発生させた力場の上に叩きつけた。

「レ イ ジ ン グ ス ト ー ム !!!!!!」

下方に放たれた“気”は、力場に反射して、巨大な柱を形成する。
その数は8本。
青白い光の柱は鋭い牙となって天井に向かって伸び、不知火舞の体に突き刺さり、その全身を串刺しにした。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

広いホールに響き渡る断末魔の大絶叫。

小さな核爆発が起きたかのような“気”の激流に巻き込まれ、美少女くのいちの艶かしい肢体を包んでいた忍装束がビリビリに破れていく。
豊満な乳房を覆い隠していた胸元の布地が、無数の布クズになって空中に弾け飛んでいく。
胸元に隠していたスペアの鉄扇が床にこぼれ落ちる。
手首を守っていた皮製の手甲も、脛をグルグルと巻いていた赤い脚袢の布も、ズタズタにされて飛び散っていく。

巨大な闘気の刃によって串刺しにされ、全身の筋肉という筋肉、骨という骨が悲鳴をあげる。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――」

未だかつて受けたことがない超絶的なダメージの前に、舞の思考回路は完全にショートしてしまい、彼女の意識はそのままプッツリと途切れてしまった。




“レイジングストーム”の柱がようやく消滅した時、不知火舞の体は檜の床の上に、大の字になって転がっていた。
口をあんぐりと開け、白目を剥いたまま、少女の体はピクリとも動かない。

「ビリーよ、その娘が生きているかどうか確認しろ」
ホールの隅でリッパー、ホッパーと共に、この闘いを観ていたビリー=カーンに対して、ギースは命令する。

「ははっ!」
主の命令を受け、舞の体に近寄ったビリーは、彼女の心音と呼吸を確認してこう答えた。

「辛うじてですが、まだ息をしていますね……。心臓も正常に動いているようです」
「そうか、生きているか」
ビリーの報告に、ギースは微かに口元を綻ばせる。

「まったく、女のくせにゴキブリ並みにしぶといガキですな。
これ以上、ギース様のお手を煩わせる必要はありません。
俺が止めを刺して、海にでも捨ててきますよ」

「その必要はない。リッパー、ホッパー、急いで担架を持ってきて、その娘を下のフロアに運べ。
最低限の救護治療を施した後は、警察につき渡せ。
容疑はこのビルへの不法侵入と器物損壊、SPたちへの暴行傷害、そしてこの私への脅迫並びに殺人未遂だ。
逮捕するには十分な材料が揃っている」

「了解しました」
リッパーとホッパーが担架を探しに下の階に降りていく。

「ギース様、一体どういうことですか?なんでこんな回りくどい処分を?」
その理由には答えずに、ギースはビリーにも新しい命令を下す。

「ビリーよ、お前はこの娘を担当することになる刑事や検察、弁護士などを全て買収するのだ。
金はいくらでも積め。暴力や脅迫を使っても構わない。
この娘が必ず、“サイクロプス刑務所”に送り込まれ、“アレ”に参加せざるを得なくなるように仕向けるのだ。分かったな?」

「ハッ!」
ギースの命令は彼にとって絶対である。
ビリーもまた、下のフロアへと降りていった。


側近たちがいなくなった後、ギース=ハワードは、足元に転がっている不知火舞に対して静かに語りかけた。

「お前が真に狼であるかどうか、見極めさせてもらうぞ。
生き延びたければ、地獄の底から這い上がってくるがいい……」

至るところが損壊し、ボロボロになった忍装束の残骸に身を包み、大きな乳房を剥き出しにしたまま失神している美少女の耳に、その声は届かない。



1990年7月某日。
不知火流くのいち、不知火舞、サウスタウン市警によって逮捕される。
その後、彼女の身柄はサウスタウン郊外にある“国立サイクロプス刑務所”に収容されることになった。


203名無しさん :06/07/11 21:44 ID:???
最重要パートである第2部終了。
今回は、「舞リョナ伝説スペシャルメドレー」というコンセプトで、三部構成の予定。
リョナられながらも、舞が成長する話が書ければと思います。


204名無しさん :06/07/12 00:19 ID:c9kvu4uw
グッジョ!本当に素晴らしい!アレとはなんなのでしょう!?続きがとても気になります。

205名無しさん :06/07/12 00:40 ID:???
なんか無茶苦茶怪しい所に収容キタ─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!
GJ!
(*゜∀゜)=3

206名無しさん :06/07/12 01:13 ID:???
うわーすげーGJ!今回のは特に激しかった!
そして怪しげな収容所!
今後も楽しみにしてます。

207名無しさん :06/07/16 22:39 ID:???
>>203
超期待してるぜ!

208はめられた女忍者 1 :06/07/17 15:11 ID:???
1990年8月初旬の某日――――――
不知火流くのいち、不知火舞を完膚なきまでに叩きのめし、
完全粉砕したあの夜から一週間が過ぎようとしていた。

午前中の業務を終え、スーツ姿のギース=ハワードは、オフィスの社長席に腰掛けながら、
側近であるビリー=カーンの報告に耳を傾けていた。

「計画は順調です。この数日間であの小娘は、“サイクロプス刑務所”からの脱走を三度試みたようですが、
いずれも失敗。独房を脱出して10分も経たないうちに、スナイパー達の麻酔銃の餌食にされて連れ戻されています」

「ふん、当然だな……。あの刑務所は、78年にMr. BIGが起こした“ブラックサバス暴動事件”の反省から、
合衆国で最もセキュリティの厳しい収容所へと生まれ変わった。
ニンジャだろうと軍人だろうとエージェントだろうと、あの鋼鉄の要塞から脱走することは絶対に不可能だ」
かつて、サウスタウンのギャング勢力の中で、自分と覇権を競っていた男の顔を、ギースは思い出す。

ビリー=カーンが報告を続ける。
「ニューヨーク国際空港の税関に工作員を送り込んで、不知火舞の入国記録などを全て抹消しておきました。
現在あの小娘には、この“ギースタワー”で起こした暴力事件に関する容疑だけでなく、
密入国と不法滞在、合衆国へのスパイ容疑までもが懸けられています」

「うむ、よくやったぞ、ビリー。加えて、三度にわたる施設からの脱走未遂。
これだけ罪状を重ねてしまえば、もはやあの娘は、青春時代の全てを塀の中で過ごさなければならなくなる。
そしてそれを逃れるために、不知火舞は、検察官が提示してくる司法取引を受け入れることになる……。
その検察官が、我々によって買収されていることも知らずにな……」

期待以上の部下の働きに、ギースは上機嫌であった。
銀のケースから葉巻を取り出し、脇に控えていた秘書のホッパーに火をつけさせる。

「ギース様…………」
恐る恐る、ビリーが尋ねてくる。

「なんだ?」

「なぜギース様は、あのような小娘に興味をお持ちになったのですか?」

手にした葉巻の先端から昇る白い煙を見つめながら、ギースは言った。
「…………。ただの気まぐれだ。あえて言うなら、あの娘の潜在能力と成長性に興味がある。
再び死の寸前まで追い詰められた時、奴が果たしてどんな底力を見せつけてくれるのか知りたくなった……。それだけだ………」

灰皿の上に葉巻を置き、ギースは利き手の袖を腕まくりする。
彼の左手首には、白い包帯がグルグルと巻いてある。
あの夜、全身に紅蓮の業火を纏って突進してきた不知火舞の技を、“当て身投げ”で返した際に負った火傷の跡である。
(毛ほどの傷に過ぎないが、奴はこの俺に確かに一矢を報いてきた…………)

「あの小娘を限界まで追い詰めて、力を引き出させるために“アレ”に……………?」
「うむ。自分の天敵とでも呼ぶべき特性を持った相手を前に、どれだけ闘うことができるかどうか………。
あの娘が生きるか死ぬかは、奴自身の底力が如何ほどのものか次第というわけだ……」

「もし、その底力が取るに足りないモノであった場合は、どうなさるおつもりですか?」

「どうもしない。その時は、所詮その程度の雑魚であったということだ。
あの娘がライデンの剛力によってズタズタに引き千切られ、この街のドブネズミどもの餌になったところで、
私の知ったことではない………」

無表情に語るギースの姿を見て、ビリー=カーンは思った。
自分の主は、実に凝り性で、そして飽きっぽい方であると―――――。


209はめられた女忍者 3 :06/07/17 15:19 ID:???
サウスタウンは広大な都市である。
その風景は、エリア毎に全く異なる。
この街の支配の象徴である「ギースタワー」を有する人工島、
“イーストアイランド”でさえ、面積に関して言えば、この都市のほんの一部に過ぎない。

サウスタウンには、スラムもあれば高級住宅街もある。
広大な緑地公園や遊園地、チャイナタウンもあれば、海水浴を楽しめるビーチもある。
臨海部には、製鉄所や石油化学コンビナートが立ち並ぶ他、大きな貿易港や倉庫街がある。


その倉庫街を今、一台の護送車が走っている。
車体に描かれた文字から、この車が、“サウスタウン警察署”の所属であり、
“サイクロプス刑務所”に重罪人を護送する際に用いられるものだということが分かる。
この車両は、一人の囚人を収容所から湾岸地区まで運んでいる途中であった。

囚人番号106番、不知火舞―――――――
黒と白の横縞模様の囚人服を着せられ、彼女の両腕には冷たく光る銀の手錠がかけられている。
左右の足首にはそれぞれ、大きな黒い鉄球が足枷として、鎖で結びつけられている。

(ここまでガチガチに拘束しなくたって、脱走が不可能なのは、もう分かっているわよ。
だから、今回の取引に応じたっていうのに………)


昨日、舞は担当の検察官から、司法取引を持ちかけられた。
それは、格闘大会とストリートファイトが盛んなサウスタウンの文化発展のために、
ある格闘家とのエキシビジョンマッチに、挑戦者として参加してもらいたいという内容であった。

舞には挑戦権が三回与えられ、もしこの三回以内に勝利を収めることができたら、
刑務所での懲役期間を全て帳消しにすると、検察官は説明した。

「ただし………この試合は、並みの格闘家や軍人ではとても仕事が務まらないほど、過酷なファイトです。
もし負けてしまった場合、命の保証はできません。
もっとも、引き受けてもらえる方が極端に少ないそのような試合だからこそ、司法取引として成立するのですが………」

検察官は、なにやら含みを持たせた表現をしてきたが、彼女は凛とした表情で答えた。

「命の保証はできないですって?上等じゃない。
忍にとって本来、闘いとはどちらか一方が死ぬまで続けるものなんですから……。
そのエキシビジョンマッチで勝利を収めて、こんな陰気なところからはオサラバさせてもらうわ」

身に覚えのない罪状を次々に並べ立てられ、気の遠くなるような期間の服役を宣告されてしまっていた少女には、
この取引に応じる以外、事実上選択肢はなかった。

「どうやら受諾されるようですね……。
このエキシビジョンマッチは、一度挑戦したら、後には引き返せないのでご注意を。
あなたが二回目以降の挑戦権を拒否したとしても、必ず三回闘ってもらいます。
それでよろしければ、この誓約書にサインをお願いします」

検察官が提示してきた誓約書に、舞は署名したのだった。


そのような経緯があって、今、不知火舞は護送車に乗せられて、
そのエキシビジョンマッチの試合会場へと運ばれているのである。



210はめられた女忍者 3 :06/07/17 15:23 ID:???
キキッ!
運転手がブレーキをかけたらしく、車体が大きく揺れた。
どうやら試合会場へと到着したらしい。
彼女を幽閉していた車の扉が外から開け放たれ、付き添いで出張してきた二人の警察官が、車内に入ってくる。
警察官というよりはヤクザと言った方がしっくりとくる、ガラの悪い男たちであった。

(潮の匂いがする………。海が近いのかしら?)

カチャリ…ジャラ
舞の体を拘束していた銀の手錠と足枷の鉄球を取り外すと、警察官は一個の段ボール箱を差し出してきた。

「エキシビジョンマッチの運営委員から渡された。
このコスチュームに着替えて試合に臨めと、お前に指示してきている」
「ここですぐに着替えな。俺たちは外で待ってるからよ」
それだけ言うと、二人の警察官は車の外に出た。

(やれやれ。コスチュームまで指定してくるとはね……。
でもこの囚人服じゃ闘いようがないし、仕方ないか……)

そう考えて段ボール箱を開けた舞は、驚いた。
「ちょっと……なんなのよ、コレ!?」

そこに入っていたのは、不知火流の忍装束であった。
ただし、一週間前に「ギースタワー」に潜入した時に彼女が纏っていた忍装束ではない。
あの時の装束は、ギース=ハワードの最大奥義、“レイジングストーム”によって修復不能な程にボロボロにされてしまった上、
“サイクロプス刑務所”に送り込まれた際、没収されてしまっている。
今、彼女が手にとっているのは、形だけ忠実に再現された偽物である。

本物の不知火流伝統の忍装束は、特殊な布を材料に一族秘伝の製法によって編まれた特別製である。
炎を操る自身の忍術によって服が損壊しないよう、極めて高い耐熱性と耐火性を備えていることに加え、
打撃や刃物への耐久力も意外に高い。

闘いの際に神速で走り続けても汗をかきにくいよう、通気性にも優れている。
極薄の布で作られていることや、露出度が異常なまでに高いことから誤解されがちであるが、
あの忍装束は、非常に優秀な防御力を持っているのである。

それに比べると、今、彼女に与えられたコスチュームのなんと頼りないことか。
形や色だけは、本物と瓜二つである。
桜色の上着、黄色の腰帯、赤い尻尾、“たすき”用の白い太綱、手甲、脚袢に使う巻布、黒い足袋。

しかし、これらの装備は、特殊な布を材料にしている訳でもなければ、秘伝の製法を用いて編まれた訳でもない。
テカテカと光るエナメル生地で作られた、単なる“コスプレ衣装”である。
おそらくは、サウスタウン市街のどこかの業者に発注して作らせたものなのだろう。

耐熱性も耐火性も持たない偽物の忍装束では、“不知火の焔”を満足に扱うことができない。
おまけに、彼女のもう一つの主要武器である鉄扇も、刑務所で全て没収されてしまっている。
つまり、舞は今回の闘いに、素手で臨まなければならないことになる。
“花蝶扇”も“龍炎舞”も使えない状況での戦闘である。

(戦力の大幅なダウンは避けられないわね……。機動力と体術だけでなんとか乗り切らないと………)


211はめられた女忍者 4 :06/07/17 15:28 ID:???
そう考えると少し不安になってくる。
一週間ほど前、ギース=ハワードに完全敗北を喫してからというもの、
舞は幼少の頃から築き上げてきた、格闘家としての自信を失いつつあった。

(私、勝てるかな…………)

あの夜の忌まわしい記憶が蘇る。
「足りないパワーをスピードで補った程度で、男と対等になったつもりか?」
「貴様はとっくに理解しているはずだ。
自分は一流にはなれても、超一流には絶対になれないということを!」
「スピードだけを磨き続けるという選択肢を選んだ時点で、貴様はすでに、哀れな負け犬なのだ」

この一週間、ギースの言葉を、舞は何度も思い出していた。
刑務所のベッドの中で、彼女はギースと闘う夢を何度も見た。
夢の最後はいつも同じ光景である。
ボロボロにされ、檜床の上に無様に倒れている自分と、
それを満足そうに見下ろしている無傷の状態のギース―――――。

ぐうの音も出ないほど徹底的に打ち負かされてしまったあの夜の恐怖と屈辱は、
悪夢となって彼女を苦しめ続けていたのである。



(いっ‥いけない!!今は目の前の闘いに集中しないと……!)
闘う前からすでに戦意を喪失しかけていることに気付く。
頭をブルブルと横に振り、後ろ向きな想いを断ち切ることで、必死に気持ちを奮い立たせようとする。

(やるしかないわ……この闘いに勝たないと日本に帰れないんだから、やるしかない!)

白と黒の囚人服を脱いで全裸になり、用意された忍装束風の“コスプレ衣装”に着替え始める。
肉付きのよい大きな桃尻に、薄桃色のTバックが食い込む。
脇が全開になっている桜色の上着に袖を通し、黄色の腰帯を腹部に巻く。
丈夫な革ではなく、薄っぺらの布で作られた手甲を手首に装着する。
黒足袋を履き、脛に赤い布を巻きつけて脚袢にする。
太綱の先端を口でくわえながら、脇から背中にかけて“たすき”をキュッと締める。
背中側の腰付近に位置する黄色い蝶型の結び目の下に、長い尻尾状の垂れ帯を結びつける。

「フゥ…これで良しと……。おまわりさん、準備できたわよ」
着替えを済ませた舞は、車外に向かって呼びかける

「どれどれ…………」
車内に入ってきた二人の男は、
珠のお肌も露わな過激なコスチュームに身を包んだムチムチの美少女の姿を見て、
ヒューッと口笛を鳴らした。

「へへっ……たまんねぇな。このイベント始まって以来の、最高の生贄だ…。
きっと最高の見世物になるぜ。
へへへへっ…ジュル……、おっといけね…。想像してるだけでヨダレが出てきちまった……」

「生贄?なにを言っているのかよく分からないんだけど………」
これから臨もうとしているエキシビジョンマッチについての詳細を、
舞はまだなにも知らされていなかった。

「なんだお前、やっぱり何も知らされないで、このイベントに参加しちまったみてぇだな。
まっ…、“サイクロプス刑務所”からここにやって来る連中はみんなそうだったけどよ……。
詳しいことはすぐに分かるさ」

「さぁ、こっちに来い」

ガチャリ

コスプレ装束に身を包んだ少女は、手首に再び手錠をはめられ、車の外に連れ出された。


212はめられた女忍者 5 :06/07/17 15:33 ID:???
空は雲ひとつない快晴で、真夏の太陽がギラギラと照りつけてくる。

(やっぱり海の近くだったんだ。それにしても、太陽の下を歩くのは久しぶりだわ…)

彼女達が歩いているのは、貿易港に面した防波堤である。
水面付近を、カモメの群が飛んでいる。

「この倉庫の中が試合会場になっている」

舞を先導していた警察官は、堤防沿いに立ち並んでいる倉庫群の中でも、一番大きな建物の前で足を止めた。
倉庫というよりは、工場と言った方がふさわしいような、大きな建物であった。

「随分と大きな倉庫ね。でも、シャッターが降りているわよ。どうやって中に入れっていうの?」
舞の言うとおり、倉庫の入口は、重い鉄のシャッターによって固く閉ざされている。

「観客はすでに建物の中に入っているらしいぜ。
そして、エキシビジョンマッチの挑戦者であるお前には、専用の入口が裏手に用意されている」

三人は広い倉庫の外周をグルリと迂回して、裏口に回った。
裏口では、このエキシビジョンマッチの運営を担当しているという男たちが待機していて、
ここで舞の身柄は彼らに引き渡された。

別れ際に、二人の警察官はこう告げてきた。
「いつでも刑務所内の病院に搬送できるよう、救急車は手配してあるぜ」
「俺たちも特別席から見守っててやるよ。だから安心して闘ってきな」

(なによ、失礼しちゃうわね!まるで私が負けるのを前提にしているみたい!)

裏口から建物の中に入った不知火舞は、運営委員の一人に案内されて通路を歩き、階段を下り、
また通路を歩いて、大きな鉄の扉の前に辿り着いた。

扉の向こうから、観客のものと思しき歓声が漏れ聞こえる。
(相当な数の観戦者がいるみたいね………)
扉越しに聞き耳を立てている舞に対し、運営委員の男が話しかける。

「ここから先はアンタ一人で行きな。
扉の向こうは花道になっていて、試合用のリングまで一直線に繋がっている。
心して臨んだ方がいいぜ。今までの挑戦者の中には、一回目の挑戦で死んじまった奴もいるからな…」

「ご忠告ありがとう。だけど心配御無用よ。一回目の挑戦であたしが勝利を収めればなんの問題もないんですからね。
エスコートご苦労様。それじゃっ、行ってくるわ!」

少女は鉄の扉を外側に向かって勢いよく開け放ち、試合会場に入場していった。

廊下に残された男は、扉の鍵をしめ、太い鎖でジャラジャラとノブを縛り付けると、小さな声でこう呟いた。
(クククッ………。俺が心配してんのはアンタの身の安全なんかじゃねぇんだよ…。
アンタにはきっちりと三回にわたって、見事なヤラレっぷりを披露してもらわなきゃ、俺らの稼ぎが減っちまうんでね……)


213はめられた女忍者 6 :06/07/17 15:38 ID:???
扉の向こうは、体育館のような広い空間であった。
窓が存在しないため、外部の日光は全く差し込まないが、
野球場のような照明塔が室内を煌々と照らし出している。
色とりどりのネオンが至るところで光り輝き、天井では巨大なミラーボールが回転し、
さながらディスコクラブのような混沌とした雰囲気を演出している。

「ヤロウども、聞きやがれ!!はるばる日本からやってきた、キュートな“クノイチ”ギャルの入場だぜ!!
彼女こそが今回の挑戦者、マーイ・シラヌーイ!!!」
大音響のマイクが不知火舞の入場をハイテンションに告げる。

バシャッ!
(まっ…眩しい!!)
思わず目を細めたくなるような、強烈なスポットライトが、入場してきた美少女の姿を照らし出す。

「うおおおおおおおカワイイ〜」「見ろよ、スゲーエロイ格好してやがるぞ!!」
「いいぞネエチャン!」「脱げ〜!」「ヤラせろー!」

四方八方から猥雑な野次や罵声が飛び交ってくる。

(うわ〜、もの凄い数の人、人、人、………。
しかもガラの悪い下品な男たちばっかり。昼間だっていうのに、酔っ払いがたくさん。
ヤダッ!……なんかラリッた目つきの奴もいる!?)

まとまな教養や常識を持っていそうな人間は一人も見当たらない。
サウスタウンの全てのゴロツキやチンピラたちが集まったかのような大群衆が、
体育館のように広い空間を、スタンディングで埋め尽くしていた。
5千人、6千人、……いや、おそらく1万人以上いるだろう。

舞が立っているベニヤ板製の白い花道の上に、今にも這い上がってきそうな勢いで、彼らは手を伸ばしてくる。

(なんとなく胡散臭い話だとは思ってたけど、この雰囲気は異常だわ……。これは心してかからないとヤバそうね……)

花道の上をゆっくりと歩き出した舞であったが、足を一歩前に踏出す度に、忍装束の前垂れ布の隙間から、ショーツに包まれた秘部がチラついてしまい、
男たちの煩悩をますます刺激してしまう。

「ゴクッ……おい見えたか?」「あぁ、確かに見えた」「一瞬だが、パンツの縦ジワまではっきりと見えたぜ」
「あぁ…くいてぇなぁ」「ありゃあトビキリの上玉だ……」

そんなイヤラシイ囁き声が、美少女の通り過ぎた箇所から周囲に拡散していく。

(はっ…恥ずかしい……。こんな大勢の男たちの目の前で闘わないといけないなんて……)

格闘大会に出場した経験がない彼女は、大胆なデザインの忍装束に身を包んでいる自分の姿を、
大勢の第三者の前に晒すことに、まだ慣れていなかった。


214はめられた女忍者 7 :06/07/17 15:44 ID:???
あちこちから注がれる男たちの欲望の視線に耐えられなくなり、舞は全速力で駆け出した。
ベニヤ板作りの花道の上を50メートルほど走ったところに、赤いロープによって囲まれた7m四方の正方形のリングが設置されていた。
マットの色は青である。

(プロレス用のリング……!私の相手はレスラーなのかしら?)

「タァッ!」
地面を蹴って高く跳び、空中でクルクルと二回転しながら華麗にリングの上に降り立つ。

その時、再びハイテンションなアナウンスが場内に流れ、不知火舞のプロフィールを読み上げた。

実況「マイ・シラヌイは、弱冠17歳!身長164cm、体重46kg、スリーサイズはB85・W54・H90。
こんなにカワイイギャルだけど、ナメちゃいけないぜ、お前たち!!
なんと、あの“サイクロプス刑務所”に収容されている、トビっきりの悪い子チャンなのさ〜!」

「犯罪はいけないぜ、ネエちゃん!」「悪いことしてると、ロクな大人にならねーぞ!」

自分たちのことをすっかり棚にあげた冷やかしが、ゴロツキどもから飛ばされる。

実況「そんな悪い子チャンをお仕置きするために、一人の勇者が立ち上がった!
ヤロウども、紹介するぜ!我らのヒーローの入場だ! ラ イ デ 〜 ン !!!」

豪快なBGMが流れ出すのと同時に、舞が入場してきたのとは反対方向にある鉄の扉が開け放たれ、一人の男が姿を現した。

大きな男だった。
扉から遠く離れたリング上にいる舞の目からも十分に分かるほど、その男の体は巨大であった。

実況「サウスタウンの人間なら誰でも知っている、史上最悪のヒールレスラー!
身長202p、体重210kg。コイツのせいで、地獄に送り込まれた対戦相手は数知れず!
まさにプロレス界一の嫌われ者!
だけどこの会場にいる人間にとっては、間違いなく史上最高のヒーローだ!!」

「ウオォォォォォォォォ!」
ドスドスと地響きをたてながら、ライデンは50mの花道を一直線に駆け抜ける。
そして赤いロープを跨いで、挑戦者が待つプロレスリングに上ってくる。

彼のリングコスチュームは、足元から肩までを覆うダブルショルダーの真っ青なタイツ。
腹部と両の太股部分には、黄色い稲妻マークが鮮やかにプリントされている。

頭には、やはり稲妻がプリントされた、青い覆面を被っている。
金色の口髭に覆われた口元と、鼻、両目、両耳以外の部分は全てこのマスクによって包み隠されており、
この大男の顔をより凶悪な面構えに見せていた。

(ひゃぁぁ〜……デッカイ男!まるで肉の塊ね………)

間近で見るライデンの体躯は、圧巻であった。
2m前後の長身を誇るレスラーであっても、その体重は100〜150kgの範囲に収まるのが通常である。
だが、不知火舞の前に立ちはだかっているこの男の体重は200kgを優に超えているという。


215はめられた女忍者 8 :06/07/17 15:48 ID:???
「ほぅ……、今回はまた随分とカワイイ挑戦者だな〜。
女がこのリングに上がるのは初めてだぜ。
ヘヘッ…まさかとは思うが、そんな針金みたいに細い体で、
オレに勝とうだなんて思ってるんじゃねーだろーな!?」

小柄な少女の遥か頭上から、野太い声が降ってくる。

「あらあら、随分と暑苦しい人がご登場ね。
ま‥そんなトロそうな図体じゃ、あたしの華麗な忍術には勝てっこないんだから、
早くどっかに行っちゃいなさいよ、アンタ!」

背伸びをしながら斜め上を睨みつけ、舞も負けじと切り返す。

「おうおう、何も分かっちゃいねえクセに、好き勝手言ってくれるじゃねえかよ。
これからたっぷりとプロレス技の怖さをテメェの身体に教えてやるから覚悟しろよ。グヘヘヘ………」
大男が、ネットリとした視線で、エナメル生地のコスプレ装束に包まれた美少女の身体を嘗め回してくる。

「な‥何ニヤニヤしてんのよ!イヤラシイ事考えていたりしたら、許さないからね!!」

「ハンッ!……そんなエロイカッコしてるくせになに言ってやがる!本当は男に犯してもらいたくて、しょうがねぇんじゃねのか、ネエチャンよ?」

「だっ…黙れ!!!この変態ヤロウ!!」
舞は顔を真っ赤にしながら、ライデンを怒鳴りつける。

実況「お〜っと、これはスゴイ!闘いのゴングが鳴る前から、激しい火花が両雄の間で散っているぞ!!
しかし今回の挑戦者であるマイの態度はなんとも生意気だ〜!!」

「頼むぞライデ〜ン!」「血を見せてくれー!」「“くのいち”をぶっ殺せ〜!」「その小娘の服をひん剥いてやれ〜!」

実況「観客たちは全員ライデンの味方をしている!マイ・シラヌイは、会場全てを敵に回してしまったぞ!
もちろんこの実況席も、ライデンを応援する!個人的には、マイが涙を流して命乞いをする光景を是非とも見てみたいところだ〜!」


縦に大きいだけでなく、ライデンの体は横にも大きい。
レスラーとしても規格外といえる、肉付きの良い体をしている。
かといってそれが、戦闘においてなんの役に立たない贅肉というわけでもない。

筋肉なのである。
鍛え抜かれた大胸筋は、桁外れにぶ厚い胸板を形成し、不知火舞の豊満な乳房とは異なる意味で、
青いリングコスチュームの胸元部分をパンパンに膨らませている。
腕も脚も、木の幹のように太い。
特に、上腕二頭筋が浮輪のように盛り上がっている二本の腕からは、どれ程重たい攻撃が繰り出されてくるのか想像もつかない。

(間違いなくパワー型のファイターね……。反面、動きはトロそうだけど……)

鉄扇を持たない舞は、素手のままファイティングポーズをとって身構える。

対するライデンは、アメフト選手がタックルを仕掛ける時のような予備動作をして構える。


216はめられた女忍者 9 :06/07/17 15:52 ID:???
実況「さぁ、睨み合う二人の間にレフリーが立ったぞ。
電光掲示板のタイマーが10カウントを数え、レフリーが合図を出したら試合開始だ!」

電光掲示板のタイマーが作動し始める。
「10……」
(それにしても、見た目どおり単細胞で愚かな男だこと……)

「9……」
(開始前からタックルのポーズを取っていたら、どんなバカにだって避けられるわ……)
舞がそんなことを考え、高をくくっていると――――――――

「8……」
「レ デ ィ ィ ゴ ォ ウ !!!!」
レフリーの合図もなしに、ライデンが強烈なショルダータックルをしかけてきた。

ドゥッ!!

「キャァァ!!??」
ダンプカーに跳ね飛ばされたかのような衝撃を受け、舞の体は真後ろに吹き飛んだ。

実況「出た〜!!ジャイアントボム!!先制はライデン!!先制パンチを仕掛けたのはライデンだ〜!
マイの油断をついた見事な奇襲攻撃!レフリーはなにも言わない!」

「ぐぅっ……ひ…卑怯よ……合図もないのに攻撃をしかけてくるなんて」
「バ〜カが!地下プロにルールなんてある訳ねぇだろ!卑怯ついでにこれでも喰らえ!!」

プシュウウ!!
「きゃっ?」
ライデンの口からなにかが吐き出され、少女の目の前に紫色の霧が広がる。
次の瞬間、無数の針を突き立てられたような痛みが両目を刺し、舞は視界を失ってしまった。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!目が!!………目がぁぁぁぁぁ!!!」

両手で顔を覆いながら、悲鳴をあげる。

実況「上手い!毒霧攻撃だ!!マイの両目は完全に塞がれてしまったぞ!チャンスだ、ライデン!!」

視界を奪われ、回避行動がとれなくなってしまった舞。
「うりゃあ!!」
大男は、岩塊の如き両拳を握り合わせて、力任せに振り下ろした。

「がっ…!!!!?」
巨大な鉄のハンマーで脳天を叩きつぶされたかのような重い一撃に、舞の意識が一瞬遠のく。

「もう一丁!!」
振り下ろした拳を即座に返し、崩れ落ちかけていた少女の顎をしたたかに跳ね上げる。

バキッ!
舞の軽い体が宙に浮く。

「ダァァン!!!!」
ダブルハンマーによって空中に打ち上げられた彼女を追いかけるように、
ライデンの巨体がその場で小さく跳び上がり、ドロップキックをぶちかます。

少女の5倍近い全体重を乗せた、あまりにも重い一撃が、彼女の体に突き刺さる。
「きゃああぁぁ!!!」
ボギィ!

コーナーの鉄柱に叩きつけられる不知火舞。
背中はもちろん、胸にも鈍い痛みが走る。
「ぐあっ!!…っつ……」
ギースによって痛められたアバラを、またも何本かヤラレてしまったらしい。


217はめられた女忍者 10 :06/07/17 15:57 ID:???
毒霧によって潰された視界もまだ十分に回復しないまま、舞は立ち上がろうとするが、
膝がガクガクと震えてしまい、体に力が入らない。

(なっ……なにこれ……まだ数発しか喰らってないのに……全身が痺れて……)

実況「効いている!これは効いているぞ!!マイ・シラヌイ、絶体絶命!!
試合開始後わずか30秒で、一気に窮地に追いやられてしまった!!
対するライデンは、まだ全くのノーダメージだ!!」

「ハッハッハ!どうしたネエチャン、さっきまでの威勢の良さはどこへ行ったんだ?
プロレスの凄さを教えてやるのはこれからだっていうのによ!」

「ちっ……ちくしょう……体がまともに動けば、アンタみたいな卑怯者、ボコボコにしてやるのに………」

「ヘヘッ…そうこなくちゃ、イジメ甲斐がないぜ!」

ライデンは、マットの上に膝をついて座り込んでしまっている舞の首につかみ掛かる。
「くぁっ!!」
少女の頭よりも大きな左右の手が、彼女の細い首をギリギリと絞めつける。

「ぐぅう………あっ……あっ…このぉ……」

苦悶の表情を浮かべながら、舞はライデンの腕を必死に引き剥がそうとする。
しかし、彼女の非力な細腕では、筋肉に覆われたライデンのたくましい太腕を動かすことなど到底できない。

(ダッ…ダメだわ!ビクともしない……)

「あがけあがけ、そしてもっと絶望しろ!」

大男は、舞をさらに苦しめるべく、彼女の首根っこを両手で絞めつけたまま、
赤ん坊に高い高いをするかのように、彼女の体を持ち上げる。
体重46kgの不知火舞の体など、ライデンにとっては鉄アレイのように造作なく持ち上げることができるのだ。

実況「ネックハンギングツリーだ!!ライデン、体格差を活かした攻撃に出た!!
二人の身長差は40p!!ライデンの巨体が、生きる絞首台と化している!
これは苦しいぞ、マイ・シラヌイ!」

ライデンは斜め上に両手を伸ばしているため、実際には彼の身長以上の高さから舞は宙吊りにされていることになる。
黒足袋に包まれたつま先をどれだけ伸ばしたところで、地上の青いマットは遥か下である。

「うっ……ぐぁぁ………」

地面に届かない舞の両足が、バタバタと苦しそうに宙を泳ぐ。

「く……くるじ……はっ…放せ………放せ〜………」

ライデンの体を蹴ろうと、必死に脚を振り上げてみせるが、彼の腕が舞の脚よりも長いため、ほとんど届かない。

重力によって下方向に体を引っ張られながら、ライデンの両手によって首を絞め続けられる。
ギリギリギリ……

首を絞めつける力は、時間の経過とともに弱まるどころか、さらに強さを増してくる。
「あっ………………あぁ…………………」
窒息寸前の魚のように口がパクパクと動くが、取り入れた空気が肺に到達することはない。

宙を泳ぐ足の抵抗が段々と弱弱しくなっていき、少女の勝気な瞳から少しずつ光が失われていく。
形の良いピンクの唇からは、ヨダレがダラダラと流れ出している。


218はめられた女忍者 11 :06/07/17 16:01 ID:???
「ん〜?そろそろお花畑が見えてきてるみてぇだなぁ。
だが、気持ちよくお寝んねするには少し早いぜ!」

舞の意識が薄れかけていることに気づいたライデンは、
絞めつけていた細首から両手をパッと放し、そのまま即座に彼女の両脇を抱え上げる。

ムニュ

大男の巨大な掌は、少女の脇を押さえ込むのと同時に、豊満な乳房を鷲づかみにしてしまう。
「ほっほ〜、見た目通りプルンプルンのオッパイだな!ちょっくら堪能させてもらおうか」

ムニュ、ムニュ、ギュウ、ギュウ、――――――――――

「うっ…………」
首を圧迫されて失神寸前の舞が抵抗しないのをいいことに、ライデンは二つの大きな果実を乱暴に揉みしだく。

「ヘッヘッヘッ………」
彼の掌の中でグニャグニャと変形していく舞の乳房。
マシュマロのように柔らかい一方で、圧迫してくる男の掌を押し返さんとする、ゴム鞠のような弾力性をも持ち合わせている。

「こいつぁいいや……最高の揉み心地だぜ。ガキのくせに本当に発育のいいカラダしてやがる」

実況「これは実に羨ましい!ライデンは完全にマイを弄んでいる!すでにマイの身体は奴の玩具にされてしまっている!」

モミッ、モミッ、ギュウ、ギュウ、―――――――――
「ウン……アン………!!?…ハッ!!?」
半ば失神しながら、甘い吐息を途切れ途切れに発していた舞であったが、ここで意識を取り戻す。

「ちょ…ちょっと!!なにしてんのよ、このスケベ!!!やめなさいよ!!」
体を捻ってライデンの手から脱出しようとするが、
彼の太い腕は万力のような力でガッチリと、少女の脇と乳房を押さえ込んだまま放さない。

「ちっ…優しくしてりゃいい気になりがって。しょうがねえ、やめてやるよ。硬派な闘いがお望みなら、コイツでどうだ?」

そう言うとライデンは、舞の体を自分の顔の高さまで持ち上げ、上体を大きく後ろに反らして力を溜める。

「歯ァ、食い縛んな、ネエチャン!!おらぁっ!!」

ゴッ!
「ギャッ!」
ライデンの頭突きをおでこに食らい、舞が短い悲鳴をあげる。

「おらぁっ!!」
ゴッ!
「ぐあっ!」

実況「ライデン容赦なし!ヘッドバッドの嵐がマイの頭に打ち込まれていく!
2発、3発、……!!?こっ、これは!?…マイの額から赤い血が飛び散っている!
流血だ!!マイの額がザックリと割れている〜!!
しかしライデン、手を緩めない!4発、5発、6発!!」

ライデンの石頭が少女の額を打ちつける度、小さな赤い花が空中にパッと咲き、一瞬で散っていく。

6発目の頭突きを決めた後、ライデンは舞の体をようやく解放した。


219はめられた女忍者 12 :06/07/17 16:06 ID:???
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
美しかった顔を、グチャグチャに潰され、自分の血で真っ赤に染めながらも、
なんとか意識を保ち続けていた舞は、必死にファイティングポーズを取る。

「へへへ…オネエチャンよ、かわいい顔が血まみれだぜ」
「ハァ…ハァ…、余計な…お世話よ……」

彼女の瞳からは、まだ戦意が失われていない。
毒霧によって潰された視界は回復していたが、額からの出血が激しいため、目が霞み、足元がフラついてしまう。

「女の子はね……自分の血を見ることなんか……ちっとも怖くないの。
なんたってね……男と違って、毎月血を流すんですから……」

「なるほどな……。ギース様から聞いた通り、女にしては根性のあるガキみてぇだな。ぶっ壊し甲斐があるぜ!!」

「ハァ……ハァ…ぎ…ギースですって!?どうしてアンタが!?」

「知る必要はねぇよ…。テメェはただ、俺にボコられてこの会場のヤロウどもを喜ばせてやればそれでいいんだ。
今日のところは、これくらいでいいだろう……。そろそろ眠らせてやるぜ!!」

言うや否や、ライデンはフラフラ状態の舞の首にラリアットをぶちかまし、そのまま青いマットの上に押し倒す。
「あぁぁっ!!!」

仰向けに倒れている舞のサイドに回り込み、左手で首根っこを押さえつけて、彼女の体をマットの上に固定する。

桃色の忍装束の前垂れ布を右手でつかむ。
その前垂れ布を、腹部を巻いている黄色の腰帯の隙間から、彼女の顔方向にスルリと抜き取る。
留め具を失った装束の着物部分を左右に開くと、少女の上半身の裸体が露わになった。

「とどめだぁぁぁぁ!!!」

剥き出しになっている腹部の白い柔肌に、ライデンは巨大な右手を押し当てる。
そのまま指先に力を込め、舞の腹の肉をむんずと鷲づかみにする。
スリムな彼女のおなかには、つかめるほどの余分な肉はほとんど存在しない。
だが、そんなことはお構いなしに、巨漢プロレスラーはその指先を不知火舞の身体にめり込ませていく。

ギリギリギリ……!

舞の腹部の肉が中央に手繰り寄せられ、ヘソの形が変わるほどにきつく、きつく、絞りあげられていく。

「うがぁあぁぁぁ!!!?」
苦痛に顔を歪めながら、死に物狂いで舞はもがく。

「あがくんじゃねぇ!!大人しくしやがれ!!」
ライデンの巨体が左肩から横一文字にのしかかり、少女の両腕と首をガッチリと押さえ込む。

舞の抵抗を封じ込め、彼女の腹をつかんでいる右腕に更に力を込める。

実況「うぉぉぉぉぉ!!ストマッククローが炸裂〜!!!
ライデン、フィニッシュに入った〜!!!」

額から流血し続ける仰向けの少女を押さえ込みながら、ライデンが語りかける。
「さっきは『女の子は男と違って血が怖くない』、とか抜かしてやがったな。
だがよ〜、女の子には男にはない弱点がいっぱいあるだろうが!
そこを責められた時、一体テメェはどんな顔を見せてくれるんだ?あ〜ん?」

実況「お〜っと、これはただのストマッククローじゃない!!変則型だ!!」

通常、ストマッククローは相手の左胸を絞めつけ、圧迫する技である。
別名は“胃袋つかみ”。
しかしライデンは、舞の左胸ではなく、お腹を鷲づかみにしているのである。


220はめられた女忍者 13 :06/07/17 16:23 ID:???
実況「マイにとってはあまりにもエグイ変則技!!これは“胃袋つかみ”なんかじゃない、“子宮つかみ”だ!!
おそらくライデンは、マイの子宮を握り潰すつもりだぞ!!」

「痛いか?苦しいか?いい気味だぜ。プロレスのルールを一つ教えてやる。
ギブアップしたけりゃ、マットを叩くんだ。
分かったか?(もっとも、俺はタップアウトなんて認めねーがな……)」

ライデンは心にもないことを言ってギブアップを勧めてみるが、舞はそれを拒否する。
苦悶の表情を浮かべ、悲鳴をあげながらも、首をブルブルと横に振っている。

(負けるもんか………こんな奴に負けるもんか……………)

「ハンッ!全く強情なガキだ!!ならこのまま、子供の産めない体にしてやるぜ!!」

ライデンは舞の腹を刺し貫かんばかりに力を込め、5本の指を深く深くめり込ませる。
絞り上げたお腹の肉を、そのまま時計回りにねじ込み、引き千切らんばかりに圧迫してみると―――――――

「ぼぶぉ!!!?ゴブゥ!!」

舞は口から大量の吐瀉物を吐き出してしまった。

あっ……ごぼっ……ぎょぼっ……」

ピクピクと痙攣しながら嘔吐を続けている舞の体を逆さづりに抱き上げると、
ライデンは空高く跳び上がった。

その巨体からは想像もつかないジャンプ力。
体重46kgの小柄な少女と、体重210sの大男。

合計256sの二人の体重を上乗せされ、不知火舞は青いマットの上に脳天から叩きつけられた。

「あっ…………」
その瞬間、全身の筋肉が緩んでしまい、―――――――

ジョオオオ……

ピンクのショーツに包まれた股間がじっとりと熱くなる。
失禁だった。

(はっ……はずかし…………)
そう思いかけたところで、少女は意識を失った。


実況「パイルドライバーが美しく決まった!マイは起き上がれない!マイは起き上がれない!
マイ・シラヌイ、ダウン〜!
お見事ライデン!鮮血とゲロとオシッコの海に、マイを沈没させた〜!」

「いいぞライデ〜ン!」「次の試合も頼むぞ〜!」

「任せておけ!!ウォォォォォォ!!!」
観客の大歓声の中、ライデンは高らかに勝利の咆哮をし、ガッツポーズをとる。


不知火舞は、忍装束の上着部分を左右に展開され、胸をはだけさせたまま、大股開きで失神している。
額を割られ、顔は血みどろ。
おまけに、口元は吐瀉物にまみれており、可愛らしい顔は見る影もない悲惨な有様である。
ストマッククローを受けたむき出し状態のお腹は、紫色に変色してしまっており、なんとも痛々しい。
股間からは黄色の液体が染み出し、青いマットの上に汚い水溜りを作っている。

脱衣KOを喰らったギース戦に勝るとも劣らない、屈辱的な大敗であった。


実況「ここで担架が運ばれてくる!!
マイ・シラヌイは一回目の挑戦でいきなり病院送りにされてしまった!!
しかし、この公開殺戮ショーから逃げることはできない!
一週間後にはまた、このリングでライデンと闘わなければならない!」


不知火舞VSライデン
舞の0勝1敗

彼女に残されたチャンスはあと二回…………。


221名無しさん :06/07/17 16:28 ID:???
途中までですが第三部を投下。
初期餓狼シリーズにおける不知火舞のリョナを語る上で、
やはりこの男は外せないということで、ライデンの登場。

PS2の「餓狼伝説バトルアーカイブス1」が発売される前に
今回の三部作を完結させる予定だったのですが、執筆ペースがやや遅れているので
あまりアテにしないでください

222名無しさん :06/07/17 18:27 ID:???
GJ!
続きも期待しまくって待ってる。

223名無しさん :06/07/17 23:13 ID:Z73zs2cQ
マジGJ!
スンバラシイ表現力ですね!むき出しの生腹は最高です!続きも頑張って下さいm(__)m

224名無しさん :06/07/17 23:38 ID:???
ライデン登場GJ!
こりゃ2戦目3戦目も待ち遠しいです。

225はめられた女忍者 14 :06/07/19 23:35 ID:???
アメリカプロレス史上最悪のヒールと名高いライデンであるが、
彼は最初から悪役レスラーだった訳ではない。
元々は子供好きの心優しい男であり、正統派ヒーローとして絶大な人気を誇っていた。

しかしある時、タッグリーグの決勝戦で、彼の人気を妬んだパートナーの裏切りにより八百長疑惑をかけられてしまい、
所属団体である“S.W.F.”から追放されてしまう。
地位も名誉も失い、人間不信に陥った彼はマスクを被り、酒と暴力に身を任せるようになる。

かつては子供たちの笑顔と声援が力の源だったが、今では対戦相手の苦痛に歪む顔と悲鳴が力の源である。

(自分よりも弱い奴を、かたっぱしから潰してやりたい―――――――)

そう思って参戦したKOFで、ギース=ハワードの配下としてスカウトされた。

「もっと暴れさせてやるし、金もやる」
誘いをあっさりと受け入れ、ライデンはギースの雇われファイターとなった。

ただし、ビリー=カーンやリッパー、ホッパーなどの側近達とは異なり、
ライデンは“ハワードコネクション”の社員ではない。
ビジネス分野における才覚を持たない彼に金を稼がせるために、ギースは特別の場を提供してくれた。
それは、ライデンに主催者兼選手を務めさせる、地下プロレスの開催である。

異種格闘技大会“キング・オブ・ファイターズ”は、今や全米にTV放送されているため、
あまり無茶なことは許されない。

しかし、サウスタウンの湾岸部で秘密裏に行われているこの地下プロレスでは、
ライデンは思うままに暴力を振るうことができる。
対戦相手を再起不能にしようが、惨殺しようが、ライデンの好きにしていいのだ。

対戦相手は、“サイクロプス刑務所”の囚人の中から調達された。
この刑務所を統括する所長や看守たちも、扱いに困る凶悪犯たちを都合よく始末できるという理由から、喜んで協力した。
重罪者の中でも、高い格闘能力を持っていそうな者を選び出し、検察官に司法取引を持ちかけさせる。

「あるエキシビジョンマッチに参加し、三回以内に勝利を収めれば、懲役期間を帳消しにする」

取引を持ちかけられた囚人たちは、気の遠くなるような長い期間の懲役を宣告されている者たちばかりである。
しかも彼らはみな、自分の腕に絶対の自信を持っていたので、司法取引を承諾した。
そして一人の例外もなく、ライデンによって潰されていった。

ギース配下の中で、ビリー=カーンに次ぐ戦闘能力の持ち主であるライデンは、
賭けを成立させない程に強かった。
それにも関わらず、この地下プロレスには、信じられないくらい多数の観客が観戦に訪れた。
主催者兼選手であるライデンの力によって、挑戦者たちが血祭りにあげられる光景に、人々は熱狂した。

サウスタウンには、正義もなければ悪もない。
力の在る者だけが生き残り、力無き者は強者の食い物にされて死んでいく、弱肉強食の暗黒街である。
「明日はわが身」、の不安を常に抱え続ける人々にとって、他人が苦しみ、絶望し、命を奪われていく光景を傍観することは、
他の何にも勝る娯楽だったのである。

たとえ賭けが成立しなくても、入場料だけで、この地下プロは莫大な利益を生み出した。
挑戦者に三回もチャンスを与えるのは、決して彼らのためなどではない。
一回でも多くライデンと闘い、いたぶられる姿を晒してくれた方が、より多くの興行収入を得られるからである。

サウスタウンにおいて最も残酷なこの見世物に、不知火舞はその身を投じてしまったのである。
一言で言えば、彼女ははめられたのであった。


一週間が経過し、舞はライデンとの二度目の対決に挑むことになった。


226はめられた女忍者 15 :06/07/19 23:39 ID:???
「せやぁっ!!」
舞の左キックがライデンの胸に突き刺さる。
忍装束の深いスリットから、白い紐パンがはっきりと覗くほどに振り上げられたハイキック。
常人がくらえば顎が砕けるに違いない一撃であるが、ライデンの分厚い胸板は、鋼鉄のようにビクともしない。

「タァッ!!」
続けて繰り出したのは、しゃがみながらの回転蹴り。
舞の右足が、ライデンの左の脛を強烈に撃つ。
しかし、大男の足を払い、その体を転倒させるには至らない。

同じ相手に二度も敗れるわけにはいかない。
そう思って臨んだライデンとの第二戦―――――――

不知火舞は、今日も苦戦を強いられていた。
前回の教訓を活かしてライデンの騙し討ち攻撃を回避し、反撃を加えられるようにはなった。
だが、ライデンにダメージを与えることができない。

大男の肉体を覆う筋肉と脂肪が、疾風のような速さで次々に打ち込まれてくる舞の打撃技を、
全て表層で止め、無効化してしまうからである。

(だめだ……コイツの肉は厚すぎる!攻撃している私の体の方が傷んでしまうなんて……)

舞の拳には、うっすらと血が滲んでいる。
何十発もライデンの体にパンチを打ち込んだ末に、拳の皮が破れてしまったのである。

(せめてここに鉄扇があれば…………)

前回に引き続き、舞は運営委員から渡された、エナメル生地の“コスプレ忍装束”に身を包んで闘っている。
“花蝶扇”も“龍炎舞”も使えない。
体重210kgのライデンほどの巨躯が相手では、“風車崩し”や“不知火剛臨”などの投げ技も不可能。
7m四方のプロレスリングという狭い空間では、最大の武器である機動力も威力を発揮しない。
不知火流忍術のほとんどの技が封じられてしまっているといっても、過言ではないこの状況―――――。
だが、泣き言を言っているわけにもいかない。

「このぉっ!!」

垂直に飛び上がり、傷ついた両の拳を組み合わせて振り上げ、ライデンの頭に叩きつけようとする。

「ふんっ!!!」

空中から攻撃を仕掛けてきた美少女の顔面に、ライデンは張り手をブチかました。
腕にしろ脚にしろ、接近戦のリーチではライデンが圧倒的に有利である。

バチィィィィン!!!
「ぶべぁっ!!?」

その威力は日本の横綱力士ですら楽々と凌ぐだろう。
顔の形が変形してしまうほどの強烈な一撃をカウンターで受け、舞は空中からポテリと落下する。

実況「ライデン強し!!今日もマイ・シラヌイを全くよせつけない!!」

「ち……ちくしょう……」

頬を真っ赤に腫らしながら、舞はヨロリと立ち上がる。
叩かれた箇所が焼けるようにジンジンと疼き、口の中には鉄の味が広がる。
顔面を殴られることに慣れたとはいえ、やはり顔と髪は乙女の命である。
いくらやせ我慢したところで、精神的なダメージは免れられない。


227はめられた女忍者 16 :06/07/19 23:44 ID:???
(このままじゃ、やられちゃう……。やっぱり、“不知火の焔”を使うしか………)

「どうした、こねこちゃ〜ん?準備運動はもうお終いかぁ?」

頬を押さえながら、息を切らしている舞に、ライデンがのしのしと歩み寄ってくる。
今日の彼は、上半身は素っ裸、下半身に青と黄色のプロレス用タイツという姿で闘いに臨んでいる。

(そうよ……そのまま近寄ってらっしゃい……)

舞はジリジリと後退して、わざとリングのコーナーに追い詰められる。

「手の内が尽きたんなら、投げ技の餌食にしちゃうぞ〜」

ニヤニヤと薄笑いを浮かべながら、舞の眼前にまで迫ったライデンが、両手を広げたその瞬間―――――――――

「龍 炎 舞 !!!」
「うおぉっ!?」

真っ赤な炎が一閃し、ライデンの巨体を横薙ぎにした。
もちろん、不完全な一撃ではある。
舞が現在纏っているコスチュームは、耐熱性、耐火性に優れた
不知火流秘伝の装束ではないため、“不知火の焔”を制御することができない。

その結果、腰の後ろから垂れ下がる、尾状の長布は、舞がおこした炎によって燃えてしまい、
根元付近からプツリと焼き切れて、自壊してしまった。

(一発だけのとっておきよ!これで少しはダメージを与えたはず………)

しかし、その場でクルリと一回転した舞が次に見た光景は、胴一文字に火傷を負いながらも、
平然と立っているライデンの姿であった。

(ぜ…全然効いてない……!!?)

ブォン!!
「がっ…!!」

技後の硬直状態を見事につかれ、喉元に手刀を叩き込まれる。
実況「逆水平チョップ!!」

たったそれだけで、首の気道が塞がってしまい、少女は呼吸ができなくなってしまう。

「かはっ…………?…………あっ……」

呼吸困難の苦痛に耐え切れず、リングの隅に座りこんでしまう。

いつの間に取り出したのやら、ライデンは右手に銀色の缶を持っており、その中身をグビグビと飲み始めた。

(缶ジュース?でもなんだが嫌な予感がするわ………)

胸騒ぎを感じながらも、呼吸が回復しない舞は立ち上がることができない。

ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
(うっ?)

第一ラウンドで見せた毒霧と同じ要領で、ライデンが口の中に含んだ液体を噴きかけてくる。
頭上から嫌な臭いのする霧雨が降り注ぎ、座り込んでいる舞の全身に付着していく。

(この臭いは……………ガソリン?……ま…まさか!!?)

気付いた時にはすでに手遅れであった。
可燃性の液体を霧状にして噴き出し続けるライデンが、口元で両手を交差させ、
グローブの金具をバチンと擦り合わせる。

ゴウッ!!!ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

不完全な“龍炎舞”よりも、ずっと激しく大きな火炎が渦を巻き、舞の体を飲み込んだ。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」


228はめられた女忍者 17 :06/07/19 23:54 ID:???
実況「ファイヤーブレスだぁぁ!!!ライデン自慢の処刑技の一つが炸裂したぞ!!
マイ・シラヌイの中途半端な曲芸が、奴のハートに火をつけてしまった!!!
本物の炎を見せてやると言わんばかりの地獄の業火!!
マイの体が燃えている!!くのいちギャル、大炎上だぁぁぁぁ!!!!」

全身を炎に包まれた舞は、火達磨になりながら悲鳴をあげる。

「あぁぁぁぁ…熱いっ!!……あついぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

先ほども述べた通り、彼女が身に纏っている忍装束は、耐火性も耐熱性も全くもたない、コスプレ衣装である。
コスチュームに付着した霧状のガソリンは勢いよく燃え広がり、少女の体をコンガリと焼き焦がした。


「ワッハッハッ!!!ステーキにされた気分はどうだい、巨乳のオネエチャンよ。
エッチな衣装も燃え尽きちまって、まさに牛の丸焼き状態だな。ヘッヘッヘッ!!!」

ライデンは腹を抱えて笑い転げている。

「こほっ……けほっ……うぅ…」

全身からプスプスと黒い煙をあげながら、青いマットの上にぐったりと横たわっている不知火舞。
エナメル生地のピンクの忍装束は、“ファイヤーブレス”の火力に耐え切れず、ほとんど燃え尽きてしまっていた。

(くっ…くやしいよぉぉぉ……おじいちゃん…。
焔使いの不知火流忍者が、敵の炎で黒焦げにされちゃうなんて……くやしいよぉぉぉぉぉぉ)


実況「おいし過ぎる!!おいし過ぎるぞ、ライデン!!これは素晴らしいファンサービスだ!!
最高の目の保養を、この会場のヤロウどもに提供してくれた!!
レアステーキにされてしまったマイ・シラヌイのあられもない姿をとくと御覧あれ〜!!」

会場に設営された、巨大なオーロラビジョンが、倒れている舞の姿を映し出す。
上半身はほぼ素っ裸の状態で、舞が荒々しい呼吸をする度に、たわわに実った剥き出しの乳房がフルフルと揺れる。
黄色の腰帯から下の部分だけが辛うじて焼け残っており、それ以外の部分では火傷を負った裸体を晒し出してしまっている。
彼女は今、腰帯と前垂れ布だけを残した、いわば、ふんどし一丁の状態なのである。

「ざまぁねぇな、ネエチャン!」「頑張れライデ〜ン!」「あとちょっとでスッポンポンだ!」

(やっ…やめて……映さないで………)
汚れを知らない17歳の少女は、自分が今闘いの場にいることも忘れ、自らの裸体を隠そうとする。
右腕を乳房の上に被せて乳輪を覆い隠し、前垂れ布の残骸を左手でしっかりと押さえつけて、股間を必死にガードする。



229はめられた女忍者 18 :06/07/19 23:56 ID:???
そんな羞恥の態度を見せるうら若き乙女に、ライデンの毒牙が迫る。

「さ〜て、オネエちゃんよ、そろそろ今日のフィニッシュといこうかぁ?」

「くぅっ……そんな簡単に…止めを刺されてたまるもんですか……」

炎に焼かれ、ビリビリと麻痺してしまっている全身に渇をいれ、なんとか立ち上がるまではよかった。
しかし、――――――――――

(まっ……マズイ!!)

ファイティングポーズをとることができない。
なぜならば、彼女の右腕は両の乳房を隠すために使われており、
前垂れ布が地面にずり落ちてしまうのを防ぐために、左手も未だに股間にあてがわれたままだからである。

破廉恥な忍装束に身を包んで闘うことはあっても、不知火舞は、人並み以上に女らしく、
恥じらいというものを知っている、清楚な大和撫子なのである。

「ガハハハハ〜!!バ〜カめ!!そんなこと気にしているような立場じゃねーだろ!」

なんの抵抗もできないまま、舞はライデンに後ろ首をとられて、頭を抱え込まれ、上下逆さまにされてしまう。
腰に両腕を巻きつけられ、股間を覗き込まれるような姿勢で持ち上げられる。

実況「パワーボムだ〜!!」

一拍置いた後、首筋からマットにズドンと叩きつけられる。

「うぐぅぅっ!!!」
脊髄に電流が走り、乳房と股間を隠していた左右の腕が、ダラリと垂れ下がってしまう。
辛うじて形状を保っていた黄色の腰帯がハラリとほどけ、
それによって辛うじて支えられていた前垂れ布の残骸とともに、床に落ちてしまう。

もはや彼女に残された着衣は、最小面積で秘部を隠している純白の紐パンのみ……。

そのままマングリ姿勢でホールドされ、ショーツの留め紐をライデンの歯によって食いちぎられた時、
不知火舞は、自分の末路を悟るしかなかった。

(よりにもよって、こんな汗臭い大男が初めての相手だなんて………)
あまりにも惨め過ぎて、泣き叫ぶ気にもなれない。

「グヘヘヘヘ!!この地下プロをやっていたことを今日ほど感謝した日はないぜ!!」

(さぞかしご満足でしょうね……。アンタみたいなブ男にはもったいな過ぎる高嶺の花よ!)

「さ〜て、くのいちステーキの味見といこうか!!」

(せめてもうちょっと、若くてハンサムな男の方がよかったな……たとえば……)

「アンディ………………」

なぜだか自然に、“アイツ”の名前が口に出た。

(私、やっぱり狼にはなれないのかなぁ…………………)






不知火舞VSライデン
舞の0勝2敗
彼女に残されたチャンスは、あと一回………………。 


230名無しさん :06/07/20 00:01 ID:???
VSライデンの第2ラウンドを投下。
次回の投下分で、完全決着&エピローグの予定。

231名無しさん :06/07/21 18:55 ID:X59FmzBk
舞だけじゃ俺のネタがつきるのでB・ジェニーの話でもいいか?
乳揺れとパンチラは舞と互角だし

232名無しさん :06/07/21 19:07 ID:???
スレ的に舞以外ならリョナSSスレに回したほうがいいじゃないかな?
ttp://bbs.2ch2.net/test/read.cgi/ryonani/1145776314/
だけど。

233名無しさん :06/07/21 20:46 ID:LJ3hRLdM
処女喪失で敗北2敗目続きが激しく気になる。
次は対B・ジェニー希望キャラがかぶってるし無様に敗れて餓狼ヒロインの座を奪われてほしい
MI2でも舞に対して挑発するデモがあることだし。

234名無しさん :06/07/21 22:16 ID:???
なんか、変なのが来たな…

235名無しさん :06/07/21 22:42 ID:???
次は対B・ジェニー戦を希望。
キャラがかぶっているし〜〜奪われて欲しい。
ってことじゃないか?

236名無しさん :06/07/22 09:36 ID:GMpsJGCU
>>230
お疲れ様です!次回も期待しております。がんがって下さい!

237名無しさん :06/07/22 18:50 ID:???
いっそジェニーが誰かにボロボロに負けて強姦されてほしい

238はめられた女忍者 19 :06/07/23 10:28 ID:???
オモシロイコトニナッテイルワネ

うん、おもしろいね。

歴史ガ変ワリツツアルネ

そうだね、誰かが余計なことをしたせいで。

半蔵ノセイカナ?ソレトモ、十平衛?

さぁ、誰が悪いんだろうね………。
いずれにせよ、本来なら彼女はこんなに早く、この街に来るはずではなかった。
そしてこんなに早く、ギース=ハワードと出会うはずではなかった。

カワイソウニ……。来ルノガ早過ギタノヨ。
身体モ心モボロボロニサレテシマッテ……。

本当に可哀想に…。
本来なら、日本にいる最愛の男に捧げるはずだった、乙女の純潔すらも奪われてしまった。
それもあんな薄汚い大男に……。

最愛ノ男?
フフッ…、歴史ガ変ワリツツアル今、ソレスラモ怪シイワヨ……。

んっ?どういうことだい?

アノ子ガ生キテキタ、狭イ世界ノ中デハ、確カニ“カレ”ガ、一番ダッタ。

なる程……。本来なら19歳になるまで、日常生活と“不知火の里”を行き来するだけだっ
た彼女の世界の中では、アンディ=ボガードが最強の男だった。

最モ強ク、最モ気高ク、ソシテ最モ優シイ男ガ彼ダッタ……

しかし彼女は、アンディに対する自分の恋心に気付く前に、
もっと強い男に出会ってしまったという訳か……。

アンディヨリモ、強クテ、気高イ……

フッ…、だがいくらなんでも、彼女がギースに恋をすることはあり得ないだろう。
確かに強くて気高いが、あの男は優しくもないし、なによりも歳が離れ過ぎている。

アクマデ、可能性ノ話ダヨ……
モシ“アンディ”ヨリモ先ニ、“テリー=ボガード”ニ出会ッテイタラ、
アノ子ハ“テリー”ニ、恋ヲシテイタカモシレナイワ……

確かにそうかもしれないね。
所詮、恋なんて偶然のめぐり合わせだからね。
可能性はいくらでもあるよね……。

歴史ハ、確実ニ変ワリツツアルワ……。
アノ子ノ運命モネ…………。
本来ナラ、イルハズノナイ、“ワタシ”ガイルコトガ、ナニヨリノ証拠ダモノ……





――――――――――――
――――――――――――

「囚人番号108番のお嬢さんよ、ついさっき面会人が来て、あんたに差し入れを置いていったぜ」

独房の扉が開けられ、看守が舞に向かって風呂敷包みを投げ入れてくる。

(これは……私のスペアの忍装束と鉄扇だわ……)

サウスタウン市街地のホテルの一室に置き去りにしてきてしまった荷物の一部が、届けられたのである。

(一体誰が……?)

包みの中には差出人名のない一通の手紙が入っており、そこには短い文章でこう書かれていた。

「汝が真に狼であるなら、その牙を以って示してみよ」


前回の闘いから一週間が経ち、ライデンとの三戦目を明日に控えた夜のことであった。


239はめられた女忍者 20 :06/07/23 10:34 ID:???
実況「さぁ〜サウスタウンのアウトロー諸君、お待ちかね!!いよいよ運命の第3ラウンドだ!!
挑戦者は、弱冠17歳の美少女くのいち、マイ・シラヌイ!!
迎え撃つのは常勝無敗の大魔神、ライデン!!
第1ラウンドと第2ラウンドでは、終始マイを圧倒し、屈辱的な敗北を与えてきた我らが勇者!!
この第3ラウンドでも見事マイを倒し、“くのいちキラー”の称号を得ることができるか?
それともマイが雪辱を晴らし、“サイクロプス刑務所”からの釈放を手にするのか?
逃げ場なしの金網デスマッチ!!これは目が離せない試合だぞ〜!!!」


青いプロレスリングの外周には、四方と天井に金網フェンスが張り巡らされている。
この地下プロに招待された哀れな生贄が力尽き、大魔神によって命を奪われるまで、
決して開け放たれることはないであろう、巨大な鳥かご―――――――――

その中で、不知火舞とライデンが向かい合っている。
舞が今身に纏っているのは、不知火流の特殊製法によって編まれた、水色の忍装束。
彼女の左手には、主力武器である鉄扇がしっかりと握られている。

対するライデンは、1試合目と同じ、脚から肩までを覆うダブルショルダーのプロレスタイツという格好である。

「名残惜しいが、今日でネエチャンともお別れだ。思いっきり苦しめて地獄に送ってやるから覚悟しな!!」

「地獄に落ちるのはアンタの方よ!花も恥らう乙女を辱めた罪、絶対に許さない!」

「ウヘヘヘヘ!!そんな生意気なことを言っていると、また喰っちまうぞ〜!
なんたってこの間は、最高に気持ちが良かったからな〜。
テメェが処女だったことには正直驚かされちまったがよ〜!!」

「くっ!!!」

ライデンの挑発に、舞の頬がリンゴのように真っ赤になる。
(ここで冷静さを失ったら負けだわ……我慢しないと………)

「どうした〜?なんとか言ってみろよ!それともオレのブツが欲しくてもう濡れちまったか?」

「無駄口はそれまでよ!かかってらっしゃい!」

艶やかな忍装束の前垂れを揺らし、舞は相手に対して半身を開いた独特の構えを取る。
鉄扇、拳、肘、膝、足………
相手の出方に応じて、瞬時に変幻自在の攻撃に転じることができる、不知火流忍術、正統派のスタイルである。

ソウソウ、ソレデイイノ。案外、クールナノヨネ、貴女ハ………


「レディィィィ…ゴォウ!!」
少女の小柄な体を吹き飛ばさんとする、ライデンのショルダータックルが、開戦の合図であった。

(正面から受けたんじゃ、回避も防御も難しい……ならば!)

突進してくるライデンを十分に引きつけつつ、最小限の動作で彼の左側に回りこむ。
頭上を跳び越えて反対方向に移動しながら、手にした鉄扇で大男の頭部を強打する。

「トォッ!」
「ぐっ!?…テメェ!」

顔面を狙って突き出されてきた張り手を地に伏してかわし、ライデンの股の下を前転で潜り抜ける。
舞の後ろ腰から垂れる青い尾布の先端で、紅蓮の炎が燃え上がる。
秘伝の忍装束の作用によって、十分な火力をもった“不知火の焔”である。

「龍 炎 舞 !!!」

尾布を斜め上に振り上げ、男の無防備な背中を逆袈裟に薙ぎ払う。

「ぐおぉ!!?」

先日とは明らかに威力の異なる炎に身体を焼かれ、ライデンが苦痛の呻きを発する。

(いける!やっぱり本物の装束だと、心なしか身体も軽いわ……)

振り向いてきたライデンの肩を、不知火流体術“空破弾”の要領で飛び越えて再び背後をとり、“龍炎舞”を喰らわせる。

過去二回の対戦で惨敗を喫してしまった舞であったが、ただただやられていた訳ではない。
ライデンの動きと技を学習し、収容所の独房の中で対策を練り続けていたのである。
ライデンの攻撃を紙一重のタイミングでかわしながら反撃を加え、ライデンの動きを先読みして、その裏をかく。

蝶のように舞い、蜂のように刺す―――。
華麗にして妖艶なる、不知火流くのいちの戦闘舞踊―――。

過去のKOFにおいてビリー=カーンに次ぐ優勝経験を誇り、
この地下プロレスにおいて何人もの屈強な男たちを葬り去ってきた、無敵のヒールレスラー、ライデン。
そんな彼が、10代後半の少女相手に翻弄されている。

実況席も観客席も、いつの間にか静まり返っていた。

(あんな華奢な女の子に、ライデンが負けてしまう?)

会場中の誰もが、そう思いつつあった。


しかし、作戦通りに試合を展開しているのは、不知火舞の方ではなかった…………。


240はめられた女忍者 21 :06/07/23 10:44 ID:???
「ハァ…ハァ…ハァ……」

試合開始から20分が過ぎる頃、舞の動きが少しずつ、素早さと正確さを欠き始める。
二人の体力の差が、顕在化してきたのである。

「花 蝶 扇 !!」

舞の手から放たれた鉄扇が、鋭い弧を描いてライデンの左肩に命中する。

ビシッ!
「ん〜?…今日はやけに蚊が多いな〜。体が痒くなっちまうぜ!ヘヘッ……」

扇で打たれた箇所をボリボリと掻きながら、巨漢レスラーはまだ息ひとつ切らしていない。

(ダメージがない訳じゃない……それなのに……それなのに………)

ライデンの最大の武器は、その豪腕から繰り出される打撃技や投げ技ではなかった。
超重量級プロレスの世界で培われてきた、桁外れの体力とタフネスだったのである。

目にも止まらぬ速さで相手を撹乱し、一瞬の隙をついて敵の息の根を止めるのが、忍者の必勝スタイルである。
短期決戦が信条の不知火舞にとって、いくら攻撃を加えても相手が倒れてくれず、
持久戦に持ち込まれてしまうことほど嫌なものはない。

体が疲れ、舞の動きが鈍れば、ライデンの攻撃の直撃を食らうことになる。
彼女の華奢な体が、それに三〜四発くらいしか耐えられないことは、
過去の二試合で嫌というほど証明されてしまっている。

このまま持久戦に持ち込まれてしまえば、
体力とタフネスで圧倒的に劣る舞が敗北することは火を見るよりも明らかであった。

(このままじゃジリ貧だわ……。あの時の技に賭けるしか………)

そう思っていた矢先のことである――――――――。

ガシッ!!
「しまった!!?」

ライデンが前に屈みこむような姿勢で、舞の腰にしがみついてきたのである。
アナコンダの胴体を思わせる極太の両腕が、舞の柳腰にベッタリと巻きつけられる。

屈みこむような姿勢で舞の体を捕えたライデンが立ち上がると、彼女の足が地面から浮き上がり、
男の巨体に密着するような形で抱き上げられてしまう。

「チョロチョロ動き回りやがって!!もう逃がさねぇぞ!!」
「はっ‥放しなさいよ!!」

二人の顔と顔が合いそうな高さで、舞はライデンに抱きしめられている。
鉄扇を持った舞の左手は、ライデンの両腕が作り出した輪の中で自由を奪われてしまっている。

「このっ!このぉっ!」

封じられていない方の右拳で、ライデンの腕や肩を何回も殴りつけてみるが、無駄なあがきであった。

「効かねぇよ!プラスチックのバットでサンドバッグを殴るようなもんだぜ!」



アラアラ…絶対絶命ノピンチダネ……大丈夫?



241はめられた女忍者 22 :06/07/23 10:45 ID:???
実況「こっ…これはぁぁぁぁぁぁぁ!!ついに出るぞ!!
ライデンのプロレス無敗神話を支える伝家の宝刀、“ベアハッグ”だ!!
これに捕まったらもう最後、相手はもう逃げられない!!
奴の腕の中で息をひきとるまで、絶対に逃げられないぃぃぃぃ!!」


ムギュウウウウ………

両腕の絞めつけをさらに強めながら舞を抱き寄せ、ライデンは彼女の小柄で華奢な身体を、
自分の胸板と腹に密着させ、めり込ませていく。

「がっ…あぁぁぁぁぁぁ……!?」

大男の分厚い胸板に押し付けられ、行き場をなくした舞の豊満な乳房が、あり得ない形に変形していく。
(あぁ…おっぱいが…おっぱいが潰れちゃう!!)

ポニーテールに束ねた漆黒の長髪を振り乱し、宙に浮いた爪先でライデンの膝を何度も何度も蹴る。
“弁慶の泣き所”を狙うが、このような密着状態では脚を振りかぶることができないため威力が全くない。

(い…息が……)

ライデンの太腕によって、腰とお尻と背中を限界まで締め上げられ、舞は息ができなくなってしまう。

「あっ…かっ……」

忍装束の脇の露出から覗く絹のような美肌が、真っ赤に染まっていく。


「うりゃあ!」

青い血管が浮かび上がるほどに腕に力を込め、ライデンが舞の腰を圧迫する。

メリィ!!

「うがあっ!!?」
「ヘヘッ…やっぱり、骨の軋む音はたまらねぇな。それにいい悲鳴だ……。安心しな、窒息死なんかさせねぇよ」

ライデンはわざと腕の力を緩め、舞に呼吸のチャンスを与えてやる。

「ぷはっ!…ハァッ…………ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…」

忍装束の薄布がベタベタになってしまう程に大粒の汗を浮かべながら、
少女は荒々しい呼吸で体内に酸素を取り入れる。


「うりゃ!!うりゃ!!」

落ち着く暇も与えてもらえず、今度は二回連続で締め上げられる。

メリィ!メキィ!
腰骨と背骨、そして肋骨が悲鳴をあげる。

「がぁっ!…あぁっ!!」

骨の軋む音とともに、少女の悲鳴が虚しく響き渡る。

「かわいいなぁ〜!男相手にこの技を決めたんじゃ、絶対に聞けない最高の悲鳴だぜ。
もっとだ…、もっとその声をオレに聞かせてくれよ!」

メリッ!メリッ!ミシィ!…ボギィ!!

「ギャァ!!?……あっ…がっ…ゲホッ…」

痛みに耐えようと食い縛った歯の隙間から、鮮血が溢れ出る。

「おっと、わりぃ、わりぃ。今度はちゃんと力加減を調整してやるから、いい声で鳴いてくれよな………朽ち果てるまでよぉぉぉ〜」

フフフフフ……ドコマデモ悪趣味ナ男ダネェ

「あぁっ!?…うわぁっ!…あうぅ!…あんっ!あうぅっ!あんっ!あんっ!
…アン!…アン!アンアンアンアンアンアンアンアン――――――――!」


ライデンの巨体にめり込まされ、彼の顔を豊満な乳房に擦り付けられ、上下にユサユサと揺さぶられながら、不知火舞はいつまでもいつまでも苦しみ、喘ぎ続けた……。



不知火舞VSライデン
舞の三戦全敗――――――

勝者であるライデンに、不知火舞の死刑執行権が与えられる………


242はめられた女忍者 23 :06/07/23 11:01 ID:???
実況「決まったぁぁぁぁぁぁ!!勝負あり!!ライデン、三連勝!!
可憐なる挑戦者、マイ・シラヌイを見事倒し、クノイチギャルの死刑執行権を手に入れたぁぁ!!」

地下プロレスの試合会場は、かつてない熱気に包まれていた。
試合を観戦している貧困層のチンピラやゴロツキたちは、背徳的な興奮に酔いしれていた。
なぜならば、サウスタウンで最も残酷なこのイベントにおいて、初めて女性の犠牲者が出ようとしているからだ。
しかも、挑発的な忍装束に身を包んだ、とびきりの美少女が生贄にされようとしているのである。


金網フェンスに囲まれた青いプロレスリングの中央で、不知火舞は仰向けに倒れていた。

(う…うかつだったわ…。あんな強力な投げ技をまだ隠し持っていたなんて……。
でもどうしてだろう…。負けちゃったのに、全然悔しくない…。
この一ヶ月間、色々な男の人にボロ負けしたし、17年間守ってきた処女まで奪われちゃったけど、悔しくない……。
だって私、この街に来て確実に強くなれたもの……)

ソウヨ、貴女ハ強クナッタ……


「うっし!!ネエチャンにどうやって止めを刺してやるかが決まったぜ!!」

倒れている舞を見下ろしていたライデンがニヤリと笑い、リングの中央からコーナーの方にのっしのっしと歩いていく。


(この街で、私は最強の男に出会った。
最強の力を見せつけられた…。
目標とすべき男を見つけることができた……。
男の人に打ち負かされることへの恐怖はもうなくなったわ…。
何度打ち負かされたって、また立ち上がればいい……)

ソレガ、貴女ノ強サダモノ……


ライデンは、リングのコーナーの鉄柱の上によじ登り、その上に二本足で立ってみせる。


(私は、もっともっと強くなれる気がする…。
もう、おじいちゃんや“アイツ”…アンディに自分の力を認めさせたいなんて言わない。
純粋にもっと上を目指したい……。一人の格闘家として……)

一匹ノ獣トシテ……


実況「どうやら今回の処刑方法は、フライングボディプレスのようだ!!
“ベアハッグ”で全身の骨をヒビだらけにされた状態のマイが受ければ、間違いなく即死だろう!!」


(アンディの強さを追いかける必要も、もうない……。だって、今の私が目指しているものは、もっと先にあるんだもの……。私はそこまで辿り着きたい……)

ソウヨネ、貴女ナラキット、辿リ着ケル……
本来貴女ガ辿リ着クハズダッタ場所ヨリモ、モット遠クマデ……


「全身の骨をバラバラにされ、内蔵をグチャグチャに潰されて圧死する……。それがテメェの結末だ!!!」

ライデンが鉄柱を蹴って宙に跳び上がる。

(だから………)

「終わりだぁぁぁぁ!!」
体重210kgの巨体が、少女の息の根を止めるべく、真上から降ってくる。

(私はまだ、こんなところで終わる訳にはいかない!!!)



グシャァァッ!!!



243はめられた女忍者 24 :06/07/23 11:04 ID:???
「ぐあぁぁぁぁぁ!!!?」

男の野太い悲鳴があがる。

鍛え抜かれた腹を叩きつけた場所に、生贄の少女の姿はなく、代わりに押し潰されたのは一本の鉄扇であった。

青いマットの上に垂直に立てられていた鉄扇の先端に、
ライデンは全体重を載せた腹から勢いよく突っ込んでしまったのである。

片手で鳩尾を押さえ込みながら、周囲を見渡してみれば、リング中央に寝転がっていたはずの不知火舞が、
いつの間にかコーナーにまで瞬間移動している。

舞は最後の切り札である“あの技”を繰り出すために、十分な助走距離をとったのである。

大シタモンダワ……。“幻影不知火”ヲ、コンナニ早クマスターシテシマウナンテ……

(そしてこれが今の私にできる最高の一撃!!!)

舞の全身を、“不知火の焔”が包み込む。
目も眩むような紅蓮の業火である。

「でぃやぁぁぁぁぁっ!!!」

力強く地面を蹴って側転し、その勢いで一直線にライデン目掛けて突進する。
ギース=ハワードとの闘いでは不発に終わった、改良型の“忍蜂”――――――。

しかしそれでも、これを迎え撃つライデンは、自分の勝利を確信していた。
(それがテメェの奥の手か!だが、どのみちテメェは終わりなんだよ……)

不知火舞の身体は既にボロボロである。
ライデンがこの一撃に耐え、あと一発反撃を喰らわせてやれば、
彼女の全身の骨をバラバラにすることができる。

(つまり、オレは気絶さえしなければ勝てるんだぜ……)

「トォォォォォォォォォォォッ!!!」
(狙いは腹か!!)

鍛え抜かれた腹筋に力を込め、腹部のガードに全神経を集中する。

炎の弾丸に姿を変えた少女が、肘を前方に突き出した姿勢でライデンの投げ技の間合いに入ってくる。
(残念だったな、ネエチャン!!テメェの最期だ!!)

そう思った瞬間―――――――――――、
「!!?」

ライデンの眼前まで迫った舞が、その場でもう一度側転して角度を変え、上空目指して急角度で跳躍する。
「ちょう・ひっさつぅぅぅ―――――」

「うおぉぉっ!!?」

「しのびはちぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

ライデンの無防備な喉笛に肘を突き刺し、少女は鳳凰のように飛翔する。

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!?」

体重210sの巨体が宙に浮かび上がり、そのまま天井の金網フェンスに叩きつけられる。
「ごはぁっ!!!がっ……………………………」



ズシィィィン!!

地響きをたててマットの上に落下したライデンは、そのまま動かなくなった。
筋肉のガードが効かない喉に超強烈な打撃を受けたことに加え、
不知火舞の激しい炎によって全身を長時間包まれていたため、酸欠をおこしてしまったからである。


(やったよ…私…やったよ……これで“あの人”の世界の住人になれる………)

全ての力を使い果たし、不知火舞もまた、マットの上にバッタリと倒れてしまう。



“汝が真に狼であるなら、その牙を以って示してみよ”

薄れゆく意識の中で、舞が最後に思い浮かべていたのは、昨晩届けられた手紙の一文であった…………。


244エピローグ 1 :06/07/23 11:12 ID:???
やっぱり君の言った通りだったね。

ナニガ?

歴史が、運命が変わりつつある……。
彼女は俺たちがよく知っている不知火舞ではないのかもしれない……。

ソウデショウ?ヨク似テイルケド、アノ子ハ少シ違ウ。
私ガイルノガナニヨリノ証拠デスモノ

本来あるべき運命なら、彼女が強さを求め続けるのは全て、アンディ=ボガードのためであったはずだ…。
ところが今の彼女は、一人の格闘家として、自分自身のために高みを目指そうとしている。

アノ子ハ本当ノ意味デ、狼ニナッテシマッタノヨ。
本来ナラ、狼ニ憧レル女ノ子ノママ終ワルハズダッタノニ………

そうだね…。
アンディは間違いなく狼だったけど、彼に恋をした不知火舞は、狼ではなかった。
アンディは彼女のことをとても愛してはいたけれど、最大の興味は兄を超える格闘家になることだったんだ…。
テリー=ボガードの背中を追い続け、彼はがむしゃらに強くなろうとした。

対シテアノ子ハ、アンディノコトガ好キデ好キデ、タマラナカッタ……。
ドンナ時デモ彼ノソバヲ離レタクナカッタ……。
闘イノ場デモ一緒ニイタカッタ……。
人ヲ傷ツケルノハ大嫌イダッタシ、強サソノモノニ興味ハナカッタ…。
ケレドモ、彼トイツマデモ一緒ニ歩キ続ケタカッタカラ、アノ子ハ強クナロウトシタ……。


共に闘いの場に身を置くからには、アンディに迷惑をかけたくなかった。
狼の傍にいたいなら、自分も狼に置き去りにされないよう、強くならなければならない。
恋人に守られるお姫様でいるよりは、恋人と対等に肩を並べて闘える存在に、彼女はなりたかったんだろうね……。
まさに、“闘う大和撫子”というわけだ。

アンディガ強クナルナラ、同ジ分ダケ、アノ子モ強クナラナケレバナラナカッタ。
ソウシナケレバ、彼ノオ荷物ニナッテシマウカラ……。
アノ子ハ強クナッタ。
女性ノ限界ヲ超エテシマウ程ニ……。


だが、アンディはもっともっと強くなっていってしまった。
なぜなら彼が追いかけてのは、彼よりも強い狼の背中だったからだ。
“このままではアンディに置き去りにされてしまう”……、彼女はさぞかし怖かっただろうね…。

ソレデモ必死ニ努力シタケド、トウトウアノ子ハ、アンディノ強サニツイテイケナクナッテシマッタ……。

それが格闘家としての、彼女の限界だった。

アノ子ハ闘イノ場カラ身ヲ引クシカナカッタ……。
アンディノ足手マトイニナルノダケハ嫌ダッタカラ……。

彼女を置き去りにして、アンディはますます遠くへ行ってしまう………。

モウ、一緒ニ闘ウコトハデキナイ……。
イツデモ一緒ニイルコトハデキナイ……。
長年恐レテイタコトガ、現実ニナッテシマッタ…。
トテモトテモ、淋シカッタ……。






245エピローグ 2 :06/07/23 11:14 ID:???
しかし、彼女は強かった。
肉体の強さでは男達に敵わなかったけれど、心の強さでは誰にも負けなかった。
それは、テリーにも、ギースにもない強さだった。
心も体も傷だらけにして闘い続けるアンディ=ボガードを、彼女は精神面で支え続けた。

その想いはアンディにも伝わった……。
いつ命を落とし、果てるかもしれない修羅場の数々――――――――
だが、彼は死ぬわけにはいかなくなった。
自分の帰りをいつまでも待ち続ける女性がいるからだ。

そして、彼は生き残った。
長い長い年月が過ぎ、彼が歳をとり、格闘家を引退するその日まで、彼は生き残った。
それまでの長い長い時間、自分を辛抱強く支え続けてくれる女性がいたからこそ、アンディは死なずに済んだんだ。
ようやく互いの身を案じることなく、いつまでも一緒にいられる日々が二人の間に訪れた。

彼女は、“恋人に守られるお姫様”なんかじゃなかった。
肩を並べて修羅場に立つことを諦め、心で戦うことによって、
彼女は“恋人を守る女神”になることができたんだ……。


アノ子ハ、馬鹿ガツククライ一途デ、ヒタムキナ女ノ子ダッタ。
最初ニ好キニナッタ男ヘノ愛ヲ、生涯貫キ通シタ………。

格闘家としては少し淋しいけど、一人の女性としては十分に幸せな生涯……。

ソレガ、本来アノ子ガ辿ルハズダッタ未来………。
ダケドソノ未来ハ変ワリツツアル……。

運命が変わりつつあるからね…………。
それが彼女にとって幸せな方向へなのか、それとも不幸な方向へ変わろうとしているのか分からない。


けれどもとりあえずは、祝福することにしよう……。

エエ、ソウシマショウ……。
アノ子ノ新シイ門出ヲ……。
狼ノ世界ヘノ旅立チヲ……。

そして君の誕生を…。
彼女の“影”の誕生を祝福しよう。
同じ“影の者”として君を祝福しよう……。


アリガトウ、アンディ……


246エピローグ 3 :06/07/23 11:18 ID:???
「随分と長い夢を見ていたような気がする…………」

目が覚めた時、最初に見えたのは、クリーム色の天井だった。

「そりゃそうだ…。なんたってお嬢ちゃんは、三日間も眠りっ放しだったんだからな…」

清潔な部屋の隅の椅子に、ブロンドの髪を短く刈り込んだ、猛禽のような目をした男が座っている。

(ビリー=カーン?)

「ここは……?」

「サウスタウン市街地にある大病院。しかもここは、最高級の病室だ。安心しな…。
この病室での入院代は全額、ハワードコネクションが負担してやるからよ」


「あたし、あの刑務所から釈放されたの?」

「あぁ、そうだぜ……。試合に敗れたとはいえ、勝負には勝ったからな。出所手続は、俺が身元引受人として済ませておいた。
正直、驚かされたぜ。お嬢ちゃんみたいな小娘が、まさかライデンに勝っちまうとはよぉ……」

「あの試合、見てたの?」

「三試合目だけな…。お嬢ちゃんの無残な最期が見れなくて残念だったが……」
「ふんっ。それはおあいにくさま……。うっ!?痛ぁっ………」

「無理してベッドから起き上がらない方がいいぜ。
ライデンにあれだけ痛めつけられて、後遺症が残っていないだけでも奇跡的なんだからよ。
あと二週間はここで体を休めることだな……。
退院したら、“ギースタワー”に一度顔を出しな。ギース様がお前に会いたがっている…」

(そう……とりあえず今は休ませてもらうわ………)

安心して緊張が解けたのか、身体にどっと疲れが押し寄せる。
視界がグニャリと歪み、舞はコトリと眠りに落ちた。

今度は非常に満ち足りた眠りだった。


247エピローグ 4 :06/07/23 11:24 ID:???
「私の秘書になるつもりはないかね?ミス・シラヌイ」
「ハイ?」

二週間後、無事退院した不知火舞は“ギースタワー”の最上層にある社長室を訪れていた。
そして開口一番、ギース=ハワードが持ち出してきたのが、
“ハワードコネクション”の社員にならないかという誘いだったのである。

「君のように美しく有能な女性なら、是非とも私の部下に加えたいと思ってね……」

赤い絨毯の敷かれた広い執務室の中には、彼の専属秘書であるリッパー、ホッパー、の二人も控えている。

「もちろん今すぐにとは言わない。一度日本に戻り、高校を卒業してからでも構わない」

「貴方はあたしのことが欲しいってことかしら?」

「あぁ、欲しいね。君を私のものにしてやりたいよ」


(この男のものになる…。私に力というものを教えてくれた最強の男のものに…)

コノ男ニ、身モ心モ支配サレル……。ソレモ素敵カモネ。ダケド………


「どうかね?悪くない話だとは思うが………」

「…………。お断りするわ」

「ほぅ…」

「貴方にはまだ借りを返していないから……。
ボコボコにやっつけられた恨みをまだ晴らしていないから……。
だから貴方のものになるつもりはないわ。少なくとも今はね……」

「ふんっ…リベンジマッチという奴か…。なんなら今すぐ引き受けてやっても私は構わないがね……」
ギースの瞳に静かな炎が宿る。

「それも遠慮しておくわ…。今のあたしの力じゃ、貴方には到底及ばないから……。
あたしは日本に帰って修行する。今よりもずっとずっと強くなって、そして、貴方よりも強くなってみせる!」

「賢明な判断だな…。ならば己の牙を磨き続け、気が向いた時にここに戻ってくるがいい。
今日のところはこれでお別れだ。リッパー、例のものを……」

リッパーが大きな旅行バッグを舞に手渡す。

「君がホテルに忘れていった荷物だ。パスポートに観光ビザも入っている。
さっさと日本に帰りたまえ。日本までの帰りの便のチケットも、ファーストクラスで用意してある。
私からのささやかなプレゼントだ……」

「ご親切にどうも。首を洗って待っていてね!今度闘う時は、前のようには絶対にいかせないんだから!」

私ヲ服従サセタイナラ、力デ示シテチョウダイネ。
ソレガ出来ナイナラ、私ハ貴方ヲ殺スワヨ…、ギース=ハワード……

不知火舞は、リッパー、ホッパーの二人に案内されて、社長室を出て行った。


(いい眼をしている……。この一ヶ月間であの娘は狼に生まれ変わったようだな…。
それに、去り際に一瞬だけ見せたあの殺気…実に興味深い……)

社長席に座りながら、ギース=ハワードは小さく笑った。




1990年の夏の終わり、不知火流くのいち、不知火舞は無事日本に帰国した。
その心に“狼”を宿して……。
そしてその深淵に、“もう一匹の獣”を宿して……。

予定よりも早い一人の男との邂逅が、彼女を変えたのだった。
彼女の眼前に広がっているのは、本来あるべきはずだった道とは似ているようで、どこか異なる道……。

サウスタウンの支配者であるギース=ハワードが、宿命の狼、テリー=ボガードに敗れ、
裏社会の歴史が大きく動き出す1991年の、ちょうど一年前の出来事であった。


〜完〜

248名無しさん :06/07/23 11:37 ID:???
リョナってリャナって、リョナった末に、バッドエンドな展開ばかりでは芸がないので、やや変化球なラスト。

不知火舞に関しては、大張氏のアニメの影響で「うる星やつら」のラムちゃんみたいな
キャラクター像が世間に浸透してしまい、その後、アーケードのKOFシリーズで、
「アンディにベッタリの能天気お色気バカ」みたいなステレオタイプなイメージを植え付けられてしまっている感があります。

個人の好みだとは思いますが、私の場合、舞のそんなキャラクター像がいまいち好きになれないので、
今回のようなSSを書いてみました。

長い長いお話になってしまい、読んでいる方にはなんとも退屈だったかもしれませんが、
なんとか完成までこぎつけることができました


249名無しさん :06/07/23 14:40 ID:???
GJ!
十分続きそうな予感を感じさせてくれるので続きも所望させて頂く。

250名無しさん :06/07/23 18:24 ID:???
>>248
GJ!お疲れ様でした。リョナものでありつつも不知火舞の成長物語ですね。

私も大張アニメの舞はただのお色気担当としての立場なのは大いに不満でした。
その後のKOFシリーズに関しても同感です。
そういう意味で今回のSSでは長年見たかった舞の姿を見ることが出来たのでうれしいです。

続きがあるとしたらうれしいです。
今回終わったばかりですのでのんびりと気長に待っています。

251名無しさん :06/07/25 18:48 ID:???
>248
今一気に読んだけど、マジでGJ!
ぶっちゃけ下手な商業作品より全然読み応えあった!
俺もKOFシリーズの舞より248さんの舞の方が魅力的だと思う。
退屈なんてとんでもない、執筆お疲れ様でした。

252ジェニー小説描いてやっか :06/07/25 18:59 ID:???
誰かがかけって言うから書く。
昔、スレ主が書いた小説に仕上げる



253:06/07/25 19:13 ID:???
K対ジェニー(Kの性格は変えてるからな)

ジェ「私と戦うことができてあなたはついてるわね」
ジェニーが挑発した。
Kはジェニーに近づき、鳩尾にパンチを一発。
ジェ「あぅ!!」
体勢を立て直すジェニー。しかしおそかった。Kの連続攻撃(コンボ)をうけてしまった。
ジェ「あぅ!あぅ!あぅん!!あぁう!!」
同じような悲鳴を上げながら空中で数分間攻撃されるジェニー。
そして、腹部を蹴られ、吹き飛ばされた。
ジェ「いやあぁぁぁぁぁ・・・・・!!」
頭から壁に激突し、仰向けに倒れるジェニー。
今動いてるのは、Kと倒れた衝撃でブルンブルン揺れている乳房だけであった。
Kは、動けなくなったジェニーに近づき、巨大な乳房を隠す、衣類をはぎ取った。
ジェ「な・・なにするのよ・・・!!やめてぇ!!」
ジェニーの乳首は、普通の女性と変わりない、赤桃色の乳首の大きさだった。
仰向けになってもひしゃげない、その胸を見ながら、ジェニーのハイヒールを脱がす。
マニキュアを少ししたその生足をぺろぺろとなめはじめ、ジェニーを甚振り始める。
ジェ「あ・・あぁ・・・・・」
Kは足をなめ終えると、ジェニーの巨大すぎる乳房を2つつかみ、上へ持ち上げた。
ジェニー「きゃぁぁ!!!いたい!やめてぇ!!!!」
しかし、もう遅かった。ジェニーの乳房は、ブチッ!!と音を立て、切り取られてしまった。
ジェ「きゃぁあ゛あ゛あ゛!!!」
鮮血と乳汁が流れ出た。ジェニーは涙と唾液を流しながら激痛に襲われた



2542 :06/07/25 19:17 ID:???
Kはジェニーの紐のような下着を引き裂き、秘部に、自分の手を突っ込んだ
ジェ「やぁあ゛あ゛!!!あがぁぁ!!!」
秘部からも、鮮血が流れた。
Kは持っていた2つの乳房を捨てた。地面に落ちても、プリンのようにぶるぶる揺れていた。
Kはジェニーを立たせ、ピストン運動を始めた。
ジェ「あぅ!!ぃや!!あん!!ぁん!!」
そのままジェニーはぐったりとしたまま、うなだれた。
Kはぐったりとしたジェニーを大型ゴミ捨て場に捨てた。

以上、俺の書きなぐった小説でした。


255名無しさん :06/07/25 19:30 ID:???
>>249 >>250
ありがとうございます。
餓狼シリーズ初期における舞の魅力を自分流に見つめ直しつつ、彼女のピンチシーンを
極めてみたいという思いで書いたSSですが、気に入って頂けたようでなによりです。

流石に今回は少し疲れたので少し時間を置きますが、続編は書くつもりです。
私の脳内妄想の中では、この後に「餓狼2編」、「餓狼3編」
と続くのですが、実際にSSとしてどこまで書き下ろせるかは分かりません。
(このスレの残り容量や、私の文章力の問題などもあるので……)

ただ、舞を主役にした餓狼の年代記的小説を書いてみたいという思いは以前からあったので、
やれるところまでやってみたいな〜とは思っています。

その時は、また読んで頂ければ幸いです


256255=248です :06/07/25 19:46 ID:???
なんかチンタラと255の文を書いていたら、その間にスレに随分と進行があってびっくり。

>>251
感想ありがとうございます。非常にはげみになります

>>252-254
ややスレ違いな気もするけど乙です!他の方が書いたSSは参考になります。


257名無しさん :06/07/26 13:28 ID:???
なんかいやされた

258名無しさん :06/07/26 19:22 ID:???
せっかく書いてくれたのに、
リクしたやつは何の礼も言わないんだなw

259名無しさん :06/07/28 19:48 ID:isnSlUzQ
へたな文章ですが作ってみました。
ライデンに倒され、その後屈辱的な責めを受ける舞です。
格闘部分をはしょり、屈辱部分のみ書きました。



ライデンは放心状態で倒れている舞の足を持ち、そのまま持ち上げた。舞の体は力なく吊るされ、持たれていないほうの足がだらしなく開いてしまう。
ライデンは舞の股間部を見るといやらしい顔で舌なめずりをした。
「ひゃはは、女の格闘家っつうのは負けたらどんな目にあうのか俺が教えてやろう。」
舞の股間を大きなライデンの指がなぞる。はじめはゆっくり、パンツごしに筋にそってすりすりとなぞる。
舞の体がピクピクと反応する。
「フフっ可愛らしい反応だぜ。まだ男にいじられたことがないようだな。」

徐々にライデンの指使いが速さと激しさを増していく。舞のクリトリスの辺りを人差し指と中指で押さえ込むようにして激しくこすりはじめた。
『えっ!? ひっ うひいいい!ひっ ひっ ひひいいいいい!』舞が突然覚醒したかのように反応を大きくし始める。両手で股間をおさえようと必死になるが、ライデンの力の前には無力であった。
『ふひいっ ひひっ いひいいい!』


「ひゃははーだいぶクリトリスがパンパンになってきたな。そろそろ本格的にぶっ壊してやるか。」


260名無しさん :06/07/28 19:48 ID:isnSlUzQ
ライデンは痙攣してクラクラになっている舞を地面に下ろすと、仰向けの状態にした。膝を曲げさせ、軽く股を開き気味にさせた。
さらに舞の股間部にかぶさった前垂れをめくってパンツをあらわにさせると、パンツのマ○コのあたりをつまみ、その剛腕でちょうどいいところに穴をあけた。
「ふふっ着ているものを脱がさずにやるのが俺流だ。だいたいこのコスチュームは裸よりエロいからな。脱がさずにやってやるよ。」
舞は頭では嫌だと思っていても体がゆうことをきかない。初めて体をいじられることに恐怖を感じ、また同時に初めての快楽に本能的な部分で頭がうまくまわらなくなっていた。
「ふんっ!」ライデンはパンツに空けた穴(つまり舞のマ○コ)に勢いよくその太い指をつっこんだ。
『ふぎいいい!』突然の侵入に舞は上半身をのけぞり反応してしまう。
「ふふっいい反応だ。楽しめそうだぜ。」
ライデンはそのまま指を深く入れていく。
『いひいいいいいい。』
「まだ気持ちいいとかもよく分からんのだろう。俺が気持ちいいっていうのをわからしてやるよ。この辺だったな、女のGスポットは。」
そう言うとライデンは舞のマ○コの中で指を折り曲げた。
『はひいい!!』舞が大きく反応する!
ライデンは続けて指を何度も折り曲げ舞のGスポットを刺激する。
『あひっ いひっ あひいっ いぎ いひ あひいいい(き き 気持ちよすぎる な なんか上がってくるよおおお) ぎっ ぎ ぎもじいいいいいいいい!』

舞は初めての絶頂を体験させられてしまった。白いねばねばした愛液がだらしなく股間からあふれ出しパンツをぐちょぐちょにしている。よだれだらだらの顔は格闘家とは思えないほどのだらしないアヘ顔になって、気持ち良さをかみしめているようだった。


261名無しさん :06/07/28 20:22 ID:???
>>258
うぷから24時間しか経ってないのに何言ってんだ。

262アンカーは付けない :06/07/28 20:57 ID:???
258はツンデれ

263名無しさん :06/07/28 21:33 ID:???
261でんでれ

264名無しさん :06/07/28 22:05 ID:???
262はぼんごれ

265名無しさん :06/07/28 22:08 ID:???
>>261
でも、現時点で大体3日経ってるわけだが?

266名無しさん :06/07/28 22:10 ID:???
漏れに釣らせてくれ。一度でいいから釣りたいんだ

267248 :06/07/30 22:43 ID:???
この度ブログを作ってみました。今後はそこで舞のSSを書いていきます。
「不知火忍法帖」というタイトルのブログです。
FC2ブログのトップページにあるブログ検索にタイトルを入力していただければ
ヒットすると思います。お暇な時に覗きにきてください


268名無しさん :06/08/02 14:09 ID:X59FmzBk
ikuze!

269名無しさん :06/08/02 14:41 ID:???
dokoni?

270名無しさん :06/08/09 10:30 ID:WQG7Wcmk
siruka!

271名無しさん :06/08/16 17:40 ID:sSJoi942
warata!

272名無しさん :06/08/18 11:15 ID:AkaKGlO2
nathuhaathuina!!!!
maitokazyeni-hasuzusisouda!!!!!!!
atui!!!

273名無しさん :06/08/18 13:49 ID:koEMgOQI
日本語で書けwwwww

274名無しさん :06/08/22 00:32 ID:J4O3HozI
260の続き考えてみました

その後指姦で何度も何度もイカされてしまった舞。ライデンもあきることなく舞の性感帯を責め続ける。
『もうやべでええええ 舞ごわれじゃうのおおおお』
「ふっ 気持ちよすぎて自我が崩壊しそうなんだろ いいぜ いっちまえ」ライデンの指の動きはいっそう激しさを増す。
「そろそろしめどきだな 至高の快楽を味あわせてやろう」ライデンは空いている腕のほうの人指し指を舞のおしりの穴に突き刺した。
『おひいいいいいいい あが あ あ   あ 』舞は反った腰をさらに反らせて反応する。
「俺の必殺技 2穴同時責めだ とくと味わえ」そう言うとライデンは舞の2つの穴をこれでもかというほど激しく刺激し始めた。
『ひっ ひいいいいい あぐううう お お  おじりぎもじいいいいい  あひっ やげるううううう 股間やげちゃうううう』
「こいつ、そろそろまじで逝くな。」ライデンは顔をぐちょぐちょにして叫ぶ舞の顔を見ながらさらに動きを大きく強く速くしていく。
『い いぐいぐ いぐうううう  が  あが あぶうう ぶぶ』
「ははっ 泡ふきやがった。」ライデンは指を抜いて立ち上がり舞を見た。
 舞は愛液の水溜りの中で大股を開き、瀕死の魚のように口をパクパクと動かしながら泡を噴き痙攣し続ける。
見ると彼女の目玉は裏返り、完全に白目を剥いてしまっている。舞の意識は完全に吹き飛んでしまった。


275名無しさん :06/08/22 00:47 ID:J4O3HozI
「ひゃっはっは」ライデンは最早戦士としてのかけらもない舞を見て完全勝利の笑いをあげた。
ライデンは舞の衣装の前垂れ布を摘み上げてみた。そしてぐちょぐちょになった舞のパンツを豪腕で引きちぎり舞の股間からはずした。
ねちょ〜っとパンツが愛液の糸を引いた。
ライデンはパンツを自分のジャージの中に入れた。「へへっ 戦利品だ 話のネタになるぜ」
そして舞の股間を凝視する。
自らの愛液でべちょべちょになった舞の股間は、いまだ抑えきれぬ快楽に激しく収縮し続けている。クリ○リスはこれでもかというほど肥大しておりパンパンの状態である。
ライデンはにやりと不気味な笑みをすると舞の股間に手をかけいっきにクリ○リスの皮を剥いた。
同時に舞の腰がビクンとはねあがり愛液がびちゅっとしぼりでる。気絶し頭は働かなくとも舞の体は女としての反応をやめることができない。


276名無しさん :06/08/22 01:08 ID:J4O3HozI
「この娘の命、快楽の中で終わらせてやろう」
そういうとライデンは舞の剥き出しのクリ○リスに手をかけた。
「何だかんだ女が一番感じるのはここだ しかもお前の感じやすい今の状態で剥き出しのここを刺激されたらどうなるかな」
ライデンは舞のそこをつまみ、振動させはじめた。
『うが あががが ひぎぎぎ ぐ  ぐぼおおおごごご』
舞は信じられないほど極端にびくんびくんと痙攣しはじめる。伸びきった乳首からミルクも出始めた。
白目から涙、鼻から鼻水、口から涎・泡、おっぱいからミルク、股間からはおしっこと愛液、舞の体は出せる限りの体液をだそうとしているかのようだった。

「あばよ 九の一ねーちゃん」ライデンがとどめに舞の腹部を鉄拳で殴った。
舞の腹筋に力が入っているわけもなく、こぶしは地面すれすれまで舞の腹部を押しつぶした。
九の字に折れ曲がった体はしばらく痙攣を続けた後一切の動きをしなくなった。
不知火流九の一舞の一生が無様な形で終わりをつげた。

277名無しさん :06/08/22 01:17 ID:J4O3HozI
終わりです
ちょっとやりすぎました 舞ちゃんごめんなさい



278名無しさん :06/08/23 18:22 ID:???
↑それエロパロ板にも投下してただろw
誰かがコピペしたのかもしれんが。

279名無しさん :07/02/17 19:28 ID:gbj8NKf2
不知火忍法帖、閉鎖かよ(´Д`)
続けてほしかったんだがなぁ…。

280名無しさん :07/02/17 20:25 ID:???
最後まで書くって言ってたから毎回更新楽しみにしてたんだけど。
気が変わってのんびりとでも続けてくれればなぁ…。

281名無しさん :07/03/02 00:35 ID:Ea7dG8Yw
サイト保存し損ねた
テキストだけでもどこかに残して欲しいな

282名無しさん :07/03/02 00:48 ID:yPkcnZvU
小説パートはHTML化したけど、許可なしにうpする事は出来んしな。

283名無しさん :07/03/18 18:33 ID:1k8ImCQs
忍法帖なくなって日々の楽しみが無くなってしまった。
また再会して欲しいと切に願う。

284名無しさん :07/03/19 00:47 ID:E8PiDYDQ
こっそりうぷってわけにはいかんの
だろうな

285名無しさん :07/03/19 01:16 ID:RlZLITrg
氏がこのスレ見ててOK出してくれればうpしてもいいんだが。

286名無しさん :07/03/19 12:30 ID:QUBqod4o
>>279-285
管理人の意思で閉鎖した個人サイトについて、何度も話を蒸し返すのはやめた方がいいと思うぞ。
2ちゃんはもちろんだが、この手の匿名掲示板で自分のサイトの噂話をされて、
気分のいい人間は、あまりいないだろうから


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